著者
水田 拓 尾崎 清明 澤 祐介 千田 万里子 富田 直樹 仲村 昇 森本 元 油田 照秋
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.71-102, 2022-07-02 (Released:2022-07-12)
参考文献数
154

Bird banding is a survey method of attaching uniquely marked rings on a bird’s leg. Recaptured or resighted data of marked individuals enable researchers to study the ecology of birds, such as the migration and life history. The first bird banding survey took place in Denmark in 1899, and now many researchers and organizations around the world carry out such surveys. In Japan, Ministry of Agriculture and Commerce (the Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries and the Ministry of Economy, Trade and Industry at present) started the bird banding scheme in 1924. The scheme was interrupted during and after World War II, but was resumed in 1961. During 59 years from 1961 to 2019, a total of 6,108,529 individuals (499 species) were marked and released, of which 40,607 individuals (262 species) were recovered. The numbers of marked and recovered individuals in the latest year (2019) were 126,907 individuals (282 species) and 1,254 individuals (88 species), respectively. Based on this comprehensive database, numerous findings and knowledge were obtained, including migration routes and life spans of many species, population trends of endangered species, avifaunal data of a certain region, birds’ response to climate change, contribution to the measure for avian influenza, and so on. The bird banding survey has contributed to the conservation of biodiversity, one of the most critical global issues today. We believe it is important to conduct and continue the survey with a sense of purpose and mission for greater good in mind.
著者
富田 直樹 佐藤 文男 岩見 恭子
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.123-129, 2016-03-20 (Released:2018-12-12)
参考文献数
18
被引用文献数
2 1

We have monitored the status of Black-tailed Gulls Larus crassirostris breeding on Tobishima Island since 2004. On Yurijima Islet, we estimated 2,034 nests in 1 June 2014 and observed a single cat Felis catus in the breeding colony and the carcasses of 14 adult Black-tailed gulls that probably were killed by a cat. We also found feathers of adult Black-tailed Gulls in a single cat feces collected on the mainland of Tobishima. Approximately 1,500 nests were estimated on Tateiwa Islet in 2009, but no nests were found in May 2014. To conserve the breeding sites of Black-tailed Gulls at Tobishima, immediate control management of the feral cat population is essential.
著者
富田 直樹 仲村 昇 岩見 恭子 尾崎 清明
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.143-152, 2013 (Released:2013-11-21)
参考文献数
32

2011年10月から2012年3月までに日本全国14県17ヶ所において,渡り・越冬中のオオジュリンで,尾羽の形成不全(以下,尾羽異常とする)の個体が頻繁に観察された(5,541個体中767個体,13.8%).尾羽異常個体は,ほとんど幼鳥であった(97.3%).尾羽異常の形態は,以下の3型のいずれかに明確に分類された;虫食い状欠損型(45.9%,約1 mmの穴が数ヶ所開いている状態や,羽枝が途中で溶けたようになり,その先が欠損している状態),成長異常型(14.5%,伸長か不全の2種類で,正常羽と比較して,伸長で5.0±3.0 mm(平均±標準偏差)長く,不全で5.8±3.1 mm短かった),及びこれらが同時に観察される複合型(39.6%).虫食い状欠損型は尾羽中央3対に,成長異常型は中央2対に高頻度で観察された.その他ホオジロ科鳥類3種,ホオジロE. cioides(91個体中4個体,4.4%),カシラダカE. rustica(229個体中3個体,1.3%),及びアオジE. spodocephala(1,066個体中16個体,1.5%)でも同様の異常が少数例観察された.
著者
出口 智広 吉安 京子 尾崎 清明 佐藤 文男 茂田 良光 米田 重玄 仲村 昇 富田 直樹 千田 万里子 広居 忠量
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.39-51, 2015 (Released:2015-04-28)
参考文献数
81
被引用文献数
1 3

生態系サービスの持続的利用を考える上で,生物がどのようなサービスを人間に提供するかだけでなく,このサービスを提供する生物が環境変化によってどのような影響を受けているかの双方の理解が不可欠である.本研究では,東南アジアから繁殖のために日本に渡ってくる夏鳥の中から,気象庁生物季節観測(1953~2008年)および標識調査(1961~1971年,1982~2011年)で情報が多く得られているツバメ,カッコウ,オオヨシキリ,コムクドリを選び,成鳥および巣内雛の出現時期の長期変化,両時期と前冬および当春の気温との関係,および植物,昆虫の春期初認日との関係について調べた.その結果,ツバメ,オオヨシキリ,コムクドリの成鳥および巣内雛は,出現時期が早期化する傾向が見られたが,カッコウだけは出現時期が近年晩期化する傾向が見られた.ツバメ,オオヨシキリの成鳥および巣内雛の出現時期は,気温が高い年ほど早期化する傾向が見られたが,カッコウの出現時期は気温が高い年ほど晩期化する傾向が見られた.これらの長期変化の速度は,一部を除いて,欧米の先行研究の結果からの大きな逸脱は見られなかった.また,これら鳥類と植物および昆虫の出現時期とのずれは一定で推移しているとは言えなかったが,早期化あるいは晩期化する鳥類を隔てる要因や,フェノロジカルミスマッチをもたらす要因について明らかにすることはできなかった.今後フェノロジカルミスマッチに注目した研究を進める際には地域差を考慮した解析が必要である.
著者
富田 直樹 染谷 さやか 西海 功 長谷川 理 井上 裕紀子 高木 昌興
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.79-90, 2010-09-30 (Released:2012-12-04)
参考文献数
32

北海道苫前郡羽幌町天売島の天売港において,黄色の脚をもつ大型カモメ類の死体1個体の回収を行った。Olsen & Larsson (2003) に従い,死体標本は,主に背上面および翼上面の色と初列風切の模様の特徴からロシアのコラ半島からタイミル半島の南東部で繁殖する Larus heuglini と同定された。しかし,亜種を完全に区別することはできなかった。また,ミトコンドリアDNAのチトクロームb 領域と調節領域の塩基配列における先行研究との比較では,死体標本の持つ変異が近縁な種・亜種グループに共通して保有されるタイプと一致した。結果として,死体標本が帰属する分類群として可能性のあった候補のうち L. fuscus fuscus, L. h. heuglini, L. cachinnans barabensis, L. h. taimyrensis のいずれかであることまでは絞り込めたが,特定の種もしくは亜種まで明確に示すことはできなかった。L. heuglini とその近縁種については,交雑や遺伝子流動などの理由から分類学的に未解決の問題が多い。本研究において,死体標本やDNA標本による客観的なデータに基づいても,大型カモメ類の種・亜種を正確に同定することは,非常に困難であることが示された。
著者
出口 智広 広居 忠量 吉安 京子 尾崎 清明 佐藤 文男 茂田 良光 米田 重玄 仲村 昇 富田 直樹 千田 万里子
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.39-51, 2015
被引用文献数
3

生態系サービスの持続的利用を考える上で,生物がどのようなサービスを人間に提供するかだけでなく,このサービスを提供する生物が環境変化によってどのような影響を受けているかの双方の理解が不可欠である.本研究では,東南アジアから繁殖のために日本に渡ってくる夏鳥の中から,気象庁生物季節観測(1953~2008年)および標識調査(1961~1971年,1982~2011年)で情報が多く得られているツバメ,カッコウ,オオヨシキリ,コムクドリを選び,成鳥および巣内雛の出現時期の長期変化,両時期と前冬および当春の気温との関係,および植物,昆虫の春期初認日との関係について調べた.その結果,ツバメ,オオヨシキリ,コムクドリの成鳥および巣内雛は,出現時期が早期化する傾向が見られたが,カッコウだけは出現時期が近年晩期化する傾向が見られた.ツバメ,オオヨシキリの成鳥および巣内雛の出現時期は,気温が高い年ほど早期化する傾向が見られたが,カッコウの出現時期は気温が高い年ほど晩期化する傾向が見られた.これらの長期変化の速度は,一部を除いて,欧米の先行研究の結果からの大きな逸脱は見られなかった.また,これら鳥類と植物および昆虫の出現時期とのずれは一定で推移しているとは言えなかったが,早期化あるいは晩期化する鳥類を隔てる要因や,フェノロジカルミスマッチをもたらす要因について明らかにすることはできなかった.今後フェノロジカルミスマッチに注目した研究を進める際には地域差を考慮した解析が必要である.