著者
成島 朋美 Noraini Azlin Binti Mohd Amin 志村 まゆら 野口 栄太郎
出版者
Japan Society of Neurovegetative Research
雑誌
自律神経 (ISSN:02889250)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.54-62, 2023 (Released:2023-04-03)
参考文献数
24

足底を対象とする手技療法は,「リフレクソロジー」や「足ゾーン・セラピー」など様々な名称で呼ばれ,補完代替医療の一つとして世界各国で行われている.しかし,その効果の機序となる基礎医学的検討はほとんど行われておらず,名称の由来となる反射の存在も確認されていない.そこで我々は,足底の限局した部位への圧刺激の血圧・心拍数および胃内圧に対する反応を指標に,その神経性機序と特異的な反射区の存在を確認する目的で実験を行った.求心路および遠心路の神経切断結果から,足底点状圧刺激は体性感覚神経から入力され,複数の自律神経を遠心路とした反射性反応を誘発することが明らかとなったが,反射区の存在を明らかとすることは出来なかった.
著者
ノライニ アズリン 成島 朋美 野口 栄太郎
出版者
一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
雑誌
日本東洋医学系物理療法学会誌 (ISSN:21875316)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.63-71, 2019 (Released:2020-05-20)
参考文献数
30

【緒言】足底を対象とするマッサージは、「足裏マッサージ」「リフレクソロジー」や「足ゾーンセ ラピー」等様々な名称で呼ばれ世界各国で行われている。研究領域では、E.Ernst による臨床研究 を対象としたSystematic review(以下SR)が報告されており、我が国では看護領域での研究が数 多くある。しかし、これらの報告から足裏マッサージの特徴である、ゾーンの存在を客観的に確 認することが出来なかった。そこで今回は、ゾーンの実在を確認することを目的に検討を行った。 【対象と方法】対象は同意を得た健常成人6 名(27 ~ 63 歳)に対し、平成30 年9 ~ 12 月に室温 25.0 ~ 26.5 度、湿度50 ~ 60%の室内で、生理機能測定として左第5 足趾皮膚血流、左下腹部腸音、 胸部で心電図を測定した。足裏マッサージ(以下FM)は、1 回目左FM、2 回目右FM とし各人2 回行った。生理機能測定は、安静15 分間・FM15 分間・FM 後30 分間の連続測定を行った。また 1 週間後の同時間帯に1 回目と同部位で生理機能測定を行いながら、右FM を左FM と同様の術式 で施術を行った。 【結果と考察】左第5 足趾皮膚血流の反応は、左右FM 中には減弱し、その後、左FM 側は増加、 右FM 側は減少と左右で異なる反応を示した。このことから、FM 側では交感神経緊張による末 梢血流の一時的な減少に続き増加を示し、FM 刺激反対側では全身反応としての血流増加反応が 起こった可能性があると考えられた。腸音は左FM により増加し右FM で減少する傾向を示した、 腸音は一律に増加・減少するのではなく個体差や体調の相違で反応が異なる事が推察された。心 臓のゾーンのある左足底のFM でHigh Frequency/Low Frequency(以下HF/LF)の有意な増加を 認めた。その結果から心臓に対応するゾーンの実在が示唆された。
著者
石松 菜摘 鮎澤 聡 櫻庭 陽 成島 朋美
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.45-52, 2021 (Released:2021-10-28)
参考文献数
16

【はじめに】骨盤骨折後に便漏れ(切迫性便失禁)と仙骨部から肛門周囲の感覚障害が残存した患者に対し、仙骨部に低周波鍼通電を行い症状の改善が得られた一症例を経験したので報告する。 【症例】60歳代、男性。主訴は便漏れと左側仙骨部から左側肛門周囲の痺れおよび感覚鈍麻。X-1年5月、交通事故により骨盤骨折を受傷し外科治療を受けるも上記症状が残存し、その後も改善を認めず。X年4月当センターに来所し、鍼治療が開始された。 【治療及び評価】左右の第2~4後仙骨孔部(次・中・下穴)および会陽穴に斜刺にて40mm程度刺入し会陰部に得気を得た後、1~3診は1Hz15分、4~7診は20分、8診以降は50Hz 間欠波で20分施行した。評価には、便失禁の程度にNumerical Rating Scale(NRS)を、便失禁に関連したQOLに日本語翻訳版Fecal Incontinence Quality of Life Scale(FIQL)を用いた。また痺れについてVisual Analogue Scale(VAS)で評価を行った。 【経過】便失禁の程度は初診時NRS8が7診時に2まで減少し、FIQLでも改善がみられた。肛門周囲の痺れは初診時VAS69mmであったが9診目で消失した。感覚鈍麻は残存した。 【考察・結語】切迫性便失禁は陰部神経障害による外肛門括約筋の障害で生じる。今回の治療では後仙骨孔部で鍼通電を行うことで仙骨神経叢後枝を刺激し、陰部神経の活動に影響を与えた可能性がある。近年便失禁に対しては外科手術によるSacral Neuromodulation Therapy(SNM療法)が行われるが、侵襲度が小さい仙骨部の低周波鍼通電療法は、便失禁に対する安全で簡便な治療法の1つとなりうる可能性が示唆された。
著者
殿山 希 ジュアンド 康子 成島 朋美
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.137-146, 2013-02-28 (Released:2013-10-23)
参考文献数
3
被引用文献数
1

2012年3月19∼28日、フランスに滞在して現地でスパセラピーを視察する機会を得た。  SPAセラピーとは、「水による健康法」の意味で、温泉水を用いる温泉療法le thermalisme、海水を用いる海洋療法la thalassothérapie、水を用いる水治療法la balnéothérapieを指し、フランス自然療法のひとつである。  フランスには、89ヵ所の温泉地がある。18日間(日曜を除く3週間)の温泉地滞在での温泉水を用いた治療である温泉療法に国の健康保険が適応となる。一方、海洋療法は、現在はリラクセーションとして扱われている。  温泉療法と海洋療法では、ジェットバス入浴、シャワーマッサージ(シャワー圧注)、マッサージ、プールでの運動法、泥療法(泥パックとラッピング)など同様の施術を行うが、使用している水(温泉水·海水)、目的(病気の治療·ウェルビーイング)、対象(患者·一般健康者)、施術を行う者(医療マッサージの免許を持つ人·エステティシャンや水治療法士)が異なる。また、温泉療法センターにおいても、治療部門とリラクセーションスパでは、同様の違いがあった。  フランスでは、マッサージとは医療マッサージを指し、masseur-kinésithérapeuteの国家資格を持つ人が行い、国の健康保険の適応となる。病院や温泉療法センターで働き、また、開業権も持つ。  一方、ウェルビーイングを目的とした施術は法的規制を受けず、医療的目的で行われるmassageとは区別されており、エステティシャンの資格を持つ人が主に行っていた。
著者
伊藤 裕二 成島 朋美 三宅 輝久 大越 教夫 小野 束
出版者
筑波技術大学学術・社会貢献推進委員会
雑誌
筑波技術大学テクノレポート (ISSN:24354856)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.8-13, 2010-12

近年、教育現場のICT化に伴い、グループウェアなどのWebアプリケーションが導入されているが、視覚障害者がユーザーとなる場合、見え方の多様性に対応する必要がある。現在は、弱視者対応の画面表示機能を有する既製アプリケーションに既製スクリーンリーダーによる読み上げ機能を組み合わせて対応するのが主流であるが、読み上げを詳細に制御できないためシステムとしては不完全である。そこで、我々はサーバー・クライアント協調設計による音声読み上げと画面表示カスタム化による情報保障機能を備えたWebプラットフォームの開発を試みた。このプラットフォームを用いることで、視覚障害者向けオンライン教材配信システム、テストシステムなどの開発が容易になると考える。
著者
村中 僚太 成島 朋美 東條 正典 野口 栄太郎
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.420-424, 2011 (Released:2012-02-06)
参考文献数
6

【目的】耳管開放症は耳閉感、 呼吸音聴取、 自声強聴などの自覚症状を主体とした難治疾患で、 その多くは原因不明である。 そのため耳管開放症に対する鍼治療に関しては、 ほとんど報告されていない。 今回耳管開放症状を訴える希少な症例を経験したので報告する。 【症例】43歳、 男性、 団体職員。 主訴:呼吸音聴取、 自声強聴、 現病歴:X年10月突如自声強聴を自覚。 同月Y耳鼻科を受診、 聴力低下(-)、 通気療法、 薬物療法。 同月Z大学附属病院耳鼻科にてオトスコープ検査により耳管開放症と診断される。 同年12月より鍼治療開始。 現症:ウェーバーテスト (中央)、 聴力正常。 頭板状筋の過緊張。 治療方法:患者からの下顎の運動で開放症状が減少するとの訴えを参考に、 咬筋を支配する三叉神経領域の経穴および後頸部の経穴を治療穴に選択した。 【経過】初診より週1回のペースで計25回の治療を行った。 初診時より耳管開放音をNRS (Numerical Rating Scale) によって評価した。 気圧の変化や精神的ストレスにより増悪緩解を繰り返したが、 症状は初診時の約50%に維持することが出来た。 【考察とまとめ】顔面部の三叉神経領域および後頚部の大後頭神経を介する三叉神経系への鍼治療が耳管開放症状の軽減に有用であることが示唆された。