著者
志賀 信夫
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.165-176, 2013-10-30

社会的排除という言葉が使われ始めて久しいが,この社会的排除への取り組みに関する言説をLevitas[2005]は三つに類型化した。現実の社会的包摂戦略はこのなかでも「仕事」を契機として排除された者を統合しようとする言説をその基礎としている。ヨーロッパにおけるワークフェア戦略がまさにそれである。宮本[2006 ; 2009]はワークフェアとアクティベーションを区別し,後者を肯定的に評価している。確かにそれは,実存する社会的包摂戦略のなかではモデルとされるべきものである。しかし,本稿ではこのアクテイベーションの限界を批判的に検討しその連続性において,Lister[2004=2011]が紹介している「社会的包摂ではなく社会参加を」という要求に沿った新たな戦略への結節点を模索する。その際に新たな道の一つとしてAtkinson[1995=2011 ; 1998]の提案する「参加所得」を挙げ,これが必ずしもベーシック・インカムの妥協ではなく,包摂戦略の積極的代替案であることに触れていく。
著者
志賀 信夫
出版者
日本教育政策学会
雑誌
日本教育政策学会年報 (ISSN:24241474)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.115-125, 2018 (Released:2019-05-31)

This paper conceptually considers two approaches that live together in response to the children’s poverty problem. The first of the two approaches is the investment approach. This is to see children as a useful investment destination for economic growth and a strong economy based on the idea that neglecting children’s poverty is an economic loss. In this approach, children are a means for investment return and not an end in themselves. In addition, such an approach leads to the selection of children worth investing in and“an exclusive society”. The second approach is a well-being approach. This approach does not view children as a means only. but as a primary objective in themselves, and is based on the idea of social investment which is distinguished from economic investment. This leads to universal policy formation and “inclusive society”.
著者
志賀 信夫
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.165-176, 2013-10-30 (Released:2018-02-01)

社会的排除という言葉が使われ始めて久しいが,この社会的排除への取り組みに関する言説をLevitas[2005]は三つに類型化した。現実の社会的包摂戦略はこのなかでも「仕事」を契機として排除された者を統合しようとする言説をその基礎としている。ヨーロッパにおけるワークフェア戦略がまさにそれである。宮本[2006 ; 2009]はワークフェアとアクティベーションを区別し,後者を肯定的に評価している。確かにそれは,実存する社会的包摂戦略のなかではモデルとされるべきものである。しかし,本稿ではこのアクテイベーションの限界を批判的に検討しその連続性において,Lister[2004=2011]が紹介している「社会的包摂ではなく社会参加を」という要求に沿った新たな戦略への結節点を模索する。その際に新たな道の一つとしてAtkinson[1995=2011 ; 1998]の提案する「参加所得」を挙げ,これが必ずしもベーシック・インカムの妥協ではなく,包摂戦略の積極的代替案であることに触れていく。
著者
志賀 信夫
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.1-13, 2020

<p>本稿の目的は,貧困問題について階層論的議論(階層論的貧困論)に終始することの弊害を論じつつ,階級論的視点をもった議論(階級論的貧困論)の重要性について明らかにしていくことである.「階層論的議論に終始する」とは,貧困問題をめぐる議論において「資本–賃労働関係」の視点を含まない態度のことを示している.本稿で論じる階層論的貧困論に終始することの弊害とは,①貧困の自己責任論を批判できないこと,②資本による「統治」の論理に抵抗できず,むしろこれを助長すること,③資本に有利な価値規範を相対化することができず,むしろこれを助長すること,などである.これに対して,階級論的貧困論は,資本による「統治」に対抗可能な視点を提示し,資本に有利な価値規範を相対化するための理路をひらくものとなっている.またそれらの可能性を議論展開することは,貧困問題の根本的な撲滅に向けた社会運動への貢献にもつながる.</p>
著者
志賀 信夫
出版者
経済理論学会
雑誌
季刊経済理論 (ISSN:18825184)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.53-64, 2013-10-20 (Released:2017-04-25)

The attention to a Basic Income (it is only hereafter written as BI) shows the rise. A high unemployment rate, expansion of poverty and a gap, and a malfunction of the social security system, etc. caused the attention. About the malfunction of a social security system, for example, exclusion of some people by the contributory principle in a social insurance system, the lowness of the capture rate of the social assistance system accompanied by a means test, etc. can be mentioned. The process of the policies for resulting to BI system in this paper is examined. The standard of this ranking is expansion of a concept of work. And the possibility of a perfect BI system can be on the extension. This paper is especially focusing on the process of Workfare, Activation, and Participation Income. And it shows perfect BI as one of the policies which can come after Participation Income. Although BI is generally what separates income from work, this paper is discussing it as a result of expansion of a concept of work. If BI is introduced in uncritical only for reasons of the malfunction of the present policies without taking into consideration about the process, such a BI system has a high possibility of misleading to curtailment of social services. This meets the demand of neo-liberal BI. It is called BI from the "right." The logic deployment in this paper has taken the method of starting from examining a social inclusion strategy at present. And in it, Negative Income Tax and Participation Income are discussed as partial BI. About the former, this paper is a negative position for several reasons. Taro Miyamoto (2009) writes Activation more affirmative as social conclusion strategy, and this paper agrees about it. In this paper, reference is further made about the process of Participation Income from Activation. If it is asked whether BI system is possible at present, this paper answers "No". However, as one of the possibilities after Participation Income, it should not be eliminated completely.
著者
志賀 信夫
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.1-13, 2020-11-30 (Released:2021-02-09)
参考文献数
31
被引用文献数
4

本稿の目的は,貧困問題について階層論的議論(階層論的貧困論)に終始することの弊害を論じつつ,階級論的視点をもった議論(階級論的貧困論)の重要性について明らかにしていくことである.「階層論的議論に終始する」とは,貧困問題をめぐる議論において「資本–賃労働関係」の視点を含まない態度のことを示している.本稿で論じる階層論的貧困論に終始することの弊害とは,①貧困の自己責任論を批判できないこと,②資本による「統治」の論理に抵抗できず,むしろこれを助長すること,③資本に有利な価値規範を相対化することができず,むしろこれを助長すること,などである.これに対して,階級論的貧困論は,資本による「統治」に対抗可能な視点を提示し,資本に有利な価値規範を相対化するための理路をひらくものとなっている.またそれらの可能性を議論展開することは,貧困問題の根本的な撲滅に向けた社会運動への貢献にもつながる.
著者
志賀 信夫
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.98-109, 2015-03-30 (Released:2018-02-01)

本稿の目的は,Atkinsonの提案する「参加所得(Participation Income)」について,その意義と問題点について整理し,この提案の更なる可能性について論述することである。Atkinsonの「参加所得」の意義について論じた先行研究は既にいくつかあるが,Atkinson自身がそのような提案に至った背景から整理している研究はほとんどない。本稿では,このような背景から整理していくものである。このような理論的整理によって,まず,Atkinsonの「参加所得」提案の積極的意義を論じ,次にこれをふまえてその提案が孕む問題点の原因について検討する。「参加所得」の孕む問題点については,既に先行研究によって示されているが,本稿では一歩進んでそのような問題点を生じさせる原因について追究している。この追究は,「参加所得」構想という提案を否定するものではなく,この提案に更なる広がりと理論的可能性を与えようとする試みである。
著者
志賀 信夫
出版者
北九州市立大学地域創生学会
雑誌
地域創生学研究 (ISSN:24339903)
巻号頁・発行日
no.2, pp.13-29, 2018

本稿は、喫緊の社会問題となっている「子どもの貧困」問題をめぐる対策に関する批判的検討を試みたものである。この批判的検討に関する本稿の中心的論点は次の2点である。①当事者の声を貧困対策のどこに反映させていくべきか。②何をもって貧困対策が前進したとみなすべきか。①②の各々に対する本稿なりの結論は、効果測定に当事者の声を反映させ、個人の幸福追求のための自由の拡大をもって対策が進展したと判断すべきであるというものである。