著者
宮本 俊和 河内 清彦 柿澤 敏文 和田 恒彦 徳竹 忠司 濱田 淳
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-10-31

本研究は特別支援学校(盲学校)理療科で鍼灸マッサージの教科を教える理療科教員の臨床能力と資質向上を意図するとともに、筑波大学理療科教員養成施設のITを用いた授業の充実を図ることを意図した。研究成果は、研究成果報告書として全国の盲学校、鍼灸関連学校、視覚障害関連の教育機関や研究機関に配布した。報告書には、1)明治以降の理療科教員養成の歴史的変遷、2)鍼灸受療者の実態、3)日本におけるIT活用と盲学校理療科におけるIT活用、4)理療科教育における講義形式の授業(電子黒板やタブレット端末を利用した授業など)、5)実習形式の授業(解剖実習や鍼実技でのiPad、iPodの活用)などについて記載した。
著者
望月 幸治 柿谷 愛子 河野 雄一 丸山 功揚 南 裕香理 和田 恒彦 徳竹 忠司 濱田 淳 宮本 俊和
出版者
一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
雑誌
日本東洋医学系物理療法学会誌 (ISSN:21875316)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.85-88, 2016 (Released:2020-05-20)
参考文献数
14

【目的】鍼施術での臓器損傷リスクを回避するためには人体の層構造の解剖学的な理解が必要である。体幹部における鍼施術の危険深度に対する検討はこれまで解剖遺体や生体に対しMRI、CTでの研究がなされてきた。しかし仰臥位が主であり臨床上行う腹臥位での検討は少なく、側臥位で検証している研究は見当たらない。 そこで、腰背部を仰臥位、腹臥位、側臥位でMRI横断面にて撮像し、腎兪、志室の経穴部の体表-腎臓間の距離および腹部内臓の位置や形態の変化を観察した。 【方法】被験者1名(男性:身長159cm、体重50kg、BMI19.8)に対しMRIにて腹部領域を仰臥位、腹臥位、左側臥位の3方向にて撮像し、腎兪、志室穴相当部位の体表から腎臓までの矢状面に平行な直線の距離を計測した。腎兪の位置を第2腰椎棘突起下方の陥凹部より外方3cmに、志室の位置を外方6cmとして計測した。また体位の違いによる体表面の輪郭、腹部内臓の位置の変化を観察した。 【結果】今回の被験者では腎兪の直下には腎臓がなかった。志室から腎臓までの距離は仰臥位では右 (37.0mm)、左 (39.1mm)、腹臥位では右 (35.0mm)、左(39.1mm)、側臥位では右 (39.7mm)、左 (43.2mm)であった。 また腎臓は移動し、形態も変化した。体表面の輪郭は腹臥位では前側がつぶれたまんじゅう型、側臥位ではお腹が垂れた三角おにぎり型に近づくなど形態の変化が認められた。 【結語】仰臥位、腹臥位、左側臥位の体位の違いにより体表-腎臓間距離、体表面の輪郭、腎臓の位置が変化をすることが分かった。
著者
徳竹 忠司
出版者
一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
雑誌
日本東洋医学系物理療法学会誌 (ISSN:21875316)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.27-34, 2016 (Released:2020-05-20)
参考文献数
13

身体に刺入した鍼を電極として低周波通電を行い、痛覚閾値の上昇が起こったという新聞報道により、鍼鎮痛は世界的に知られるところとなった。 鍼通電(EA: Electro-acupuncture)による痛覚閾値の上昇は、生体が有している鎮痛機構の賦活によるものであることが解明され、一応の決着が付けられた。以降、EAは鎮痛効果以外に末梢循環促進・神経機能の調節・筋伸展性向上・自律神経反応など現代医学的観点から多方面での応用がなされるようになった。現時点で共通理解がされている分類は以下の通りである。 【①筋肉パルス】対象組織:骨格筋。目的:筋内循環促進。通電周波数:1 Hz~10 Hz。通電時間:15分程度。 【②神経パルス】対象組織:体性末梢神経。目的:神経機能の調節。通電周波数:通常1 Hz。通電時間:15分程度。 【③椎間関節部パルス】対象組織:脊柱の椎間関節部周囲。目的:循環改善・支配神経の閾値の上昇。通電周波数:通常1 Hz。通電時間:15分程度。 【④皮下パルス】:対象組織:皮下組織。現在のところ臨床的な効果のみの観察にとどまっている。通電周波数:通常30 Hz~50 Hz。通電時間:20分程度。 【⑤反応点パルス】目的:自律神経反応。現段階では解剖学的な組織分類に従うものではなく、経験的に施術効果が得られる通電方法を総称している。 EAの施術による効果を引き出すためには対象とする患者が訴える症状の病態把握が重要であるため、面接・身体診察による情報収集の能力が必要となる。本稿ではEAの総論について概説を試みる。
著者
徳竹 忠司 佐々木 皓平
出版者
一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
雑誌
日本東洋医学系物理療法学会誌 (ISSN:21875316)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.79-83, 2019 (Released:2020-05-20)
参考文献数
5

【はじめに】鍼治療における、治療計画の立案には様々な道程がある。POS 的思考に基づいた臨床 推論を行い、愁訴の責任部位の病態を把握し、刺激方法を検討する行為もその中の一つであると 考える。身体診察による情報収集に加えて既存の知識を活用し、患者の抱える問題の解決に当たる。 今回Travell らによって体系化された筋筋膜性疼痛症候群とトリガーポイントの概念が愁訴改善に 有用であった症例を体験したので報告する。【症例】59 歳 女性 【主訴】右膝関節周囲の痛み 【現 病歴】50 歳代前半から歩行時・階段昇時に右膝関節周辺に時々違和感が出現していた。痛みでは なく、日常生活や仕事に際し支障もなかったため放置していた。58 歳時に深くしゃがむことが多 くなった頃から膝関節周辺の違和感が強くなり、痛みとして認識するようになった。歩行時には 時間や距離が長くなると膝関節周辺の痛みは必発していた。当科初診の1 ヵ月程前から座業時に も膝周辺に痛みが出現するようになり、歩行時痛も以前より短時間・短距離でも出現するように なったため、受診歴のある整形外科を受診した。X 線検査の結果、膝関節に特別な問題はないが 股関節の変形が以前より進んでいるとのコメントで、パップ剤を処方された。1 週間ほど前から右 大腿下部後面外側・膝関節外側面・下腿外側上部に疼痛が発生しパップ剤にても寛解しないため 同僚の紹介で当科受診となった。【理学的所見抜粋】右膝関節に関する痛みの誘発試験は全て陰性 であり、大腿部・下腿部の筋圧痛はなし。右股関節の回旋制限がみられ、小殿筋前部・後部線維 の抵抗負荷にて膝周辺に違和感の再現。小殿筋の圧迫による膝関節部の違和感の再現。【評価】小 殿筋トリガーポイントからの連関痛 【治療】右小殿筋 鍼通電 1Hz 15 分 【結果】初回の治療で膝 周辺の痛みは寛解し、以降同様の治療にて主訴は消失した。