著者
斎藤 英喜
出版者
佛教大学歴史学部
雑誌
歴史学部論集 (ISSN:21854203)
巻号頁・発行日
no.11, pp.65-88, 2021-03-01

折口信夫の学問に陰陽道、陰陽師の存在が重要な意味をもつことは、これまでも指摘されてきたところだ。とりわけ柳田國男の学問との相違点として論じられてきた、定型的な議論ともいえる。これにたいして、本稿では、近年の陰陽道史研究の進展のなかで、折口説を読み直し、その先駆的な見解とともに、陰陽道、陰陽師研究が、神社を基盤とした近代神道を歴史的に対象化し、そのあり方を相対化することで、国家神道?神社神道へのアンチテーゼとなることを明らかにする。折口信夫陰陽道簠簋内伝天社神道神社神道批判
著者
斎藤 英喜
出版者
佛教大学
雑誌
歴史学部論集 (ISSN:21854203)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.79-102, 2014-03-01

高知県の民間信仰、いざなぎ流には「金神の祭文」が伝えられている。金神忌は、平安時代末期から陰陽道と明経道のあいだで、その禁忌をめぐって議論されてきた、恐ろしい遊行神である。本論では平安期の古記録に見られる金神忌の記事の分析、中世における金神の神格をめぐる「神話」、そして民間系陰陽道書の『内伝』の解読を通じて、いざなぎ流の「金神の祭文」の独特な儀礼世界を読み解くで、その歴史的な特質を明らかにしていく。
著者
斎藤 英喜
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.1-12, 1989

平安朝の儀式書に「玉躰」の平安を卜する「御体御卜」という儀礼次第が記されている。そして儀礼の担い手である宮主の口伝書では、天皇の身体に祟りなす神が天照大神であると「毎時」に卜すことが口伝されていた。皇祖神としての天照大神を語る『記』『紀』神話の様式は、天皇の身体にまつわる<秘儀>から見えてくる、荒ぶる祟咎神としての天照大神の身体を、その表現から隠すことで獲得されていたのである。
著者
斎藤 英喜
出版者
佛教大学
雑誌
歴史学部論集 (ISSN:21854203)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-18, 2011-03-01

本居宣長『古事記伝』に描かれた太陽神アマテラスの像は、中世的に変貌したアマラテスにたいする「古代神話」の復権として見られてきた。しかし宣長のアマテラス=太陽説は、十八世紀における西洋天文学の知識、とくに『真暦考』などに示された地球説、太陽暦の受容と不可分なものである。そこには宣長が導いたアマテラスの「普遍性」が、十八世紀の科学・天文学に支えられていることが見てとれる。本稿では天文学と神話解釈の問題を「中世日本紀」の世界にまで遡り、とくに宋学系天文学と吉田兼倶の日本紀言説との接点を再検討しつつ、さらに渋川春海との比較を通して、宣長のアマテラス像の固有性を「近世神話」として解読する視点を提示する。
著者
斎藤 英喜 ALASZEWSKA J. JANE Alaszewska
出版者
佛教大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

(1)ジェーン・アラシェフスカ氏は、来日後、斎藤の大学院ゼミで、これまでの「民俗音楽」研究の経過、成果などについての報告を行なった。またそのときに先行研究である本田安次氏によって公刊された、伊豆諸島南部の巫女祭文を解読し、そのなかでとくに、高知県物部村のいざなぎ流祭文との類似点が見出される「呪詛の祭文」の精密の解読を進めた。その結果、いざなぎ流の祭文とほぼ同様な表現があること、また陰陽道系の呪符などには、近世社会に流布した『大雑書』の引用があることが確認された。(2)以上の研究成果にもとづいて、2010年6月25日に立命館大学で行なわれたSOASの日本宗教研究センター主宰のシンポジウム「祈祷と占い」での研究発表を行った。その発表については、中世宗教研究者である阿部泰郎氏、伊藤聡氏からも高い評価を得ることができた。とくに阿部氏からは『大雑書』の引用については、愛知県「奥三河の花祭り」との接点なども指摘されて、ジェーン・アラシェフスカ氏の研究の広がりを再確認することができた。(3)その後、中世の祭文、神楽に関する先行研究である岩田勝氏の『神楽源流考』などの著作をめぐって斎藤との共同研究によって、伊豆諸島南部の巫女祭文の研究が、中世の祭文、神楽の問題へと展開すべきことを指示した。(4)さらに2010年10月7日から11月15日までの長期にわたる伊豆諸島、とくに青ヶ島におけるフィールドワーク行なった。そのなかで10月20日の「船頭の祭り」、21日の「東台所神社の祭り」の祭祀を見学し、計十二時間におよぶ映像記録を撮影した。また25日には、広江清子巫女の自宅で行われた「天神祭り」を取材し、十時間におよぶ映像記録を撮影した。さらに青ヶ島村で行われた巫女の土葬儀礼を見学し、取材を行なった。一方、東台所神社、奥山家、広江家、佐々木家などの巫女・神職関係者が所蔵する祭文資料を収集し、その撮影を行なった。(5)今後は蒐集した祭文資料などをデジタル化して、できれば公刊することをめざす。また中世の祭文、神楽研究のテーマからは、とくに仏教との関わりが「念仏」読誦の問題として浮上したこと、さらにいざなぎ流や奥三河花祭りなどに見られる「浄土神楽」との接点がどのようにあるかが今後の研究課題として残されている。また蒐集した祭文中に見られる修験道儀礼、呪符との繋がりの解読も来年度における研究課題となった。
著者
斎藤 英喜
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.54-65, 2015-05-10 (Released:2020-06-11)

戦死者の記憶を語る場所=靖国神社は、また神道や神社の歴史が刻み込まれた場所でもある。明治後期の宮司・賀茂百樹(かもももき)の「他の幾多の神社に異れる由緒と、特例」という主張を、近代の神社のあり方、中世神道から平田篤胤、近代出雲派の「幽事」の神話解釈史のなかに位置づけなおした。さらに柳田国男『先祖の話』、折口信夫の「招魂(しょうこん)の御儀を拝して」を読み解きながら、「戦死者」の記憶から発せられた宗教知の可能性と問題点を探った。
著者
斎藤 英喜
出版者
佛教大学総合研究所
雑誌
佛教大学総合研究所共同研究成果報告論文集 (ISSN:21896607)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-15, 2018-03-25

岩田勝によって切り開かれた「浄土神楽」の研究は,従来の現世利益,神事芸能としての神楽認識を大きく塗り替える意義をもった。そこに現出したのは「浄土神楽」の世界である。しかし奥三河の「浄土入り」,物部いざなぎ流の「ミコ神」の神楽の現場からは,死者霊の鎮魂,浄化という認識とは異なる,神霊,死霊の成長,進化という「行」としての神楽の様相が見えてくる。その問題は「鎮魂」をめぐる折口信夫の解釈の再検証を迫るものとして,古代から中世,近世にいたる「鎮魂」の解釈史を読み直した。浄土神楽鎮魂浄土入りミコ神神楽折口信夫
著者
斎藤 英喜
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.10-21, 2002-05-10 (Released:2017-08-01)

サブカルチャーにおける陰陽師ブームは、陰陽道研究の最新の成果が省みられないものと批判があるが、そのブームのなかで「進化」している岡野玲子『陰陽師』のロゴス=スピリチュアルな世界はきちんと評価される必要がある。その作品世界の解読を起点に。「温明殿」をトポスとした『源氏物語』や新たなアマテラス神話の生成、霊剣をめぐる晴明伝承の展開について考察し、「古代文学」の新たな可能性を探った。
著者
斎藤 英喜
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.2-11, 2008

宣長の「物のあはれ」説は、近代の<源氏的なもの>を作り出した重要な言説である。しかし、その源氏注釈は、『古事記伝』における「ムスヒ神学」と密接に繋がっていた。そのとき「物のあはれ」説は、中世以来の神道言説と源氏注釈の相関関係の系譜のなかに位置づけなおすことが必要となる。<源氏的なもの>に内在する<非源氏的なもの>の系譜を明らかにした。
著者
斎藤 英喜
出版者
佛教大学歴史学部
雑誌
歴史学部論集 (ISSN:21854203)
巻号頁・発行日
no.7, pp.37-60, 2017-03

独創的な国文学者、民俗学者、あるいは詩人として知られる折口信夫は、もうひとつの顔をもつ。「神道学者」としての折口信夫である。それは狭い神道学に限定されることない可能性を孕んでいる。すなわちヨリシロ・マレビト・ミコトモチ・鎮魂・ムスビという「折口名彙」とその学問的成果は、近代に形成されていく「神道」(国家神道・神社神道)への異議申し立てという役割を担っていたからである。本稿は、大正期から昭和・戦前、戦後にわたる折口の学問を、中世から近世、近代へと展開する<神道史>のなかに位置づけなおし、その可能性を探る試みである。折口信夫髯籠の話大嘗祭鎮魂神道宗教化論ムスビ神既存者
著者
斎藤 英喜 中嶋 奈津子 八木 透 星 優也
出版者
佛教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

近年、地域の神楽には、都会から多くの見学者が押し寄せるなど、その関心、興味が高まっている。その一方では、担い手たちの高齢化、地域の過疎化によって、休止に追い込まれる神楽も少なくない。また神楽の執行が形式化、イベント化する傾向もみられる。こうした神楽にたいする関心の高まりと地域が抱える問題にたいして、本研究では、これまで重視されていなかった、「中世の神楽」の実態を明らかにすることで、神楽がもつ「宗教性」とともに、その歴史的な展開を示すことで、日本の宗教文化のあらたな面を提示することが可能と考えられる。
著者
斎藤英喜著
出版者
KADOKAWA
巻号頁・発行日
2014
著者
斎藤英喜著
出版者
佛教大学通信教育部
巻号頁・発行日
2007