著者
小川 裕子 矢ノ下 良平 辻本 雅文 後藤 芳邦 池本 守 秋元 義弘 三浦 ゆり 粂田 奈宝子
出版者
帝京平成大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-10-21

免疫関連タンパク質のDPP IV、IgA、唾液タンパク質のムチン5B、口腔内細菌由来のLPSは、ヒト唾液由来エキソソーム表面に緩く相互作用している。これら表面分子のうちムチン5Bは消化酵素で分解され、IgAおよびLPSの大部分はゲルろ過クロマトグラフィーによりエキソソーム表面から剥がれるが、一部は強固に結合していた。表面分子を除去したエキソソームはマクロファージからのNO産生を増強させた。本作用には膜貫通タンパク質であるDPP IVがLPSと協調している可能性を見いだした。唾液由来の粘膜免疫エキソソームは口腔内では免疫系の過剰な活性化を抑制し、消化管内では免疫系の活性化に関与する可能性がある。
著者
小川 裕子 林 希美 矢代 哲子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.64, 2008

-目的- 近年の少子化の進行や児童虐待の増加傾向の中で、文部科学省では中・高校生の保育体験学習を重視しているが、家庭科の授業時間数の削減や教師の多忙さのために、特に高等学校における保育体験学習の実践は多くない。また、保育体験学習に関する先行研究によって、保育学習の意欲が高まること、乳幼児に対する感情が良くなること、自己省察が出来ること等の成果が明らかになっているが、これらの多くは体験そのものによる成果である。本研究では、静岡県立高等学校の全校で実施されている「高校生保育・介護体験実習」の実態から、学習の成果が最も高まると考えられた家庭科の保育学習の一環として保育体験学習を実践する。この保育体験学習では、乳幼児理解と共感性を育てることを目標として、事前指導・体験・事後指導を体系的に計画した。この体験学習を実践することによる学習者の学びを明らかにすることによって、保育体験実習のあり方について示唆を得ることを目的とする。-方法- 静岡市立S高等学校において、必修家庭科(家庭一般)保育学習(2007年4~7月)の中で、保育体験学習を実践する。事前指導2時間(1時間目:体験先の概要、諸注意、グループ編成など。2時間目:乳幼児との会話や関わり方のアドバイス、ワークシート「こんな時どうする?」、保育体験の個人目標の設定)、保育体験2時間(体験90分と感想書き15分)、事後指導3時間(1時間目:自分達の体験の様子についてDVDを視聴し、感想を一文ずつ付箋に記入。2時間目:グループ毎に付箋を集め分類して、模造紙1枚に貼り込んでまとめる。3時間目:グループ毎にまとめた模造紙をもとに発表する)である。 以上の保育体験学習における、学習者の学びを明らかにするために収集したデータは、学習者(2クラス、計78名)一人ひとりの1.中学校での保育体験の有無、2.乳幼児への気持ち(体験前、体験直後、体験1ヶ月後)、3.乳幼児についての考え(2と同時期)、4.体験の目標、5.体験直後の感想(目標について分かったこと、乳幼児とどのような関わりをしたか、感想など)、6.事後指導後の感想文、である。-結果- 計画・実践した保育体験学習で目標とした、乳幼児理解と共感性を育てるという二点について、以下のことが明らかになった。まず、乳幼児理解については、5.体験直後の感想文と6.事後指導直後の感想文の記述内容の変化(量的に増加)から、今回計画した事後指導(3時間)の効果が明らかになった。 次に、共感性の育ちについては、実践した2クラスの内1クラスで、たまたま事前指導の2時間目の時間が確保出来ず、1時間目の間に各自に体験の目標を立てさせて体験を行ったという変更があったため、このクラスをAとし、計画通り2時間の事前指導を行ったクラスをBとして、A,Bクラス間で、生徒たちの設定した4.体験の目標がどう異なるか、また、3.乳幼児についての考え(体験直後、体験1ヶ月後)、5.体験直後の感想(目標について分かったこと、乳幼児とどのような関わりをしたか、感想など)、6.事後指導後の感想文といった各データにおける乳幼児との関わりに関する記述内容に差異があるのかに注目した。その結果、まず、事前指導の2時間目に予定していた乳幼児との会話や関わり方についてアドバイスや「こんな時どうする?」と考える機会を実施できたBの方が、体験の目標として「関わり」に関するものを立てた生徒が圧倒的に多い結果となった。体験後の関わりについての記述内容については、目標で認められた程の著しい差は認められないものの、共感的な関わりが出来たと認められる生徒の数は、同様にBの方が多い結果であった。
著者
古久保 さくら 丸山 里美 高松 里江 須藤 八千代 山口 薫 茶園 敏美 小川 裕子
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、1947~1997年に大阪府内に存在した婦人保護施設「生野学園」の50年間の記録・資料を主資料として研究を進めることにより、戦後日本の女性の貧困・困窮の実態について明らかにした。婦人保護施設は売春防止法により規定された施設であるが、その施設開設初期段階から家族のなかに居場所を失った多様な困難を抱える女性たちを受け入れ支援する場として存在したことが明らかになった。また、同時に「売春」と言われてきた行為について、性暴力・恋愛との連続性、言い換えれば客体化された被害者としての側面と主体化された行為者としての側面から概念を再検討する必要性も見えてきた。
著者
栗栖 薫子 三浦 聡 小川 裕子 政所 大輔 赤星 聖 宇治 梓紗
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2023-04-01

近年、グロ―バル・ガバナンス(GG)構造の複雑性が増している。国連気候変動枠組み条約の下で排出権取引に関わる様々な実施枠組みが普及し、企業のサステナビリティやESG投資に関わる取組が林立し、持続可能な開発目標(SDGs)の実施に関わる取組は全体像の把握が難しいほどである。この構造の複雑性は、①問題領域の複雑化、②ガバナンスの手段の多様化、③アクターの多様化(権威の多元化)という3次元での「密度」の増加によって特色づけられる。本研究はSDGsにかかわる主要な問題領域(気候変動、人道、難民、保健等)を事例として「GGの複雑化とアクターとの間にどのような相互作用が見られるか」という問いに取り組む。
著者
新田 米子 志水 暎子 小川 裕子 神川 康子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.67, 2015

<br><br>目的 高齢の親世帯と子世帯間の居住距離に着目し、親子双方が安心・満足できる住み方を探ることをねらいとし、本報では、将来子世帯が親世帯側への同居や近居を希望する場合の住み替えを促す要件について明らかにしようとするものである。<br><br>方法 中部・北陸地方における親子の居住関係の動向「その1」と同一のデータ(n=411)を用いて分析を行っている。調査方法は「その1」に準ずる。<br><br>結果 現在親と別居の子世帯において、今後親が病弱になった時の住み方ついては、半数強が「わからない」状態であるが、「現在と同距離で別居」や「自分の家での同居か近居」の希望がやや多く、「親の家で同居」または「親の家の近くで住む」とする世帯は1割強にとどまる。結婚後20年未満で現在の住み方に至る世帯が多く、20年以上経過すると住み替えがかなり減少する傾向が認められる。親側への移転を望む場合の居住距離は、「近居・片道15分未満」、「隣居」、「同居」の順となる。親側への住み替えにあたって問題となることは、「親の世話の負担」をあげる人が「住宅購入費」、「住宅探し」に比較しやや多い。さらに、移転するにあたって国・自治体・第三者機関等に期待する支援内容は、「親の世話・介護にあたっている人たちの交流の場の提供」、「介護・介護予防等に関する地域住民の活動を支援する場の提供」、「住宅建て替え費用に対する減税措置」などへの期待が少なくないことが明らかとなった。
著者
吉本 敏子 小川 裕子 星野 洋美 室 雅子 安場 規子 吉岡 吉江 吉原 崇恵
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, 2014

<目的>家庭科の学習は、基礎的・基本的な学習が実生活の場面で実践できる力となることを目指している。そこで、日常の具体的な生活場面を想定し課題解決ができる力がどの程度身についているかを把握するための調査を行った。本調査の設計については、日本家庭科教育学会2013年度例会にてすでに報告をしている。調査の内容は、消費生活・環境、食生活、衣生活、住生活、家族・家庭生活の5つ問から構成されているが、今回報告するのは、消費生活・環境に関する結果である。<方法>調査時期:2013年3月~10月調査対象者:愛知県、静岡県、三重県の中学校1年生(小学校6年生を含む)298名、高等学校1年生(中学校3年生を含む)456名、大学1年生567名調査方法:質問紙法による集合調査 回収率:100 分析方法:1)回答の記述内容を読み取り、データベースを作成した。2)そのデータを集計(エクセル統計、&chi;<sup>2</sup>検定)し考察した。<結果> 消費生活・環境の調査内容は、インターネットを利用して靴を購入する場合の代金の支払いと、靴のサイズが合わないというトラブルが発生した時の対応の仕方、およびこれまで履いていた靴の処理の仕方について回答を求めている。そしてこの調査内容から読み取りたい内容を、a)靴の購入にかかる費用が分かり、情報を正しく読み取ることができる、b)インターネット上の情報から、返品交換の可否や条件が理解でき、その情報を基にトラブルへの対応ができる、c)モノを大切にする気持ちや環境への配慮ができる、の3つとした。aとbは、科学性(知識・技能の応用力)を、cは生活合理性(状況把握、姿勢や態度、価値観)を読み取ることができると考えた。 調査の結果は以下の通りであった。1)インターネットを通じて商品を購入した経験のある者は、中学生41.9%、高校生68.2%、大学生78.0%であった。2)靴の購入価格(販売価格+送料+振込手数料+後払い手数料)の正答率は、中学生45.6%、高校生41.7%、大学生52.6%であった。高校生は中学生に比べて正答率が低く、特に高校生男子の正答率は34.0%と低かった。振込手数料や後払い手数料が計算されていないと思われる誤答が多くあった。3)「靴のサイズが合わないというトラブルが生じた場合にどのように対応するか」(本調査の設問では返品交換ができる)については、「返品・交換ができることがわかり、自分で返品・交換をする」と回答したものが最も多く、中学生で80.5%、高校生で83.3%、大学生で87.1%であった。次に多かったのは「少しくらい小さくてもしばらく我慢して履く」であった。4)「今まで履いていた靴をどうするか」という問に対して最も多かった回答は、「友人や知人にあげる」で、中学生34.2%、高校生28.7%、大学生32.8%であった。その他にも「フリーマーケットに出す」「弟が履けるようになるまで取っておく」「予備の靴や思い出の靴として、しまっておく」「雨の日や作業などのときに履く」「放置する」「ごみとして捨てる」など多様な意見が出されていた。以上の結果から、科学性すなわち課題解決のために知識や技能を総合して活用できる力は、発達段階に応じて徐々に身についてきているが、大学生においても十分であるとは言い難い。また「今まで履いていた靴をどうするか」に見られた多様な回答は、モノを大切にする気持ちや環境への配慮という生活合理性に基づくものであるのかについて慎重な検討が必要である。