著者
新ヶ江 章友
巻号頁・発行日
2006

筑波大学博士 (学術) 学位論文・平成18年12月31日授与 (甲第4181号)
著者
日下 渉 初鹿野 直美 伊賀 司 小島 敬裕 宮脇 聡史 今村 真央 日向 伸介 北村 由美 新ヶ江 章友 青山 薫 小田 なら 田村 慶子 岡本 正明
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

世界各地の国家と市民社会は、性的マイノリティに対して「黙認」「抑圧」「矯正」「支援」など多様な対応をとってきた。なぜ国家と市民社会による性的マイノリティへの対応は、かくも多様なのか。一般に西洋では、民主主義と自由な市民社会が性的マイノリティの権利拡大に寄与するとされる。しかし東南アジアでは、性的マイノリティの権利要求は、民主主義体制のもとで何十年も放置されたり(フィリピン)、暴力的な弾圧されたり(インドネシア)、一党独裁制や軍政の下で進展を見せたり(ベトナム、タイ)、権威主義体制下で限定的に認められることもある(シンガポール)。このように、性的マイノリティの権利拡大の異なる程度は、政治体制の違いや市民社会の自由度からでは説明できない。本研究では、諸国家と市民社会による性的マイノリティへの異なる対応は、国民国家の正統性を支える「象徴」として、彼女/彼らがどのように利用されているかによって説明できるのではないかと仮説を立てて研究してきた。本年度は、6月にアジア政経学会において「アジアにおける性的マイノリティの政治:家族・宗教・国家」と題したパネルを開き、田村慶子が台湾とシンガポールについて、伊賀司がマレーシアについて、宮脇聡史がフィリピンについて、それぞれの事例を報告した。10月中旬には合宿を行い、2日間にわたってメンバー全員が報告を行い、共通の課題について徹底的に議論した。10月末には、マレーシアからPang Khee Teik氏 、インドネシアからAbdul Muiz氏を招いて、国際ワークショップを開催した。翌年2月にも、マレーシアからtan beng hui氏、フィリピンからJohn Andrew G. Evangelista氏、オーストラリアからPeter A. Jackson氏、タイからAnjana Suvarananda氏を招聘して、国際ワークショップを開催した。
著者
土屋 貴志 佐金 武 野末 紀之 新ヶ江 章友 石川 優 濱野 千尋
出版者
大阪公立大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2022-06-30

性行動の実証的調査および文献テクスト分析を踏まえ「性愛および『性的倒錯』とはそもそも何なのか」という問題について考察する。「性的倒錯」とは (i)「本来の性愛」からの逸脱、(ii)性愛に関する社会・文化的規範に対する違反、を含むが、両者は必ずしも重ならない。また、「本来の性愛」なるものを疑う立場もあれば、「本来の性愛」の普遍性から社会・文化的規範の恣意性を批判する立場もある。本研究では、従来のセクシュアリティ/ジェンダー研究の成果も踏まえつつ、性愛をとりまく社会・文化的背景について深く考察すると同時に、性愛および「性的倒錯」それ自体を問題とする根柢的な探究を行う。
著者
新ヶ江 章友
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.116-123, 2011

2010年7月に、オーストリア・ウィーンで第18回国際エイズ会議(XVIII International AIDS Conference)が開催された。学会のテーマは「Rights Here, Right Now(今ここでこそ人権を)」であった。本稿では、とりわけHIV/AIDSをあぐるスティグマと差別の問題に焦点をしぼった発表のいくつかを紹介する。現在世界では、HIV/AIDSをめぐるスティグマや差別は、公衆衛生施策にとっての最重要課題であると位置づけられている。なぜならスティグマや差別こそが、予防や治療促進を阻害すると考えられているからである。この見方は当然、HIV/AIDSの問題化の当初から議論されてきたが、現在においても未だ十分な解決策が提示されてはいない。日本でも、スティグマや差別の軽減のための具体的な施策が、今後さらに展開されていく必要がある。