著者
高橋 仁美 本間 光信 塩谷 隆信
出版者
一般社団法人 栃木県理学療法士会
雑誌
理学療法とちぎ (ISSN:21864861)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.11-19, 2021 (Released:2021-04-01)
参考文献数
26

慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease: COPD)では,フレイルおよびサルコペニアの有病率が高く,これらはCOPD 患者の予後を規定する重要な因子となる.COPDにおけるサルコペニア対策としては,従来,栄養療法が推奨されている.しかし,近年では,栄養療法のみでは限界があるとし,運動療法を併用した呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)の有効性が報告されてきている.フレイルは身体的(physical),認知的(cognitive),社会的(social) の3 つの側面を持っている.このなかで,身体的フレイルに関しては,基本的な概念が国際的にほぼ共通しており,加齢による骨格筋量の減少や食欲不振による慢性的な低栄養などが相互に影響し合っているとされる.骨格筋量の減少,慢性的な低栄養などは,心身機能の低下を大きく加速させ,フレイル・サイクルと呼ばれる悪循環を形成する.このフレイル・サイクルの中心となるのが加齢性筋肉減弱現象であるサルコペニアである.フレイルは高齢者で多くみられるが,その特徴として身体予備能力の低下とストレスに対する脆弱性の増加がある.フレイルは,慢性疾患であるCOPD にも大きく影響を及ぼしており,近年のシステマテックレビューでは,COPD 患者とプレフレイルの合併は56%,フレイルの合併は20%と報告されている.また,3 つの縦断的研究では,COPD とフレイルには双方向性の関係にあり,COPD患者ではプレフレイル,フレイルの合併が多く,高齢COPD における合併頻度は2 倍となっている.このようなことから,臨床的はCOPD 患者に対してはフレイルやサルコペニアの評価と対策が重要となっている.サルコペニアは,その原因には多くの因子が関連しているが,加齢に伴った筋肉喪失の状態にある臨床症候群といえる.EWGSOP の診断基準では,筋肉量の減少と筋力低下が必須となっている.COPD 患者におけるサルコペニアの有病率は14.5%であり,年齢およびGOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)分類とともに増加する.一般にCOPD 患者では,筋肉量の減少と筋力の低下が存在する.筋量や筋力に関するこれまでの研究では下肢における報告が多いが,大腿四頭筋の脆弱性や性別との関連は認められていない.COPD 患者でサルコペニアを合併する患者は,合併しない患者に比べると運動耐容能,身体活動性,健康関連QOL は低下するが,呼吸リハに対しての反応は良好で,43 人中12 人は,呼吸リハ後にサルコペニアが消失したという報告もある.また,安定期COPD 患者においては,15%がサルコペニアに罹患しているとされるが,COPD 患者の様々な症状を改善する呼吸リハは,サルコペニアの合併そのものはその効果に影響しないと考える.COPD における呼吸リハは,身体活動性を向上させる効果的な治療法として確立されてきている.呼吸リハの長期的な目標は,より活動的なライフスタイルを通じて,体力などを維持させることである.包括的な呼吸リハにおいて最も重要な種目は運動療法と栄養療法であり,自己効力の向上を通して行動変容を起こすことが課題となる.栄養療法と低強度運動療法のコンビネーションセラピーは,COPD 患者の運動耐容能と健康関連QOL の改善効果があり,フレイルとサルコペニアを合併する症例に対しての新しい治療手段となると期待される.
著者
塩谷 隆信 佐竹 將宏 川越 厚良 菅原 慶勇 高橋 仁美 本間 光信
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.323-329, 2012-12-28 (Released:2016-04-25)
参考文献数
31

呼吸リハビリテーション(呼吸リハビリ)は,慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の日常生活活動を全人間的に支援する医療システムである.呼吸リハビリは,薬物療法により症状が軽快している患者においても,さらに相加的な上乗せの改善効果を得ることができる.運動療法は呼吸リハビリの中心となる構成要素である.運動療法施行時には体重減少を抑制し,運動療法の効果を高めるために栄養補給療法を併用することが望ましい.近年,低強度運動療法の有用性が報告され,その普及が期待される.運動療法は,継続して定期的に行われる必要がある.維持プログラムとしては,持久力トレーニングと筋力トレーニングが主体となり,運動習慣がライフスタイルに組み込まれていることが望ましい.運動療法のなかで,歩行は性別,年齢を問わず最も親しみやすい運動様式である.
著者
佐藤 一洋 本間 光信 伊藤 伸朗 高橋 仁美 菅原 慶勇 笠井 千景 土橋 真由美 清川 憲孝 敷中 葉月 澤田石 智子 加賀谷 斉 鹿島 正行 佐野 正明 伊藤 武史 佐竹 將宏 塩谷 隆信
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.242-248, 2000-12-31 (Released:2018-08-07)
参考文献数
31

COPD患者に外来呼吸リハビリテーションを施行しその長期効果を検討した.呼吸筋ストレッチ,呼吸筋訓練,上下肢の筋力訓練などを外来で指導し自宅で継続させ,2週間ごとに外来で経過観察と指導を行い,12ヵ月後まで経時的に呼吸機能,運動耐容能,健康関連QOLの評価を行った.その結果,COPD患者ではVC, RV, PImax, PEmax, 6MD, CRQが12ヵ月後までに有意に改善した.以上の成績からCOPDにおける外来呼吸リハビリテーションは呼吸機能,運動耐容能および健康関連QOLを長期に改善させる可能性が示唆された.
著者
菅原 慶勇 高橋 仁美 清川 憲孝 笠井 千景 渡邊 暢 藤井 清佳 柏倉 剛 本間 光信 佐竹 將宏 塩谷 隆信
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.177-181, 2008-10-29 (Released:2016-12-28)
参考文献数
11

当院において呼吸リハを行っている安定期COPD患者を対象に栄養状態を調査し,身体組成,筋力,運動耐容能,炎症性サイトカインとの関連を検討した.呼吸リハを行っている半数以上が%IBW<90%で,REE/REE predictは1.37倍,エネルギー充足率は83%であった.%IBW分類では,低体重群が他2群と比較し,FMI,FFMI,REE,Leptin,FVC,PImaxが有意に低値で,Ghrelin,TNF-aは有意に高値であった.%IBWとTNF-aおよびIL-6において,弱い逆相関が認められた.COPDの体重減少には,REE/REE predict亢進,エネルギー充足率低下および炎症性サイトカインの上昇がかかわっているであろうと推察された.
著者
高橋 仁美 菅原 慶勇 清川 憲孝 笠井 千景 土橋 真由美 敷中 葉月 澤田石 智子 加賀谷 斉 佐藤 一洋 伊藤 伸朗 本間 光信 佐竹 将宏 塩谷 隆信
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.420-423, 2002-03-31 (Released:2018-08-07)
参考文献数
8

呼吸リハビリテーションを施行して2ヵ月以上経過したCOPD患者に対して,運動耐容能に大きく影響を及ぼす因子について検討するため,一般生体特性(体重,身長など),スパイロメトリー,肺拡散能力,呼吸筋力,大腿四頭筋筋力などを横断的に測定し検討した.測定したデータを正規変換したうえで相関行列を分析し,6分間歩行距離と関連する変数を定量的に探し出して重回帰分析を行った結果,6分間歩行距離には大腿四頭筋の最大筋力を体重で除した体重支持力指数と肺拡散能力が大きく影響を与えることが明らかにされた.
著者
塩谷 隆信 佐竹 將宏 玉木 彰 菅原 慶勇 高橋 仁美 本間 光信
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.8-17, 2012-06-30 (Released:2016-04-25)
参考文献数
30

呼吸リハビリテーション(呼吸リハビリ)は,COPD患者の日常生活を全人間的に支援する医療システムである.呼吸リハビリは,薬物療法により症状が安定している患者においても,さらに相加的な上乗せの改善効果を得ることができる.運動療法は呼吸リハビリの中心となる構成要素である.運動療法施行時には体重減少を抑制し,運動療法の効果を高めるために栄養補給療法を併用することが望ましい.近年,低強度運動療法の有用性が報告され,その普及が期待される.運動療法は,継続して定期的に行われる必要がある.維持プログラムとしては,持久力トレーニングと筋力トレーニングが主体となり,運動習慣がライフスタイルに組み込まれていることが望ましい.運動療法のなかで,歩行は性別,年齢を問わず最も親しみやすい運動様式である.