著者
阿南 雅也 徳田 一貫 木藤 伸宏 新小田 幸一
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.755-760, 2010 (Released:2010-11-25)
参考文献数
18
被引用文献数
3 2

〔目的〕本研究は,体幹および下肢の運動連鎖の観点から変形性膝関節症(膝OA)の発症・進行に関与する機能障害を明らかにするために,膝OA患者における椅子からの立ち上がり動作(STS)の運動学的分析を行った。〔対象〕膝OAと診断された女性17名の膝OA群と膝関節痛を有さない女性16名の対照群とした。〔方法〕課題動作は座面高が下腿長の高さの椅子からのSTSとした。3次元動作解析システムKinema Tracer(キッセイコムテック社製)を用いて各体節および下肢関節の角度を求めた。〔結果〕身体重心(COM)前方移動期における各体節の角速度の平均値には有意差が認められなかったが,COM上方移動期における膝関節伸展,足関節底屈の角速度平均値は対照群に比し,膝OA群が有意に小さかった。〔結語〕膝OA群のSTSにおいて,臀部離床後に体幹前傾で得られた速度を下肢に伝えることができず,適切な膝関節の関節運動および肢節のアライメント保持が難しくなっていることが示唆された。
著者
永島 清史 辛嶋 良介 徳田 一貫 杉木 知武 川嶌 眞之 川嶌 眞人
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.135, 2009

【はじめに】<BR> 当院における前十字靱帯損傷(以下ACL損傷)のKyuro装具による保存的治療において装具を除去した際に膝関節不安定性を訴える患者を多く経験する。その原因を膝関節構成体の破綻や筋力低下として理学療法を展開した場合、良好な結果が得られないことが多い。今回は、膝関節に不安定性が生じる原因を装具の下腿下位半月の圧迫による遠位脛腓関節および距腿関節の可動域低下に伴う、足部・足関節からの運動連鎖機能不全とし、床反力を受ける部位から順を追ってアプローチした結果、改善が見られた症例を経験したのでここに報告する。<BR>【症例紹介】<BR>29歳 男性 診断名:左膝前十字靭帯損傷、内側側副靭帯損傷 主訴:歩行時の膝不安定性<BR>【理学療法評価】<BR>KT-1000徒手最大左右差:7mm、ラックマンテスト:Hard-end-pointあり Lateral-instability:陰性 スクワッティング・フォワードランジでの不安定性の訴えはなし<BR>ROM-t(Rt/Lt)膝関節屈曲(145/130)、伸展(0/0)、足関節背屈(15/10)、股関節内旋(35/30) <BR> MMT(Rt/Lt)膝関節伸展(5/4)屈曲(5/4)股関節外転(5/4) <BR>簡易的荷重時評価:臥位にて左小趾球部分を身体と垂直方向に押すと足関節の過回内、脛骨の内旋、股関節の過内旋、体幹の左側屈がみられ、頭方まで揺れが伝わらなかった。<BR>歩行:左Initial-Contact(以下IC)からLoading-Response(以下LR)にかけて体幹は左側屈、LRからMid-Stance(以下MSt)にかけて骨盤の側方位動が不十分であり左股関節内転・内旋が不足していた。MSt以降は体幹を左前方へ倒しながら左足第5列の挙上により衝撃吸収を行い、Pre-Swing(以下PSw)期では左足関節回内がみられた。<BR>【臨床推論】<BR> 本症例の主訴は荷重時の不安定性の訴えであり、それは立脚前期に生じていた。これは左立脚前期においてKyuro装具の下腿下位半月による遠位脛腓関節の締め付けにより距腿関節・遠位脛腓関節の可動性低下がおき、LRからMStにかけての下腿外旋が制限され、相対的に立脚側股関節の内旋も制限を受けることにより骨盤左回旋が制限されることで、立脚中期においてKnee-in傾向を示し膝関節が不安定な状態となっていると考えた。また、体幹が左側屈してくることにより重心線が膝関節軸より外側を通ることで左膝の内反モーメントを強めなければならない状況になっていることも一因であると考えられた。<BR>【まとめ】<BR> 立脚前期の足部および足関節から生じる上部への運動連鎖機能不全を改善していくことで体幹の側屈は軽減した。股関節内転・内旋機能が改善することで左立脚期が短縮し側屈も軽減した。体幹部・骨盤の連結部の反応を改善することで骨盤左回旋が可能となり、歩容が正常に近づき左膝不安定性の訴えは消失した。
著者
徳田 一貫 新小田 幸一 羽田 清貴 合津 卓朗 田中 泰山 吉田 研吾 木藤 伸宏 菅川 祥枝 本山 達男 川嶌 眞人 阿南 雅也
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.437-442, 2014 (Released:2014-07-03)
参考文献数
23
被引用文献数
1 2

〔目的〕変形性膝関節症のlateral thrustと膝関節の回旋の関係を明らかにすることである.〔対象〕対照群8人,膝OA群13人であった.〔方法〕ハイスピードカメラを用いて歩行立脚時の関節角度を解析し,3軸角速度計を用いて大腿と下腿の回旋角速度を解析した.〔結果〕対照群に比し,軽度膝OA群は荷重応答期から立脚中期の下腿の外旋角速度が有意に小さく,重度膝OA群は立脚期の両肩峰傾斜,下腿傾斜,膝関節内反角度が有意に大きかった.膝OA群の膝関節内反角度は,荷重応答期から立脚中期の下腿の外旋角速度が関連要因であった.〔結語〕膝OAの初期は荷重応答期から立脚中期の大腿部に対する下腿部の適合性が低下し,膝OAの重症化に伴いlateral thrustへと繋がることが示唆された.
著者
徳田 一貫 長部 太勇 阿南 雅也 木藤 伸宏
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.C0902, 2008

【目的】変形性膝関節症(以下膝OA)の着座動作において、動作時の疼痛や動作困難、動作遂行における後方への不安感などが臨床上よく見られる。そこで本研究では、膝OAの着座動作における運動学的分析を行い、臨床症状・動作困難に繋がる運動戦略の関係を明らかにする事を目的として行った。<BR>【方法】被検者は片側性あるいは両側性内側型膝OAと診断された女性21名(63.6±9.7歳)を膝OA群とし、日常生活で膝関節痛を有しない女性15名(61.6±7.5歳)を比較のために対照群として加えた。本研究はヘルシンキ宣言に基づき実施した。課題動作は立位姿勢から座面高が下腿長の高さの椅子への着座動作とした。運動学的データ計測は被検者の左右肩峰、腸骨稜上端、股関節(大転子中央と上前腸骨棘とを結ぶ線上で大転子から1/3の点)、膝関節(大腿骨遠位部最大左右径の高さで矢状面内の膝蓋骨を除いた幅の中央点)、外果、第5中足骨骨頭にマーカーを貼付し、3次元動作解析システムKinema Tracer(キッセイコムテック社製)を用いて60 flame/sにて画像を記録した。その画像から臨床歩行分析研究会の推奨する推定式にて関節中心点座標と身体重心座標(COG)および身体体節角度を算出した。データ解析は動作開始から足関節最大背屈までのそれぞれのCOG軌跡を比較し、股関節、膝関節、足関節、胸部、骨盤の身体体節角度変化量を算出した。その中で股関節・膝関節角度変化量の割合について比較した。また、股関節および膝関節座標の軌跡量を算出し、その比率を比較・検討した。<BR>【結果】膝OA群における動作開始から足関節最大背屈までのCOG軌跡は、対照群に比べて後方への移動変化量が少なく垂直下降の軌跡がみられた。関節角度変化は対照群に比べて膝OA群は膝関節屈曲・足関節背屈が有意に少なく、骨盤・胸部の前傾角度が有意に大きかった(p<0.05)。また、膝OA群の股関節・膝関節屈曲角度の割合においては膝関節屈曲角度の割合が少なく、股関節および膝関節座標の軌跡量は膝関節座標の移動量が有意な低下がみられた(p<0.05)。<BR>【考察】膝OA群において骨盤・体幹機能低下などにより骨盤・胸部をより前傾させ動作戦略を行うため、COGの滑らかな後方移動が困難となる事が示唆された。そのため、股関節・膝関節の屈曲割合が股関節有意な状態となり、股関節・膝関節を協調的に回転軸とする事が困難となり、下腿前傾が低下し膝関節が回転中心となる動作戦略となるのではないかと推察した。つまり、膝OAの理学療法戦略においては胸部-骨盤での安定性を高める事、足部機能改善による下腿前傾を促す事により、股関節・膝関節を協調的に機能させる事が重要であることが示唆される。
著者
下向 東紅 徳田 一弥 古賀 新 稲富 秀雄 加納 康彦
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
家畜繁殖学雑誌 (ISSN:03859932)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.133-139, 1990

前立腺の維持と発達を支配する主な因子はテストステロンで,これが前立腺で5&alpha;-レダクターゼによりジヒドロテストステロンに変換されて作用することは,知られている。5&alpha;-レダクターゼは,プロラクチンとテストステロンによって活性化されることが,報告されているが,前立腺の発達におけるプロラクチンの役割は不明の点が多い。<BR>マストミスは,雌にも二本の排泄管を有する,組織学的に機能的な前立腺を持つことを特徴とするネズミ科の動物である。本実験では,この動物雄,雌を供試して,前立腺の発達におよぼす,ホルモンの影響を検討した。供試動物に,去勢,脳下垂体前葉移植,テストステロン投与,プロモクリプチン投与の処置を単独または併用して施した。去勢によって前立腺重量は減少したが,テストステロンのみの投与によって回復したことから,前立腺は雌雄ともにアンドロジェンに依存していることが示された。さらに去勢動物に対する,脳下垂体前葉の移植によっても前立腺重量が回復した。この場合,反応は雄に比べて雌の方が大きかった。テストステロン投与あるいは脳下垂体前葉移植によって,上皮細胞の増殖が起こることも組織学的に認められた。これらの成績から,マストミスの,特に雌の前立腺の維持あるいは発達は,プロラクチンに対して感受性が高いと考えられ,これらの作用の影響を研究するためには,マストミスは,有用な動物であると考えられた。
著者
早雲 孝信 東 健 中島 正継 安田 健治朗 趙 栄済 向井 秀一 水間 美宏 芦原 亨 水野 成人 平野 誠一 池田 悦子 加藤 元一 徳田 一 竹中 温 泉 浩 井川 理 青池 晟 川井 啓市
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.88, no.8, pp.1539-1544, 1991 (Released:2007-12-26)
参考文献数
19
被引用文献数
2

ras遺伝子は, そのpoint mutation により活性化される癌遺伝子として知られている. 今回, われわれは oligonucleotide hybridization assay を用いて,大腸癌86例における K-ras codon 12, 13のpoint mutation の有無について検索した. その結果, codon 12に32例, codon 13に1例の33例 (38%) に point mutation を認めた. 変異の比率を腫瘍の存在部位, 組織型, 深達度, リンパ節転移, ステージ分類別に検討したが, 有意な関係は認められなかつた. しかし, 深達度mやsmといつた早期の癌においても高頻度に変異が検出され, ras遺伝子の point mutation が癌の進行過程というよりも発癌の過程に関係していることが推察された.