著者
宮川 幸子
出版者
法政大学イノベーション・マネジメント研究センター
雑誌
イノベーション・マネジメント (ISSN:13492233)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.149-165, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
35

本論文の目的は、中国テンセント社の事例を通じて、中国SNS市場で成長する企業の経営戦略における間接的アプローチに関する新たな仮説を提示することにある。本論文では「中国SNS市場において経営資源劣位にある企業は、どのようにユーザーネットワーク内の顧客と関係性を構築すればよいのか」という問いを設定し、中国SNS市場におけるスタートアップ企業であったテンセントの短期的な企業成長に着目して事例研究を行う。本論文では、「間接的アプローチ」とは、「企業が顧客個人ではなく、顧客集団に対して、新たな顧客間関係の創出を目指して顧客間相互作用を促進する働きかけを行うこと」と定義し、間接的アプローチの方法論を明らかにする。テンセントは、間接的アプローチを通じて、顧客間相互作用を意図的に生み出すことより、自社ユーザーネットワークの量的拡大・質的充実とユーザーネットワークの収益化の両方を実現した。その背後では、顧客のあらゆる行動特性分析、心理的特性分析、顧客評価を通じて顧客知識と開発ノウハウを組織内に継続的に蓄積し、企業が直接コントロールし難い消費者主導のコミュニティを活性化させるための製品開発に活用していた。テンセントの事例研究を通じて、経営資源劣位企業の戦略として、企業が意図的に顧客間の相互作用を生み出す間接的アプローチの有効性に関する仮説を提示する。
著者
榎本 美生 山本 純照 多田 英之 矢敷 敦 北村 華奈 葛城 麻実子 浅田 秀夫 宮川 幸子
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.192-197, 2006 (Released:2011-02-18)
参考文献数
16

54歳,女性。家族歴:両親がいとこ婚。現病歴:幼少時から体幹を中心に表面に軽度の膜様鱗屑を有する癜風様の紅褐色局面と脱色素斑が多数みられ,次第に増数がみられた。平成6年より左耳前部に小結節が生じ,切除の結果,有棘細胞癌と診断された。その後,顔面,体幹,四肢に結節が出現し,平成13年7月までの間に合計15回切除術を受けた。病理組織検査の結果,基底細胞癌,有棘細胞癌,ボーエン病,脂漏性角化症と診断され,疣贅状表皮発育異常症(EV)を基礎として生じたものと考えられた。平成16年6月頃より,以前の左前腕ボーエン病の手術痕の断端から赤褐色角化性局面が出現し,左頬部に常色の角化性局面と躯幹部に多数の黒色小結節を認めたため,平成16年8月再診した。切除にて各々ボーエン病,日光角化症,基底細胞癌であった。前腕および顔面の皮疹から抽出したDNA解析の結果,EVとの関連性が指摘されているHPV15型が同定された。
著者
新熊 悟 小林 信彦 前田 真紀 森戸 啓統 北村 華奈 浅田 秀夫 宮川 幸子
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.169-174, 2007 (Released:2010-12-06)
参考文献数
20

57歳,女性。解離性障害による昏迷状態のため経口摂取が不可能となり,当院精神科に入院中,顔面にびまん性の紅斑・浮腫が出現した。その後,口囲に鱗屑が付着するようになり,びらん・膜様鱗屑を伴う紅斑が急速に全身に拡大した。Nikolsky 現象陽性。迅速凍結切片により表皮浅層での裂隙形成を確認し,staphylococcal scalded skin syndrome(SSSS)と診断した。起炎菌はMRSAであった。アルベカシンの点滴静注により皮疹は速やかに治癒した。成人SSSSの鑑別診断として最も重要な疾患は中毒性表皮壊死剥離症型薬疹であり,両疾患を病理組織学的に鑑別する迅速診断法に習熟する必要がある。
著者
宮川 幸子
出版者
日本ベンチャー学会
雑誌
日本ベンチャー学会誌 (ISSN:18834949)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.25-39, 2021-03-15 (Released:2022-12-01)

本論文は、中国シャオミの事例研究に基づき、後発のスタートアップ企業の短期的な成長の原動力となったユーザーイノベーションの独創的な仕組みについて考察したものである。シャオミが、後発だったにもかかわらず短期間で急速に成長できた理由は、複数のコミュニティに属するリードユーザーが各コミュニティに属する人々の情報を集約する仕組みを作ったことにより、持続的にコミュニティへのアク セスと製品の機能向上が進み、リードユーザーのロイヤルティ向上とともに新規顧客獲得の促進につながった結果、短期間に大量の顧客を獲得できたからであった。そこでは企業が一般ユーザーに直接アプローチするのではなく、リードユーザーに一般ユーザーのコミュニティを活性化させ、そこで生まれた情報を、リードユーザーを介して企業に還流させるという間接的マネジメントが行われていた。
著者
井本 恭子 宮川 幸子
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.94-97, 2007 (Released:2010-12-06)
参考文献数
7

19歳,女性。幼少時に,アトピー性皮膚炎と診断され,平成8年5月22日より当科に通院していた。平成9年9月中旬より皮疹が悪化し,同年10月15日よりツムラ加味逍遥散エキス顆粒®とツムラ越婢加朮湯エキス顆粒®を投与した。11月20日より顔面,下腿に浮腫が出現し,血漿レニン活性,血中アルドステロン濃度の低下を認めたことから,両漢方製剤に含まれる甘草による偽アルドステロン症と診断した。両漢方製剤の中止と利尿薬,ステロイドの投与により,浮腫,皮疹は軽快し,検査値も正常範囲内に回復した。