著者
児嶋 剛 庄司 和彦 池上 聰 鈴木 慎二 岸本 曜 高橋 淳人
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.98, no.12, pp.969-972, 2005-12-01 (Released:2011-10-07)
参考文献数
11

Most malignant thyroid nodules are surgically treated. This report reviews changes in size of malignant thyroid nodules; none of them received any medical and surgical treatment. Three hundred and three nodules were diagnosed as malignant using fine needle aspiration biopsy (FNAB) and ultrasonography from 1997 to 2003. In 17 patients (19 nodules), they were observed for more than 6 months. We examined the transition of their major axis by ultrasonography. Large nodules (>10mm) and nodules in younger patients (age<50) tend to increase in size. As compared with benign nodules, malignant nodules tend to increase in large nodules (>10mm).
著者
平野 滋 岸本 曜
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.255-260, 2016 (Released:2016-09-30)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

再生医療は20世紀後半のブレークスルーであり,治療困難な難治性疾患に福音をもたらす可能性を秘めている.喉頭領域でも再生医療の研究は声帯,筋肉,軟骨,反回神経をターゲットとして進められており,本稿では声帯再生において臨床応用されている再生医療について紹介する.声帯再生のターゲットとなる疾患は声帯の不可逆的硬化性病変で,声帯萎縮,瘢痕,溝症が含まれる.これらの疾患に共通する病態は,本来振動部分である粘膜固有層浅層の萎縮・線維化であり,この組織変化を是正しない限り音声の改善は望めない.変性した組織を再生土台で置換し,その部位に新しい健常な組織が再生することを期待するのが“scaffolding”と呼ばれる方法である.アテロコラーゲンやジェラチンスポンジが適した材料として挙げられ,ヒト声帯瘢痕に対するアテロコラーゲンの土台移植はある程度の成果を挙げたが,再生誘導に乏しいのが欠点で,安定した結果を得るのは難しかった.増殖因子は細胞の増殖のみならず機能修正を促し,組織再生へ誘導する強力な因子である.多くの増殖因子が研究されているが,塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)はすでに市販製剤があり,臨床使用が可能である.声帯萎縮や瘢痕に対するbFGFの声帯内注射は,声帯の質量や粘弾性の回復に優れた効果が報告され,今後さらなる発展が期待されている.
著者
吉松 誠芳 大西 弘恵 岸本 曜 大森 孝一
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 (ISSN:24365793)
巻号頁・発行日
vol.125, no.8, pp.1281-1287, 2022-08-20 (Released:2022-09-01)
参考文献数
43

気管喉頭は硝子軟骨により枠組みを保持されており, 呼吸, 発声, 嚥下機能を担う重要な臓器である. しかし, 外傷や炎症性疾患・悪性腫瘍に対する手術などで軟骨が欠損した場合, 枠組みが維持できなくなり, その機能は大きく損なわれる. 硝子軟骨はそれ自体に再生能が乏しいため, 気管喉頭軟骨欠損に対して, これまで組織工学を応用したさまざまな軟骨再生方法の開発, 研究が行われてきた. 足場としては非吸収性足場素材や脱細胞組織が臨床応用されたが, 前者は枠組みの安定性は得られるものの, 大きさが不変であるため小児への適応が困難であり, 後者はドナーの確保や長期的な内腔保持困難が課題であった. 一方, 細胞移植 (+足場素材) による軟骨組織再生では, 軟骨細胞や間葉系幹細胞 (MSC) を用いた移植法が, 治験の段階ではあるが, 一部で臨床応用されている. しかし, 初代培養の軟骨細胞や MSC では培養時に生じる細胞の脱分化や増殖能の低下が課題として残っている. また, 近年, 無限増殖能・多分化能を有する iPS 細胞から軟骨細胞や MSC への分化誘導法が開発され, 特に膝関節領域においては臨床研究も実施されている. しかし, 気管喉頭領域における iPS 細胞由来細胞を用いた軟骨再生研究はいまだ少なく, 確立された方法はない. 今後, 細胞移植が確立されるためには, 必要な細胞を効率よく誘導したり, 必要な数だけ確保したりする, 細胞の動態をコントロールする技術が必要となる. 医工学分野の新しい技術を適切に応用し, 気管喉頭の安全かつ確実な軟骨再生方法が確立されることが期待される.
著者
楯谷 一郎 楯谷 智子 樋渡 直 岸本 曜 勝野 達也
出版者
藤田医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

胃食道逆流症(GERD)では、胃酸が食道へ逆流することにより胸やけなどの症状を来すが、音声障害との強い関連が指摘されている。上皮組織は外部の刺激から深層組織を保護する機能的バリアとして働いているが、声帯上皮における接着分子の発現ならびにその役割は十分には分かっていない。本研究では、まず正常ラット声帯上皮において発現しているクローディンのサブタイプを同定してその発現部位を明らかにする。さらに胃酸による上皮バリアの傷害とその修復過程をクローディンの分子発現とバリア機能の両面から解析することで、GERDによる音声障害の発生機序を明らかにし、声帯上皮におけるバリア機構を解明する。