著者
島崎 宇史 小田 洋一
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.111-118, 2020-07-31 (Released:2020-08-20)
参考文献数
71

危険な刺激や敵から素早く逃げる逃避運動は,ほぼすべての動物が生きのびるために行う必須の行動である。逃避運動は刺激や敵の情報を素早く察知し,可能な限り速く遠ざかることが求められているので,逃避運動を制御する回路(逃避運動回路)は,一般的な神経回路には見られない特性と構成因子を持つことが多い。逃避運動回路の中心には,しばしば巨大なニューロン(giant neuron)が存在し,様々の感覚情報・環境情報を統合して「逃げろ」という司令を出し,できるだけ早く効果器に伝えて逃避運動を実行する。 ここでは,イカ,ザリガニ,ショウジョウバエ,キンギョ,ゼブラフィッシュ,ラット,マウスなどを例にあげて,異なる種の動物が示す逃避運動とそれを制御する逃避運動回路を紹介し,逃避運動回路における巨大ニューロンの存在とはたらきを紹介する。興味深いことに,巨大ニューロンが活動しなくても動物は敵や刺激から遠ざかることは辛うじて可能であるが,瞬時に素早く逃げるには巨大ニューロンが唯一無二の役割を果たしている。また,なぜ逃避運動回路に巨大ニューロンが組み込まれているかについても考察を加える。