著者
高橋 智子 齋藤 あゆみ 川野 亜紀 朝賀 一美 和田 佳子 大越 ひろ
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.347-354, 2002-04-15
被引用文献数
9

The necessity of tenderizing meat for the elderly and complete denture wearers was apparent after evaluating the influence of the hardness of the meat samples on the ease of feeding persons with different chewing capability. Meat samples were tenderized by soaking in a sodium hydrogen carbonate solution and then heat treated by vacuum cooking. The hardness of the meat samples decreased with increasing concentration of sodium hydrogen carbonate in the soaking solution. A sensory test showed that the ease of feeding of persons increased with decreasing hardness of the meat samples, while hydration of the meat protein was increased. The apparent hardness of the meat samples increased with decreasing compression speed, so that the chewing rhythm of complete denture wearers and of the elderly was slower than that of dentate subjects. The results indicate that meat was not sufficiently masticatable as a food for the elderly and the complete denture wearer as compared with the dentate subjects since the compression speed depended on the apparent hardness of the meat samples in this study. The overall results reveal that tenderizing meat by sodium hydrogen carbonate soaking made it easier to feed the elderly and the complete denture wearers.
著者
高橋 智子 川野 亜紀 中川 令恵 大越 ひろ
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.314-322, 2007-10-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
13
被引用文献数
2

本研究では,高齢者に好まれるごぼうを材料とした,食べやすいレトルト食品開発の基礎的研究を,力学的特性,咀嚼運動,官能評価より検討した。その結果,加圧・加熱時間が長く,表面積を大きく成形したごぼうであるほど軟かく調理できることが判った。また, ごぼう繊維に対して, 斜め方向から咀嚼できるよう成形したごぼ,咀嚼速度が速く食べやすいことが示された。以上の結果より,ごぼうは,加圧・加熱時間,加熱時の表面積,および咀嚼時における臼歯の貫入方向を考慮することで,食べやすいごぼう調理が可能になると推測される。
著者
川野 亜紀 細田 千晴 高橋 智子 大越 ひろ
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.13-20, 2006-01-15
被引用文献数
5

Mixed gel-sol samples were prepared by mixing yam gel with grated yam sol. The sol samples were prepared to five different levels of hardness : those resembling salad oil, yogurt, mayonnaise, grated yamatoimo, and mashed potato. The lowest hardness of the mixed gel-sol samples was achieved from the sol samples with a hardness similar to that of yogurt or mashed potato. The higher the concentration of the sol used in the sample, the higher were the values for the "adhesive energy" and "cohesiveness." The results of a sensory evaluation of the mixed gel-sol samples revealed that the higher the concentration of the sol used in the mixed sample, the more likely it was to be evaluated as "sticky" and "cohesive." The samples made from the sols similar in hardness to mayonnaise or grated yamatoimo were evaluated as the easiest to swallow. The samples made from the sols similar in hardness to yogurt or mayonnaise were rated having less "residual feeling in the mouth." The sensory evaluation comparing gel sample alone with mixed gel-sol samples revealed that those samples in which the gel was covered with the sol were more likely to be evaluated as "soft" and having less "residual feeling in the mouth" than sample of the gel alone.
著者
千田 麻美子 川野 亜紀 高橋 智子 大越 ひろ
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.15, pp.4, 2003

【目的】 リゾットはイタリアの米料理であるが、そのテクスチャーとおいしさに関する報告はほとんど見られない。そこで、本研究ではリゾットのテクスチャーとおいしさに及ぼす米品種の影響について検討した。【方法】 日本米(Aこしひかり)およびイタリア米3種(Bウ゛ィアローネナノ,Cカルナローニ,Dアルボーリオ)の計4種を材料として用いた。調製方法は日本イタリア料理協会会員を対象に行ったアンケート調査を参考に、実験室レベルで調製可能なモデルを検討した。リゾットのテクスチャーとしては、調製後30分までの変化について、リゾット全体(全粒法)のテクスチャー特性の硬さ,凝集性,付着エネルギーおよび、米粒一粒あたり(一粒法)の破断荷重を測定した。また、シェッフェの一対比較芳賀変法を用い、調製後のリゾットについて、かたさ、存在感、べたつき感、好ましさの4項目について評価してもらった。【結果】 4種の米を用いたリゾットは、いずれも調製直後から経時的に、テクスチャー特性の硬さは増加傾向を示し、米一粒の破断荷重はやや減少傾向を示した。付着エネルギーは放置時間に伴い4試料とも増加傾向を示したが、Aこしひかりを用いたリゾットが他のイタリア米3種のものより大となった。しかし、Dアルボーリオを用いたリゾットは他のイタリア米のものより付着エネルギーの増加が顕著であった。官能検査の結果、AこしひかりとCカルナローニで調製したリゾットが好まれた。
著者
高橋 智子 齋藤 あゆみ 川野 亜紀 朝賀 一美 和田 佳子 大越 ひろ
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.347-354, 2002-04-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
15
被引用文献数
7

本研究では, 4段階の濃度の異なる重曹溶液 (0mol/l濃度として蒸留水, 0.1mol/l, 0.2mol/l, 0.4mol/l) に浸漬することにより, 軟化処理を施した食肉の硬さと食べ易さの関係について検討を行った.(1) 牛肉, 豚肉ともに, 浸漬する重曹溶液濃度が高くなるに従い, 生肉に対する試料肉の重量減少率が小さくなった.このことより, 食肉を浸漬する重曹溶液濃度が高くなるに従い, 水和が増し保水性が増加すると推測される.また, 重曹濃度が高くなるに従い, 牛肉, 豚肉ともに加熱処理後の肉色が暗くなり, ことに, 牛肉において, その傾向が顕著であった.(2) 肉を浸漬する重曹濃度が高くなるに従い, 軟らかくなり, ことに0.2mol/lおよび0.4mol/l濃度の重曹溶液に浸漬した試料肉が0 mol/l 試料肉すなわち蒸留水浸漬肉に比べ, 有意に軟らかいことが認められた.(3) 重曹溶液濃度が高く, 見かけの硬さが軟らかい試料肉は牛肉および豚肉ともに, 咀嚼時に軟らかく, 咀嚼後に形成された肉食塊は飲み込み易く, また口中の残留物も少ないことが認められ, 食べ易い肉であることが示唆された.(4) 試料肉の見かけの硬さは圧縮速度が遅くなるに従い, 硬くなる傾向を示した.このことより, 咀嚼速度が遅くなる傾向にある中高齢者群や義歯装着者群は低年齢群に比べ, 肉を咀嚼する場合, より多くの力を要することが推測される.このことからも, 軟らかく, 噛み切り易く, 咀嚼し易い肉の開発が重要であるといえる.本研究は基礎的研究であるため高齢者や義歯装着者をパネリストとして官能評価を行っていない.しかし, 高齢者や義歯装着者にとっても咀嚼時に軟らかく, 食べ易い肉は, 重曹などにより軟らかく処理した肉であることが推測され, 肉の軟化操作の重要性が認められた.
著者
高橋 智子 川野 亜紀 大越 ひろ 中川 令恵 道脇 幸博 飛田 昌男 長門石 亮 別府 茂
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.223, 2005

<b>目的</b> ユニバーサルデザインフード区分の「容易にかめる(かたいものや大きいものはやや食べづらい人を対象)」に分類されるレトルト市販介護食品について、咀嚼運動の特徴をあらわすことができる物性を検討した。<br><b>方法</b> レトルト市販介護食品17品目に含まれる肉、魚、豆腐、芋、根菜類等の調理品32種類のテクスチャー特性、および破断特性を測定した。ことに硬さについては、圧縮速度を変えて測定を行い、圧縮速度依存性を検討した。併せて、同程度の硬さではあるが硬さの圧縮速度依存性が異なる4種類の材料(太刀魚、揚げ豆腐、里芋、ごぼう)について、2次元6自由度顎運動測定器により下顎運動の測定を行った。21_から_25歳までの健常な女性5名の被験者が、同一試料について4回の咀嚼を行った。咀嚼時における下顎運動の垂直成分を示すパターンより、第一咀嚼の波形から最大開口量、最大閉口速度、閉口相時間、最大閉口速度が出現した閉口相開始よりの時間、平均閉口速度、および嚥下開始迄の咀嚼回数、咀嚼時間を求めた。<br><b>結果</b> 線維の多いごぼうの硬さは圧縮速度が遅い方が硬いことが認められ、他の3種類の試料とは異なる圧縮速度依存性を示した。他の3種類の試料よりも、一口量が大きい揚げ豆腐の最大開口量、嚥下開始迄の咀嚼回数および咀嚼時間は有意に長いものとなった。また、圧縮速度依存性の異なるごぼうは他の3種類の試料に比べ、最大閉口速度に有意差は認められなかったが、最大閉口速度が出現した閉口相開始よりの時間は有意に遅くなり、また平均閉口速度も有意に遅いことが認められた。
著者
高橋 智子 川野 亜紀 飯田 文子 鈴木 美紀 和田 佳子 大越 ひろ
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.357-364, 2003-05-15
参考文献数
11
被引用文献数
13

本研究では,高齢者が食べ易い食肉開発を目的とし,豚肉の重曹未処理肉、重曹溶液浸漬肉(0.2mol/lおよび0.4mol/l重曹溶液浸漬)および豚挽肉に小麦粉を混合した再構成肉の力学的特性,食べ易さおよび咀嚼運動について検討を行った。(1)再構成肉の加熱処理後の重量減少率は,重曹未処理肉や重曹溶液浸漬肉に比べ顕著に小さく、再構成肉の保水性が大きいことが認められた。(2)重曹未処理肉および重曹溶液浸漬肉の応力-ひずみ曲線において,ひずみ0.8(m/m)までの圧縮では明確な破断点は認められなかったが,再構成肉には,ひずみ約0.3(m/m)で破断点が認められた。また,重曹未処理肉および重曹溶液浸漬肉のひずみ0.8(m/m)におけるみかけの応力の圧縮速度依存性は,異なる傾向を示した。(3)ひずみ0.8(m/m)におけるみかけの応力と咀嚼時のかたさおよび口中の残留物の多さの間には,高い正の相関関係が認められた。一方,咀嚼後に形成される肉食魂の飲み易さでは,重曹未処理肉と重曹溶液浸漬肉については,ひずみ0.8(m/m)におけるみかけの応力が小さくなるに従い飲み易くなることが示された。しかし,最もみかけの応力が小さく,咀嚼時にやわらかいと評価された再構成肉の飲み易さは,0.4mol/l試料肉と同程度であった。再構成肉は4種の試料肉の中で最もおいしくないと評価された。このおいしさの評価が,再構成肉と0.4mol/l試料肉の肉食魂の飲み込み易さの評価結果に影響を与えているものと推測される。(4)重曹未処理肉と重曹溶液浸漬肉の嚥下終了までの咀嚼回数は,ひずみ0.8(m/m)におけるみかけの応力が最も小さい再構成肉に比べ有意に少ないことが認められた。また,最もひずみ0.8(m/m)におけるみかけの応力が大きい重曹未処理肉の閉口相時間は,他の試料肉に比べ有意に長く、最大閉口速度も遅いものとなった。このことより、重曹未処理肉は,重曹溶液浸漬肉や再構成肉のような食肉加工品に比べ,健康有歯顎者にとって,咀嚼しにくい食肉であることが示された。本研究の結果から,食肉は重曹溶液により軟化処理を施したり,挽肉を主な原料として再構成肉のように加工することで,高齢者の義歯装着者にとっても,咀嚼し易く,食べ易い,良質なたんぱく質給源のための食品になることが推測される。