著者
渡邊 英美 床井 多恵 高田 耕平 松田 梨江 太田 紗彩 八十田 あかね 窪田 沙代 佐野 千春 栢下 淳 小切間 美保
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.215-221, 2021-12-31 (Released:2022-05-11)
参考文献数
9

【目的】嚥下調整食の提供が行われている病院や高齢者施設などで物性測定装置を設置している施設は少ないため,学会分類2013(食事)では物性値は表記されていない.そのため,嚥下調整食の形態の解釈は特にコード4 において,施設により異なっていることがある.今後,嚥下調整食分類の共通化をさらに進めるためには,物性測定装置がなくてもかたさを評価できる簡易的な方法が必要である.本研究では,棒と電子秤を用いた方法(秤法)および凸型キャップとペットボトルを用いた方法(PB 法)の2種類のかたさの簡易評価方法を検討した.【方法】加工食品および生鮮食品34 種類を試料とし,縦・横20 mm,高さ10 mm に切り分けた.試料温度は20±2℃とした.クリープメータRE2-3305C(山電)のステージに試料を置き,直径5 mm のプランジャーを用いて測定速度1 mm/ 秒で押し込み測定を実施し,歪率0~90% における最大値をかたさとした.秤法では,電子天秤の上にのせた試料を直径5 mm の棒で押し込み,貫通するまでに表示された最大重量を測定値とした.PB 法では,ペットボトルに凸部の直径5 mm のキャップを装着し,キャップを下にしたときの先端の圧力が100 kPa または200 kPa になるように水を入れた.試料の中央にのせたキャップの凸部がボトルの重さで貫通した場合をかたさ100 kPa 未満または200 kPa 未満と判定した.【結果】クリープメータによる測定の結果,試料のかたさは7~564 kPa であった.秤法で得られた値をかたさに対してプロットすると,秤法=かたさの直線に近く,Spearman の相関係数は0.956~0.969 と強い正の相関が認められた.PB 法では,100 kPa 未満,100 kPa 以上200 kPa 未満,200 kPa 以上の3 段階で判定を行うことができた.ただし,7 種類の試料でクリープメータ測定の結果と一致しなかった.【結論】秤法,PB 法ともに,コード4 の嚥下調整食に含まれる食材のかたさの簡易評価方法として,活用可能であることが示唆された.
著者
渡邊 英美 床井 多恵 辻 秀治 志藤 良子 若林 悠 阿部 杏佳 石井 真帆 三原 彩 栢下 淳 小切間 美保
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.130-142, 2020-08-31 (Released:2020-12-31)
参考文献数
10

【目的】日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013(学会分類2013)によって,病院や高齢者施設における嚥下調整食の段階の共通化が進んでいる.しかしながら,食事形態の説明が文言のみで物性値が示されていないため,特にコード3 や4 で人によって解釈が異なることがある.嚥下調整食分類をさらに発展させるためには,不均質な食品の物性測定方法の確立が必要である.本研究では,コード4 に基づいて調理された嚥下調整食のかたさを測定し,その目安を示すことを試みた.【方法】京都市内の介護老人保健施設の27 日間の昼食で提供した軟菜食(学会分類2013 コード外)の主菜および副菜中の199 食材とやわらか食(コード4 相当)の主菜および副菜中の156 食材を試料とした.施設で提供した嚥下調整食は,言語聴覚士,管理栄養士および調理師が学会分類2013 のコードに適応しているか否かを検討して提供可能と判断したものであった.やわらか食の喫食者は主に咀嚼機能が低下した利用者であった.使用食材を嚥下調整食の中から取り出してクリープメータRE2-3305C(山電)の試料台に置き,直径5 mm のプランジャーを用いて測定速度1 mm/s,試料温度20℃で破断測定を実施した.歪率0~90% における最大値をかたさとした.1 食材につき5 サンプルを測定して平均値を算出した.【結果】やわらか食では156食材のうち150食材(96%)でかたさは200 kPa 未満であったのに対して,軟菜食は199食材中81食材(40%)のかたさが200 kPa 以上であった.本研究のかたさ測定方法により,やわらか食と軟菜食のかたさの違いを評価できた.比較のために測定したユニバーサルデザインフードの歯ぐきでつぶせる(コード4 相当)に区分される商品に含まれる食材のうち,にんじんやじゃがいものかたさは200 kPa 未満であったが,しいたけや肉類は200 kPa 以上となった.【結論】この物性測定方法はコード4 に相当する嚥下調整食の新たなかたさ評価方法となる可能性が示唆された.
著者
中西 朋子 小切間 美保 林 芙美 北島 幸枝 大久保 公美 飯田 綾香 鈴木 志保子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.77, no.Supplement, pp.S44-S56, 2019-12-01 (Released:2020-03-25)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

【目的】本研究は,管理栄養士のめざす姿とその実現に向けて求められる資質・能力,さらに具現化するために必要となる組織・環境・教育について,現役管理栄養士の視点から検討することを目的とした。【方法】対象者は公益社団法人日本栄養士会会員の現役管理栄養士203名とし,自記式質問紙法にて調査を行った。解析対象者は管理栄養士のめざす姿に関する設問に回答の得られた200名とした。自由記述で得られた管理栄養士のめざす姿および求められる資質・能力,組織・環境・教育に対する回答は質的に分析を行った。【結果】管理栄養士のめざす姿は62のカテゴリーが示され,①エビデンスに基づいた知識を有して多職種と連携できること,②対象者に寄り添った支援ができること,③専門的な知識を基に栄養指導を行うことの3項目に大別された。その実現のために求められる資質・能力は「コミュニケーションスキル」「専門知識」「情報収集能力・情報リテラシー」「プレゼンテーション力」が多く,そのために必要な組織・環境・教育は「研修や学会に参加しやすい体制の充実」「多職種連携ができる教育体制」「継続的に学ぶ機会の提供」「養成施設における現場で活用できるような教育」が多かった。【結論】本研究から,現役管理栄養士のめざす姿は3つに集約され,その実現に向けた資質・能力が示されるとともに,組織・環境・教育の整備の必要性が検討できた。
著者
掃部 美咲 吉本 優子 小松万里子 八竹 美輝 森 加容子 渡邊 英美 小切間 美保
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.65-76, 2018-08-01 (Released:2018-09-21)
参考文献数
27
被引用文献数
1

【目的】小学生に調理を伴う食育活動が実施されていることから「調理経験が食事観,自尊感情,心身の健康,学習に対する意欲・関心と関連する」という仮説を立て,検証した。【方法】2015年12月~2016年4月,近畿圏の市街地に位置する小学校3校の4~6年生749名を対象に自記式質問紙調査を行った。分析対象者は全ての質問項目に回答した485名とした。質問紙を6分類94項目で構成し,調理経験34項目,食事観8項目,自尊感情22項目,学習意欲12項目,教科に対する関心12項目,心身の健康6項目とした。分類ごとに探索的因子分析を行い,得られた因子を用いて仮説モデルを構築し,共分散構造分析により検証した。【結果】探索的因子分析の結果,全17因子が得られた。調理経験では6因子,食事観では1因子,自尊感情では4因子,学習意欲では2因子,教科に対する関心では3因子,心身の健康では1因子が抽出された。共分散構造分析を行ったところ,調理経験,食事観,自尊感情,教科に対する関心の4変数によるモデルの適合度は良好な値を示した(GFI=0.967,AGFI=0.939,RMSEA=0.045)。調理経験は食事観,自尊感情に対して有意なパス係数0.87,0.68を示し(p<0.001),食事観,自尊感情はいずれも教科に対する関心に対して有意なパス係数0.25,0.57を示した(p<0.001)。【結論】小学生の調理経験は,食事観,自尊感情に直接影響を及ぼし,間接的に教科に対する関心に影響を及ぼすことが示唆された。
著者
小切間 美保 岸田 友里 岡本 梢 長束 美紗希 掃部 美咲 吉本 優子 大月 晃子 小川 麗 八竹 美輝
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.276-285, 2021-10-01 (Released:2021-11-24)
参考文献数
13

【目的】小学生の「調理経験」が「自尊感情」,「食事観」に影響し,これらを介して「教科に対する関心」に影響するという既報の因果関係モデルを用いて再現性を検討した。【方法】調査項目と対象校は既報に同じとし,小学5年生を対象に2017年と2018年の2回調査を行った。481名の結果を用いて,質問項目の分類ごとに探索的因子分析,既報モデルを用いた共分散構造分析を行い再検証した。そして,調査年別2群の多母集団同時分析により再現性の検討を行った。【結果】探索的因子分析の結果,「調理経験」は6因子,「自尊感情」4因子,「食事観」1因子,「教科に対する関心」2因子を得た。共分散構造分析の結果,モデルの適合度はGFI=0.977,AGFI=0.956,RMSEA=0.037と良好であった。「調理経験」は「食事観」と「自尊感情」へ有意なパス係数0.74,0.83(p<0.001)を示し,「自尊感情」は「教科に対する関心」へ有意なパス係数0.75(p<0.001)を示した。多母集団同時分析の結果,因子間のパス係数に両群間で有意差はなく,因果関係モデルに差がないと判断した。【結論】「調理経験」が「自尊感情」に影響し,「教科に対する関心」に影響するというモデルの再現性が認められた。一方,既報と異なり,「調理経験」と「教科に対する関心」については,「食事観」の媒介的影響は低いと考えられた。
著者
小切間 美保 西野 幸典 角田 隆巳 鈴木 裕子 今木 雅英 西村 公雄
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.81-87, 2001-04-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

鉄剤を緑茶で服用しても影響はないとする報告がある。しかし, これらの報告は年齢, 栄養素摂取状況などを十分に考慮した検討ではない。そこでわれわれは, 18-24歳の若年女性のべ50名の対象者を, 無作為にミネラルウォーターのみ服用 (Control 群), 市販緑茶飲料のみ服用 (Tea群), 鉄剤をミネラルウォーターで服用 (Fe群), 鉄剤を市販緑茶飲料で服用 (Fe+Tea群) の4群に分け鉄剤吸収実験を行った。また, 実験前2週間の食事調査も行った。鉄剤にはクエン酸第一鉄ナトリウム製剤 (鉄として100mg相当量) を, 緑茶ば市販の缶入り飲料を用いた。鉄吸収の指標として血清中の鉄 (Fe), 総鉄結合能 (TIBC), 不飽和鉄結合能 (UIBC), フェリチンの測定を行った。実験により, Fe群どFe+Tea群の間には有意な差はなかったが, これら2群は他の2群より血清鉄濃度は有意に上昇し, 血清不飽和鉄結合能は有意に低下した。これらの結果から, 若年女性においてクエン酸第一鉄ナトリウム製剤を市販緑茶飲料で服用しても鉄吸収が阻害されることはないと考えられた。
著者
小切間 美保 西野 幸典 角田 隆巳 鈴木 裕子 今木 雅英 西村 公雄
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.81-87, 2001-04-10
参考文献数
12
被引用文献数
2 1

鉄剤を緑茶で服用しても影響はないとする報告がある。しかし, これらの報告は年齢, 栄養素摂取状況などを十分に考慮した検討ではない。そこでわれわれは, 18-24歳の若年女性のべ50名の対象者を, 無作為にミネラルウォーターのみ服用 (Control 群), 市販緑茶飲料のみ服用 (Tea群), 鉄剤をミネラルウォーターで服用 (Fe群), 鉄剤を市販緑茶飲料で服用 (Fe+Tea群) の4群に分け鉄剤吸収実験を行った。また, 実験前2週間の食事調査も行った。鉄剤にはクエン酸第一鉄ナトリウム製剤 (鉄として100mg相当量) を, 緑茶ば市販の缶入り飲料を用いた。鉄吸収の指標として血清中の鉄 (Fe), 総鉄結合能 (TIBC), 不飽和鉄結合能 (UIBC), フェリチンの測定を行った。実験により, Fe群どFe+Tea群の間には有意な差はなかったが, これら2群は他の2群より血清鉄濃度は有意に上昇し, 血清不飽和鉄結合能は有意に低下した。これらの結果から, 若年女性においてクエン酸第一鉄ナトリウム製剤を市販緑茶飲料で服用しても鉄吸収が阻害されることはないと考えられた。
著者
小切間 美保 中西 朋子 林 芙美 大久保 公美 北島 幸枝 掃部 美咲 鈴木 志保子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.77, no.Supplement, pp.S70-S77, 2019-12-01 (Released:2020-03-25)
参考文献数
10

【目的】多様な職域に所属している管理栄養士が,現在の仕事で必要と考える資質・能力について調査し,職域別,年代別の分析をもとに,求められる資質・能力について検討した。【方法】2017年7月に公益社団法人日本栄養士会会員で,年代5区分における8分野・領域の管理栄養士取得者203名を対象とした。調査は,現在の仕事で求められる資質・能力(19項目)の重要度について5段階で評価を依頼し,それぞれを点数化した。因子分析を行い,得られた因子の下位尺度得点を用いて,医療,行政,食育・教育,高齢者福祉,給食,企業,フリーランスの7職域別に比較した。また,年代別の検討も行った。【結果】因子分析により4因子が得られ,各因子の下位尺度得点は「職業意識」4.8点,「課題対応力」4.7点,「組織運営力」4.0点,「研究力」3.3点の順であった。職域別の特徴では,「課題対応力」が食育・教育に比べ企業,行政,給食で高かった。また,フリーランスは最も低い値であった。給食では,「組織運営力」の重要性が高かった。年代別の特徴では,50,60歳代で「課題対応力」「研究力」が他の年代より高く,「組織運営力」は,40歳代以下より50歳代で高い値を示した。【結論】管理栄養士の職域別,年代別に,必要な資質・能力の重要性が示され,管理栄養士に必要な資質・能力は,職域や年代によって特徴があることが示唆された。