著者
後藤 広史
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.31-42, 2007

本研究の目的は,前路上生活者が施設から「自己退所」する要因を探索的に明らかにし,路上生活者に対して,施設での援助活動を展開する際の指針をうることである.そのために,施設を「自己退所」した経験をもつ路上生活者15人に対して,(1)施設入所前の路上生活をどのように営み,それをどう意味づけていたのか,(2)そのような路上生活者が施策を利用するにあたっての目的は何だったのか,(3)そして,施設での生活はいかなるものであり,なにが「自己退所」のきっかけとなったのかという3点に着目し,インタビュー調査を行った.研究の結果,「自己退所」に関わる要因として,「路上生活への適応」「利用目的のずれ」「施設で直面する諸困難」という3つの要因が抽出された.このことから,「路上生活を尊重した援助」「ていねいなアセスメントの必要性」「住環境および処遇の改善」という援助の指針が得られた.