著者
髙野 大貴 寺岡 睦
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.358-364, 2019-06-15 (Released:2019-06-15)
参考文献数
13

作業に根ざした実践(Occupation-Based Practice 2.0:OBP 2.0)は,クライエントの作業機能障害を評価しつつ,それを取り巻く信念対立に対処していく方法論である.本報告では,地域在住で脳卒中後遺症を有するクライエントに対してOBP 2.0を用いた評価と介入を実施し,訪問作業療法(訪問OT)におけるOBP 2.0の臨床有用性を検討した.その結果,作業機能障害の改善と生活機能の向上が見られ,作業療法士,家族とクライエントの間で生じた信念対立の解明が進んだ.OBP 2.0は,作業機能障害の改善に向けて訪問OTの方針の共有と,状況に応じ様々な方法の使用ができると考えられた.また,クライエントや周囲の人々と協業した訪問OTを促進できた.
著者
廣瀬 卓哉 寺岡 睦 京極 真
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.686-693, 2022-12-15 (Released:2022-12-15)
参考文献数
28

本研究の目的は,作業中心のEBPにおけるコンピテンシーを探索的に検討することである.研究法は構造構成的質的研究法を採用し,データ分析にはSteps for Coding and Theorizationを用いた.対象は4名の作業療法士であった.結果は,コンピテンシーとして〈EBPの知識とスキルの理解〉〈作業中心の問題点の定式化およびアウトカムの採用〉〈作業療法の専門性に基づく多様なエビデンスの統合〉〈作業療法理論の実践的な参照〉が明らかとなった.作業中心のEBPを実践するためには,EBPの基本的な知識とスキルの理解を前提として,作業療法の専門的な実践に多様なエビデンスを統合する重要性が示された.
著者
廣瀬 卓哉 寺岡 睦 京極 真
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.315-324, 2022-06-15 (Released:2022-06-15)
参考文献数
30

本研究の目的は,回復期の脳卒中上肢機能訓練における信念対立の構造を明らかにすることである.構造構成的質的研究を採用し,データ分析にはSteps for Coding and Theorizationを用いた.研究対象者は6名の作業療法士であった.結果は〈治療方針に関わる信念の生成プロセス〉〈上肢機能訓練に関わる信念対立の構造〉〈信念対立解明の手がかり〉の3個のテーマが存在した.信念対立の解明には,自身や他者の治療方針を決定付ける信念の成立根拠を自覚することや,EBPを正確に理解すること,建設的なコミュニケーションをとるなかで対象者の状況に応じた目的を明確化することなどが重要であると考えられた.
著者
後藤 紀史 寺岡 睦
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.691-698, 2021-10-15 (Released:2021-10-15)
参考文献数
25

作業に根ざした実践2.0(Occupation-Based Practice 2.0)は,クライエントの作業機能障害の改善と,クライエントを取り巻く環境で生じる信念対立に対処していく方法である.本報告では,回復期リハビリテーション病棟入院中の脳卒中後遺症を呈したクライエントに対して,OBP 2.0を用いた評価と介入を実施し,回復期リハビリテーション病棟におけるOBP 2.0の臨床有用性を検討した.その結果,関係者間での信念対立を低減しつつ,作業機能障害を改善しクライエントとの共通目的を達成することができた.OBP 2.0は多職種連携を中核概念に据える回復期リハビリテーション病棟において,有用である可能性が示唆された.
著者
草野 佑介 寺岡 睦 京極 真
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.41-50, 2022-02-15 (Released:2022-02-15)
参考文献数
24

後天性脳損傷児の学校への適応プロセスにおける共通性と多様性を解明することを目的に,質的研究法である複線径路等至性アプローチを用いて5名の保護者の経験を分析した.その結果,後天性脳損傷児の就学(復学)プロセスにおける【適応をめぐる葛藤】という新たな概念および3つの分岐点が生成された.学校への適応は通過点としての目標である.適応という概念が葛藤を内包したゆらぎを帯びた状態であることを前提に,将来に待ち受けているライフステージの変化を考慮した,対象児と保護者の地域社会生活への参加における問題解決を長期的に支援することが作業療法士の役割として重要であると考えられた.
著者
京極 真 寺岡 睦 小林 隆司 河村 顕治
出版者
三輪書店
雑誌
作業療法ジャーナル (ISSN:09151354)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.521-524, 2014-06-15

Abstract:本論では,作業療法教育における学部・大学院5年一貫教育プログラムの概要を紹介し,実践報告を通してその利点と課題を明らかにした.今回,わが国の作業療法業界で初めて学部・大学院5年一貫教育プログラムに選抜された学生に対し,大学院教育を行った.その結果,意義として,①作業療法学の発展に貢献し得る人材を早期に育成しやすい,②作業療法養成課程におけるキャリアプランを豊かにし,学生のモチベーションの向上に資する,の2点があると論じた.他方,課題として,①教育体制の充実と工夫が必要である,および②大学院教育期間の短縮により受ける制約の検証が必要である,の2点があると論じた.
著者
野口 卓也 京極 真 寺岡 睦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1097-1106, 2016-12-10

要旨 【目的】本研究では,精神障害者を対象に,Well-Beingを促進する生活活動にどの程度かかわれているかを評価できる尺度(Assessment of Positive Occupation;APO-15)を開発した.【方法】本研究は2段階から構成された.研究1では,作業療法士を対象に構成概念の検討,項目プールの作成,内容妥当性を検討した.研究2では,2つの手順で構成された.手順1は,研究1で作成した項目プールの項目特性を明らかにし,基準を満たさない項目の削除を検討した.手順2は,厳選された項目の信頼性と妥当性を検討した.【結果】研究1の対象者は10名(経験年数8.70±3.22年)であった.分析の結果,ポジティブ心理学のPERMAモデルに準拠し,Well-Beingに寄与する生活活動の5因子50項目が作成された.また,各項目はわかりやすい文章,因子定義を的確に反映するように意図して加筆修正された.研究2の対象者は110名(53.22±11.24歳)であった.分析の結果,APO-15は4因子15項目で尺度構成され,併存的妥当性,項目の妥当性,因子妥当性,構造的妥当性,仮説検証,項目分析などのいずれにおいても良好な尺度特性を示した.【考察】APO-15は全体として高い妥当性と信頼性を備えており,精神科デイケアに通う精神障害者を対象に,Well-Beingを促進する生活活動にかかわれている程度を的確に評価できると考えられた.特に,それが芳しくない対象者で測定精度が高いことから,APO-15は支援が優先的に必要な精神障害者を適切に評価できると考えられた.
著者
田中 啓規 寺岡 睦 佐伯 昌彦
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.436-444, 2016-08-15

要旨:作業に根ざした実践2.0(Occupation-Based Practice 2.0;以下,OBP 2.0)は,クライエントの作業機能障害の種類を評価し改善しつつ,クライエントを取り巻く環境で生じる信念対立に対処していく方法論である.本報告では,子育てに困難さを抱える脳性麻痺のあるクライエントの母親に対して,OBP 2.0を用いた評価と介入を実施し,発達領域の作業療法におけるOBP 2.0の臨床有用可能性を考察した.その結果,子育てに重要な役割を持っていた母親に対する作業機能障害の種類と信念対立への評価と介入が,適応的な子育ての形成に有用であった.脳性麻痺のあるクライエントの母親に対してOBP 2.0を用いた評価と介入を実施し,良好な結果を得たので報告する.
著者
寺岡 睦 京極 真
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.249-258, 2014-06-15

要旨:本論では,作業に根ざした実践(occupation-based practice;以下,OBP)の新理論であるOBP 2.0の理論と実践を示した.従来のOBPは作業機能障害の解決に取り組むが,信念対立によって制約される限界があった.本論で示すOBP 2.0は,作業機能障害の種類と信念対立解明アプローチを理論統合し,ひとつの理論で2種類の問題に対応できるように構築した.また本論では臨床実践におけるOBP 2.0のモデル提示を行った.OBP 2.0は,作業療法の新理論として有益であると考えられた.