著者
島本 整
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.348-349, 2016-07-20 (Released:2017-01-01)
参考文献数
7
被引用文献数
1

柿は日本人にとって典型的な秋の味覚の1つである。また,渋柿を原材料とする「柿渋」の利用が古くから日本文化に根付いており,染料,塗料,民間薬などのほかに日本酒の醸造にも用いられてきた。渋柿の渋みの成分であるポリフェノールの一種のカキタンニンが,このような柿渋の様々な効果をもたらしていると考えられている。近年ではノロウイルスなど様々なウイルスの不活化にも効果があることが報告されている。本稿では,渋柿の渋抜きのメカニズムなど,カキタンニンの化学を中心に述べる。
著者
島本 整
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.441-450, 2003-05-30 (Released:2009-02-19)
参考文献数
32

細菌の逆転写酵素は, 大腸菌などのグラム陰性細菌に広く分布しており, multicopy singlestranded DNA (msDNA) と呼ばれる特殊なRNA-DNA複合体の合成に必須の酵素である。大腸菌由来の逆転写酵素を精製し, in vitro でmsDNA合成を調べたところ, 細菌逆転写酵素は2',5'-ホスホジエステル結合を形成する活性を持つ特殊な酵素であることが明らかになった。また, ビブリオ属細菌を中心に病原細菌における逆転写酵素の有無を探索したところ, コレラ菌や腸炎ビブリオなどで逆転写酵素遺伝子 (ret) とmsDNAが発見された。新たに発見された病原細菌由来のmsDNAの構造解析を行ったところ, 従来のmsDNAにはない特徴的な構造をもっており, msDNAおよび逆転写酵素の機能と病原細菌特有の機能との関連性が示唆された。特に Vibrio cholerae では, いわゆるコレラ菌であるV. cholerae O1/O139株とnon-O1/non-O139株との間で逆転写酵素の有無と病原性との関連性が認められた。