著者
大西 真理子 庄司 一郎 小川 宣子 中上 寧 長岡 俊治 下村 道子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.305-313, 2004-04-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
20
被引用文献数
4

炊飯過程において調味料の添加が, 飯粒の水の吸水・膨潤にどのような影響を及ぼしているのか, 米の品種に違いがみられるのかを食塩を用いて検討し, 以下の結果が得られた.(1) 米の粗タンパク質およびみかけのアミロース含量はコシヒカリよりも初霜の方が多かった.(2) コシヒカリと初霜の飯の物性をテクスチュロメーターによって測定した.低圧縮測定した付着性については両品種とも食塩飯粒は普通飯粒よりも有意に減少していた.高圧縮測定した中心部の硬さ, 付着性, 凝集性のいずれも, コシヒカリについては, 食塩添加による影響はみられなかったが, 初霜については, 特に硬さについては有意に増大し (p<0.001, n=20), 付着性は減少傾向がみられ, 凝集性は有意な増加を示した.(3) 飯粒横断面の組織は, コシヒカリでは, 食塩飯粒と普通飯粒は同様の形態を示し, 胚乳細胞は表層部, 中心部ともに膨潤していた.初霜の食塩飯粒では, 飯粒の表層部は膨潤しているが, 中心部の胚乳細胞は小さく, 膨潤が抑制されているのが観察された.組織構造への食塩添加の影響は, 品種問に違いがみられた.(4) コシヒカリと初霜の白米 (掲精度90%) における蒸留水の吸水率は, 両品種間に差はなかったが, 食塩水の吸水率は, 蒸留水のそれよりも有意 (p<0.01) に低かった.また, 白米中心部 (搗精度50%) では, 蒸留水における吸水率は, 両品種間に差がみられ, 初霜の蒸留水の吸水率はコシヒカリの蒸留水のそれよりも低く, 食塩水においても有意に低かった.(5) 初霜の米粒を蒸留水および食塩水に浸漬したときの粗タンパク質の溶出は, 両浸漬水でみられ, 蒸留水におけるよりも食塩水の方が溶出率は高かった.そして, 溶出タンパク質のうちグロブリン, アルブミンおよびグルテリンが多いことをSDS-PAGE分析により確認することができた.
著者
舘 和彦 小川 宣子 下山田 真 渡邊 乾二 加藤 宏治
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.456-462, 2004-09-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
13
被引用文献数
1 3

乾熱卵白を生中華麺に添加した時の影響について力学物性値の測定と官能試験の結果より評価した.また走査型電子顕微鏡を用いて中華麺の表面および断面構造を解析することにより,以下の結論を得た.(1) 中華麺に乾熱卵白を添加することで茹で伸びを抑制し,破断応力,瞬間弾性率は上昇し,硬さおよび弾力性に改善が見られた.さらに付着性の低下より舌触りが良くなること,引っ張り時の歪率の上昇から伸長が良く切れにくくなっていることが推測された.(2) 官能試験の結果より,乾熱卵白を添加した中華麺は噛みごたえ,弾力性,つるみ感,伸長度において無添加麺や乾燥卵白を添加した麺よりも良い評価となり,且つ高い嗜好性を示した.(3) 走査型電子顕微鏡による観察結果より,乾熱卵白を添加した麺の表面構造は,無添加麺や乾燥卵白を添加した麺と比較して隙間が狭く,滑らかであった.また乾熱卵白を添加した麺の断面構造も,蛋白質によって構成される網目構造が細かく,密であった.
著者
小林 由実 和田 真 山田 和 加藤 邦人 上田 善博 小川 宣子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成24年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.164, 2012 (Released:2012-09-24)

【目的】天ぷらの衣は揚げる工程での具材やおいしさにも影響を及ぼす。すなわち天ぷらのおいしさは揚げた後の具材と衣の両面から評価を行うが、本研究では揚げ温度が衣の品質に及ぼす影響について衣の水分や物性だけでなく、異なる揚げ温度において水分蒸発により発生する気泡、油面の波を経時的に測定し、画像解析を行った。これにより油の中で起こる現象や天ぷらの状態を推定し、天ぷらの衣がおいしく出来上がる要因を明らかにすることを目的とした。【方法】天ぷらはさつまいも(直径46±1mm、厚さ8mmの輪切り)に衣(薄力粉:卵:蒸留水=30:12.5:37.5)をつけ、160℃、180℃、200℃で4分間揚げ調製した。天ぷらの衣をクリープメータによる破断応力測定から破断応力・もろさ、破断応力波形を微分波形(破断応力の差/ひずみ率の差)に変換し、得られたマイナスピークの数から衣の気孔数、値から気孔の大きさを推定した。また、衣をつけた具材の水分量を揚げ工程で経時的に測定するとともに気泡の発生による油の表面の揺らぎを画像処理によりコントラストとして捉え、水分蒸発の過程を推定した。【結果】180℃や200℃で料理された衣の破断応力は160℃に比べ値は大きく、マイナスピークの数は多かった。また、マイナスピークの値は油の温度が上がるにつれて大きくなった。これは、180℃・200℃で揚げた衣はグルテンが凝固し、そこに大きな気孔が多く存在していることが推定できる。この原因として180℃や200℃での揚げた場合の水分蒸発量は20秒までに顕著に見られ、それ以降は低下して行ったが、160℃の場合は細かな気泡が継続し水分蒸発が不十分であった。これより、具材を投入後、20秒までの水分蒸発量が衣の出来上がりに影響を及ぼしていることが考えられた。
著者
小川 宣子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.243-251, 2017 (Released:2017-06-20)
参考文献数
16
著者
久塚 智明 小川 宣子 渡邊 乾二
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.312-316, 1999-11-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
6

Samples of savory cup custard obtained from the food service industry were analyzed for the concentration of egg solution by the amount of protein, for the ratio of egg yolk solution by the total amount of phophorous, and for the quantity of dried bonito by the amount of histidine.The concentration of egg solution in the samples of savory cup custard prepared by the food service industry varied from 21.9% to 33.2%. The ratio of egg yolk to egg solution and the bonito concentration in the samples from special shops were larger than in those from general shops.The sensory evaluation result showed that the savory cup custard with an egg solution concentration of 25%, a breaking strength of 3734±267 Pa and a storage modulus of 135±18 Pa was most favored by the panelists.The ratio of egg yolk to egg solution corresponded to the breaking strength. It is clear that both the 30∼40% and 65∼80% ratio of egg yolk to whole egg contributed to the firmness of a good savory cup custard. It is suggested that the addition of egg yolk to whole egg is the best method for preparing savory cup custard. The samples prepared at the ratio of 65∼80% egg yolk to whole egg did not have a smooth texture and strong egg yolk flavor which is not a desirable feature in a good-quality savory cup custard.
著者
野坂 千秋 星川 恵里 久保田 浩二 小川 宣子 渡邊 乾二
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.2-9, 2001-02-20
参考文献数
10
被引用文献数
1

専門店シェフちょうせいひん[VP]と一般市販品[VM]のビシソワーズの食感の差異を,物性面を主体とする品質評価から把握し,ジャガイモの裏ごし条件の特に裏ごし時の温度と裏ごし器のメッシュサイズに着目し,ビシソワーズ物性との関連を明らかにした。更に,好ましいビシソワーズの調整操作の条件を定めることを目的に検討を行った。1.市販品の物性評価 VPは,VMに比べ,見かけの粘度が低く,そこに含まれるジャガイモ細胞の粒子径が大きく,ジャガイモ細胞の粒子積分率が高いスープ物性を示した。ジャガイモ細胞の組織観察の結果,デンプン粒が細胞内に存在し,一方,VMでは細胞外へ溶出して糊化した状態にあった。このように,VPはVMに比べて調理工程において細胞が受ける損傷が少ない為に,粘りが弱く,いもの流感のあるスープとなっていることが分かった。2.ジャガイモ裏ごし調理条件が及ぼすビシソワーズ物性の影響 裏ごし時の調製条件として,裏ごし器のメッシュサイズをジャガイモの細胞経を考慮した250μmとし,かつ90℃で行なうことにより,細胞の損傷が少なく,粒子体積分率が高く,かつ見かけのの粘度の低い,品質の良いビシソワーズが調製できた。これらの条件は,シェフの経験的調理条件と一致した。一方,ミキサーによる調製では,破砕による糊化デンプンの細胞外への流出と破砕された細胞の存在から,好ましい調製法には至らなかった。3.裏ごしミキサー調製法の品質効果 裏ごし製法品(条件 : 裏ごし温度90℃,裏ごし器メッシュサイズ250μm)と,ミキサー製法品(条件 : 90℃,9,000rpm×30sec.)のビシソワーズを官能評価した結果,前者は後者に比べて弱りが弱く,いもの粒間を有し,のどごしがよく,食感全体が好ましいという条件で有意に好まれた。以上のことより,ビシソワーズの調理操作条件として,裏ごし製法の適用と,その際の処理条件として温度90℃,裏ごし器メッシュサイズ250μmが好ましいことを明らかにした。
著者
小川 宣子 田名部 尚子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.140-146, 1989-06-20
被引用文献数
1

卵を3℃と25℃に35日間保存し、1.5倍の希釈卵白を加熱して、その加熱卵白について弾性率、粘性率、応力緩和時間を調べた。3℃貯蔵の場合の弾力率(E_<M1>)は、11日目までは減少し、その後は一定であり、E_<M2>、E_<M3>は3℃貯蔵と25℃貯蔵のいずれの場合も4日目で急激に減少した。粘性率は、3℃貯蔵の方が25℃貯蔵の方に比べて高く、いずれの貯蔵温度の場合も、保存するにつれてしだいに小さくなり、η_<M3>は、4日目に急激に減少した。緩和時間は、貯蔵日数による影響はみられなかった。卵白ゲルの硬さ、弾性力の変化は、緩和曲線からの弾力率や粘性率の変化の時期よりやや遅れて、3℃に貯蔵した卵は21日目から急激に減少し、25℃に貯蔵した卵の場合は、14日目から変化がおこった。
著者
小川 宣子 小林 由実 山中 なつみ
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.72, no.11, pp.739-749, 2021 (Released:2021-11-27)
参考文献数
13

ガス加熱と誘導加熱 (IH) の違いが炒め加熱と焼き加熱調理の仕上がりに及ぼす影響について, 炒飯, ほうれん草炒め, 厚焼き卵の味, 物性, 組織構造から調べた. フライパンで水を加熱した時の昇温速度が同程度になるように火加減を設定した. 強火で予熱したフライパンと卵焼き器の鍋底と側面温度は, ガス加熱の方がIHの場合に比べて均一かつ高温になった. 炒飯とほうれん草炒めは強火で各々同じ時間炒め, 厚焼き卵は中火で卵の温度が同じになるよう作製した. ガスコンロで炒めた炒飯はIHヒーターに比べ, 食塩相当量が高く, 付着性が低かった. 炒飯の飯を走査電子顕微鏡で観察した結果, ガス加熱の場合では, IHの場合には見られない表面部分の崩れが観察された. ガスコンロで炒めたほうれん草はIHヒーターに比べ, 組織構造が保持されていた. 厚焼き卵の加熱時間はガス加熱の方がIHに比べて短かった. ガスで加熱した厚焼き卵の表面構造には太い均一な網目構造が観察され, 表面の凝集性が高いことの要因と考えられた. 本研究における加熱条件では, ガス加熱の方がIHに比べて食材からの水分蒸発やたんぱく質の熱変性が促進され, 炒め加熱ならびに焼き加熱調理の仕上がりに影響したと考えられる.
著者
野坂 千秋 星川 恵里 久保田 浩二 小川 宣子 渡邊 乾二
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.2-9, 2001-02-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
10
被引用文献数
2

The texture and taste of Vichyssoise soup cooked by a professional chef (VP) and that produced by a food manufacturer (VM) were compared by examming their physical properties in order to investigate the optimum cooking conditions for making desirable Vichyssoise soup.In comparison with VM, VP was lower in apparent viscosity, larger in potato-cell size, and higher in the ratio of particle volume. Micro-structural observations showed that the starch particles in VP were retained in the potato cells, whereas those in VM had leaked from the cells due to severe cell damage.It was found that soup like the VP sample could be obtained by a straining the potatoes at 90°C through a sieve of 250μmin mesh size-which minimized damage to the potato cells by and made a product lower in viscosity and higher in particle volume than the VM sample.A sensory test was carried out on two products made by different processing techniques. The mixing method was found to damage the cells more and spoil the texture of the potatoes. The straining method with a sieve, however, gave favorable results, producing a soup that was less viscous, and that retained the potato particles, while still being smooth in the mouth.
著者
小川 宣子 藤林 真美 七山(田中) 知佳 西脇 雅人
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.455-465, 2017-12-01 (Released:2017-11-28)
参考文献数
49

The present study aimed to examine the effects of community-based intervention on cognitive function and hand finger dexterity in older adults at different levels of time to go out. Forty men and women (age, 73 ± 1 years) participated in supervised group activity and seated exercise for 60 min per session, once each week during an 8-week intervention. The participants wore an activity monitor for 1 week to determine baseline values and for the 8 weeks of intervention. Mini-mental state examination (MMSE) and pegboard test, which is related to cognitive function, were assessed before and after the intervention. Based on the total time to go out at baseline, the participants were assigned to Control group (> 60 min/day, n = 18) or Short group (≦ 60 min /day, n = 22), and then analyzed. After the 8 weeks of intervention, the Control and Short groups improved physical fitness parameters such as handgrip strength. Although MMSE in the both groups did not reach statistically significant level, these values tended to increase slightly from the baseline. Interestingly, two-way repeated-measures analysis of variance indicated significant interaction of pegboard test, and the score significantly increased only in the Short group. Total physical activity and moderate-vigorous physical activity in the both groups did not change significantly between the baseline and intervention periods. Therefore, these results suggest that the trainability of pegboard test, which is an index of hand finger dexterity and is related to cognitive function, would differ depending on the time to go out at baseline in older adults.
著者
小林 由実 小川 進 田中 喜典 小川 宣子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.63, pp.183, 2011

<B>目的</B> 炊飯に用いる水のイオンの種類やその含量などの水質が飯の品質に影響を及ぼすことを報告している<SUP>1)</SUP>。そこで本研究では、浄水器により調整した水が飯の品質に及ぼす影響についてカルシウムイオンを中心に検討を行った。<BR><B>方法</B> 炊飯には、原水を浄水カートリッジで浄化処理した水(以下:浄水)、浄水をイオン交換樹脂により処理した水(以下:イオン交換水)、そして硬度が浄水に比べ100mg/L高くなるように塩化カルシウムを添加した水(以下:調整水)の3種類を用い、カルシウムイオン濃度は原水が15.7mg/L、用いた3種類の水はそれぞれ15.7mg/L, 2.5mg/L,51.5mg/Lであった。飯の品質はクリ―プメータ測定及び官能検査から硬さ、電子水分計から水分、でんぷんの糊化度はグルコアミラーゼ法と走査電子顕微鏡による組織構造から調べた。また、最初の米の容積に対する炊飯後の容積の割合(膨張率)から飯の「ふっくらさ」を検討した。<BR><B>結果</B> イオン交換水で炊飯することで浄水に比べ、飯の膨張率は高く、水分量が多く、軟らかな飯となり、糊化度の値も高く、網目構造も観察でき、優れた品質の飯となることが示された。一方、調整水で炊飯した飯は浄水に比べ、膨張は悪く、飯の水分量は少なく、でんぷんの糊化度も低かった。これよりカルシウムイオン濃度は飯の品質に影響を及ぼし、カルシウムの除去は飯の品質を上げる効果があることが明らかとなった。<BR>[文献]1)小川宣子、稲垣明子、山中なつみ、下里道子:炊飯溶液中のカルシウムとナトリウムが飯の性状に及ぼす影響(第1報)、日本家政学会誌、57(10)、pp669-675(2006)
著者
野田 奈津実 小川 宣子 久慈 るみ子 坂田 隆 山崎 泰央 大竹 美登利 佐々井 啓 中島 明子 宮野 道雄 浜島 京子 加藤 浩文 萬羽 郁子 吉井 美奈子 生田 英輔
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 68回大会(2016)
巻号頁・発行日
pp.288, 2016 (Released:2016-08-04)

目的 東日本大震災では、多くの被災者が仮設住宅への転居を余儀なくされた。本研究は、仮設住宅への転居が住民の食生活に与えた影響を明らかにすることを目的とした。方法 震災後、石巻市市街地の仮設住宅に入居した60代女性(食生活改善推進員、震災前は同市雄勝地区)を対象に、震災前後の食生活(料理の種類、保存食、食事形態)について聞き取り調査を行う(2015年3、9、12月)とともに料理の画像記録を依頼した。結果 震災前に比べ、仮設住宅での料理の種類の減少や食事形態に変化が見られた。その原因として、1.地元で採(獲)れた大豆や米から味噌、柿やハモの乾物等の保存食を作り、これを利用して柿なますや雑煮等の郷土料理が作られていたが、食材の入手・保存場所の確保が困難になり、保存食を作ることが少なくなった。2.台所が狭くなり、保管・使用にスペースが必要な蒸し器やすり鉢を使う料理が減った。3.食卓が狭くなり、食器の種類や数も減ったため料理の盛り付けは銘々盛りから大皿盛りへと変化した。日常的に行われてきた食生活が震災を機に失われつつある。石巻の気候・風土を反映する多くの食材を活用した料理を記録として残し、継承していくことが求められている。本研究はJSHE生活研究プロジェクトの活動として実施し、科学研究費補助金(課題番号:24300243、25350040)、平成26年度(公財)浦上食品・食文化振興財団の助成を受けた。
著者
松田 千登勢 山地 佳代 佐藤 淑子 小川 宣子 田中 真佐恵 吉井 輝子
雑誌
摂南大学看護学研究 = Setsunan University Nursing Research (ISSN:2187624X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.1-9, 2020-03-31

特別養護老人ホーム(以下、特養)の看護師を対象とした感染管理教育プログラムを実施し、検討することを目的とした。教育プログラムの内容は1回の講義と4回のグループワーク研修(以下、GW)で構成した。講義を受講した37名の看護師のうち5名がGWに参加し、自施設における感染管理の課題と改善に向けた取り組みを考案し、実践した。参加者へのアンケートとGWを通して抽出した感染管理の課題とその取り組みの記録から、教育プログラムを検討した。その結果、講義に対してほとんどの参加者が日程や場所の設定はよいと答え、内容はわかりやすいと答えていた。GW研修参加者が挙げた施設の感染管理の課題は、「感染対策委員会が単独でない」、「スタッフの手洗いなどの徹底ができていない」、「排泄援助における感染管理が十分でない」などであった。改善に向けた取り組みには、手洗いを確認するための機器を借りてチェックするなど、他施設の取り組みを参考にした具体的な対応がみられた。教育プログラムでは、GWを通して参加者が自施設の状況を語る中で新たな課題を見出し、取り組みに対して他の参加者や感染看護の研究者から根拠に基づくアドバイスをもらうことで対応の方向性を見出すことができたと考える。
著者
小川 宣子 山中 なつみ 長屋 郁子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成16年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.4, 2004 (Released:2004-09-09)

(目的)洗米・浸漬・加熱といった炊飯過程におけるマグネシウムイオンの存在が、飯の性状に及ぼす影響について明らかにすることを目的とした。(方法)米は平成14年度岐阜県産初霜(搗精度90%)を使用し、0.0006Nの塩化マグネシウム溶液(以下、Mg溶液)で炊飯した。米と同重量のMg溶液(25℃)で3回洗米し、米の重量の1.4倍量となるようにMg溶液を加えて25℃で1時間浸漬した後、間接式電気炊飯釜にて25分間加熱し10分間蒸らした飯(Mg飯)を試料とした。蒸留水を用い同様の条件で炊飯した飯(蒸留水飯)を対照とした。飯の性状について、加熱吸水率の測定、一粒法による硬さ,付着性,瞬間弾性率の物性測定、走査電子顕微鏡による表面構造の観察を行った。凍結切片をKMG-20-AM染色してマグネシウムの分布を調べ、さらに三点識別嗜好法による官能検査を行った。また、炊飯過程におけるマグネシウムイオンの存在が、飯の不溶性ペクチン量,水溶性ペクチン量に及ぼす影響を硫酸カルバゾール法により測定した。(結果)Mg飯の加熱吸水率は2.30倍で蒸留水飯の2.34倍に比べて有意(p<0.01)に低かった。Mg飯の硬さ1.48×105Pa、瞬間弾性率1.67×105Paは蒸留水飯に比べて有意(p<0.01)に高く、硬い飯であることが示され、官能検査の結果、Mg飯の硬さは好まれなかった。Mg飯の表面における網目構造の空洞が蒸留水飯に比べて小さかったことから、Mg飯が硬くなったのは吸水が不十分であったことが要因として推定できた。これはMg飯は蒸留水飯に比べて水溶性ペクチン量が少なかったことから、飯の表面部分に存在するマグネシウムによって、水溶性ペクチンが不溶性ペクチンとなり吸水を抑制した可能性が考えられた。
著者
田名部 尚子 小川 宣子
出版者
Japan Poultry Science Association
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.190-199, 1979-07-25 (Released:2008-11-12)
参考文献数
7
被引用文献数
1

産卵約24時間後の洗卵処理とその直後の植物油, 鉱物油およびショ糖脂肪酸エステル乳濁液による卵殼塗布処理の鶏卵の保存中の内部卵質におよぼす影響を調べた。卵は25°Cの恒温器内に, 1, 3, 5, 7, 9, 11および13週保存し, ハウユニット, 卵黄高, 卵重減少, 卵白のpH, 卵黄の崩れた卵の数, 腐敗卵の数を測定し, これらの測定値の各処理による経時的変化を比較した。0, 1, 9, 11週保存卵については, ポリアクリルアミドゲルディスク電気泳動によって卵白蛋白質の変化を調べた。洗卵処理の有無の間におけるハウユニット, 卵黄高および卵重減少の経時的変化のパターンの差は, ショ糖脂肪酸エステル塗布区の卵重減少の経時的変化のパターンを除き, 他のいずれの塗布処理区でも差が認められなかった。13週の保存期間において, 植物油または鉱物油を卵殼に塗布したものは, ショ糖脂肪酸エステル乳濁液塗布したものにくらべて内部卵質がかなりよかった。無塗布のものの内部卵質の低下は, 塗布処理したものに比べて速やかであった。
著者
小林 由実 内方 文朗 上田 善博 加藤 邦人 小川 宣子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.207, 2014 (Released:2014-07-10)

目的 おいしい天ぷらとは素材のうまみが保持され、さくさくとした衣に覆われているものと評価できる。天ぷらに使用する食材は、澱粉性食品のさつまいも、タンパク質食品の魚介類、野菜類など多種にわたるため、それぞれの素材のうまみが生かすための揚げ方について温度や時間などから検討されている。一方、家庭では、温度計に頼らず、視覚的に判断を行っている。そこで本研究では、160℃,180℃,200℃と異なる温度で食材を揚げ、その時の油の表面の様子を定量化するとともに、揚げ終わった時の衣の評価を水分含量、物性、画像処理から測定し、調理中の様子から天ぷらの出来上がりを推定することとした。 方法 1)試料:さつまいもを用い、衣(薄力粉:卵水=30:50g)をつけ、油(160℃,180℃,200℃)で4分(加熱2分後裏返す)加熱した。2)測定項目①調理中の変化:油面の様子を高速度カメラで撮影し、調理中に発生した気泡や波によるゆらぎをcontrastの時系列変化から調べた。②調理後の変化:衣の水分含量、物性を破断解析、凹凸の程度を画像処理によるcontrastから評価した。 結果 ①調理中の変化:160℃で調理した場合は油面のゆらぎは少なく、180℃は投入直後と20秒後で大きくゆらぎ、200℃は投入直後から非常に大きかった。②調理後の変化:油の温度が高くなるにつれ水分含量は少なく、破断応力は大きく、衣の凹凸は160℃は少なく平坦であり、180℃は全体に存在し、200℃はむらがあった。調理中の油面の様子が衣の形状に影響を与えると考える。
著者
小林 由実 上田 善博 加藤 邦人 石田 康行 河村 益徳 小川 宣子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 70回大会
巻号頁・発行日
pp.160, 2018 (Released:2018-07-28)

目的 天ぷらのおいしさは衣と素材から評価される。衣は水分蒸発により得られるサクサク感、素材は天ぷら中の水分により蒸されて得られる食感や旨みから評価される。このことから天ぷらのおいしさは揚げ過程の水分の動きが重要になると考える。また、これまでおいしい天ぷらを揚げるための適切な状態(様子)は明確にされていない。そこで、油面の様子と水分の動きの関係を調べ、それが出来上がりに及ぼす影響を明らかにし「揚げ過程の油面の様子からおいしさを評価する方法」を検討した。方法 1)試料:さつまいもに衣(薄力粉:卵水=30:50g)をつけ、油(160,180,200℃)で4分加熱した。2)油面の様子:泡により発現する油面のゆらぎを高速度カメラで撮影し、画像解析した。3)水分の動き:蒸発量は秤の上で天ぷらを揚げ重量減少量から調べた。衣と素材の水分の動きは衣の水分を重水(H218O)にし、衣と素材の水分を区別して推定した。4)衣と素材の品質:衣は水分量、気泡数(破断応力波形を微分波形へ変換した時のマイナスピーク数)、素材は水分量、硬さ、糊化度(グルコアミラーゼ法、SEM)、おいしさは官能評価から調べた。結果 油面の様子と水分蒸発量は一致した。衣の水分は揚げ直後に多く蒸発し、これが衣のサクサク感に、素材の水分は揚げ直後から蒸発したが衣から移動した水分により素材中の水分が保たれ、これが出来上がりの硬さや糊化度に影響すると予想した。
著者
小林 由実 上田 善博 加藤 邦人 石田 康行 小川 宣子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 69回大会(2017)
巻号頁・発行日
pp.160, 2017 (Released:2017-07-08)

目的 天ぷらの調理過程における経時的な水分蒸発量の変化が油表面に発生する気泡に伴う油のゆらぎ(以下、油の表面情報)と関係があることを報告し、これが天ぷらの衣または素材由来かを、衣の水分を重水に置き換え推定した。衣から素材への水分移動も同様の方法で推定し、水分移動は素材の硬さや糊化度に影響することを予想した1)。本研究では実験を繰り返すことで予想した水分挙動と素材への影響を確認し、油の表面情報が天ぷらのおいしさに及ぼす影響を検討した。方法 天ぷらはさつまいも(10×10×8㎜:水分66%)に水分62%に調製した衣(薄力粉1g、重水1.6g)をつけ、160℃、180℃、200℃の油で3分間揚げて作成した。加熱開始13秒後と3分後の衣とさつまいもの水(H216O)と重水(H218O)をGCMSの測定から水分挙動を、常圧乾燥法から水分量、グルコアミラーゼ法と走査型電子顕微鏡像から糊化度を調べた。 結果 揚げ温度160℃において加熱13秒後では、他の温度に比べ衣からさつまいもへの水分移動は少なく、糊化度や細胞破壊も小さかったが、さつまいもの水分は66%と多かった。加熱3分後は衣からの水分移動が見られ、さつまいもの水分は62%と多く、糊化度も高く、細胞破壊が見られた。さつまいもの出来上がりは衣からの水分移動が影響していると推定した。 [文献]1)小林他:日本調理科学会平成28年度大会要旨集、p90(2016)