著者
郷 譲治 永井 清仁 瀬川 進 本城 凡夫
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.82, no.5, pp.737-742, 2016 (Released:2016-10-06)
参考文献数
30
被引用文献数
4 5

近年,三重県英虞湾でKarenia mikimotoi赤潮が発生し,アコヤガイ真珠養殖への被害が懸念されている。K. mikimotoiがアコヤガイに及ぼす影響を調べるため赤潮海水による曝露試験を行った。アコヤガイ稚貝は本種の細胞密度1×104 cells/mLで36時間までに7.5%,6×104 cells/mLでは24時間までに100%がへい死した。成貝は0.5×103 cells/mLから殻体開閉の頻度が高くなり,3×103 cells/mLで頻繁な開閉運動を示した。
著者
多田 邦尚 西川 哲也 樽谷 賢治 山本 圭吾 一見 和彦 山口 一岩 本城 凡夫
出版者
日本海洋学会 沿岸海洋研究会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.39-47, 2014 (Released:2020-02-12)
参考文献数
24
被引用文献数
6

瀬戸内海東部海域における過去40年間の海水中の栄養塩濃度減少の検証とその低次生物生産過程への影響について,著者らのグループが得た知見を総合して考察した.瀬戸内海では過去,高度経済成長期には著しく富栄養化が進行していたが,1973年に施行された瀬戸内法により,P の発生負荷量は1980年以降,N は1990年後半以降削減された.しかし,播磨灘東部海域の海水中のTN,TP 濃度には直接反映されていない.一方,栄養塩濃度は1970年以降確実に低下しており,特にDIN 濃度は1990年以降も減少傾向にある.これは,主には瀬戸内法の効果と考えられるが,それだけでは説明できない.おそらく,海底堆積物からの栄養塩の溶出量の減少が大きく関与している可能性が考えられた.この栄養塩濃度減少に対する植物プランクトン群集の応答については,その生物量の低下傾向は認められないが,その種組成の変化が認められた.
著者
樋口 恵太 永井 清仁 服部 文弘 前山 薫 瀬川 進 本城 凡夫
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.608-618, 2016 (Released:2016-08-25)
参考文献数
56
被引用文献数
2 2

真珠収穫後のアコヤガイ貝肉を主原料とし,海事作業から発生する貝掃除屑を加えてコンポスト化試験を行った。その結果,アコヤガイ貝肉は約 45 日の処理でコンポスト化が可能である事が分かった。また,貝掃除屑はコンポスト材料の通気性向上や,コンポストの肥料成分を増加させる効果が認められた。完熟したコンポストは,塩分を含むが,コマツナに対して肥料効果を示した。以上より,真珠養殖過程で廃棄される貝肉および貝掃除屑は,農業資材として有効活用できる事が示され,真珠養殖による環境負荷の低減につながると期待された。
著者
杜多 哲 杉山 元彦 本城 凡夫 大和田 紘一 浅川 明彦 田中 信彦 佐古 浩 北村 章二 淡路 雅彦 飯倉 敏弘 熊田 弘 山本 茂也
出版者
水産庁養殖研究所
雑誌
養殖研究所研究報告 (ISSN:03895858)
巻号頁・発行日
no.18, pp.p13-29, 1990
被引用文献数
2

五ケ所湾において1984年から1989年の塩分の測定結果を用いて,ボックスモデルを用いた解析を行い次のことを明らかにした。(1)五ケ所湾内を1ボックスとした場合,滞留時間は多くの場合2~7日であり,平均は1984年から1985年で4.7日,1986年から1989年で3.3日であった。輸送係数は2月から4月にかけて最大値を,11月から1月にかけて最小値をとる傾向がみられた。(2)五ケ所湾に適用したボックスモデルで得られる輸送係数の精度は,5割の誤差範囲におさまるが湾口部(ボックス1)と中間部(ボックス2)の塩分差が0.05‰より小さくなると,誤差が大きくなる。従って海水交換が良く,塩分差の小さい時期にはより適切な観測点配置と,より精度の良い観測を行う必要がある。(3)五ケ所湾の支湾の1つである迫間浦は,他の支湾に比べ海水交換が著しく悪い。その原因の1つとしては,流域面積が小さいため流入する河川水が少なく密度流が他の支湾に比べ生じにくいこと,冬季の季節風によって生じる吹送流が,地形的な原因で海水交換に結びつかないことが考えられる。
著者
多田 邦尚 藤原 宗弘 本城 凡夫
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.945-955, 2010 (Released:2011-01-14)
参考文献数
46
被引用文献数
19 20

近年,瀬戸内海では高度経済成長期の1970年代あるいは1980年代と比較すると水質はかなり改善されてきたが,その一方では,イワシやアサリなどの漁獲量は低迷を続けている.特に,2003年以降,養殖ノリの生産量は,海水中の栄養塩濃度低下(栄養塩異変)により著しく不作が続いている.本稿では,著者らの実施してきた瀬戸内海の水質環境に関する研究について紹介するとともに,海水中の栄養塩濃度の低下に直接影響を受けるノリ養殖に注目し,瀬戸内海の近年の無機三態窒素の濃度低下やノリ不作のメカニズムについて考察した.その結果,栄養塩異変の原因として,(1)長期的に見た河川からの栄養塩負荷量の減少,(2)海水の有光層(光合成可能深度)の増加に伴う植物プランクトンの栄養塩消費量の増加,(3)成層強度低下による夏季の底層水中の栄養塩濃度の減少,及び(4)底泥からの栄養塩溶出量の低下の可能性が考えられた.
著者
黒川 忠英 鈴木 徹 岡内 正典 三輪 理 永井 清仁 中村 弘二 本城 凡夫 中島 員洋 芦田 勝朗 船越 将二
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.241-251, 1999-03-15
被引用文献数
32 22

アコヤガイの閉殻筋の赤変化を伴う大量へい死現象の人為的再現手法と, その病理組織学的診断手法の開発を行った。赤変異常貝の外套膜片の健常貝への移植および健常貝と赤変異常貝との同居飼育により, 赤変異常が再現された。よって, 赤変異常は感染症による可能性が極めて強い。また, 外套膜と閉殻筋の病変が, その病理組織学的診断指標として有効と判断された。
著者
多田 邦尚 一見 和彦 山口 一岩 石塚 正秀 本城 凡夫 樽谷 賢治
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

瀬戸内海東部海域における近年の栄養塩低下とその原因について研究した。瀬戸内海では高度経済成長期に富栄養化が著しく赤潮も多発していた。その後、水質は改善されたが、逆に近年では養殖ノリの色落ち等の被害が出ている。栄養塩の減少原因には、陸域からの窒素負荷量の減少だけでなく、堆積物からの栄養塩溶出量の低下も大きく影響していると考えられた。栄養塩濃度と赤潮発生件数等との関係についても検討した。
著者
本城 凡夫 島田 秀昭 大嶋 雄治
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究では、有明海の有機スズ(TBT)等化学物質の汚染、および二枚貝の繁殖に及ぼすTBTの影響について実施した結果、以下の点が明らかとなり、化学物質が貝類の激減に関与していることが示唆された。1)有明海の化学物質汚染:1998年と2001年に有明海で採取した二枚貝のサンプルについてTBT濃度を調べたところ,すべての試料からTBTが検出され,アサリでは1998年が0.062-0.125μg/gおよび2001年が0.008-0.033μg/gであった。さらにタイラギでは2001年採取分が0.009-0.095μg/gであった。本研究よりTBTの使用規制後も,沿岸域においてTBT汚染が続いていることが明らかになった。また、重金属(水銀、銅、カドミウム)については顕著な汚染は認められなかったが、農薬については2003年8月に有明海筑後川河口3地点より海水を採取して,567種農薬の一斉分析を行った結果、3地点から計12種類の農薬が検出され、有明海の生物に影響を与えている可能性が考えられた。2)二枚貝繁殖試験:TBTをアコヤガイおよびアサリの親貝に暴露し、繁殖への影響を調べた結果、アコヤガイでは、生殖腺のTBT濃度が0.088μg/gで次世代の初期発生が阻害され、アサリでは体内TBT濃度が0.099μg/gで卵の発生が20%阻害されることが明らかになった。よって、有明海における貝類激減の原因のひとつとしてTBTの関与が推定された。また、本研究室で単離した付着珪藻(Cylindrotheca closterium)-海産自由生活性線虫(Prochromadorella sp.1)のバイオアッセイ系に対してTBTを暴露した結果、3.26μg/Lの濃度では線虫の成長が若干阻害され、32.6μg/Lで付着珪藻および線虫が斃死した。