著者
荻野 美里 富澤 直樹 安東 立正 荒川 和久 須納瀬 豊 竹吉 泉
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.1341-1347, 2013 (Released:2013-11-25)
参考文献数
14
被引用文献数
3

神経内分泌腫瘍は肺,消化管,膵などで報告されているが肝原発は稀である.今回,肝原発神経内分泌癌を経験したので報告する.65歳男性で,平成18年に他院で食道癌切除術を受けた.病理は扁平上皮癌,pT1b(sm)N0M0 Stage Iであった.患者の希望で当院に通院していた.平成19年10月,繰り返す腸閉塞のため解除術を施行した.術前の画像診断では再発や重複癌はなかった.翌年2月,肝両葉に多数の腫瘍が出現.経皮的肝腫瘍生検では未分化癌と診断された.食道癌に準じた化学療法を行ったが,肝不全で死亡した.剖検では肝臓のほぼ全体が白色の充実性腫瘍で置換されており,chromogranin A,CD56が陽性で,MIB-1が45.8%と高値なため,肝原発神経内分泌癌と診断した.本症例では食道癌の既往があり針生検でも確定診断がつかなかったため,食道癌化学療法に準じた治療を行ったが,奏効しなかった.
著者
荒川 和久 小林 克巳 黒崎 亮 佐藤 弘晃 富澤 直樹 安東 立正
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.409-412, 2015-05-31 (Released:2015-09-08)
参考文献数
15
被引用文献数
1

手術により絞扼性イレウスと診断された103例を対象として,腸管壊死群と非壊死群とに分けて,臨床症状,血液検査,血液ガス分析,CT画像の項目で比較・検討した。単変量解析では術前SIRSの有無,白血球数,PaCO2およびCT所見の腸間膜濃度の上昇,腸管壁浮腫,腸管の造影不良で有意差があり,多変量解析ではPaCO2と腸間膜濃度の上昇で有意差を認めた。絞扼性イレウスは重篤な状態に陥る可能性のある疾患であり,そのリスクの高い腸管壊死症例を早期に診断し治療することは重要である。今回の検討で有意差のあった項目に注意しながら,症状および検査結果の解釈とCT画像の読影の精度を高くすることが重要である。