著者
冨田 圭子 今井 恵 山本 恵利加 安岡 美総 竹田 真弥
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】生活習慣病の増加に伴い、糖尿病網膜症等を起因とするロービジョン者が増加している。ロービジョン者の視認性向上には、明度差のある白黒配色が最も相応しいとされている。しかし、食事のおいしさには彩りが重要な要素となることから、彩りにも配慮した色彩提案が必要であると考えられる。そこで、給食用トレイを用い、視認性・視覚的おいしさ両面に配慮した色彩検討をおこなうこととした。本研究ではカラーチャートを用いた視認性の検討に加え、無彩色を含む18色の給食用トレイにおける視覚的おいしさを調査し、総合評価を行うこととした。<br />【方法】平成24年8月~平成27年6月にかけて女子大学生(21.5±0.67 歳、n=約30/色)を対象にアンケート調査をおこなった。調査内容は属性、不定愁訴、トレイの色の視認性調査2種に加え、トレイの色の印象調査からなる。トレイの色の印象調査はLCD画面上に色変換した18色のトレイの料理画像を1枚ずつ被験者に見せ、トレイの色ごとに36形容詞対を用いた5段階SD法によりおこなった。尚、食器は白色の縁取りのないものを用い、料理は先行研究で彩りが良いと評価された和食とした。いずれの調査もロービジョンシュミレーションメガネ装着群(以下ロービジョン者)と非装着群(以下健常者)の2種の条件下でおこない、ロービジョン者は聞き取り、健常者は自記式調査とした。尚、トレイの縮尺率は60%、部屋の環境は、照度:496.2±12.03 lx・温度:24.1±1.36℃・湿度:48.4±10.69 %であった。<br />【結果】視認性の調査では、ロービジョン者と健常者ともに黒、グレー3.5(灰)、ブライトトーン(青・緑・赤・橙・桃)、ディープトーン(黄)、ダークトーン(黄)が高評価であった。一方、視覚的おいしさの検討では、ビビットトーン(黄)、ペールトーン(黄)、ブライトトーン(黄・山吹・橙)の順に評価が高いと示された。<br />【考察】白色食器を用いた場合、健常者・ロービジョン者共に視認性および視覚的おいしさの高い給食用トレイの色は、ブライトトーンの橙であることが示唆された。