著者
石川 尚子 庭野 慎一 今木 隆太 竹内 一郎 桐生 典郎 入江 渉 豊岡 照彦 栗原 克由 相馬 一亥 和泉 徹
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.SUPPL.2, pp.S2_97-S2_104, 2011 (Released:2012-12-05)
参考文献数
11

背景と目的: わが国では, 年間10万人を超える院外心肺停止(cardiopulmonary arrest; CPA)患者が報告されているが, その救命率は6.3%程度といまだに低い. CPA症例の救命率を規定する因子を検討するため, 当院における院外CPA患者データを解析し予後予測因子を検討した.方法: 対象は2009年1月1日から2010年6月30日の間に当院3次救命救急センターへ搬送された18歳以上の内因性CPA患者. 1カ月後の予後で生存群, および死亡群の2群に分類し, 虚脱から病着までの経過(プレホスピタル因子)および病着後の所見(インホスピタル因子)を両群間で比較検討した.結果: 観察期間中に789症例のCPA患者が搬送され, 外因死を除く連続581症例(平均年齢71±1歳, 男: 女 352人: 229人)について検討を行った. 各評価項目を多変量解析した結果, 以下の8つの項目が独立予後予測因子として統計学的に有意であった. (1)目撃あり(オッズ比12.8, 95%信頼区間1.6-185.0), (2)バイスタンダーCPR(cardiopulmonary resuscitation)あり(オッズ比10.9, 95%CI 1.9-107.6), (3)初回心電図が脈なし心室頻拍/心室細動(ventricular tachycardia; VT/ventricular fibrillation; VF) (オッズ比12.6, 95%信頼区間2.3-86.0), (4)病着前自己心拍再開あり(オッズ比60.6, 95%信頼区間7.8-524.0), (5)心原性CPA(オッズ比 17.5, 95%信頼区間4.4-119.4), (6)血中pH≥7.0(オッズ比14.5, 95%信頼区間5.1-49.3), (7)血中K+≤5.0mEq/L(オッズ比36.0, 95%信頼区間9.6-235.3), (8)血中CRP≤0.5mg/dL(オッズ比6.6, 95%信頼区間1.9-31.5). これらの8因子を各1点ずつで加算したものを予後予測スコアと定義すると, 生存のためには5点以上を要し, さらに6点以上のスコアは神経学的に良好な予後を得るための優れた指標となった(感度92.3%, 特異度88.8%).結語: 予後予測スコアは, 院外内因性CPA患者の予後予測に有用であり, 救命率向上に役立つ可能性が示唆された.
著者
今木 隆太 庭野 慎一 佐々木 紗栄 弓削 大 脇坂 裕子 平澤 正次 佐藤 大輔 佐々木 毅 森口 昌彦 和泉 徹
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.37, no.Supplement3, pp.142-146, 2005-07-30 (Released:2013-05-24)
参考文献数
10

【目的】心室細動(VF)自然発作既往のない無症候性ブルガダ型心電図症例において,VF誘発性と他の臨床データを有症候性症例と比較し,その臨床的意義を検討した.【方法】対象は心電図で特徴的なST上昇を認め,当科で電気生理学的検査(EPS)を施行した36症例.うち有症候例(VF自然発作群)5例,VF誘発例(VF誘発群)15例,VF非誘発例(VF非誘発群)16例.【結果】観察期間中4例でVF出現を認めた(VF自然発作群2例,VF誘発群2例).各群の失神歴(%)はVF自然発作群:VF誘発群:VF非誘発群=100:13:25(P<0.05),突然死家族歴(%)は40:13:19(NS)であった.ピルジカイニド負荷時のcoved型ST上昇頻度(%)は100:93:63(NS),冠動脈攣縮陽性率(%)は50:64:25(NS),MIBG分布異常(%)は75:40:20(NS)と,VF自然発作群,VF誘発群に多い傾向のみ認めた.【結語】無症候例の経過観察中,VF誘発群でVF自然発作を認めた.高リスク例の指標は明らかでなかったが,冠動脈攣縮誘発率やMIBG分布異常などの重要性が示唆された.