著者
行平 崇 田中 哲子 土井 篤 小牧 龍二 福永 貴之 申 敏哲
出版者
熊本保健科学大学
雑誌
熊本保健科学大学研究誌 = Journal of Kumamoto Health Science University (ISSN:24335002)
巻号頁・発行日
no.16, pp.39-47, 2019-03

一般の食酢に比べタンパク質を構成するアミノ酸の他にクエン酸やコハク酸,有機酸やビタミン,ミネラル,メラノイジン等が多く含まれている黒酢の様々な効果が報告されている中で,学習及び記憶力に及ぼす影響に対しては,未だ明らかになっていない。そこで本実験では,黒酢とDHA の摂取がラット学習・記憶力に及ぼす影響について行動学的及び免疫組織学的手法を用いて検討した。その結果,8方向放射状迷路試験において,黒酢,DHA の単独投与では所要時間の有意な短縮は認められなかったものの,黒酢とDHA の同時投与群では有意な短縮が認められた。Working memory error(WME)では,DHA 単独投与群と黒酢とDHA 同時投与群で有意なWME の減少が認められた。Step-down 試験においても,黒酢とDHA 同時投与群で有意な潜伏期の増加が認められた。また,神経細胞の活性と細胞の増殖を確認するために行ったc-Fos とBrdU の免疫染色でも,黒酢とDHA の同時投与群では陽性細胞の有意な増加が認められた。本研究の結果,黒酢の継続的な摂取はDHA と同様に記憶力の中心である海馬を刺激し,細胞新生を促進する事で記憶力の増強に影響を与える可能性が示唆された。また,黒酢又はDHA の単独摂取と比較して,双方を同時に摂取することで相乗効果を得ることができた。今後更なる濃度と実験期間の検討により,黒酢とDHA の効果を明確にすることで,認知症の改善や脳発達障害の改善に応用でき,患者のQOL の向上に繋がっていく可能性が考えられる。