著者
小宮根 真弓
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.11, pp.2151-2156, 2009-10-20 (Released:2014-11-28)

表皮細胞の角化はすなわち表皮細胞の分化である.表皮は角化することにより,適切なバリアー機能を発揮し,外界の刺激から人体を守っている.表皮細胞の分化にあたり,多数の分子が順序良く精密に制御されながら発現している.これらの分子に遺伝的に異常が生じることにより,それぞれ特徴的な臨床症状を発現する遺伝性皮膚疾患が発症する.表皮の角化に影響を与えるもう一つの因子として炎症がある.炎症により発現する炎症性サイトカインによって,表皮の角化・分化に関与する遺伝子の発現が影響を受け,その結果角化の異常が生じる.表皮に生じた異常により,表皮のバリアー機能の破綻をきたしたり,樹状細胞やリンパ球に影響を与えることにより,全身の免疫機能にも影響することが最近の報告で明らかになっている.
著者
大槻 マミ太郎 照井 正 小澤 明 森田 明理 佐野 栄紀 髙橋 英俊 小宮根 真弓 江藤 隆史 鳥居 秀嗣 朝比奈 昭彦 根本 治 中川 秀己
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.121, no.8, pp.1561-1572, 2011-07-20 (Released:2014-11-13)

Clinical use of TNFα (tumor necrosis factor α) inhibitors, adalimumab and infliximab, for psoriasis began in January 2010 when an additional indication for this disease was approved. In January 2011, an interleukin-12/23 p40 (IL-12/23 p40) inhibitor, ustekinumab, was newly approved as the third biologic agent with an indication for psoriasis. All of these biologic agents are expected to exhibit excellent efficacy against not only psoriasis but also psoriatic arthritis, and to contribute to the improvement of quality of life (QOL) of psoriatic patients. At the same time, however, they require safety measures to prevent adverse drug reactions such as serious infections. We therefore decided to prepare this Guideline/Safety Manual for the Use of Biologic Agents in Psoriasis (The 2011 Version) by revising that for the use of TNFα Inhibitors prepared by the Biologics Review Committee of the Japanese Dermatological Association in February 2010. In this new unified version for all three biologic agents including ustekinumab, requirements for clinical facilities for the use of biologic agents, contents of safety measures against reactivation of tuberculosis and hepatitis B, and recommendable combination therapies with biologic agents, have been renewed and added. This guideline/safety manual has been prepared to assist dermatology specialists experienced in clinical practice of psoriasis to use biologic agents safely and properly.
著者
小宮根 真弓 小宮根 真弓
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

マクロライド系抗生物質は、近年、びまん性汎細気管支炎に対する有効性がクローズアップされ、その有用性については既に臨床、基礎研究において実証されている。我々は、今回の研究で、マクロライド剤が,尋常性乾癬に対しても有効であることを、臨床及び基礎の両面より明らかにした。乾癬外来通院患者20名に対し、同意を得た上てマクロライド内服を行い、PASI、掻痒、軟膏使用量に関して評価を行い、マクロライド内服が尋常性乾癬に対し有効であることを確認した。この結果は、98年度の日本乾癖学会、99年度のマクロライド新作用研究会にて発表した。また、マクロライド剤が、培養表皮細胞のGroα、GMCSF産生に対し抑制的に働くことをin vivoで確認し、99年度の日本乾癬学会にて発表した。以上は、現在Journal Dermatologyに投稿中である。さらに、マクロライド剤の表皮細胞に対するサイトカイン抑制作用機序に関して、AP-1、NFkB抑制に関する知見を得た。また、マクロライドのサイトカイン産生抑制がカルシウム依存性であることを確認し、現在発表準備中である。以上の結果は、現在根治的療法の確立されていない尋常性乾癬において、新しい治療法の確立につながる結果であり、館床上非常に有意義である。と同時に、マクロライドという抗生物質が、抗菌作用以外に抗炎症作用を有するという知見をさらに裏付けるものであり、その作用機序を含めた解析において、新たな知見を加えることとなると考えられる。
著者
小宮根 真弓
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

ST2LはIL-33受容体であり、可溶性ST2はIL-33とST2Lの相互作用およびそのシグナル伝達を阻害することが報告されている。われわれは、野生型マウスおよび可溶性ST2トランスジェニックマウスを用いて、FITCあるいはオキサゾロンによる接触過敏反応について検討し、組織学的にも検討したが、野生型マウスと可溶性ST2トランスジェニックマウスの間で、統計学的有意差は認めなかった。また、培養表皮ケラチノサイトを用いて、IL-33の産生メカニズムに関する検討を行った。その結果、UVB、IL-17、IFNγによってIL-33産生が誘導され、その誘導はEGF受容体に依存していることが明らかとなった。
著者
菊池 かな子 小宮根 真弓 門野 岳史
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

皮膚の色素増強を起こす病態として、全身性強皮症がある。申請者は以前この病態で血清中のbasic fibroblast growth factor(bFGF)が増強していることを見いだした。bFGFはメラノサイトの増殖に促進的に作用するので、全身性強皮症における皮膚色素増強にはが関与している可能性もある。これに関連し、申請者は最近悪性腫瘍による強皮症類似病態において、全身性強皮症よりも高い血清中濃度について報告した。病変皮膚、原発の悪性腫瘍の一部でもbFGFの高発現が見いだされた。このbFGFは多くの皮膚疾患について関与が考えられる。申請者は皮膚型、および全身型の多発性動脈炎においてやはり血清bFGF濃度の上昇を報告した。やはり病変部の動脈周囲ではbFGFの発現も認められた。同様の手法を用いてより大型の血管の病変でも、bFGFやその他のサイトカインの発現を検討し、一部は発表済みである。色素脱失を来す尋常性白斑に対し、我々はnarrowband UVB療法を行っており、前後で皮膚生検を行いメラノサイト、表皮角化細胞におけるbFGFやその他のサイトカインの発現の変化を観察している。またメラノサイト特有の蛋白の発現も同時に観察中である。5S-cistenyl-dopa(5-S-CD)はメラノーマの血清マーカーとして知られている。我々は現在尋常性白斑、尋常性乾癬といったnarrowband UVB療法が有効である疾患で経時的に5-S-CDを計測し、発表した。またこの療法中に血清尿酸値の上昇も認められた。