著者
小口 悠紀子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.174, pp.56-70, 2019-12-25 (Released:2021-12-26)
参考文献数
17

本稿は,初級日本語学習者を対象に,構造シラバスの中で教師がTBLTの理念を取り入れることの可能性とタスクの効果を検討した実践報告である。本稿では全9回 (27時間) に及ぶTBLT実践を行い,(1) 学習者はTBLTアプローチをどう受け止めていたか,(2) 学習者はタスクを楽しみ,有効性を実感していたか,(3) 学習者のタスクに対する反応は,教師が想定するものであったか,という点について検証した。その結果,学習者はTBLTによる日本語授業に概ね肯定的な反応を示したものの,学習者の持つビリーフスやコースの評価方法がTBLTに沿わない場合,不安や戸惑いを感じることが分かった。また,マイクロ評価の結果,タスクが持つ真正性の高さが学習者の動機付けを高め,教師の狙い通り能動的な授業参加や内容中心のコミュニケーションを促す一方で,言語形式への焦点化は,教師に頼らず学習者間で適宜行われていることが明らかになった。
著者
小口 悠紀子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.166, pp.77-92, 2017 (Released:2019-04-26)
参考文献数
33

本研究は,上級学習者の談話における「は」と「が」の習得について,運用実態の調査と知識を測る課題という相互補完的なアプローチにより,日本語指導につながる新たな知見を示すものである。具体的には,談話の先行文脈に対象が未出か既出かによる「は」と「が」の使い分けについて,発話産出課題と受容性判断課題を用いて調査した。 その結果,学習者は様々なストラテジーを使いつつ標識の選択をしており,運用面では母語話者に近い使い分けが見られる部分もあるが,未出,既出という言語知識に従って標識を使い分ける段階には至っていないことが分かった。このことから日本語教育において,「は」と「が」の使い分けについて指導を行う際には,ある程度の長さがある談話教材を用いて,文脈を重視した活動を行うとともに,自動化を促すことを意識していくことが効果的であると考える。
著者
中俣 尚己 山内 博之 橋本 直幸 建石 始 小口 悠紀子 小西 円 堀内 仁 森 篤嗣 合田 陽子 加藤 恵梨 澤田 浩子 清水 由貴子 山本 和英
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

2018年7月7日に京都教育大学で第1回ミーティングを行い、作業方針を固めた。以下、「新規コーパス構築」「既存コーパス分析」のそれぞれの作業について順番に実績を述べる。新規コーパス構築では、120ペア、240名の調査協力者を集めることにした。関西60ペア、関東60ペアで、さらに性別でも「男男」「男女」「女女」でバランスをとる。その上で、話題選定班の協力の元、『実践日本語教育スタンダード』を元に15の話題を選定し、各5分ずつの談話を録音することにした。調査に先立ち、協力者への説明や、同意の取り方、さらには指示の出し方など細かいプロトコルを定め、共有した。2018年度は120ペアのうち55ペアの録音を完了し、ほぼ半分の録音が完了した。2019年10月に全作業を完了する予定である。既存コーパス分析では、名大会話コーパスの全てのファイルを目で読み、『実践日本語教育スタンダード』をベースに話題の分割を行うことにした。プレ調査の結果、各ファイルにつき3名の作業者を当てることが妥当と判断した。分割のための書式を定め、結果を機械分析班が作成したプログラムで加工し、その後対面ですり合わせ作業を行う。全129ファイルを4分割して作業を進めることにした。現在、分割の作業進捗度は75%程度であり、全体の25%については2019年3月にすり合わせの作業を実施した。なお、代表者は全ファイルの作業をすでに終えている。作業の完了は2019年9月の見込みである。