著者
岩田 千亜紀
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.58-72, 2021-11-30 (Released:2022-02-02)
参考文献数
27

本研究では,2020年に一般社団法人Springによって実施された「性被害の実態調査アンケート」の質的調査の2次分析を行った.その結果,性暴力被害者のニーズを踏まえた相談支援についての課題として,“相談機関のアクセシビリティ(利用しやすさ)”,“相談機関のアクセプタビリティ(受け入れやすさ)”,“相談機関の相談の質”の三つがあることがわかった.そのため,性暴力被害者が相談支援に繋がるためには,物理的アクセシビリティを高めるだけでなく,相談支援の質の向上や,中長期的な相談支援の提供など,包括的かつ総合的な支援サービスへの改善が求められる.性暴力被害者への相談支援におけるソーシャルワーク支援は,著しく乏しい現状にある.今後,ワンストップ支援センターや地域のソーシャルワーカーが,性暴力被害者の生活再建・回復を目指した中長期的な支援の中核になることが必要である.
著者
岩田 千亜紀
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.44-57, 2015-11-30 (Released:2018-07-20)
被引用文献数
5

高機能自閉症スペクトラム障害(ASD)と診断されている母親およびASDが疑われる母親14名についてインタビューを行い,グラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)による質的研究を実施した.その結果,対象者は,子どもの頃から親からの身体的・心理的虐待や,学校でのいじめなど,さまざまな外傷体験を有しており,結婚前から精神疾患を発症していたことが明らかにされた.さらに,妊娠・出産後は,妊娠・出産の不安,自身の特性に起因する悩み,子どもや夫,周囲との関係についてなどさまざまな悩みを抱え,思うようにいかない子育てから,ひどい抑うつや育児ノイローゼなどに至ったことがわかった.そして,母親がストレスや不安の軽減につながるか否かは,自身や子どもへの支援,夫からの理解,自身の特性の理解によって規定された.分析結果から,グレーゾーンの母親も含めた包括的な早期支援および,「子育て世代包括支援センター」を活用した多職種間連携による支援の必要性が示唆された.
著者
岩田 千亜紀
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.132-143, 2020-08-31 (Released:2020-10-03)
参考文献数
30

本稿の目的は,ソーシャルアクションの実践方法としてのプログラム評価の有用性および方法について考察することである.東京都渋谷区で行われた「渋谷スタディクーポン事業」へのプログラム評価の実践事例を取り上げ,ソーシャルアクションにおける展開方法としての,プログラム評価の有用性および方法について考察を行った.その結果,プログラム評価を通じた「プログラム理論の明示化」,「ニーズの明確化」,「プログラム効果の可視化」,「評価結果の提示・共有化」が,本事業の政策化というソーシャルアクションの実現に寄与したと考えられた.以上から,プログラム評価はソーシャルアクションの実践方法として,有用な実践方法である可能性が高いと考えられた.
著者
岩田 千亜紀
出版者
東洋大学社会学部
雑誌
東洋大学社会学部紀要 = The Bulletin of Faculty of Sociology,Toyo University (ISSN:04959892)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.43-55, 2018-01

This study examines current issues related to violence against people with disabilities. We searched for relevant studies published through July 2017, using the electronic database PubMed and Google Scholar with the keywords “disabilities,” “intimate partner violence,” and “domestic violence.” We ultimately reviewed nineteen studies. Our results showed that people with disabilities were significantly more likely to experience violence. Women with disabilities were more likely to experience sexual and intimate partner violence and men were more likely to experience physical violence.Violence was associated with poorer health status regardless of participant gender. These findings confirm that violence is an important issue for both men and women with disabilities. There are very few studies on violence against people with disabilities in Japan.Researchers need to address violence against people with disabilities as a larger social issue that exists in Japan.