著者
川端 晶子 澤山 茂 瓜生 恵子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.9-18, 1974-01-25 (Released:2010-10-29)
参考文献数
19
被引用文献数
7 6

44種の果実類, 3種の果菜類および3種の種実類のべクチンを定量した結果, 新鮮物可食部に対するペクチン酸カルシウムとしての全ペクチン含有量は, 次のようであった。1) かんきつ類4%以上: 温州みかん果皮3.00~3.99%: きんかんパルプ, ぶんたんパルプおよび果皮, ゆずパルプ。2.00~2.99%: ぶしゅかん, ゆず果皮。1.00~1.99%: きんかん果皮, 温州みかんパルプ。0.99%以下: きんかん果汁, 温州みかん果汁, ぶんたん果汁, ゆず果汁。2) その他の果実類2.00~2.99%: ポポー, アボカード。1.00~1.99%: かりん, いちじく, 赤すぐり。0.50~0.99%: りんご (紅玉, スターキング, デリシャス, ふじ, インド, 国光), すぐり, バナナ (エクアドル産, フィリピン産, 台湾産), かき, いちご, キィウィ, マンゴー, パパイア, まるめろ。0.49%以下: 和なし (二十世紀, 長十郎, 幸水), 洋なし, さくらんぼ, プラム, あんず, もも, うめ, クッキンダバナナ, りんご (むつ), びわ, レンブ, ぶどう (キャンベル, デラウェア, ネオ・マスカット, 巨峰), パイナップル。3) 果菜類0.50~0.99%: れいし。0.49%以下: トマト, 西瓜。4) 種実類5%以上: くるみ, らっかせい。1.00~1.99%: くり。全ペクチン中の各抽出区分の比率について, かんきつ類の果汁では, きんかん以外, W-S区がもっとも高く, 果皮およびパルプでは, きんかん以外は, P-S区がもっとも高く, つづいてH-S区であった。その他の果実類, 果菜類および種実類45種のうち, 28種はH-S区がもっとも高く, W-S区のもっとも高いものは9種, P-S区のもっとも高いものは8種であった。総体的に, 熱帯果実にW-S区の高いのが目立つ。
著者
川端 晶子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.70-79, 1972-06-20
被引用文献数
1

果実ペクチンの性状と、そのゼリー特性について見当した結果、次のような結論を得た.(1)新鮮果実の総ペクチン含有量は、柑橘類はいずれも高く、金柑のパルプ3.13%、果皮1.84%、柚子のパルプ3.76%、果皮2.96%、仏手柑2.60%であった。梅0.37%、桃0.39%、桜桃0.47%、でいずれも低く、すぐりは0.51%、マルメロ0.75%でやや高い値を示した。(2)分離調整したペクチン質の科学的性状中でとくに、無水ガラクチュロン酸の含有量は、金柑ペクチン64.11%、柚子ペクチン56.57%、仏手柑ペクチン57.12%、梅ペクチン55.44%、桃ペクチン46.42%、桜桃ペクチン54.25%、で無水ウロン酸として、すぐりペクチンは45.72%、マルメロペクチンは48.69%であった。ゲル形成に影響を与えると考えられているメトキシル基含有量は、柑橘類ペクチンは一般に高く、金柑ペクチン13.57%、柚子ペクチン12.73%、仏手柑ペクチン11,41%で、低いほうでは、梅ペクチン9.40%、桜桃ペクチン9.21%であった。(3)糖濃度別S.ペクチンゼリーの特性では、65%糖濃度のものがゼリー強度が最も大であった。酸濃度別S.ペクチンゼリーにおいて,クエン酸濃度0.1%以下では,ゼリーをつくらず,O.2%で最高のゼリー強度を示し,O.4%以上ではゼリー強度がいちじるしく弱められた。各種ベクチンの濃度別ゼリーにおいて,0.25%では液状またはのり状を呈し,S.ペクチンは0.5%以上,R.ペクチンは0.75%以上でゲルを形成するが,L.M.ペクチンでは,1.25%,1.5%ではじめて軟らかいゼリーをつくった。(4)果実ペクチンのOKADA gelometerによるゼリー特性において,調製法別では,いずれの試料においても,Acid in glass法によるものが,ゼリー強度がもっとも大で,破断の際の変形も少なく,α角,β角ともに小さい傾向を示した。Acid in boil法によるものが,それにつづき,Cooking jellyではゼリー強度が小さく,α角,β角ともに大で,やや異なったゼリー特性を示した。試料間では,柑橘類の金柑,仏手柑,および梅,マルメロペクチンがゼリー強度が大で,弾性のあるゼリー特性があると考えられるが,桃および桜桃ペクチンは,上記ベクチンにくらべてゼリー強度がかなり小さい。(5)果実ペクチンのCurdmeterによるゼリー特性においても,Acid in glass法によるものが,もっとも硬く,破断力も大で,Acid in boil法によるものがそれにつづくが,Cooking jellyでは,柔らかく,粘稠性を示すものもあった。試料間では,梅ペクチンがいずれの調製法による場合でも破断力の大きいゼリー特性を示し,金柑,仏手柑ペクチンではCooking jellyのみが粘稠性を示し,柚子,桃,桜桃ペクチンでは,いずれの調製法によるものも,粘稠性を示した。(6)メトキシル基含有量とCurdmeterによる硬さの関連性について,総体的にはいずれも9%以上の高メトキシルペクチンであり,硬さの値が大であったが,桜桃,桃,ペクチンゼリーとAcid in boil法による柚子ペクチンゼリーが,高メトキシルペクチンにもかかわらず,かなり小さい値を示した。水素イオン濃度とゲル化力,分子量の大小とゲル強度およびエステル化率とゲル形成速度などについて,今後検討を加えたい。最後に,本研究に関し終始御懇篤なる御指導をいただきました国学院大学木原芳次郎教授に深謝いたしますとともに実験に御協力下さいました百瀬晴子氏,沢山茂氏,土佐春代氏に感謝申し上げます。
著者
川端 晶子
出版者
調理科学研究会
雑誌
調理科学
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, 1982
被引用文献数
1
著者
本田 佳代子 阿久澤 さゆり 澤山 茂 中村 重正 川端 晶子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.226-231, 1997-08-20
被引用文献数
1

凍みいも2種を山梨県鳴沢村より,ブランコ,ニグロをボリビアより入手した。一般成分と糊化特性を検討し以下の結果を得た。1. 一般成分は,澱粉含量は56%であった。窒素含量も少なく生じゃがいもに比べて成分の変化がみられた。総食物繊維量は,生じゃがいもに比べて顕著に増加しており,中でもリグニンの含量が高かった。2. 示差走査熱量分析では,糊化開始温度が生じゃがいもに比べて凍みいもはわずかであるが高温側であった。また,ブランコ,ニグロでは低温側にあった。3. 澱粉の水可溶性区分の分子量を比較したところ,凍みいもとブランコ,ニグロは高分子側にピークがみられた。また,ヨウ素呈色反応によりFr I, II, III に分けたところ,生じゃがいもではFr III までみられたが,凍みいもではFr II までしか測定されず,凍結乾燥による組織成分の変化が示唆された。
著者
川端 晶子 澤山 茂
出版者
JAPAN SOCIETY OF NUTRITION AND FOOD SCIENCE
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.55-63, 1974

1) 標準的なババロアについて嗜好意欲尺度を用いて, 嗜好度検査を行ない, 男女2群の比較によるt検定の結果有意差は認められなかったが, 男子よりも女子のほうがやや高い平均値を示した。<BR>2) ババロアの基本的ゼリーについて, LMPゼリーは1%濃度, ゼラチンゼリーは, 2.0および2.5%濃度のものが好まれる結果を得た。レオロメーター特性値では, LMPゼリーは, ゼラチンゼリーにくらべて, 付着性が大きいところに特徴があり, 2点嗜好試験法の結果, LMPゼリーは若い人々に, ゼラチンゼリーは中年以上の人々に好まれる傾向が認められた。<BR>3) LMPのゲル形成には, 多価金属イオンが必要だとされているが, 牛乳中のカルシウムイオンの利用によって好ましいゲルが形成され, 牛乳濃度30~40%のものが適当であると考えられるが, LMPのゲル形成と金属イオンの関係については, 今後, 検討を加えたい。<BR>4) ババロアの甘味度については, 糖度20%ついで25%のものが好まれ, 蔗糖, 果糖およびマルチトールの3種の甘味剤については, LMPゼリーの甘味間には, 有意の差は認められなかったが, ゼラチンゼリーの甘味では, マルチトールを用いたゼリーの甘味に対する平均評点は低く, やや好ましくないことが示された。<BR>5) 4種のババロアのレオロメーター特性値のうち, LMPババロアは, ゼラチンババロアにくらべて, 硬さの値は小さいが, 付着性は大であり, 卵白を加えたものは, 卵黄のみ用いたものよりも, いずれも, 硬さの値は, やや小さいが付着性は大きい。しかし, 好みについては, 有意差は認められなかった。<BR>嗜好特性値間の相関行列を求めたところ, 総合評価とすべての嗜好特性値間に有意の相関が認められた。また, 総合評価に対する嗜好特性の相関の高いものから, 逐次, 重相関係数を求めてF検定の結果, いずれも, 有意の相関が認められた。さらに, 逐次, 回帰方程式を求めたところ, 総合評価に対し, 凝集性, ついで口あたり, 付着性といったテクスチャーの影響が大きいことが認められた。<BR>6) フルーツババロアと, ゼラチンフルーツババロアの間に, 前者は, 硬さの値は小さく, 付着性は大であるが, 官能検査の総合評価には有意差は認められなかった。
著者
相川 りゑ子 阿久澤 さゆり 永島 伸浩 川端 晶子
出版者
The Japanese Society of Applied Glycoscience
雑誌
澱粉科学 (ISSN:00215406)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.165-174, 1992-08-30 (Released:2010-06-28)
参考文献数
22
被引用文献数
3

カタクリ鱗茎から澱粉を調製し,対照として馬鈴薯および食用カンナ澱粉を用いて,理化学的性質を検討し,以下のような結果を得た. 1)カタクリ澱粉の平均粒径は24.3μmで,馬鈴薯,食用カソナ澱粉よりもやや小さかった.パンクレアチンによるカタクリ澱粉粒の分解性は馬鈴薯や食用カンナ澱粉粒に比べて高く,SEM像より,中心部から層状に穴のあく崩れ方が観察された. 2)電流滴定法によるアミロース含量はカタクリ澱粉が22.8%,馬鈴薯および食用カンナ澱粉が21.5および23.9%であった.澱粉をイソアミラーゼで枝切り後,生成物のゲル濾過分別を行った結果,アミロペクチンの枝切りされた直鎖部分と考えられるFr.IIとFr.IIIの数平均鎖長は,カタクリ澱粉は47.4と14.6で,馬鈴薯および食用カンナ澱粉に比べていずれもやや長く,また,カタクリ澱粉のFr.III/Fr.IIは2.0,馬鈴薯および食用カンナ澱粉は1.7および1.9であった. 3)糊化特性について,フォトペーストグラフィー,示差走査熱分析,ビスコグラフィーおよび動的粘弾性の測定を行い検討したところ,糊化開始温度ではビスコグラフィーによるものがいずれの澱粉でも数度高く,他の3種の機器による測定値は比較的近似しており,カタクリ澱粉は45~47℃と,低い値を示した.ビスコグラムの最高粘度は,馬鈴薯澱粉がもっとも高い値を示したが,冷却カーブはカタクリ澱粉と近似していた.動的粘弾性の最高ピーク時の貯蔵弾性率および損失弾性率は同様に馬鈴薯澱粉が最も高い値を示したが,tanδの経時変化では,カタクリ澱粉が最も低い値を示し,アミロースおよびアミロペクチンの微細構造の違いが示唆された.
著者
村山 篤子 川端 晶子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.265-271, 1980-05-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
8

卵, 牛乳, 砂糖を用いた攪拌カスタードについて, 卵として卵黄, 卵白, 全卵を使用し, 最終調理温度, 加熱時間の異なったカスタードを調製し, ハーケ社二重円筒形回転粘度計ロトビスコRV3型を用いて, とくに低ずり速度における流動特性について検討を行った.1) 卵黄, 卵白, 全卵を用い, 最終調理温度を78℃, 80℃, 82℃で調製したカスタードについておのおのの粘度を測定した. いずれも最終調理温度が高く, 加熱時間が長くなるにつれて粘度は高くなった. 3種間では, 卵黄, 全卵, 卵白カスタードの順に粘度は低くなっている. カスタードはいずれも非ニュートン流体で構造粘性を示した.2) 卵黄, 卵白, 全卵カスタードの流動履歴曲線は高ずり速度においてはずり速度流動化流動を示すが, 低ずり速度ではヒステレシスループを描く. 履歴面積からチキソトロピー特性値を求めたが, 卵黄, 全卵, 卵白カスタードの順に値は小さくなっている.3) 流動曲線から降伏値を求めた. 卵黄, 全卵, 卵白カスタードの順に降伏値は小さく, また最終調理温度が高いほど降伏値は大となっている.4) 一定ずり速度におけるずり応力-時間曲線から剛性率を求めた. いずれのカスタードもずり速度による大きな相違はない. 卵黄, 全卵, 卵白カスタードの順に値は小さくなっている. これは粘度, 降伏値と同様であった.また同種のカスタードでは最終調理温度が高くなるにつれて剛性率は増している.
著者
川端 晶子 澤山 茂
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.32-36, 1973-01-25 (Released:2010-10-29)
参考文献数
17
被引用文献数
5 5

24種類の蔬菜類のペクチンを定量した結果, 新鮮物可食部に対するペクチン酸カルシウムとしての全ベクチン含有量は, 次のようであった。1) 2.00%以上: えだまめの豆。2) 1.00~1.99%: オクラ, かぼちゃ, にんにく, ごぼう。3) 0.50~0.99%: エシャロット, ビート, くわい, じゃがいも, にんじん, やまといも, さやえんどう, ピーマン, さやいんげん。4) 0.10~0.49%: さといも, なす, ルバーブ, うど, たまねぎ, だいこん, かぶ, きゅうり, ししとうがらし, れんこん。全ペクチン中の各抽出区分の比率について, W-Sはごく低く, H-Sがもっとも高いものが多く, つづいてP-Sが高い。H-Sが50%以上をしめるものは11試料, P-Sが50%以上をしめるものが7試料であった。これらのH-S, P-Sは, 細胞膜を形成し, 組織の硬さや水分保持に役立っている。全ペクチン含有量についてのみ考えるならば, 果実類と蔬菜類の間には, 総体的に大差はみとめられなかったが, 化学構造上かなりの相違点が推測できる。今後, これらの問題についても研究を展開して行きたいと考えている。
著者
川端 晶子 澤山 茂
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.555-562, 1976 (Released:2008-11-21)
参考文献数
25
被引用文献数
8 9

HMPゲルおよびLMPゲルの基礎的粘弾性を明らかにする目的で,圧縮型平行板粘弾性計を用いクリープ曲線を求め解析した結果,次のような結果を得た. 1. 1.5~2.5%のHMPゲルおよび, 2ならびに2.5%のLMP ゲルは,いずれもフックの弾性体. 2組のフォークトの粘弾性体および,ニュートン粘性体の6要素模型で示すことができた.弾性率(E0,E1, E2)は, 104~106dyn/cm2,粘性率(η1, η2, ηN)は, 107~109 poiseであった. 2.ペクチン濃度の増加に従い,いずれの弾性率,粘性率も漸増していた.また,温度上昇にともない,弾性率,粘性率の漸減が認められたが, LMPゲルでは, 30°C以上でゲルの弾性率および粘性率の低下が目立ち,ゲルの脆弱化が認められた. 3.未処理ならびに精製HMPゲル,および精製LMPゲルのマスター・カーブが合成され,シフトファクターが求められた.すなわち, HMPゲルでは,11.0~49.0°Cの温度範囲で,精製LMPゲルでは, 5.5~24.5°Cの温度範囲で,温度,時間の換算則が成立つことが認められた.シフトファクターと絶対温度の関係から,みかけの活性化エネルギーを求めたところ,両者のHMPゲルは約30Kcal/mol.,精製LMPゲルは約65 Kcal/mol.であった.また,遅延スペクトルが求められ,未処理HMPゲルは, 2つの極大値をもつ山型分布を,精製HMPゲルおよび精製LMPゲルは,遅延時間の大きい方に極大値をもつ山型分布を示した.
著者
石井 靖子 川端 晶子 中村 道徳
出版者
The Japanese Society of Applied Glycoscience
雑誌
応用糖質科学 (ISSN:13403494)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.107-115, 1998-06-30 (Released:2010-06-28)
参考文献数
30

熱帯産澱粉4種すなわち食用カンナ,アロールート,キャッサバ,サゴの澱粉と対照として馬鈴薯とトウモロコシの澱粉を選び,2,3,4%の澱粉糊液につき,ずり速度流動化流動,チキソトロピー,降伏値,流動の見かけの活性化エネルギーを測定した. 各澱粉糊液は非ニュートン流動を示した.流動曲線につき,10s-1から300s-1の範囲で直線が得られたのでベキ則を適応し,流動方程式τ=Kγnを求め,粘性定数(K)および流動性指数(n)を求めた. キャッサバとサゴの各濃度の澱粉糊液および4%アロールート澱粉糊液の流動性指数(n)は,20~60℃に比べて10℃ の値が極端に小さく馬鈴薯澱粉糊液に近い性質を示し,食用カンナと2,3%アロールート澱粉糊液は,温度依存性が小さく,トウモロコシ澱粉糊液に近い性質を示した.流動性指数(n)と分子特性の関係は,10℃ で値が小さく20~60℃ で大きくなる馬鈴薯に代表されるタイプのnはアミロースとアミロペクチンの分子量が両方とも大きい傾向であり,10~60℃ まで変化が少ないトウモロコシに代表されるnを示すものは,アミロースとアミロペクチンの分子量が両方とも小さい傾向がみられた.サゴはこの傾向に一致しなかった. チキソトロピー性はキャッサバ,食用カンナ,サゴ,4%アロールート糊液に10~60℃ まで認められ,キャッサバ,サゴが大きく,食用カンナは中位,アロールートは最小であった.10℃ でチキソトロピー性が大きい馬鈴薯とキャッサバはアミロースとアミロペクチンの分子量が両方とも大きい傾向で,食用カンナ,アロールート,トウモロコシは,チキソトロピー性は中位から最小であるが,これらはアミロースとアミロペクチンの分子量は両方とも中位から最小の傾向が認められた.サゴはこの傾向と一致しなかった. 降伏応力は4%アロールート澱粉糊液の10,20℃と3,4%トウモロコシ澱粉糊液の10~60℃ に認められた. 流動の見かけの活性化エネルギーは,6種の澱粉の2,3,4%糊液について,約8.5~17kJmol-1の範囲であった.
著者
鈴野 弘子 杉山 法子 三好 恵真子 澤山 茂 川戸 喜美枝 川端 晶子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
榮養學雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.335-340, 1995-10-01
参考文献数
5
被引用文献数
1

全国3,420件の学校給食献立を解析し, 学校給食における野菜使用の現状について調査した。<br>緑黄色野菜の出現頻度は, にんじんが3,726回で最も多く, その他の野菜ではたまねぎ, いも類ではじゃがいも, きのこ類では生しいたけが第1位であった。1食当たりの野菜の平均使用量は, じゃがいも, にんじん, たまねぎが多かった。学校給食では限られた種類の野菜が繰り返し使用され, 量的には国民栄養調査結果の野菜摂取と比較して, にんじん, たまねぎの使用が非常に多いことが認められた。また, 1食当たりに使用される野菜数は, 全国平均で6.3種類であった。ビタミンA及びビタミンCの摂取は, 野菜が大きく寄与していた。
著者
大塚 洋子 澤山 茂 川端 晶子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.177-184, 1995-08-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
14
被引用文献数
1

Jam was prepared from fresh rhubarb, and its properties and sensory characteristics were compared with fourteen kinds of manufactured jam.The pH value of the rhubarb jam was 3.55, a higher value than those of the other sample jams, its hardness was relatively low, and its cohesiveness and adhesiveness were about average.The sensory attributes of the jam samples were investigated by a factor analysis of the results of a sensory evaluation that was conducted by the semantic differential (SD) method.A profile of the sensory attributes was obtained by the SD method, using 20 parameters concerning appearance, flavor and texture. The factor analysis by the principal factor method of the intensity of sensory attributes ranked appearance first, taste and odor second.The factor analysis based on “like or dislike” of the sensory attributes, indicated that the first factor was taste and odor, and the second was appearance. The two-dimensional spatial diagram of the samples was made from the scores of these two factors as a correlation diagram, and the fifteen kinds of jams classified into two groups. The rhubarb jam was classified in the group of fruits and vegetables excepting table fruits.
著者
川端 晶子 澤山 茂
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.21-25, 1974-02-28 (Released:2010-02-22)
参考文献数
8
被引用文献数
1 2

1) 追熟によって, 澱粉から糖への成分転換が行なわれ, とくに7日目以後が顕著である。 試料間における糖含量の大きな差は認められなかったが, フィリピン産バナナの糖含量が比較的高かった。2) pHおよび酸度の変化では, 5日目ないし7日目にややpHが低く, 酸度を増す傾向にあり, climacteric riseの現象との一致の傾向を推測できる。3) バナナ果実の果肉と果皮の割合は, 平均して, 果肉60.7~62.2%, 果皮39.2~37.8%である。4) 追熟に伴い, 全ペクチン量は漸減し, とくに追熟後半で減少する傾向にあるが, 本追熟条件において適食期である9日目の全ペクチン含量は, エクアドル産バナナ果肉0.55%, フィリピン産バナナ果肉0.66%, 台湾産バナナ果肉0.68%であった。抽出区分の比率では, P-S区およびH-S区は, 追熟によって減少し, W-S区は増加するが, これは, 果肉が漸次軟化していくことを実証している。 バナナのペクチンを利用する調理加工には, 最も適した追熟条件を選定する必要があろう。5) 果皮中のペクチン含量は概して少なく, 追熟中の変化も顕著ではない。 抽出区分ではH-S区が最も多く, プロトペクチンの多いことを示している。
著者
石井 靖子 中原 久恵 服部 滋 川端 晶子 中村 道徳
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.32-37, 1995-01-15
参考文献数
13
被引用文献数
1

熱帯産澱粉,すなわち,ショクヨウカンナ,アロールート,キャッサバ,サゴの澱粉と対照としてバレイショとトウモロコシの澱粉を選び,それらより分離したアミロペクチンにつき枝切り酵素であるイソアミラーゼを作用させて,その変化を検討した.すなわち光散乱法により重量平均分子量M<SUB>W</SUB>と分子の広がりを示す慣性半径<I>R</I><SUB>G</SUB>の測定,粘度測定により固有粘度〔η〕を算出し,枝切り過程の変化を測定した.<BR>その結果M<SUB>W</SUB>と<I>R</I><SUB>G</SUB>の関係は,M<SUB>W</SUB>が(4-5)×10<SUP>6</SUP>近辺に減少する過程では,M<SUB>W</SUB>に対して<I>R</I><SUB>G</SUB>がやや大きいもの(キャッサバ,トウモロコシ),小さいもの(サゴ),両者の中間のもの(バレイショ,ショクヨウカンナ,アロールート)が認められた.しかし6種とも近接し同じ様な勾配で減少していることから,6種ともM<SUB>W</SUB>の減少に対する<I>R</I><SUB>G</SUB>の減少の割合は大きな差はみられず,従って同じような分解過程を経ていくものと思われる.<BR>更に分解が進むと,ばらつきが起こり差が見られた.またM<SUB>W</SUB>や「η」の減少速度には,種類により差があり,イソアミラーゼが作用しやすいものと,しにくいものがあるようである.
著者
川端 晶子 澤山 茂 Palomar Lutgarda S.
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.289-299, 1985

フィリピンのメニュー・カレンダー (Your Regional Menu Guide) を資料とし, 要素技術連関解析の手法を用いて, 献立における調理素材と調理法の相互関係の解析を行い, 以下のような結果を得た。<br>1) メニュー・カレンダーに記載されている料理数は3,414件であった。食品の出現頻度の合計は7,732回であったが, 大別して, エネルギー食品群29.1%, 身体構成食品群24.1%, 機能調整食品群41.1%, その他5.7%であった。出現頻度の最も高い食品は玉ねぎで, っづいて, トマト, 植物油, 生鮮魚, にんにく, うるち米の順であった。<br>2) 調理素材の共出現頻度は, 玉ねぎとトマトが470回であり, 連関度は0.6752が求められた。つづいて, 玉ねぎとにんにく, 玉ねぎと植物油, にんにくと植物油, トマトと植物油, トマトとにんにく, 砂糖とココナッツ, 玉ねぎと生鮮魚の組み合わせの順であった。<br>3) 調理法の出現頻度では"煮る"が最も高く, つづいて"生","炒める","揚げる","焼く","蒸す"の順であった。"煮る"と連関度の最も高い食品はうるち米で, つづいて, 玉ねぎ, 生鮮魚, トマト, 砂糖, ココナッツの順であった。"生"ではバナナ,"炒める"では植物油,"揚げる"では生鮮魚,"焼く"でも生鮮魚, "蒸す"ではもち米が最も高い連関度を示した。<br>4) 総括してみるならば, 食料栄養研究所 (FNRI) は, フィリピンの食生活の背景となっている自然, 社会, 文化の諸条件もふまえ, 国民栄養調査の結果をきめ細かく分析したうえで, おすすめメニュー集をカレンダーにまとめ, 誰にでも解りやすく, すぐ役立つ栄養改善の効果をねらったものであるということができる。