著者
川島 眞 橋本 晋 大橋 実可子 常深 祐一郎 海老原 全
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.356-365, 2017 (Released:2018-06-15)
参考文献数
10

目的:ヘパリン類似物質フォーム(以下,フォーム)の皮脂欠乏症患者における有効性および安全性を確認するため,ヘパリン類似物質ソフト軟膏(ヒルドイド®ソフト軟膏0.3%,以下,ソフト軟膏)からフォームへの切り替えを想定した試験デザインで,有効性および安全性を評価するとともに両製剤の使用感を調査した。方法:非対照,非盲検,多施設共同で,皮脂欠乏症患者にソフト軟膏を2週間塗布した後フォームを2週間塗布した。有効性は,ソフト軟膏の塗布終了時の治療効果がフォームに切り替えた後も維持されたか否かで総合的に判定した。また,皮膚所見スコアの経時推移も確認した。安全性は有害事象および臨床検査値で確認し,試験薬の使用感は患者アンケートで調査した。結果:60例が試験に組み入れられ,全例が試験薬を投与され試験を完了した。ソフト軟膏を2週間塗布した後の治療効果は,フォームへ切り替えた後もデータ欠測の1例を除き全例で維持された。皮膚所見スコアは経時的に改善した。フォーム切り替え後に有害事象の発現割合は増加せず,臨床検査値への影響もなかった。患者アンケートでは,フォームは展延性に優れ,べたつきの少ない製剤であることが示唆された。結論:フォームの有効性が確認され,安全性に問題はみられなかった。患者アンケートでは,塗り広げやすくべたつきの少ない保湿剤を求める患者にとってフォームが新たな剤形選択の一つとなる可能性が示唆された。(皮膚の科学,16: 356-365, 2017)
著者
日本皮膚科学会疥癬診療ガイドライン策定委員会 石井 則久 浅井 俊弥 朝比奈 昭彦 石河 晃 今村 英一 加藤 豊範 金澤 伸雄 久保田 由美子 黒須 一見 幸野 健 小茂田 昌代 関根 万里 田中 勝 谷口 裕子 常深 祐一郎 夏秋 優 廣田 孝司 牧上 久仁子 松田 知子 吉住 順子 四津 里英 和田 康夫
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.125, no.11, pp.2023-2048, 2015-10-20 (Released:2015-10-22)
参考文献数
185

Here, we present our new guideline for the diagnosis and treatment of scabies which we, the executive committee convened by the Japanese Dermatological Association, developed to ensure proper diagnosis and treatment of scabies in Japan. Approval of phenothrin topical use under the National Health Insurance in August 2014 has contributed to this action. Permethrin, a topical anti-scabietic medication belonging to the same pyrethroid group as phenothrin, is already in use worldwide. For making proper diagnosis of scabies, following three points should be taken into consideration: clinical findings, detection of the mite(s) (Sarcoptes scabiei var. hominis), and epidemiological findings. The diagnosis is confirmed when the mites or their eggs are identified by microscopy or by dermoscopy. As we now have a choice of phenothrin, the first line therapy for classical scabies is either topical phenothrin lotion or oral ivermectin. Second line for topical treatment is sulfur-containing ointments, crotamiton cream, or benzyl benzoate lotion. Gamma-BHC ointment is no more provided for clinical use. If the patient is immunosuppressed, the treatment option is still the same, but he or she should be followed up closely. If the symptoms persist, diagnosis and treatment must be reassessed. For hyperkeratotic (crusted) scabies and nail scabies, removal of thick scabs, cutting of nails, and occlusive dressing are required along with topical and/or oral treatments. It is important to apply topical anti-scabietic lotion/cream/ointment below the neck for classical scabies or to the whole body for hyperkeratotic scabies, including the hands, fingers and genitals. For children and elderlies, it is recommended to apply treatment to the whole body even in classical scabies. The dosage for ivermectin is a single oral administration of approximately 200 μg/kg body weight. It should be taken on an empty stomach with water. Administration of a second dose should be considered at one-week with new lesions and/or with detection of mites. Safety and effectiveness of combined treatment with topical and oral medications are not yet confirmed. Further assessment is needed. Taking preventative measures is as important as treating those infected. It is essential to educate patients and healthcare workers and conduct epidemiological studies to prevent further spread of the disease through effectively utilizing available resources including manpower, finance, logistics, and time. (Jpn J Dermatol 125: 2023-, 2015)
著者
常深 祐一郎 五十嵐 敦之 佐伯 秀久 宮地 良樹 川島 眞
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.131, no.6, pp.1511-1524, 2021-05-20 (Released:2021-05-20)
参考文献数
23

皮脂欠乏症に対する認識とその治療実態を把握するために,皮膚科,小児科を始め複数の診療科の医師1,088名にアンケートを実施した.その結果,臨床現場では,皮膚科医に限らず広い領域の診療科の医師は,多くの疾患や状態が皮脂欠乏症をきたしうることを認識しており,その皮脂欠乏症は治療が必要で,医療用保湿剤が重要であると考えている.一方で多くの医師は軽症の場合には医療費も意識してセルフメディケーションを活用することや,美容目的には処方しないようにしているなど,保険診療の枠組みも意識していることが明らかになった.
著者
常深 祐一郎
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.J71-J75, 2016 (Released:2016-05-31)
参考文献数
15
被引用文献数
1 5

爪白癬治療の基本は経口抗真菌薬であるが,経口抗真菌薬は爪白癬治療のためだけにあるのではない.外用のみでは難治な角化型足白癬には経口抗真菌薬の併用が有効である.眼や耳,口などに接する顔面白癬,広範囲の体部白癬,外陰部の複雑な部位に及んだ股部白癬などは完全に外用し尽くすことは困難で,再発が多くなる.よって経口抗真菌薬が必要である.白癬だけでなく,広範囲の癜風やマラセチア毛包炎,爪カンジダ,カンジダ性爪囲爪炎にも経口抗真菌薬は重宝する.また,真菌症であっても抗真菌薬の外用が困難または禁忌となる場合がある.頭部白癬は外用抗真菌薬の刺激で炎症が強くなる可能性があり,外用できたとしても毛包内までは効果が及ばないため,経口抗真菌薬のみを使用する.また,びらんや接触皮膚炎などを伴った趾間型足白癬は,外用抗真菌薬により刺激性皮膚炎を起こして悪化するため使用しづらい.この場合,局所はステロイド外用薬や亜鉛華軟膏などで治療し,白癬菌には経口抗真菌薬で対応し,合併症消失後は外用抗真菌薬に切り替える.さらに外用は手間と時間を要するため,アドヒアランスが低下しがちである.そこで,経口抗真菌薬を併用し,治療効果を高め,治療期間を短縮することも有用である.経口抗真菌薬は,イトラコナゾールとテルビナフィンの違いを理解して使用することが重要である.新規経口抗真菌薬の臨床試験も行われており,経口抗真菌薬がさらに活用されることを期待する.
著者
常深 祐一郎
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.J51-J54, 2017 (Released:2017-05-31)
参考文献数
9
被引用文献数
1

白癬菌抗原キットは,白癬菌の細胞壁に存在する多糖類に反応するモノクローナル抗体を使用してイムノクロマト法の原理で検体中の白癬菌抗原を検出する.臨床研究から本キットは爪白癬診断において利用価値が高いが,足白癬診断ではあまりメリットがないことが判明したため,爪白癬の体外診断薬として開発を進め,体外診断用医薬品として承認された.本キットの抽出液は爪検体から短時間に効率よく抗原を抽出できる.爪白癬を疑うも鏡検で菌要素をみつけられないときに,本キットによる検査を行って陽性であれば,再度鏡検を行うことで見落としを少なくすることができる.また,鏡検ができない現場でも本キットで陰性の場合は白癬治療を行わないようにすれば,無駄な治療や医療費を減らすことができる.本検査法はあくまでも従来の真菌検査法を補完するもので,最終的には鏡検による形態学的確認を要する.鏡検と本キットを組み合わせることにより爪白癬診断の精度が高まることが期待される.
著者
五十嵐 中 松崎 稔矢 滕 麗達 長谷川 紗由美 常深 祐一郎
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.131, no.4, pp.719-731, 2021-04-20 (Released:2021-04-21)
参考文献数
26

ホスラブコナゾールL-リシンエタノール付加物(F-RVCZ)を含む爪白癬に対する薬剤の費用対効果を,完全治癒率と質調整生存年(quality-adjusted life years:QALY)をアウトカムとして評価した.各薬剤の標準的な投与期間における投与開始48週間後の評価をした場合,F-RVCZを最も安価のテルビナフィン後発品と比較すると,費用は57,361円増大し,完全治癒率は20.7ポイント増加する.完全治癒者1人増加当たりの増分費用効果比は,277,155円,1 QALY獲得あたりの増分費用効果比は1,979,681円となり,一般的に許容可能な上限値(500~600万円/QALY)の水準を下回っており,費用対効果に優れた薬剤であると判断した.
著者
常深 祐一郎 加藤 豊章 森村 壮志
出版者
東京女子医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

表皮で産生されたケモカインCCL17が皮膚での免疫・炎症・再生に及ぼす影響を検討した。創傷治癒においてはCCL17は線維芽細胞の遊走を促進し、CCR4を発現したNGF産生リンパ球や肥満細胞を集めることにより創傷治癒を促進していることが示唆された。腫瘍免疫においてはCCL17が皮膚での腫瘍免疫を抑制している可能性が見いだされた。また抗アレルギー薬は表皮細胞ならびに真皮線維芽細胞からのCCL17産生を抑制した。CCL17は創傷の治療薬の候補となること、抗アレルギー薬を含めCCL17やその受容体であるCCR4の阻害薬は皮膚のリモデリングや皮膚腫瘍の治療薬となりうることが示唆される。
著者
常深 祐一郎
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.1-2, 2013 (Released:2013-03-08)
参考文献数
1
著者
常深 祐一郎 穀澤 恭一 川島 眞
出版者
日本臨床皮膚科医会
雑誌
日本臨床皮膚科医会雑誌 (ISSN:13497758)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.471-476, 2016 (Released:2016-12-22)
参考文献数
9
被引用文献数
1

爪白癬診断のための真菌学的検査実施の実態を把握するため,インターネットによるアンケート調査を実施した.爪白癬を診療する医師(皮膚科医,一般内科医,整形外科医)に対し,最近1ヵ月間に爪白癬の診断をつけた患者数,診断のために検査を実施した患者数と実施した検査,検査を実施した場合は検体採取者および検査実施者を問い,検査未実施の場合は実施しない理由について質問した.20床未満の施設(以下,GP)に所属する医師224名(皮膚科医117名,一般内科医56名,整形外科医51名),20床以上の施設(以下,HP)に所属する医師235名(皮膚科医112名,一般内科医55名,整形外科医68名)から回答を得た.爪白癬の診断における検査の実施率は,皮膚科医ではGP94%,HP97%と高かったが,一般内科医ではGP56%,HP71%,整形外科医ではGP51%,HP67%と検査未実施が一定割合あった.行われた検査は,いずれの診療科でも顕微鏡検査が最も多かった.検査実施の際の検体採取は,皮膚科では医師自身による検体採取がほとんどであるが,一般内科医と整形外科医共に40%程度の症例で看護師や臨床検査技師が検体採取を行っていた.顕微鏡検査は,皮膚科医ではGP,HPいずれも全例を医師が実施しているが,一般内科医・整形外科医共にGPでは検査センターなどの外部委託が約半数で,HPでは院内検査室が約7割を占めていた.検査を行わなかった患者がいる理由は,皮膚科では「視診で診断できる」「検査の陽性率が低い」「検査は時間がかかる」といった理由が上位を占め,その他の診療科では「視診で判断できる」「検査設備がない」,「検査は時間がかかる」「検査経験がない/検査方法を知らない」といった理由が上位を占めた.このように皮膚科では検査の実施率は高く,検体採取及び検査は医師自身が行っているが,一般内科や整形外科では検査は十分に実施されておらず,検体採取や検査が医師以外の医療従事者によって行われていることが明らかになった.