著者
兼平 朋美 守田 孝恵
出版者
山口大学医学会
雑誌
山口医学 = Yamaguchi medical journal (ISSN:05131731)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.75-87, 2017-05

目的:本研究は,精神保健活動の保健師の家庭訪問スキルを向上させるための新たなケースシートを考案し,それを用いた事例検討会を行い,その効果を検討することを目的とした.方法:家庭訪問スキルを「アセスメント項目」と「家庭訪問後の評価項目」に分けて構成したケースシートを用いて事例検討会を実施した.事例検討会は2014年度に実施した2事例すべて(計4回)を分析対象とした.すべての事例検討会に参加した保健師を分析対象者とし,事例検討会の開始前,終了後に調査票による評価を依頼した.6因子36項目からなる「精神保健活動における保健師の家庭訪問スキル」を用いて,スキルの習得状況を4段階(1~4点)で評価した.総スキル得点と6因子からなる各因子のスキル得点により分析した.結果:総スキル得点は,各事例検討会の実施により,すべての事例検討会で有意に向上し(p<0.05),事例検討会全体の開始前と終了後では13.0点上昇した(p<0.05).6因子のスキル得点では,「ニーズを見極める」スキル得点,「家族関係をとらえる」スキル得点が有意に向上した(p<0.05).また,有意差はなかったが,「家庭訪問を管理する」等の4つの因子スキル得点においても上昇傾向がみられた.事例1と事例2において総スキル得点は,事例検討会1回目も2回目も同様に有意に上昇しており,事例検討会2回目は事例の経過報告と事例検討を行なうことで,新たな事例を提供する事例検討会1回目と同様の効果が得られた.結 論:ケースシートを用いることで,全ての事例検討会において家庭訪問スキルを向上させる効果が認められた.「ニーズを見極める」スキル得点,「家族関係をとらえる」スキル得点を上昇させる効果が示された.家庭訪問スキルを効率的に向上させるにはケースシートを用いて,1事例につき事例検討会を2回実施する方法が効果的であった.For the purpose of improving home visiting skills for mental health services, a new report format was developed. This study was designed to examine the effectiveness of the new report format through the use of case study sessions. Four case study sessions were implemented with the new report format, which is composed of six factors and 36 items of home visiting skills. The"Public Health Nurses'Home Visiting Skills for Mental Health Services"were used for evaluation on a scale of one to four(1-4 points for each item).The evaluation scores all significantly improved after each case study session compared to those before the session. The scores improved by 12.6 points from the beginning of entire case study session until the end(p<0.05).Of all the home visiting factors,"Determining Needs"and"Understanding Family Relationships"were most significantly improved(p<0.05).Although not so significant, the other four factors, including"Managing the Home Visiting"were also improved. The case study sessions with the new report formats was proven to be effective for improving home visiting skills for mental health services.
著者
兼平 朋美 守田 孝恵
出版者
山口大学医学会
雑誌
山口医学 (ISSN:05131731)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.75-87, 2017
被引用文献数
1

<p>目 的:本研究は,精神保健活動の保健師の家庭訪問スキルを向上させるための新たなケースシートを考案し,それを用いた事例検討会を行い,その効果を検討することを目的とした.</p><p>方 法:家庭訪問スキルを「アセスメント項目」と「家庭訪問後の評価項目」に分けて構成したケースシートを用いて事例検討会を実施した.事例検討会は2014年度に実施した2事例すべて(計4回)を分析対象とした.すべての事例検討会に参加した保健師を分析対象者とし,事例検討会の開始前,終了後に調査票による評価を依頼した.6因子36項目からなる「精神保健活動における保健師の家庭訪問スキル」を用いて,スキルの習得状況を4段階(1~4点)で評価した.総スキル得点と6因子からなる各因子のスキル得点により分析した.</p><p>結 果:総スキル得点は,各事例検討会の実施により,すべての事例検討会で有意に向上し(p<0.05),事例検討会全体の開始前と終了後では13.0点上昇した(p<0.05).6因子のスキル得点では,「ニーズを見極める」スキル得点,「家族関係をとらえる」スキル得点が有意に向上した(p<0.05).また,有意差はなかったが,「家庭訪問を管理する」等の4つの因子スキル得点においても上昇傾向がみられた.事例1と事例2において総スキル得点は,事例検討会1回目も2回目も同様に有意に上昇しており,事例検討会2回目は事例の経過報告と事例検討を行なうことで,新たな事例を提供する事例検討会1回目と同様の効果が得られた.</p><p>結 論:ケースシートを用いることで,全ての事例検討会において家庭訪問スキルを向上させる効果が認められた.「ニーズを見極める」スキル得点,「家族関係をとらえる」スキル得点を上昇させる効果が示された.家庭訪問スキルを効率的に向上させるにはケースシートを用いて,1事例につき事例検討会を2回実施する方法が効果的であった.</p>
著者
守田 孝恵 磯村 聰子
出版者
山口大学医学会
雑誌
山口医学 (ISSN:05131731)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.17-24, 2017-02-01 (Released:2018-03-27)
参考文献数
24

【目的】1分単位のタイムスタディによって,保健師の日常業務の内容と時間量を明らかにする.【方法】市の保健師を対象に始業から終業までのタイムスタディの連続観察法を実施した.毎分0秒になった時点の保健師の行動・言動を観察記録し,「データ」とした.「データ」の内容が変化した時点で,区切り「場面」とし,その意味を表す「活動内容」を生成し時間量を明らかにした.対象者に厚生労働省保健師活動領域調査の様式に記入してもらい,問題点等を聞いた.【結果】業務時間は526分,場面は75であった.活動内容別時間量は,「住民との関わり」は130分で業務全体の24.7%であった.「地域への働きかけ」は,81分(15.4%),「個別ケースの評価検討」は50分(9.5%),「地域活動のための職場内の相談」は,71分(13.5%)であった.活動領域調査様式への記入は,保健福祉事業4時間,コーディネート2時間,業務連絡・事務2時間で,感覚的に振り分けられていた.【考察】「地域活動のための職場内の相談」「個別ケースの評価検討」は,業務の中で人に学ぶ能力開発である.それらに約2時間を費やしており,日常業務で実践力が培われている実態が浮き彫りとなった.業務の間の分単位の相談・共有・報告等の時間確保が能力開発には重要であることが明らかとなった.保健師活動量をより正確に調査をするには,職場における地域活動のための相談や個別ケースの評価検討の時間を計上できる項目が必要であると考えられた.
著者
柴田 雅雄 坂部 創一 山崎 秀夫 守田 孝恵 張 建国
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.24(第24回環境研究発表会)
巻号頁・発行日
pp.339-344, 2010 (Released:2011-08-12)

本研究では,CMC (Computer-Mediated Communication) 利用の促進が文章表現力をどの程度向上させ,それが口語表現力と現実の人間関係,そしてQOL (Quality of Life) にどのように影響しているのかという問いを設定した。そして,情報系大学生を対象に調査を実施して,共分散構造分析で良書の読書効果も含めて要素間の因果関係を検証した。その結果,良書の読書のみ文章と口語の表現力を向上させ,メールとSNS (Social Networking Service) は文章と口語の表現力を向上させないことが示された。そのため,今後の情報化社会において「良書の読書」を推進することの重要性が示唆された。