著者
西島 智子 小山 理惠子 内藤 郁奈 畑山 聡 山崎 裕司 奥 壽郎
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.95-99, 2004 (Released:2004-06-12)
参考文献数
12
被引用文献数
40 26

この研究の目的は高齢患者の膝伸展筋力と歩行能力の関係について検討することである。対象は高齢入院患者78名(75.7±7.7歳)である。これらの対象について膝伸展筋力と歩行能力を評価した。歩行能力は院内歩行群(n=50),室内歩行群(n=10),歩行非自立群(n=18)に分類した。院内歩行群における膝伸展筋力は室内歩行群,歩行非自立群に比較し,有意に高い値を示した。ロジスティック回帰分析の結果,院内独歩の可否を独立して規定する因子は膝伸展筋力のみであった。膝伸展筋力が0.5を下回る場合,院内歩行自立群は減少し始め,その下限値は0.28であった。0.30を下回る場合,室内歩行の自立割合は減少し始め,その下限値は0.13であった。以上のことから,高齢患者の独歩自立のためにはある程度の下肢筋力が必要なことが示唆された。
著者
山崎 裕司 井口 由香利 栗山 裕司 稲岡 忠勝 宮崎 登美子 柏 智之 中野 良哉
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.209-212, 2010 (Released:2010-05-27)
参考文献数
8
被引用文献数
10 5

〔目的〕足関節背屈可動域がしゃがみ込み動作時の足圧中心位置および動作の可否に与える影響について検討した。〔対象と方法〕健常成人42名(20.1±2.4歳)に対して足関節背屈可動域の測定としゃがみ込み動作時の重心動揺測定を実施した。〔結果〕しゃがみ込み動作が可能な対象者は42名中27名であった。足関節背屈可動域としゃがみ込み時の前後足圧中心位置偏位量の間には,r=0.718の有意な相関を認め,背屈可動域が小さいほど足圧中心位置は後方に偏位した。しゃがみ込み動作可能群と不可能群の足関節背屈可動域は,それぞれ18.9±4.6度,9.6±3.5度であり,可能群で有意に大きかった。足関節背屈可動域が小さくなるに従って,しゃがみ込み動作可能者は有意に少なくなり,10°未満では全例(9例)が不可能であった。逆に,20°以上の症例(13例)では全例が動作可能であった。〔結語〕足関節背屈可動域の不足は,しゃがみ込み動作時の足圧中心位置を後方へ偏位させ,背屈可動域がある一定以下に制限された場合,動作が不可能となることが示された。
著者
山崎 裕司 松下 恵子
出版者
学校法人高知学園 高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.29-33, 2008-03-31 (Released:2018-09-06)
参考文献数
12
被引用文献数
1

本研究では,行動分析学の技法を用いた車椅子キャスター上げの指導方法を考案し,その効果について口頭指示による試行錯誤型の操作練習と比較検討した.対象は,キャスター上げ経験の無い健常女性13名で,無作為に2群に分類された.A群(7名)には,最初に試行錯誤型のコーチングが行われ,次に日を変えて行動分析的コーチングが行われた.B群(6名)では,A群とは逆の順でコーチングが行われた.目標行動は,1分以内に標準型車椅子のキャスターを上げ,その状態を30秒間保持することとした.行動分析的コーチングは,シェイピングや連鎖化,身体的ガイド,プロンプト・フェイディングなどの技法を取り入れて形成された.課題の難易度が段階的に設定され,練習中の失敗ができるだけ少なくなるように配慮された.試行錯誤型のコーチングでは,キャスター上げ,およびその保持の方法が口頭で教示された.いずれも練習時間は30分とした.行動分析的コーチング後,13名全員が30秒以上のキャスター上げに成功した.試行錯誤型コーチングを一日目に導入した7名中,30秒以上のキャスター上げができた症例はなかった.以上のことから,シェイピングや身体的ガイド,プロンプト・フェイディングを用いたキャスター上げ練習は,口頭指示のみによる試行錯誤型練習に比較してより有効なものと考えられた.
著者
片山 訓博 大倉 三洋 山崎 裕司 重島 晃史 藤本 哲也 藤原 孝之
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Eb1236, 2012

【はじめに】 標高1000~3000mに居住する高地住民には,冠心疾患や高血圧症などの発生率が低く,長寿者が多いことが知られている.また,高地トレーニングが脂質糖質代謝の改善に有効なことが指摘されている.しかし,高地トレーニングや低圧低酸素環境下でのトレーニングを実現することは物理的,経済的に極めて困難である.また,低酸素環境における高強度のトレーニングは,重度の低酸素血症を誘発する可能性が高い.心疾患や肺疾患を合併することが少なくない中高年者の生活習慣病予防を目的とした運動としてはリスクが高い.近年,比較的簡易な装置を用いて常圧環境下で低酸素環境を作り出すことが可能となっている.もし,常圧の低酸素環境によって運動時のエネルギー代謝に好影響が与えられるとすれば,効果的なトレーニング環境が容易に実現できる可能性がある.本研究では,常圧低酸素環境における低強度運動時のエネルギー代謝応答を測定し,運動療法施行時の環境としての有用性について検討した.【方法】 対象は健常成人男性13名で平均年齢21.2(20―22歳),平均身長168.8±4.7cm,平均体重62.6±5.1kg,平均体表面積1.72±0.08m2であった.被験者は前日の夕食以降絶食として翌日の午前中に測定を実施した.研究の条件は,研究の条件は,常圧下での低酸素濃度環境(以下,低酸素)(酸素濃度14.5%,0.7atm,高度3,000m相当)および通常酸素濃度環境(以下,通常酸素)(酸素濃度20.9%,1.0atm)とした.低酸素は,藤原らの特許を用いた塩化ビニール製テント(容積4.0m3)と膜分離方式の高・低酸素空気発生装置(分離膜:宇部興産製UBEN2セパレーター,コンプレッサー:アネスト岩田製SLP-22C)を用いて設定した.各条件での測定は,先ず通常酸素条件で行い,その後1週間の間隔を設けて低酸素条件で実施した.両条件とも30分間の安静椅子座位後,嫌気性代謝閾値(以下,ATポイン)の70%定量負荷による自転車エルゴメータ運動(回転数は55回/分)を30分実施した.呼気ガス分析は,エアロモニター(AE-300Sミナト医科学製)を用いた.各データは安静開始から終了まで1分間隔で測定し,5分間毎の平均値で比較検討した.NU(尿中窒素排出量/分)は0.008g/分で一定とした.LOR(mg)=1.689×(VO2-VCO2)-1.943×NU,GOR(mg)=4.571×VCO2-3.231×VO2-2.826×NUで得られたLOR,GORは体表面積で補正した.統計学的手法は,Willcoxonの符号付順位和検定を用い,有意水準は危険率5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には,研究の主旨・内容および注意事項について説明し,同意を得たのちに実験を開始した.【結果】 被検者のATポイント70%における自転車エルゴメータの負荷量は,47.5±5.3wattであった.LORは,すべてのstageにおいて低酸素条件より通常酸素条件が有意に高値を示した(p<0.05).GORは,運動時全てのstageにおいて低酸素条件が通常酸素条件より高値を示した(p<0.05).低酸素条件における運動時GORは通常酸素条件よりも平均で191.1mg/min/m2大きく,逆に運動時LORは,低酸素条件で平均37.5mg/min/m2小さかった.【考察】 低常圧低酸素環境への暴露後の運動が呼吸循環代謝応答に与える影響について分析した.GORは,stageにおいて低酸素条件が通常酸素条件より高値を示した.高地環境における低酸素血症では,ミトコンドリア内では有機的解糖が阻害されるため,ミトコンドリア脱共役タンパク質の減少で代償が図られる.それとともに,嫌気的解糖によるATP合成効率を増やしてATP不足を補う結果,グルコース利用が増加し,血糖値が低下する.結果として,インスリン分泌も低下し,インスリン感受性の改善がもたらされることが報告されている.今回の常圧低酸素環でも同様の効果によりグルコースが多く利用されたと考えられる.低酸素条件におけるGORは30分間の運動中平均は191.1mg/min/m2通常酸素条件よりも大きく,これは通常酸素条件のGORの27.5%に相当した.このことは今回の常圧低酸素設備でも,糖質利用が促進されることを示している.よって,常圧低酸素環は糖質代謝を促進する必要のある対象者にとって有益なトレーニング環境となる可能性がある.【理学療法学研究としての意義】 低圧低酸素環境では,安静時代謝の亢進および脂質代謝が改善され,より効果的な減量が可能であると報告されている.常圧低酸素環境においても同様の効果が生じる可能性が示唆され,生活習慣病や減量を目的とした理学療法を施行する時の環境として利用できると考える.
著者
西森 大地 山崎 裕司 中屋 久長 山本 双一 平賀 康嗣 片山 訓博 重島 晃史 高地 正音
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.59-61, 2011-03-31

下肢伸展運動を課題として,徒手による他動的誘導(以下,他動誘導)と徒手抵抗による誘導(以下,抵抗誘導)のいずれが運動再現性の点で優れているかを比較検討した.対象は,健常成人24名の右脚である.12名は靴ベラ式短下肢装具装着下(以下,装着群)で,残り12名は非装着下(以下,非装着群)で実験を行った.仰臥位,右膝関節最大屈曲位を開始肢位とし,他動誘導,抵抗誘導のいずれかのガイドによって開始肢位から再現させる屈曲角度(膝関節90°と60゜)まで誘導し,その運動を記憶するよう指示した.開始肢位に戻した後,自動運動によって運動を再現させ,誤差を求めた.膝関節60°の非装着群における誤差は,他動誘導,抵抗誘導の順に2.49cm,1.54cmであった。装着群では3.68cm,1.57cmであった.両群ともに抵抗誘導において誤差は小さかった(p<0.05 ).膝関節90°では非装着群において有意差を認めなかったが,装着群では抵抗誘導において誤差は小さかった(p<0.05 ).以上のことから,徒手抵抗を加えて運動を誘導する方法が正確に運動を指導することができるものと考えられた.
著者
寺尾 詩子 山崎 裕司 横山 仁志 大森圭貢 笠原 美千代 平木 幸治
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 = Journal of Kochi Rehabilitation Institute (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-6, 2004-03-31

本研究の目的は,昇段動作に必要な下肢筋力水準について検討することである.対象は,運動器疾患を有さない高齢患者166名(74.4歳)である.昇段能力は高さが40cm,30cm,20cm,10cmの練習台を用い,上肢の支持がない状態での昇段の可否を調査した.下肢筋力は,椅子座位,膝関節屈曲度位での等尺性膝伸展筋力を測定した.昇段能力が優れた群において膝伸展筋力は有意に高値を示した(p<0.001).膝伸展筋力が体重の17%を下回る場合,いずれの段差においても昇段は不可能であった.筋力が30%を上回る場合,全ての症例が10cmの昇段が可能で,80%の症例は20cmの昇段が可能であった.筋力が40%を上回る場合,80%の症例が30cmの昇段が可能であった.さらに,筋力が50%を上回る場合,80%の症例が40cmの昇段が可能であった.本研究から,高齢患者における昇段能力の規定要因としては膝伸展筋力が重要であり,昇段動作が手すりなしで自立するためには最低限の下肢筋力が必要なことが示唆された.
著者
青木 詩子 山崎 裕司 青木 治人
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.77-81, 1998-03-31 (Released:2018-09-25)
参考文献数
1
被引用文献数
1

階段を前向きに降りること(前方アプローチ)が困難な片麻痺患者に対し,後ろ向きに降りる方法(後方アプローチ)を試み,その有用性について検討した。対象は片麻痺患者13例(年齢58.8 ± 15.8歳)で,前方アプローチによる階段の降りは,13例中5例が不可能であった。これらの症例に対し,前方アプローチと後方アプローチを施行し,それぞれの可否,不安感,所要時間,動作パターンを調査した。後方アプローチは全例が階段の降りが可能となり,階段の降りにおける不安感の比較でも,前方アプローチに比べ後方アプローチにおいて有意に不安感は小さかった。階段降りの所要時間は,後方アプローチと前方アプローチの間に有意な差を認めなかった。以上のことから,階段の降りが困難な片麻痺患者に対しては,後方アプローチを指導することが有効と考えられた。
著者
豊田 輝 山崎 裕司 加藤 宗規 宮城 新吾 吉葉 崇
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.67-71, 2008 (Released:2008-04-05)
参考文献数
11
被引用文献数
9 7

本研究では模擬大腿義足歩行を課題として,シェイピングとチェイニング法,プロンプト・フェイディング法を活用した練習プログラムを考案した。そのプログラムを課した介入群の運動効果と自身による反復練習を課した対照群の運動効果について比較検討した。結果,対照群,介入群の両群ともに練習後有意な10 m歩行時間の短縮と,膝折れ回数,外転歩行回数,および体幹の側屈歩行回数の減少を認めた。しかし,その改善度合はいずれの項目も介入群において大きく,伸び上がり歩行回数については,介入群でのみ改善を認めた。したがって,今回のシェイピングとチェイニング法,プロンプト・フェイディング法を用いた歩行練習は,口頭説明と対象者自身による反復練習に比べ,より早期に模擬大腿義足歩行のスキルを向上させるものと考えられた。
著者
山本 哲生 山崎 裕司 山下 亜乃 片岡 歩 中内 睦朗
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0122, 2017 (Released:2017-04-24)

【目的】変形性膝関節症は,病期の進行に伴い疼痛,変形,関節拘縮,筋萎縮等の症状が進行し,歩行能力や動作能力の低下が生じる。一方,歩行能力は下肢筋力や立位バランスによって規定されることが知られ,適切な運動療法や日常生活指導によって筋力や立位バランス能力が維持された場合,病期が進行した変形性膝関節症患者でも歩行能力が維持される可能性がある。本研究では,変形性膝関節症の病期と身体機能が歩行能力に及ぼす影響について検討した。【方法】対象は60歳以上で変形性膝関関節症を有し,独歩での通院が可能な症例196名(男性13名,女性182名,年齢75.5±6.3歳)である。疾患内訳は,両変形性膝関節症112名,片側性変形性膝関節症84名であった。病期分類は,横浜市大分類を用いGrade1:3名,Grade2:41名,Grade3:108名,Grade4:42名,Grade5:2名で,両変形性膝関節症患者は左右で重度な側を採用した。体重,年齢,歩行速度,Functional Reach Test(FRT),膝伸展筋力(アニマ社製 徒手筋力計測器μTasF-1)の5項目を調査・測定した。膝伸展筋力は左右の平均値を体重で除したものを採用した。分析はまず上記計測項目で歩行速度と関連の強い項目を重回帰分析で算定した。病期はG1.2,G3,G4.5に分類した。歩行速度が1.0m/secを下回った者を不良群,それ以外を良好群とし,病期別にその割合を比較した。また良好群,不良群での身体機能の差を比較した。最後に病期別に歩行速度が1.0m/secを下回る症例の膝伸展筋力とFRTのcut-off pointをROC曲線によってもとめた。【結果】重回帰分析の結果,歩行速度との間に有意な偏相関係数を認めたのは,膝伸展筋力(r=-0.40)とFRT(r=-0.32)であった。病期別にみた歩行速度不良群の割合は,G1.2 11%,G3 19%,G4.5 25%であり,重症度が高い群で多い傾向であったが,統計学的には有意ではなかった。各病期における膝伸展筋力は良好群と不良群の順に,G1.2では0.35kgf/kg,0.23kgf/kg,G3では0.36kgf/kg,0.24kgf/kg,G4.5では0.30kgf/kg,0.24kgf/kgであり,いずれも不良群で低値を示した(p<0.05)。同様に,FRTは,G1.2では28.8cm,20.8cm,G3では26.6cm,22.2cm,G4.5では24.8cm,21.4cmであり,いずれも不良群で低値を示した(p<0.05)。病期別のcut-off pointは,G1.2で膝伸展筋力0.26kgf/kg以上,FRT24.0cm以上,G3は膝伸展筋力0.25kgf/kg以上,FRT25.0cm以上,G4.5は膝伸展筋力0.25kgf/kg以上,FRT24.5cm以上と病期による差を認めなかった。【結論】変形性膝関節症の重症度と歩行速度には明確な関連は認めなかった。いずれの病期においても歩行速度不良群の膝伸展筋力,立位バランス能力は低く,理学療法による身体機能の維持が変形性膝関節症患者の歩行能力を維持するうえで重要なことが明らかとなった。
著者
片山 訓博 大倉 三洋 山崎 裕司 重島 晃史 酒井 寿美 栗山 裕司 稲岡 忠勝 宮崎 登美子 柏 智之 藤本 哲也 藤原 孝之
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.365-369, 2011 (Released:2011-07-21)
参考文献数
11
被引用文献数
2

〔目的〕常圧下における低酸素および高酸素条件への急性暴露が,運動時の呼吸循環応答へ与える影響を検討した.〔対象〕健常成人男性7名.〔方法〕膜分離方式により常圧環境下において低,通常,高の3つの酸素濃度条件を設定した.各条件下で自転車エルゴメータによる多段階漸増運動負荷を行い,安静時から運動最終時までの呼吸循環応答を測定した.低酸素濃度と通常酸素濃度,通常酸素濃度と高酸素濃度の呼吸循環反応を比較検討した.〔結果〕低酸素濃度では,通常酸素濃度に比べ呼吸循環器系への負荷が有意に増大した.特に,嫌気性代謝閾値以上の負荷において呼吸器系への負荷が大きくなる傾向にあった.高酸素濃度では,通常酸素濃度と大きな差を認めなかった.〔結語〕急性暴露における常圧低酸素環境においても,順化させた低圧低酸素環境での呼吸循環負荷と同様の効果が示された.
著者
山崎 裕司 遠藤 晃洋
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 = Journal of Kochi Rehabilitation Institute (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.1-10, 2017-03-31

認知症患者の日常生活動作障害に対する行動分析学的介入について紹介した.応用行動分析学では動作障害の原因を,認知機能や身体機能の問題だけでなく,知識の問題,技術の問題,動機づけの問題から分析していく.知識の問題に対して間違った手順を修正する口頭指示は無効であった.知識の教示とフェイディングによる介入の有効性が示された.技術の問題に対する介入では,逆方向連鎖化や段階的な難易度設定,プロンプト・フェイディングなどの技法を用いた介入の有効性が報告されていた.動機づけの問題に対しては,強化刺激の整備によって適切な行動を増加させ得ることが示された.さらに,言語指示に従えない重症例に対する介入が本報告されていた.問題行動に対する介入では,不適切な行動を消去し,それに拮抗する適切な行動に強化刺激を与える介入が実施されていた. 多数の先行研究は,認知症を有する対象者に適切な行動を学習させ得ることを示した.応用行動分析学的介入は,認知症患者の日常生活動作能力を改善させるであろう.
著者
野津 加奈子 山崎 裕司
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 = Journal of Kochi Rehabilitation Institute (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.63-66, 2007-03-31

認知症患者の立ち上がり動作練習への参加行動を促進するため,行動分析を用いた介入を実施し,その効果についてシングルケースデザインを用いて検討した.対象は,脳梗塞,左大腿骨頚部骨折,心不全の既往を有する89歳の高齢患者である.介入時点での日常生活動作は全介助で,立ち上がり練習場面では指示に従うことはまったく不可能であった.介入では,上肢のリーチ位置を明示した視覚的プロンプトを設置した.そして,動作遂行の試みを賞賛や注目によってシェイピングした.その結果,立ち上がり練習頻度は徐々に増加し,設定した立ち上がり練習課題をすべて遂行することが可能となった.認知症患者の動作練習において視覚的プロンプト,シェイピングなどの技法の有効性が示唆された.
著者
北川 了三 山崎 裕司
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.13-15, 2012-03-31

本研究では,整形外科疾患群を対象に片脚立位時間と下肢荷重率の関連について検討した. 対象は中高年整形外科疾患患者30名(男性5名,女性25名,年齢76.3±10.6歳)である. 同日に左右の開眼片脚立位時間と下肢荷重率を測定した.下肢荷重率の測定は再現性を検討するため日を変えて2回目を実施した.下肢支持性の指標として,アニマ社製μTas-ME01を用いて椅子座位下腿下垂位での等尺性膝伸展筋力を測定した. 1日目と2日目の下肢荷重率の級内相関係数は,右下肢荷重率0.962,左下肢荷重率0.982と有意な相関を認めた.左右ともに片脚立位時間が5秒以上の脚では下肢荷重率はほとんどの症例で90%以上を示し,片脚立位時間の大小は下肢荷重率に影響を与えなかった.一方,片脚立位時間が2秒未満の脚では,ほとんどの脚において下肢荷重率は80%未満となった.片脚立位時間が2秒未満の脚では下肢荷重率と膝伸展筋力の間にr=0.71の有意な相関を認めた. 以上のことから,片脚立位時間が5秒以上の症例では,下肢荷重率の測定意義は小さいものと考えられた.
著者
岡田 一馬 中田 衛樹 山崎 裕司 山下 望 青木 早紀 山崎 倫 大森 貴允 冨岡 真光
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 = Journal of Kochi Rehabilitation Institute (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.17-22, 2017-03-31

高次脳機能障害を合併した高齢の重症片麻痺患者のベッドへの移乗動作練習に応用行動分析学的技法を取り入れた. ベースライン期(第93病日から106病日)には,総課題提示法による移乗動作練習を実施した.移乗動作手順の忘れや立ち上がり,ベッドへのピボッドターンに介助を要し,移乗動作能力得点は停滞していた.介入では,車椅子のブレーキ操作,フットレスト操作についてベットサイドに文字教示を行った.立ち上がり,ピボットターンの練習では,段階的な難易度設定を実施した.介入開始後,動作能力得点は上昇しはじめ, 16セッション目で満点の45点に到達した.発症から3か月以上を経過した本症例がわずか16日間の介入によって監視下の移乗動作が自立したことから,今回の介入は移乗動作能力を向上させるうえで有効に機能したものと考えられた.
著者
山崎 裕司
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.315-317, 2011
参考文献数
5
著者
川口 沙織 内野 利香 山崎 裕司 加藤 宗規
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.9-13, 2016-03-31

立位での方向転換が困難なため移乗の介助量が多い状態が続いていた急性期と慢性期の重度片麻痺患者2症例に対して段階的な難易度設定を用いた行動分析学的介入を実施した.介入前までは移乗動作を総課題提示法によって練習したが,移乗動作能力に変化はなかった.そこで困難であった立位での方向転換に特化した介入を実施した.介入では,平行棒につかまっての約120°の方向転換を30°ごとの4範囲に分割し,段階的に回転角度を拡げていった.その結果,両症例とも介入開始後1週間以内で方向転換が可能となり,移乗動作は監視下で実施できるようになった.したがって,一連の行動連鎖の中で特に困難な行動要素が存在する場合,その行動要素を切り離して段階的な難易度設定による介入を導入することが有効なものと考えられた.
著者
中田 衛樹 岡田 一馬 山崎 裕司 山崎 生希 山崎 倫 大森 貴允 冨岡 真光
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.13-16, 2015-03-31

認知症を合併した重症片麻痺患者に対し,逆方向連鎖化の技法を用いた寝返り・起き上がり動作練習を実施した.寝返り動作は介入セッション,起き上がり動作は8セッション目に動作が自立した.介入中,身体機能および認知機能の改善は認められなかった.介入後,速やかに起居動作が自立したことから,認知症を合併した重症片麻痺患者に対する今回の動作練習は,有効に機能したものと考えられた
著者
栗山 裕司 山崎 裕司 坂上 昇 酒井 寿美 大倉 三洋 山本 双一 中屋 久長
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-6, 2003-03-31
被引用文献数
1

固定用ベルトを装着したハンドヘルドダイナモメーター(HHD)による等尺性膝伸展筋力測定方法の座位姿勢間再現性について,健常者20名を対象に検討した.測定は,プラットホーム端座位,車椅子座位,介護用ベッド端座位,背もたれ付きパイプ椅子座位の4つの異なる座位にて実施した.異なる座位姿勢における等尺性膝伸展筋力測定値に関して,パイプ椅子座位は,プラットホーム端座位,介護用ベッド端座位および車椅子座位との比較において有意に低値を示した.また,各座位姿勢間の級内相関係数は,プラットホーム端座位と車椅子座位間およびプラットホーム端座位と介護用ベッド端座位間で高値を示し,良好な座位姿勢間再現性を示した.一方,パイプ椅子座位と他の座位姿勢間では,低値を示した.今回の結果から固定用ベルトを装着したHHDによる等尺性膝伸展筋力測定に際し,パイプ椅子座位での測定は避けるべきであるが,介護用ベッドや車椅子での測定が可能で,病棟や在宅など広い範囲での使用も可能なことが示唆された.
著者
大森 圭貢 横山 仁志 青木 詩子 笠原 美千代 平木 幸冶 山崎 裕司 笹 益雄
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.106-112, 2004-04-20
被引用文献数
14

本研究は,立ち上がり動作が障害される下肢筋力水準を明らかにすることを目的として,等尺性膝伸展筋力と立ち上がり能力の関連について検討した。対象は,運動器疾患を有さない65歳以上の高齢患者205名である。立ち上がり動作は,座面高40cm,30cm,20cmの台からの立ち上がりの可否を調査した。等尺性膝伸展筋力は,腰掛け座位で下腿を下垂させた肢位での筋力を徒手筋力測定器によって測定し,左右の脚の平均値を体重で除した値を百分率で表した。単変量解析によって,座面高40cm台からの立ち上がり不可能群,40cm可能群,30cm可能群,20cm可能群を比較した結果,年齢,身長,体重,Body Mass Index,等尺性膝伸展筋力に有意差を認めた。ロジスティック解析では,等尺性膝伸展筋力のみが,各座面高からの立ち上がりの可否に有意に影響を与えていた。等尺性膝伸展筋力が35%,45%,55%を上回った場合,それぞれ全ての者が40cm台,30cm台,20cm台からの立ち上がりが可能であった。一方,等尺性膝伸展筋力がこれらの値を下回る場合,筋力の低下に従って各座面高からの立ち上がり可能者の割合は減少した。等尺性膝伸展筋力が20%を下回った場合,40cm台,30cm台からの立ち上がり可能者を認めなかった。同様に等尺性膝伸展筋力が30%を下回った場合,20cm台からの立ち上がり可能者を認めなかった。これらのことは,高齢患者の等尺性膝伸展筋力と立ち上がり能力が密接に関連することを示しており,等尺性膝伸展筋力が一定水準を下回った場合,立ち上がり動作が困難になると考えられた。