著者
小林 潤平 関口 隆 新堀 英二 川嶋 稔夫
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.A-AI30_1-24, 2017-03-01 (Released:2017-03-01)
参考文献数
61
被引用文献数
3

We propose bunsetsu-based layouts to improve the efficiency of eye movements in reading Japanese text. When reading text, people tend to direct their gaze toward the center of a word. This is called the optimal viewing position. The optimal viewing position results in the shortest gaze durations and fewest re-fixations. In the case of Japanese text, the eyes tend to fixate on each characteristic Japanese linguistic unit (bunsetsu). An electronic Japanese text reader that facilitates accurate control of eye movements to bunsetsu segments could increase the reading rateand result in more efficient eye movements. In this study, we develop new techniques to decrease inefficient eye movements when reading Japanese text. In Experiment I, we investigate the effectiveness of the layout with bunsetsu-based line breaking. A bunsetsubased linefeed layout breaks a line between bunsetsu segments, i.e., splitting a bunsetsu segment is prohibited. The reading speed for the bunsetsu-based linefeed layout was faster compared to the conventional text layout with line lengths of 5–40 characters per line. The improvements in reading speed were likely due to the optimization of eye movements near the edge of a line. In the case of 5–11 characters per line, the improvements in reading speed were likely due to an increase in the number of lines that can be recognized by a single fixation. These results indicate that the bunsetsu-based linefeed layout is an effective technique to improve reading efficiency. In Experiment II, we develop a new micro-vibration text reader with bunsetsu-based segmentation. The new reader vibrates each bunsetsu segment in a different phase to enhance boundary information for eye guidance. The reading speed for the micro-vibration text was approximately 7%–12% faster compared to the stable text with line lengths of approximately 11–29 characters per line. The improvements in reading speed were likely due to a reduction in re-fixations within a bunsetsu segment and an increase in the number of lines that can be recognized by a single fixation without horizontal saccades. Moreover, 76% of the participants did not experience illegibility or incongruousness with the micro-vibration text reader. These results indicate that micro-vibration is an effective technique to improve the efficiency of reading text with line lengths of 11–29 characters per line without an increase in cognitive load or a decrease in comprehension. In Experiment III, we develop a new stepwise incremental indent layout with bunsetsu-based segmentation and a vertical scrolling operation. The reading speed obtained by the proposed layout of 4.4 characters per line was comparable to the fixed-line length layout of 29 characters per line. This improvement is primarily achieved by a reduction in the number of fixations. Moreover, 85% of the participants did not experience illegibility or incongruousness with the stepwise incremental indent layout reading. These results indicate that this layout is an effective technique to improve the efficiency of reading text with line lengths of 5 characters per line without an increase in cognitive load or a decrease in comprehension. These experimental results indicate that the Japanese electronic text reader with these proposed techniques can improve the reading speed of text with line lengths of 5–40 characters per line without an increase in cognitive load or decrease in comprehension.
著者
小林 潤平 関口 隆 新堀 英二 川嶋 稔夫
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.479-484, 2015-03-01 (Released:2015-02-19)
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

We propose a new Japanese electronic text format with phrase-based line breaking for tablet computer to improve reading speed. The new text format prohibits splitting of a phrase and breaks a line between phrases. We measured reading speeds and eye movements using both the new text format and a conventional text format. Reading speeds for the new text formats are faster compared to the conventional text formats at all line lengths tested. The enhancement of reading speed in the new text format seems to be caused by the optimization of eye movements at the beginning of a long-length line, and the increase of short-length lines that can be recognized by a single fixation without horizontal saccade.
著者
小林 潤平 関口 隆 新堀 英二 川嶋 稔夫
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J99-D, no.1, pp.13-22, 2016-01-01

日本語の読み効率向上を目的に,文節ごとに文字ベースラインを階段状に下げながら文章をレイアウトする電子リーダーを開発し,その効果を読み速度や眼球運動の点から詳しく調査した.文字ベースラインを階段状に配置したレイアウトでは,直線状に配置した標準的なレイアウトよりも,最大で約11 %速く読めることがわかった.読み速度の向上は停留数の減少によってもたらされており,逆行数の減少と順行サッカード長の伸長が主な原因であることがわかった.
著者
小林 潤平 関口 隆 新堀 英二 川嶋 稔夫
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J99-D, no.1, pp.23-34, 2016-01-01

縦スクロール型の日本語電子リーダーにおいて,5〜40文字/行の行長変化がもたらす読み速度及び眼球運動への影響を検証した.読み速度は行長の伸長とともに増加し,最も短い5文字/行で最小,最も長い40文字/行で最大となったが,20文字/行付近で上限に至る傾向が認められた.読み速度の行長依存性は「停留時間」「順行サッカード長」「逆行による過剰停留数」「改行運動中の過剰停留数」のバランスで決定されることがわかった.また,行長が長いほど,停留時間は短く順行サッカード長は長くなって読み速度向上に寄与する一方で,逆行による過剰停留及び改行運動中の過剰停留は増えて読み速度の低下をもたらすというトレードオフの関係が見出された.トレードオフ関係の妥協点を最適行長とすると,本研究における文字サイズ4.4mm及び行高6.0mmの縦スクロール型日本語電子リーダーの最適行長は,20〜29文字/行と結論付けられた.
著者
小林 潤平 関口 隆 新堀 英二 川嶋 稔夫
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.29, 2015

読書中の眼球運動は停留とサッカードの繰り返しである。日本語文章における停留場所は文を構成する意味のまとまりに対応しているとの報告があり,意味的なまとまり単位で的確に停留しながら読み進めることができれば,より効率良く,より速く読める可能性がある。そこで本研究では,意味的まとまりのひとつである文節を認識しやすいように,文節毎に異なるタイミングで微振動させる日本語リーダーを提案し,その効果を検証した。
著者
小林 潤平 川嶋 稔夫
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.J154-J159, 2018 (Released:2018-09-26)
参考文献数
12
被引用文献数
1 2

飛ばし読みをしない通常読みについて,読み速度と眼球運動の関係を詳細に分析した.大学生200名の通常読みの速度は,約300~1200文字/分の範囲で単峰形に分布しており,平均値は653文字/分であった.このとき,最も速い速度と最も遅い速度の差は3倍以上であった.眼球運動分析より,読み速度の個人差は,停留時間の差ではなく,停留数の差によって生じていることがわかった.また,停留数の差は,主に順行サッカードの平均長の差によって生じていることがわかった.すなわち,通常読みにおいては,読み速度の個人差をもたらす主要因は順行サッカードの平均長であり,読み速度が速いほど順行サッカードが長く,読み速度が遅いほど順行サッカードが短いことがわかった.
著者
小林 潤平 関口 隆 新堀 英二 川嶋 稔夫
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.27, 2013

読書中の眼球運動は停留とサッカードの繰り返しであり,読み効率の向上には,不要な停留とサッカードを抑制することが重要である。電子ディスプレイにおいては,ユーザ操作で文字側を移動させることによって,視点を移動しなくとも読み進めることが可能となる。そこで本研究では,視点移動を抑制する文書レイアウトと,タッチパネル操作によるサッカード代替機構を,組み合わせた読書インタフェースを開発し,その効果を検証した。
著者
島 貴宏 寺沢 憲吾 川嶋 稔夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.467, pp.1-6, 2011-03-03
参考文献数
5

古い活字文書に対する画像同士の比較による全文検索技術が研究されている.全文検索にあたってはあらかじめ文字切り出しがなされていることが望ましいが,古い活字文書は現代の文書とは異なる特性を持っており,市販OCRソフトウェアでは高精度な文字切り出しが行えない.そこで本研究では,明治期の新聞画像に対する全文検索のため,高精度な文字切り出しを行うための画像処理技術について研究する.精度低下を招く要因として考えられる罫線・ノイズ・ルビを除去する手法を提案し,高精度化を図る.また,市販OCRソフトウェアでは古い活字文書に対するレイアウト解析に限界があるため,あらかじめ行切り出しを行うことでそれを助ける.実験の結果,文字切り出しの精度を約92%まで向上させることができた.
著者
小林 潤平 新堀 英二 川嶋 稔夫
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.71, no.10, pp.J241-J246, 2017 (Released:2017-09-25)
参考文献数
23
被引用文献数
1

文章を読み進める目の動きを効率化することで,読み心地や理解度を維持したまま読み速度の向上を図るための,電子リーダー上での日本語表示方式を提案する.読者が読みやすいと感じる一行の長さは20~29文字程度であるが,既存方式では行長が短いほど読み速度は低下するため,最大速度で読むためには一行40文字程度の行長が必要という課題があった.そこで本研究では,文節にもとづく改行位置の調整および文字ベースラインを文節単位で階段状に下げていく既存手法に加えて,新たに「隔行単位の背景着色」「行間隔の拡張」「階段状の行頭インデント」「行頭文節の微振動」の4手法を組合せた表示方式を考案し,その効果を読み速度や眼球運動の点から検証した.その結果,提案方式では,読者が読みやすいと感じる一行20~29文字の行長でも,一行40文字の場合と同等の最大速度で読めることがわかった.また,読み速度の向上は,停留数の減少に起因していることがわかった.
著者
島 貴宏 寺沢 憲吾 川嶋 稔夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.418, pp.57-62, 2010-02-11
参考文献数
7

割注の含まれた活字文書資料画像における文字切り出しの手法を提案する.市販OCRソフトウェアでは割注を検出することができないため,電子化の妨げとなっている.本研究では,割注の特性に注目して射影のモデルを立てることにより,割注を含んだ文書画像から文字の切り出しを行う.
著者
川嶋 稔夫
出版者
情報処理学会 ; 1960-
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1192-1197, 2012-10-15

観光都市函館は,歴史資料や古写真,古地図などの資料多数所有し,そのなかには観光の魅力を高めてくれるものが多く含まれている.地域デジタルアーカイブの取り組みを進めることで,観光事業のコンテンツの充実が期待できる.本稿では,著者らが推進してきた,函館圏地域デジタルアーカイブスのこれまでの取り組みを紹介するとともに,それを通じてみえてきた,地域コンテンツの観光への活用の現状をまとめてみたい.
著者
松下 勇夫 川嶋 稔夫
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.105(2005-CH-068), pp.41-48, 2005-10-28

本研究では、出所が明確でなく付加情報が少ない写真資料に基づいたディジタルアーカイブを設計するにあたって、コミュニティサイトとGPS携帯電話を連動させたハコログシステム(HAKO-LOG system)を開発し、注釈や位置情報、それらの信頼性情報の収集・蓄積を行ってきた。本稿では、ハコログシステムの仕組みとこれまでにハコログを利用して地域の市民と取り組んできた情報収集の試みについて報告する。
著者
迎山 和司 川又 康平 小林 真幸 川嶋 稔夫
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.1787-1794, 2014-08-15

プロジェクションマッピング(PJM)とは立体構造物の形に沿って,コンピュータで処理された映像をプロジェクタで投影する表現手法である.近年フェスティバルなどでPJMはさかんに行われており,対象を直接改変しないので歴史的文化財などに有用である.本論文では,函館市内の歴史建造物に対して実施されたPJMを事例としてあげて,これから実施する人が参考にできる事項をまとめた.加えて,集客効果の高いイベントを実施して得られた公立大学の地域貢献についての知見を述べる.Projection Mapping (PJM) is a technique for displaying visuals such as computer graphics onto buildings or walls using projectors. Recently, PJM is often used in events such as festivals. Since it requires no physical changes of the projection surfaces it is particularly suited in heritage environments. This paper describes useful information for realising a PJM event, using an actual case study carried out at a historic building in Hakodate. Also, it explains the essence of how a municipal university can make community contributions through contributing to popular spectacles.
著者
小林潤平 関口隆 新堀英二 川嶋稔夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, no.1, pp.37-39, 2013-03-06

読書中の眼球運動は,停留とサッカードの繰り返しであることが知られている。停留中には,中心視野において文字認識すると同時に,周辺視野において次の停留先の選定が行われるため,中心視野と周辺視野の両方の処理を向上させることが,読み効率の向上につながる。しかし,求心性視野狭窄など中心視野は見えるが周辺視野が見えなくなる症例では,周辺視野の処理が強く制限されるために,読み効率が著しく減少する。中心視野のみで読み進めることができる文書呈示手法としてはRapid Serial Visual Presentation(RSPV)が挙げられるが,RSVPは読み損ねた場合に再び戻って読み返す行為が非常に困難であるために読む際に極度の集中を要求し,快適な読書体験を実現することが難しい。そこで本研究では,中心視野のみに視野が制限された状態でも,読者への負担が少なくかつ効率よく読むことが可能な,文章を短く折り返す呈示とともにタッチパネルによるユーザ操作を取り込む読書インタフェースを提案し,その効果を検証する。
著者
迎山 和司 川又 康平 小林 真幸 川嶋 稔夫
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.1787-1794, 2014-08-15

プロジェクションマッピング(PJM)とは立体構造物の形に沿って,コンピュータで処理された映像をプロジェクタで投影する表現手法である.近年フェスティバルなどでPJMはさかんに行われており,対象を直接改変しないので歴史的文化財などに有用である.本論文では,函館市内の歴史建造物に対して実施されたPJMを事例としてあげて,これから実施する人が参考にできる事項をまとめた.加えて,集客効果の高いイベントを実施して得られた公立大学の地域貢献についての知見を述べる.
著者
奥野 拓 高橋 正輝 山田 亜美 川嶋 稔夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告情報基礎とアクセス技術(IFAT)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.3, pp.1-7, 2014-03-22

本研究は様々な形式でデジタル化され散在する地域の歴史資料を LOD 化し,関連付けることにより統合利用を可能とすることを目的とする.本報告では,函館地域の例として,絵葉書の画像アーカイブ,地域史年表,歴史上の人物紹介をそれぞれ RDF データセット化した事例を取り上げる.また,それらを関連付けた統合利用例として,「エピソードでつながる函館歴史写真」 と 「函館ゆかりの人物スポット」 を示す.Regional of historical records are digitized and on public via the Internet. This study aims at enabling integrated application of them by making LOD of them and link with each other. This report focuses on an activity in Hakodate, making RDF datasets of the archives of picture postcards, the chronology of city history, and the biography of famous historical persons. As examples of integrated applications, "The Historical Photographs of Hakodate Linked by Episodes" and "The Spots Associated with Persons of Hakodate" are shown.
著者
高橋 正輝 奥野 拓 川嶋 稔夫
雑誌
研究報告デジタルドキュメント(DD)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.9, pp.1-6, 2013-01-11

函館のデジタルアーカイブに含まれる大量の写真資料はメタデータが少なく,写真間が歴史的関連で関連付けられていない.そこで,函館の歴史に関する文献を利用することで写真資料のメタデータを補い写真間が関連付く可能性がある.写真資料と函館市史年表編,はこだて人物誌を Linked Open Data (LOD) として作成し公開する. LOD とは外部とのデータ連携を実現する技術である.函館の歴史資料を LOD 化することで,地域写真アーカイブの編纂を目指す.Photos in Hakodate photo archives have historical relations to each other, but there is no links between them. There is a possibility that the photos are linked by using historical records of Hakodate. This study aims to link the photos in the archives by generating Linked Open Data of photo archives, historical calendar, and historical figure of Hakodate.
著者
小林 潤平 川嶋 稔夫
雑誌
第84回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2022, no.1, pp.513-514, 2022-02-17

日本語文は縦書きでも横書きでも読めるという特徴をもつ。どちらが速く読めるのかについては読者の経験によるところが大きいとされ,1929年当時の実験では縦書き文章のほうが速く読めたことが報告されている。電子デバイスが普及した現在では,縦書きや横書きレイアウトのみならず,読者が文字列をスクロール移動させながら読む方式なども採用されている。現代の若年層は,このような新しいかたちでの読み体験を重ねてきており,その経験をふまえた読みの性質を把握することは重要である。そこで本研究では,現代の大学生の読み速度に着目し,縦書き横書きおよび縦スクロール方式が読み速度にあたえる影響について検証した。