著者
木村 祐哉 山内 かおり 川畑 秀伸 木村 祐哉 山内 かおり 川畑 秀伸 木村 祐哉 山内 かおり 川畑 秀伸
出版者
日本動物看護学会
雑誌
Animal nursing
巻号頁・発行日
vol.15-16, pp.1-5, 2010-11

動物看護師の労働状況とメンタルヘルスの現状について把握するための予備的研究として、現役で勤務している動物看護師を対象に質問調査を実施した。調査はウェブを介して行い、 32名の回答を得た。有効回答は31名であり、そのうち15名(46.8%)は心と身体の健康調査表(STPH)の抑うつ尺度得点が高く、うつ病の可能性があると判断された。同得点による抑うつ傾向は未婚者よりも既婚者で強かったD過去に思い描いていた動物看護師像と現在の自己認識像が乗離している者でも抑うつ傾向は強く、そうした禿離を防ぐために職業教育や求職活動のあり方を再考する必要性が示唆された。また、自由記述からは「ワーク・ライフ・バランスの未達成」や「人間関係での苦労」、 「労働条件に関する不満」などが問題として指摘された。
著者
木村 祐哉
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.357-362, 2009-05-01
被引用文献数
3

少子高齢化の進む現代の日本において,ペットは家族の一員として重要な存在となっている.そのようなペットの喪失によって強い悲嘆が生じうることは,「ペットロス」という言葉とともに知られるようになったが,十分な社会的理解が得られるには至っていない.本稿では,ペットロスに伴う悲嘆反応とそれに対する支援について諸文献から考察した.ペットロスは対象喪失の一種であり,親しい人物との死別の場合と同様の悲嘆のプロセスを経るとされる.専門的介入もまた有効であると考えられているが,安楽死の決定にかかわる罪悪感や,周囲との認識の違いによる孤独感など,ペットロスに特異的な状況が存在するということにも注意する必要がある.本稿ではさらに,日本におけるペットロスの現状について触れ,今後の研究に求められる課題を明らかにすることを試みた.
著者
木村 祐哉 川畑 秀伸 大島 寿美子 片山 泰章 前沢 政次
出版者
ヒトと動物の関係学会
雑誌
ヒトと動物の関係学会誌 (ISSN:13418874)
巻号頁・発行日
no.24, pp.63-70, 2009-12
被引用文献数
1

ペットを失ったことで悲しむ飼主に対し、日本では「ペットロス症候群」という名称が一部で用いられる。この表現には肯定的な立場をとる者もいれば否定的な立場をとる者もおり、それが受け容れうるものであるかどうか、想定される影響について判断する必要が生じている。本研究では、異なる3大学でそれぞれ医学、獣医学、文学を専攻する学生99名を対象とした自由記述式の質問紙調査を実施した。内容分析の手続きにより全13,475字の記述内容から142個の最小分析単位を抽出、4グループから成る18個のコードが生成された。このコードを基本的発想データ群としたKJ法の手続きにより、【命名の是非】は【病名の妥当性】と【病名の影響】から判断されるという構造が想定された。また、ペットの喪失に伴う【悲嘆への認識】は個々人で異なることがあり、それが【病名の妥当性】と【病名の影響】の双方に影響を及ぼす可能性が示唆された。In Japan today, some use the term "pet-loss syndrome" to refer to the condition of the owners who are bereaved from death of their pets. However, it is controversial whether this term should be propelled to common usage. Investigation about issues of concern regarding this term is necessary to discuss the pros and cons of this expression. To collect as wide of a variety of ideas about the expression as possible, a total of 99 medical, veterinary and humanities students from three different universities were recruited for an open-ended questionnaire. By content analysis, 142 minimum units for analyzing were extracted from 13,475 characters written on the questionnaire. These units were organized into 18 codes classified in four groups. In order to establish a theory of terming, the KJ method was finally conducted by treating the codes as basic data for abduction. The constructed theory showed a basic concept that [pros and cons of terming "pet-loss syndrome"] were assessed by two factors: [validity of the disease name] and [influence from the disease name]. Furthermore, it was also assumed that [perception toward grief derived from pet loss] differed from person to person, which could affect these factors.
著者
木村 祐哉 川畑 秀伸 大島 寿美子 片山 泰章 前沢 政次
出版者
ヒトと動物の関係学会
雑誌
ヒトと動物の関係学会誌 (ISSN:13418874)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.63-70, 2009-12

ペットを失ったことで悲しむ飼主に対し、日本では「ペットロス症候群」という名称が一部で用いられる。この表現には肯定的な立場をとる者もいれば否定的な立場をとる者もおり、それが受け容れうるものであるかどうか、想定される影響について判断する必要が生じている。本研究では、異なる3大学でそれぞれ医学、獣医学、文学を専攻する学生99名を対象とした自由記述式の質問紙調査を実施した。内容分析の手続きにより全13,475字の記述内容から142個の最小分析単位を抽出、4グループから成る18個のコードが生成された。このコードを基本的発想データ群としたKJ法の手続きにより、【命名の是非】は【病名の妥当性】と【病名の影響】から判断されるという構造が想定された。また、ペットの喪失に伴う【悲嘆への認識】は個々人で異なることがあり、それが【病名の妥当性】と【病名の影響】の双方に影響を及ぼす可能性が示唆された。
著者
木村 祐哉 金井 一享 近澤 征史朗 堀 泰智 星 史雄 伊藤 直之
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.35-38, 2015-03-20 (Released:2016-03-24)
参考文献数
4

動物病院利用者における医療用語の普及の程度については,これまで明らかにされていない。本報告は,3軒の動物病院で利用者に質問紙への協力を求めたものである。参加者には25項目の用語について聞いたことがあるか,聞いたことがあるならばさらに正しく理解をしていたのかを訊ね,回答は理解度と誤解度として頻度および95%信頼区間で示した。男性22名,女性78名,その他の性自認2名(無回答8名)の計110名の協力が得られ,年齢構成は20代以下が9名,30-50代が76名,60代以上が18名(無回答7名)であった。重複含め飼育されていた動物は犬が73頭,猫32頭,その他9頭であった。理解度は2.0-99.0%,誤解度は0.0-32.4%であり,医療用語の使用に対する配慮の必要性を支持する結果となった。
著者
木村 祐哉 金井 一享 伊藤 直之 近澤 征史朗 堀 泰智 星 史雄 川畑 秀伸 前沢 政次
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.59-65, 2016-07-20 (Released:2017-01-24)
参考文献数
17

ペット喪失に伴う深刻な心身の症状が2カ月を超えて持続する場合には,医師による対応が必要である可能性が高いと考えられる。東京および愛知の動物火葬施設で利用者に対して精神健康調査票(GHQ28)による追跡調査を実施したところ,死別直後で22/37名(59.5%),2カ月後で17/30名(56.7%),4カ月後で11/27名(40.7%)の遺族がリスク群と判定された。また,心身の症状に影響のある要因として,遺族の年齢,動物との関わり方,家族機能が挙げられた。ペット喪失後の問題を減らすためには,こうした要因をもつ飼育者に獣医療従事者が事前に気づき,予防的な対応をとることが重要と考えられる。
著者
木村 祐哉
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.357-362, 2009-05-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
35
被引用文献数
1

少子高齢化の進む現代の日本において,ペットは家族の一員として重要な存在となっている.そのようなペットの喪失によって強い悲嘆が生じうることは,「ペットロス」という言葉とともに知られるようになったが,十分な社会的理解が得られるには至っていない.本稿では,ペットロスに伴う悲嘆反応とそれに対する支援について諸文献から考察した.ペットロスは対象喪失の一種であり,親しい人物との死別の場合と同様の悲嘆のプロセスを経るとされる.専門的介入もまた有効であると考えられているが,安楽死の決定にかかわる罪悪感や,周囲との認識の違いによる孤独感など,ペットロスに特異的な状況が存在するということにも注意する必要がある.本稿ではさらに,日本におけるペットロスの現状について触れ,今後の研究に求められる課題を明らかにすることを試みた.
著者
木村 祐哉 金井 一享 伊藤 直之 近澤 征史朗 堀 泰智 星 史雄 川畑 秀伸 前沢 政次
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.59-65, 2016

<p>ペット喪失に伴う深刻な心身の症状が2カ月を超えて持続する場合には,医師による対応が必要である可能性が高いと考えられる。東京および愛知の動物火葬施設で利用者に対して精神健康調査票(GHQ28)による追跡調査を実施したところ,死別直後で22/37名(59.5%),2カ月後で17/30名(56.7%),4カ月後で11/27名(40.7%)の遺族がリスク群と判定された。また,心身の症状に影響のある要因として,遺族の年齢,動物との関わり方,家族機能が挙げられた。ペット喪失後の問題を減らすためには,こうした要因をもつ飼育者に獣医療従事者が事前に気づき,予防的な対応をとることが重要と考えられる。</p>
著者
木村 祐哉 原 茂雄
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.349-352, 2008-04-25
被引用文献数
10

鍼治療のもつ長期的効果の検討のため,犬の自律神経の概日リズムに対して電気鍼刺激がもつ影響について,コサイナー法を用いて評価した.自律神経機能の指標としては心拍変動の周波数解析を用いた.温度,日照時間をコントロールした環境制御室において馴化させたビーグル犬を用い,保定のみの場合,あるいは保定した上で電気鍼刺激を加えた場合の24時間心電図データを求めた.保定のみの場合では15分間保定台にくくりつけるのみとし,電気鍼刺激はその間,脊椎上に存在する2箇所の経穴(GV-5, GV-20)に刺入した鍼を電極として5V, 250μsecの電流を2Hzの頻度で加えた.心電図データからは心拍数および心拍変動の変動係数(CVRR),高周波数成分(HF),低周波数成分/高周波数成分比(LF/HF)を求めた.得られた5頭分のデータによると,心拍数は刺激後に最大となり,その後減少する傾向が見られた.その他の心拍変動の指標では明期に減少し,暗期には次第に増加する傾向が見られた.コサイナー法によると刺激の有無に関わらずいずれの指標も有意な24時間周期を示し,それぞれの周期性を比較すると,交感神経活動の指標とされるLF/HFで水準の上昇(P=0.006)と頂点位相の前進(P=0.012)がみられた.結論として,電気鍼刺激は犬における交感神経の概日リズムを前進させ,またその水準を上げる効果をもつことがわかった.
著者
木村 祐哉 亀島 聡 伊藤 直之
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.29-38, 2020-11

日本国内では1割以上の世帯が何らかのペットを飼育していると推定されるが,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴うペット飼育者への影響は定かではない.そこで我々は,人や動物への病原性・感染性,生活スタイルや経済状況に与える影響のイメージをLikert尺度で,COVID-19の影響による飼育方法の変化,不安,困っている点を自由記述で訊ねるオンライン調査を実施した.2020年5月20日から6月3日の14日間で,特定警戒都道府県61名とその他の地域14名の,計75名から有効回答が得られた.規制が強かった場合には,動物病院やペットショップなどの利用が困難となることで,飼育・健康維持に影響が及んでいた.また,人や動物への感染による病原性への不安があるだけではなく,動物の外出制限など飼育形態が変化し,家族が感染した場合の預け先の確保が課題となっていた.このような心理・社会的困難は,COVID-19に限らず,今後起きうる未知の新興感染症の流行時や,また時には自然災害発生時など,生活スタイルの変化を余儀なくされる状況において共通にみられると推測される.
著者
飯島 裕子 伊藤 直之 木村 祐哉
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.83-87, 2018 (Released:2018-06-28)
参考文献数
11

犬ニキビダニ症の6例(汎発性5例,局所性1例)に,アフォキソラネル2.7–5.6 mg/kgを初診時に経口投与し,その後は3–6週間隔で投与して効果を評価した。ニキビダニの陰転に必要な投与回数は,2例が1回,3例が2回,1例が3回だった。皮膚病変は,初診から4–12週間で全症例が回復した。飼育者への聞き取りと再診時の身体検査で,有害事象はなかった。全症例が最終診察から6ヶ月以上経過し,臨床症状の再発は認めていない。アフォキソラネルの投与は,犬ニキビダニ症の治療に有効であることが確認された。
著者
木村 祐哉
巻号頁・発行日
2010-03-07

日本でペットロスという言葉が知られるようになり、10余年が経過した。現在では関連した書籍が何冊も出版され、ウェブ上にも多くの体験談をみつけることが可能となり、時にはメディアを通じて紹介されることもある。2008年11月の元厚生省事務次官襲撃事件で犯人が凶行に及んだ動機のひとつとして、ペットロスが注目されたのも記憶に新しい。このようにペットロスについて耳にする機会が増えてきたが、しかしその一方で、その間に満足いくだけの学術的知見が得られてきたかというと疑問が残る。日本よりも早くから注目されるようになった欧米と比較すると、やはり日本ではペットロスに関する有意義な調査研究が少ないと言わざるを得ない。ペットロスの調査というとまず、実際にペットを亡くした方に対してアンケートを行い、深く悲しんでいた方が何人――といった形式のものが思い浮かぶのではないだろうか。より上等なものであれば、その対象人数が多く、統計学的解析が加えられることにもなるだろう。このように数値を用いて事象の説明を試みるものを「量的研究(定量的研究)」というのに対し、調べようとしている事象の性質を詳細に記述することを目的としたものを「質的研究(定性的研究)」という。学術的知見を正しく評価し、自ら調査を実施するためには、これら両研究手法について把握しておく必要がある。量的にものごとを扱うには、何らかの手段によってそれを数値化する過程を経なければならない。ペット喪失者の心理を扱う場合も例外ではなく、リッカート尺度やVisual Analog Scale (VAS) のような、客観的採点を可能とする評価尺度を用いることになる。いずれの方法を採用するにしろ、それは十分な妥当性 (validity) と信頼性 (reliability) を有するものでなければならない。また、そこで得られた結果を他の集団にも当てはめられることを保証するためには、サンプリングの偏り (bias) をなくす工夫をするか、統計学的な調整 (adjustment) をかけ、評価項目に影響を与えている影の要因 (confounding factor) を可能な限り排除することが不可欠である。一方、質的研究では、代表的意見を求めることではなく、想定される事象をより幅広く拾い上げることが目的となるため、むしろ多様な対象を求めて作為的にサンプリングを繰り返し、何度繰り返しても新しい理論が登場しなくなる (theoretical saturation) までそれを続ける。方法としてはアンケートやインタビュー、観察法が主となるが、複数の評価方法や立場の異なる数人の評価者による解釈を加えることで、より豊富な情報を得ることが可能となる。愛するペットを失った家族を対象とする繊細な問題であることから、その調査には慎重を期す必要があるというのも事実ではあるが、手をこまねいていては事態の改善は期待できない。本講演では、本邦におけるペットロス研究に弾みをつけるべく、質的研究と量的研究というふたつの研究手法について、事例をまじえて紹介する。
著者
伊藤 智義 杉江 崇繁 赤松 孝則 木村 祐哉 川口 梨紗花 角江 崇 下馬場 朋禄
雑誌
第79回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, no.1, pp.1-2, 2017-03-16

3次元情報を記録再生できるホログラフィは次世代映像システムを創出する可能性を持っている。しかし、計算コストが膨大なため、実用化のめどは立っていない。本研究室ではハードウェアによる高速化を進めている。8番目の試作となるHORN-8システムの研究プロジェクトでは、ザイリンクス社製Virtex-5を8個搭載した大規模FPGAボードを独自に開発した。使用したFPGAは旧式になりつつあるものの市販品にはない回路規模のボードとなっている。HORN-8ボード単体でPCの100倍、10枚並列化して1000倍程度の高速化が達成できる見込みになってきており、報告を行う。
著者
早瀬 彩乃 木村 祐哉 伊藤 直之
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.47-52, 2019-07-20 (Released:2020-01-10)
参考文献数
15
被引用文献数
1

獣医療従事者や獣医学生は過度なストレス状態におかれることが多く,メンタルヘルスの懸念が大きいと言われている。本調査は全国の獣医学生を対象としてウェブを介して行い,国際的なスクリーニングツールであるK6により,対象となった348名中89名(25.6%)が不安・気分障害と判定された。また,在学中の精神科受診歴,依存症,自殺念慮,自殺未遂はそれぞれ26名(7.5%),33名(9.5%),168名(48.3%),19名(5.5%)にみられていた。各要因ごとに不安・気分障害に関係するオッズ比をベイズ統計により推定したところ,事後期待値[95%確信区間]が高かったのは,精神疾患について誰にも相談できない場合2.40[1.15, 54.77],鳥取県中部地震で被災していた場合12.05[1.15, 54.77],精神科受診歴3.50[1.46, 7.13],自殺念慮17.62[8.30, 35.22],自殺未遂13.86[4.29, 37.04]であった。さらに所属大学および学年を変量効果として投入し,階層2項ロジットモデルで推定したところ,調整オッズ比が高かった要因は,精神疾患について誰にも相談できない場合2.75(1.32)[1.62, 4.73],鳥取県中部地震の被災経験22.67(4.57)[1.67, 669.78]であった。本調査により,日本の獣医学生においてもメンタルヘルスの問題が実在することが明らかとなったが,頻度やオッズ比には選択バイアスの影響が想定される。今後は正確な実態把握を行い,対策を検討することが必要であろう。
著者
木村 祐哉 真田 菜生 今井 泉 小沼 守 宮下 ひろこ 矢野 淳 伊藤 直之
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.349-355, 2019-06-20 (Released:2019-07-20)
参考文献数
16

一次診療4施設を受診した飼い主104名に対し質問紙法で解釈モデルを訊ね,言語データを対象とした質的手法であるSCATで理論抽出を試みた.飼い主の記述した解釈モデルは病因,病態と経過,治療方針の3カテゴリーに大別された.そのうち病因に対する認識は生物因子と状況因子に分けて考えられ,病態と経過に対する認識には受診理由,命あるいは生活の質(QOL)に関わる不安,病識と受容の様子が含まれた.治療方針に対する認識としては,決定の主体が誰か,動物及び飼い主にかかる負担がどの程度であるかが考慮されていた.各カテゴリーのこうした認識は,いずれもコンプライアンスや治療成績に影響を及ぼしうると考えられる.したがって,飼い主の解釈モデルを把握する際には,病因,病態と経過,治療方針のそれぞれについて確認する必要があることが示唆された.
著者
木村 祐哉
出版者
北海道獣医師会
雑誌
北海道獸醫師會雑誌 (ISSN:00183385)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.10-13, 2009-05-01

参加者がそれぞれ獣医師役、飼い主役、観察者を演じるピア・ロールプレイの手法を採用し、臨床志向の獣医学生らに対して診療コミュニケーションを向上するための実習を行った。ロールプレイ終了後には、その内容について各自フィードバックを受け、ポートフォリオに準じて自己評価した。2日間で計9名の獣医学生、2名の臨床獣医師が参加し、いずれからも高い満足が得られた。獣医師役を演じた自己評価は否定的な内容が多かったが、飼い主役と観察者からのフィードバックには肯定的な意見も多くみられ、全体としてバランス良く反省することが可能であった。また、初回に得られた反省は、次回の目標設定に影響を及ぼしており、ポートフォリオによる評価が有用であることが示唆された。ロールプレイの導入は、適切な評価方法を用いることで、コミュニケーション能力を向上するための妥当な手段になると考えられる。
著者
伊藤 智義 杉江 崇繁 赤松 孝則 木村 祐哉 川口 梨紗花 角江 崇 下馬場 朋禄
雑誌
第79回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, no.1, pp.1-2, 2017-03-16

3次元情報を記録再生できるホログラフィは次世代映像システムを創出する可能性を持っている。しかし、計算コストが膨大なため、実用化のめどは立っていない。本研究室ではハードウェアによる高速化を進めている。8番目の試作となるHORN-8システムの研究プロジェクトでは、ザイリンクス社製Virtex-5を8個搭載した大規模FPGAボードを独自に開発した。使用したFPGAは旧式になりつつあるものの市販品にはない回路規模のボードとなっている。HORN-8ボード単体でPCの100倍、10枚並列化して1000倍程度の高速化が達成できる見込みになってきており、報告を行う。
著者
木村 祐哉 山内 かおり
巻号頁・発行日
2009-07-26

背景: 一般に医療従事者は過度なストレスに曝されていることが知られており、獣医療に従事する者もまたその例外ではないと考えられる。このような過度のストレス暴露を受けることにより、うつに代表されるような、心身に及ぶ種々の問題が生じる可能性が示唆されているが、演者らの知る限り、動物看護職におけるストレスに関する調査はこれまでに報告されていない。そこで本研究では、動物看護職の中でもうつなどの問題が実在していることを確認し、労働環境などのストレス要因との関連を述べることを目的として、質問紙による調査を試みた。 対象と方法: 本調査は動物看護師を対象とし、2008年10月27日~2009年3月10日に実施した。調査対象者は、動物看護職向けのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)であるAniProを通じてウェブ上のアンケートフォームに回答するように求めるか、それを印刷した物を演者らの知人に配布することによって募集した。質問内容には性別や年齢などのプロフィールを問う項目、想定される19種のストレス因子への暴露の有無を問う項目(表)、産業衛生領域におけるうつのスクリーニングツールとして作成された心と身体の健康調査表(STPH)の簡易版であるSTPH-15(カットオフ値7/8点)を含み、さらにその他のストレス因子について自由な記述を求めた。回収された質問紙はまず単純集計し、STPH-15の値に基づいて「うつ群」と「非うつ群」を区別した。さらに、プロフィールやストレス因子への暴露の有無によって、STPH-15の値に差があるかどうか統計学的に解析した。処理には無料で入手可能な統計パッケージであるR version 2.8.1を用い、連続変数の値をとるものはSpearman順位相関係数、離散変数の値をとるものはWilcoxon順位和検定による解析を実施した。なお、回答内容に欠損値(無回答)が含まれるものについては、集計から除外した。 結果: 現役の動物看護師32名の回答が得られた。そのうち欠損値のあった1名を除外すると、女性が30人を占め、男性は1名だった。平均年齢は27.9歳で、未婚者が24名、既婚者は7名だった。勤続年数は平均6.1年、1日の勤務時間は平均10.7時間だった。STPH-15が陽性となり、うつであることが疑われるのは31名中15名だった(46.8%)。統計学的解析では、STPH-15の値は年齢、勤続年数、勤務時間との間に相関を認めず、既婚者は未婚者よりも有意に陽性者が多かった(P=0.03)。その他には、現在の自分が理想の動物看護師像そのものであると感じられなければ、STPH-15の得点が高かった(P=0.01)。自由記述では、ストレスの原因として将来への不安、家庭生活との両立の困難、同僚との接し方に関する悩みなどが挙げられた。 考察: STPH-15を用いることにより、調査対象に偏りのある恐れはあるものの、うつに悩む動物看護師が確かに存在することが示唆された。こうしたうつの傾向は、結婚している、あるいは動物看護師としての理想と現実に差異のある者に強く表れていることが明らかになった。自由記述からの示唆も踏まえると、将来性も考慮に入れた労働条件やワーク・ライフ・バランスの改善は、動物病院経営における今後の大きな課題となるであろう。また、理想と現実との差異は、ある面においては雇用者-被雇用者間で動物看護に対する認識が異なることに起因していると考えられ、旧来の就職活動における両者のマッチングの不備を示唆するものである。こうした点については、動物看護師を養成する側からも対策を考慮していく必要があるであろう。 今後の展望: 本調査において検討したストレス因子は探索的研究によって導き出されたものではなく、未だ不十分と考えるべきであり、より適切な因子を抽出するための質的な研究が求められるであろう。その上で、対象の偏りがないように配慮した拡大調査を進め、動物看護職における労働条件の改善に取り組むことが重要である。