著者
藤山 沙紀 江間 琴音 岩宮 眞一郎
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.387-396, 2013-08-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
9
被引用文献数
1

黒澤明の映画の一部を用いて,「音と画の対位法」と呼ばれる音楽と映像の印象を対立させる手法の効果を明らかにするために,音楽と映像の調和感の連続評定及び印象の連続記述選択実験を行った。対位法が使われた部分では,反対の印象を持つ音楽と映像が組み合わされており,音楽と映像の調和感は全般的に低かった。対位法が含まれた視聴覚刺激全体の印象は,その印象評定実験からまとまりのない印象を持たれているものの,複雑さや面白さの印象が高く,総合的な良さの評価は高いことが示された。対位法が使われた部分では音楽の音源が映っている場面があるが,これを分からなくなるように操作した映像を用いると,良さの評価は低下する。
著者
藤山 沙紀 江間 琴音 岩宮 眞一郎
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.387-396, 2013
参考文献数
9

黒澤明の映画の一部を用いて,「音と画の対位法」と呼ばれる音楽と映像の印象を対立させる手法の効果を明らかにするために,音楽と映像の調和感の連続評定及び印象の連続記述選択実験を行った。対位法が使われた部分では,反対の印象を持つ音楽と映像が組み合わされており,音楽と映像の調和感は全般的に低かった。対位法が含まれた視聴覚刺激全体の印象は,その印象評定実験からまとまりのない印象を持たれているものの,複雑さや面白さの印象が高く,総合的な良さの評価は高いことが示された。対位法が使われた部分では音楽の音源が映っている場面があるが,これを分からなくなるように操作した映像を用いると,良さの評価は低下する。
著者
山内 勝也 高田 正幸 岩宮 眞一郎
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.192-202, 2003-04-01
被引用文献数
12

分かり易く覚え易いサイン音をデザインするための基礎的知見を得るために,既存のサイン音を用いて,機能イメージに関するカテゴリ判断実験と擬音語表現を用いた自由記述表現実験を行った。機能イメージに関しては,主成分分析により「警報-操作」「報知」「呼出」「警告告知」「終了」の五つのイメージに集約した後,擬音語表現と音響的特徴との対応関係な検討した。その結果,警報感を伴う音は「ピピピピ」等に擬音語表現される繰り返しを伴う音あるいは「ブー」と表現される継続時間が長く倍音の豐富な音,操作のフィードバックに適するのは「ピッ」で表現される短い音,報知に適するのは立ち上りが緩やかで拗音を伴って表現される音,呼出感の強い音は「ビリリリ」等で表現される変化速度の速い周期的変動音,警告告知のイメージを伴う音は「ブー」など有声子音を用いた基本周波数が低く周波数成分が豐富な音,終了のイメージを伴う音は「ピー-ピー」等のように長音を伴った繰り返しで表現される音か,長い減衰時間を持ち「チーン」などと長音と撥音を伴う表現がされる音である等の傾向を得ることができた。
著者
濱村 真理子 岸上 直樹 岩宮 眞一郎
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.525-533, 2014-10-01 (Released:2017-06-02)

様々な楽曲を用いた最適聴取レベルの測定実験を調整法によって行い,男女の間で音楽の最適聴取レベルに差が生じ,男性の聴取レベルの方が高いことを明らかにした。男女の最適聴取レベルに差が生じる要因を検討するために,音楽再生音とノイズの大きさ評価実験を行った。いずれの刺激の場合も男性の方が女性よりも同一呈示音圧レベルの音をより「小さい」と評価していた。女性の最適聴取レベルは男性にとっては「小さい」と感じられている可能性がある。そのため,男性が「丁度よい」と感じるには女性の最適聴取レベルよりも聴取レベルを高く設定する必要が生じ,その結果として男女の音楽再生音の最適聴取レベルに差が生じたと考えられる。
著者
稲田 環 藤山 沙紀 岩宮 眞一郎
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.81-92, 2017 (Released:2017-08-01)
参考文献数
18
被引用文献数
1

映画などの映像作品の制作時において台詞終わりに音楽を付加する際に,最適な音楽の付加時点を明らかにするための印象評定実験を行った。音楽の最適付加時点は,台詞直後の時点ではなく,「怒り」の感情を表した台詞では0.5秒前後,「愛」の感情を表した台詞では1秒前後,「悲しみ」の感情を表した台詞では1.5秒前後の「間」をおいてからの時点であった。同時に実施した台詞のインパクトの印象評定実験により,音楽付加のタイミングの良さと台詞のインパクトに高い相関があり,最適な時点で音楽を付加した場合に台詞のインパクトが最大になることが分かった。本研究により,台詞と音楽をつなぐための「間」の最適な長さが,「台詞の表す感情」ごとに異なることが分かった。
著者
岡本 学 三好 正人 片岡 章俊 岩宮 眞一郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.403, pp.25-30, 2005-11-10
参考文献数
7
被引用文献数
1

耳周辺軟骨に可聴帯域信号で振幅変調をした超音波振動を加えると, 可聴帯域信号を受聴することができる.著者らはこれまでこの現象を利用した超音波ヘッドホンの検討を行ってきている.超音波ヘッドホンは超音波振動の伝達過程で, 非線型効果により可聴振動が発生することにより受聴できるが, 低域の振動を効率よく再生することが困難である.一方通常の可聴帯域振動で直接頭部等を加振する骨伝導イヤホンは高域を振動させる場合, 振動素子から空気中に音波が放射されやすい.本稿では耳穴を塞がず外部に音漏れが少ない頭部接触型のヘッドホンを実現するために超音波ヘッドホンと可聴骨伝導イヤホン素子を組み合わせたヘッドホンを提案し, その構成法, 特性について報告する.
著者
岩宮 眞一郎
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.146-153, 1992-03-01
参考文献数
12
被引用文献数
33

AVメディアを介しての音楽聴取行動において、音楽再生音の印象に対する映像情報の影響、並びに映像の印象に対する音楽情報の影響を調べ、どのような視覚と聴覚の相互作用が生じているのかを検討した。迫力、明暗、ユニークといった、視覚と聴覚に共通した性格を通して、聴覚の印象が視覚の印象を強調する共鳴現象が認められた。また、総合的な印象からのフィードバックの介在した協合的な相互作用により、映像を"面白く"する傾向が見られた。更に、映像の付加が、音の"汚さ"を目だたなくさせるような、感覚の感受性の変化も確認された。音楽再生音の最適聴取レベル決定には、再生音の"迫力"のみならず、映像の"迫力"も影響していた。
著者
川田 一貴 岩宮 眞一郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.16, pp.79-86, 2001-02-22
被引用文献数
3

我々の日常生活に最も密着した商業施設であるスーパーマーケットには様々な音が無秩序に存在しており、統括的な音環境デザインが施されている状況であるとは言い難い。そこで本論文ではスーパーの運営者と利用者に対してアンケートとインタビューによる意識調査を実施し、理想的な音環境像について検討した。売場において最も利用者に意識されている音はBGMである。利用者はBGMの音量が大きすぎたり、騒がしい曲であること、同じ曲を繰り返すことを嫌うことが分かった。またラジカセなどの販売促進ツールからの音はその音量の大きさや音楽・音声の繰り返しなどから不快に思われることが多く、売場の音環境を劣悪なものにする原因の1つであることが明らかになった。There are various sounds in supermarkets without systematic design. In order to describe the ideal sound environment of supermarket, the questionnaire survey to managers and customers and the interview with managers ware examined. Muzak are most noticeable for customers. Muzak are annoying when they are to loud or noisy. The sounds from promotion tools using public address systems are often felt noisy because they were usually reproduced by loud and low-quality sound reproduction systems. Generally, the repetitious sounds and voices are felt annoying.
著者
岩宮 眞一郎 中嶋 としえ
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.329-335, 2009-12-15 (Released:2010-12-17)
参考文献数
20
被引用文献数
3 2

メッセージを伝えるサイン音には,音の断続パターンだけでなく,短いメロディや和音などの各種の音楽的表現を用いることも多い.本研究では,サイン音に和音を用いることの可能性を検討するために,各種の三和音表現とサイン音としてのイメージおよびその印象の関係を,評定尺度による評価実験に基づいて検討した.終了感を出すのに,音楽の終止形として用いられている,属和音あるいは下属和音から主和音の進行が利用できることが示唆された.これらは,快適で,明るい印象があり,日常生活で頻繁に使われるサイン音としては適しているであろう.警報感を出すには,短三和音,減三和音がふさわしい.これらの和音は,不快で,暗い印象がある.増三和音は,呼び出し感を出す機能があり,報知感も強い.本研究により,サイン音に和音を用いることで,特定の機能イメージや印象を引き出すのに有効であることが示された.
著者
濱村 真理子 岩宮 眞一郎
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.218-224, 2015-05-01

音の大きさの評価における男女差の周波数依存性を検討するために,様々な中心周波数を持つ狭帯域ノイズを用いた音の大きさの評価実験を行った。中心周波数にかかわらず狭帯域ノイズの大きさの評価には男女差が認められ,女性は男性よりも同一音圧レベルの狭帯域ノイズをより「大きい」と評価していた。特定の周波数帯域を増幅させた音楽再生音の最適聴取レベルを測定した結果,最適聴取レベルには男女差が認められ,その差は増幅する周波数帯域や増幅の有無にかかわらず同程度であった。これは音の大きさの評価における男女差が周波数帯域に依存しないためであり,音楽再生音の周波数特性は最適聴取レベルにおける男女差に影響を与えないと言える。
著者
岩宮 眞一郎
出版者
九州芸術工科大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

本研究では,江戸時代から現代に至る,音に関する記述のある俳句3,810句を素材として,音と音が聞かれた状況の関係を探ってきた。俳句の表現された音環境は,日常生活の中で,耳を傾け,愛着を憶えた音のコレクションにほかならない。そこには,日本人の音感性が反映されている。本研究では,まず,素材とした俳句に詠まれた音,その音が詠まれた季節,地域を,いくつかのカテゴリーに分類し,音と季節,地域の関わりを示すクロス表を作成した。そして,このように分類したデータに,情報理論のエントロピーの概念を適用して,音と季節、音と地域との依存性を定量的に把握することを試みた。さらに,林の数量化理論第3類の適用により,音,季節,地域の各カテゴリーを空間上に布置し,各カテゴリー間の関係を包括的に理解することができた。以上の分析を通して,「秋の虫の鳴き声」,「町に季節の訪れを知らせるもの売りの声」,「社寺仏閣のサウンドスケープ」,「水辺のサウンドスケープ」といった,特徴的なサウンドスケープを捕らえることができた。それぞれのサウンドスケープを詠んだ代表的な句は,「鈴虫の声ふりこぼせ草の闇-亜柳」,「夜のかなた甘酒売の声あわれ-原石鼎」,「除夜の鐘幾谷こゆる雪の闇-飯田蛇忽」,「六月の風にのりくる瀬音あり-久保田万太郎」などである。俳句の中に詠み込まれている音は,ごくありきたりの,どこにでもあるような音ばかりである。その平凡な音が,我々の生活や自然環境といったコンテクストに意味づけられ,価値づけられたとき,我々の心の琴線に触れる。しかし,これらのサウンドスケープは,様々な環境騒音があふれる今日,意識されないことも多い。快適な音環境を創造するためには,こういった日本の音の原風景ともいえる音環境を意識し,保全することが求められる。
著者
片岡 寛子 高田 正幸 岩宮 眞一郎
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.76, no.10, pp.562-571, 2020-10-01 (Released:2021-03-10)
参考文献数
20

保育施設から発生する音の影響を体系的に把握することを目的として,音環境実測調査と近隣住民に対する意識調査を行った。幼児の声や運動会の音は,多くの回答者に好感が持てると判断されたが,それらを不快に感じる回答者もいた。不快な音は,特になしとの回答が多かったが,保育士の声や送迎車の音などに対する指摘も見られた。実測調査と意識調査の対応から,保育施設から発生する音に対する好感や不快感は,その発生時間の長さやA特性時間平均音圧レベルの大きさに必ずしもよらないことが分かった。また,保育施設で行われる行事への参加経験や参加の意思がある人ほど,保育所の新設により肯定的であることが示された。
著者
菅野 禎盛 岩宮 眞一郎
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.695-704, 2000-10-01 (Released:2017-06-02)
被引用文献数
6

動画像と音列を組み合わせた視聴覚素材の情緒的印象に対して, 動画像と音列のアクセントの同期(同期要因)と動画像の動きの速さと音列のテンポの対応(速度対応要因)が及ぼす効果を印象評定実験により検討した。この結果, 本研究で設定した実験条件の範囲では, 視聴覚素材の調和感に対する同期要因の効果は速度対応要因の効果よりも大きく, またこの二つの効果の間に交互作用はないことが示された。更に, 同期要因は視聴覚素材の複雑感や迫力感にも影響を及ぼしているのに対し, 速度対応要因はそうではなかった。以上の結果は, 同期要因と速度対応要因の効果が質的に異なっており, 両者は異なった心的過程を通して生じていることを示唆している。
著者
入交 英雄 岩宮 眞一郎
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.215-223, 2013-05-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
8

録音における最適な残響の音量を明らかにするため,無響室録音のオーケストラ音源に電子残響音を付加し,録音エンジニアが最も好ましいと判断する残響音のミキシングレベルを,調整法によって調査した。一方,オーケストラ音源の音響信号のパワーと,その音響信号へ残響に相当する減衰エンベロープを適用した仮想残響信号のパワーとの比を,「エンベロープ指数=E値」と呼ぶ音響信号の特徴量として提案した。種々の無響室録音のオーケストラ楽曲に電子残響を付加するとき,おのおの最適と感じる残響のレベルとE値との関係を検討した結果,両者に高い相関関係が認められ,任意のオーケストラ楽曲のE値を計算することにより,その楽曲における残響の最適ミキシングレベルを推定できることが分かった。
著者
劉 沙紀 矢萩 徹 大西 英治 岩宮 眞一郎
出版者
日本音楽知覚認知学会
雑誌
音楽知覚認知研究 (ISSN:1342856X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.73-86, 2015

市販の映像作品の一部を用いて音楽と映像それぞれの印象と調和感の連続測定実験を行い,調和感が形成される心的過程についての検討を行った。本研究で用いた視聴覚刺激においては,類似した印象の音楽と映像が組み合わされ,高い調和感が形成されていた。このような調和感は,意味的調和と言われている。異なる作品の音楽と映像を組み合わせても,音楽と映像の印象は類似せず,意味的調和は形成されない。意味的調和は,音楽と映像の印象を感知した後に形成されるので,形成にある程度の時間がかかる。しかし,一旦調和感が形成されると,音楽と映像の印象の類似性が弱まっても,調和感は持続する。また,映像の展開に合わせて,次第に調和感が上昇する。