著者
寺元 幸仁
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学:美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.353-363, 2017 (Released:2019-09-03)
参考文献数
14

児童画コンクールの影響について,先行研究ではプラスとマイナスの両面について論じられている。しかし,教育現場ではプラス面が強調されることが多い。本研究では,近藤卓の論を援用し,子どもの「自尊感情」への影響について考察を行った。入賞等による社会的自尊感情の肥大化と,基本的自尊感情とのバランスの変化により,プラスの影響だけではなく,「落選時の自信喪失」「意欲減退」などのマイナスの影響も考えられることを示した。また,近藤が自尊感情の測定尺度として開発した「SOBA-SET」を用いて,実際に子どもの自尊感情を測定し,家庭環境などを含めた細かい考察を行った。外的な承認であっても社会的自尊感情を膨らませない場合や,優越感によって人間関係にマイナスの影響を及ぼす可能性について述べた。取り巻く環境によって影響は様々であり,児童画コンクールの影響についてとらえ直す必要がある事を示した。
著者
吉田 賢彦 初田 隆 寺元 幸仁
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学:美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.445-459, 2015-03-20 (Released:2017-06-12)

これまでの児童画コンクールの是非をめぐる論議においては,子どもが入選作品をどのように捉えているのかといった,子どもの視点にたった考察が欠けているのではないかと思われる。そこで本稿では,コンクール入選作品を刺激対象として,これらを子どもと教師がどのように評価するのか,また,コンクールの入選作品であるという事実認識が作品の価値判断にどういった影響を及ぼすのかを調査・考察した。結果,子どもと教師の作品評価の枠組みや,標準的な作品イメージを基にコンクール作品の評価を行っていること,子どもの評価枠組みは教師の評価に影響を受けていることなどを示すことができた。