著者
杉山 昂平 森 玲奈 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.41087, (Released:2018-03-08)
参考文献数
28
被引用文献数
2

成人による趣味の追求をインフォーマルな学習環境はいかに支えるのだろうか.趣味における興味に着目してきた先行研究に対し,本研究の目的は「興味の深まり」という新たな概念を提案し,「成人の趣味活動において学習環境との関わりによっていかにして興味が深まるのか」を明らかにすることである.趣味活動の事例としてアマチュア・オーケストラを対象とし,オーケストラ団員15名に対して回顧的インタビュー調査を行った.分析の結果,興味の深まりには(1)音楽的な無自覚からの脱出,(2)上達・達成へのとらわれからアンサンブルへ,(3)参加すること自体の価値を見いだす,という3類型が存在し,それぞれの興味の深まりは(a)活動形態の異なる共同体への移動,(b)活動理念の異なる共同体への移動,(c)目標を焦点化する役割付与,という学習環境との関係性において生起することが明らかになった.
著者
杉山 昂平 執行 治平
出版者
日本メディア学会
雑誌
メディア研究 (ISSN:27581047)
巻号頁・発行日
vol.103, pp.153-171, 2023-07-31 (Released:2023-10-24)
参考文献数
25

In the history of Japanese television, the 1970s and 1980s are a time when educational and cultural programs on hobbies thrived. While it has been explained as a shift from social education programs to lifelong learning programs, the meaning of "hobbies" as a subject matter itself had not been clarified. Therefore, this study attempted to characterize the content of these programs by using the analytical concept of serious leisure and focusing on the characteristic representation of hobbies. Specifically, the program footage, textbooks, and newspaper advertisements for "Introduction to Fishing" and "Introduction to Camera Techniques," two programs that aired in 1980 on NHK Educational TV’s "Hobbies and Skills Course," were analyzed. As a result, it was found that the programs explained fishing and camera techniques under the learning view of "learning for enjoyment." The self-directed activity of "enjoyment" as the goal made the content structure of the program more restrained in terms of education, and some brokering discourses that leave education to hobby communities were found. So far, lifelong learning programs have been characterized by individuality in terms of viewing format and subject matter. In contrast, the results of this study suggest that individuality also contributes to the structuring of program content and that lifelong learning programs embed opportunities for connecting to group activities.
著者
杉山 昂平 森 玲奈 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.43058, (Released:2019-12-16)
参考文献数
31

人々が興味を深めるとき,ゆるやかな社会関係はいかに関与するのだろうか.本研究の目的は,興味追求としての趣味に着目し,強固な実践共同体に対比されるゆるやかな実践ネットワークが,趣味人の興味の深まりにいかに関与するのかを明らかにすることである.事例としてデジタル時代のアマチュア写真を取り上げ,アマチュア写真家14名に対してインタビュー調査を行った.その結果,興味の深まりに関与する実践ネットワークとして「刺激的な隣人」と「不特定の観衆」の存在が明らかになった.「刺激的な隣人」は自立的に興味を追求する多様な趣味人の姿を可視化し,「不特定の観衆」は作品に対してフィードバックを与え,それ自体が深い興味の対象になったり,興味を深めるさらなる行動を促したりする.こうした実践ネットワークはSNSによって形成されることもある一方,展覧会や撮り歩き会のような,趣味の世界における対面的な活動によっても形成されていた.
著者
杉山 昂平 森 玲奈 山内 祐平
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.31-41, 2018-07-10 (Released:2018-07-10)
参考文献数
28
被引用文献数
2

成人による趣味の追求をインフォーマルな学習環境はいかに支えるのだろうか.趣味における興味に着目してきた先行研究に対し,本研究の目的は「興味の深まり」という新たな概念を提案し,「成人の趣味活動において学習環境との関わりによっていかにして興味が深まるのか」を明らかにすることである.趣味活動の事例としてアマチュア・オーケストラを対象とし,オーケストラ団員15名に対して回顧的インタビュー調査を行った.分析の結果,興味の深まりには(1)音楽的な無自覚からの脱出,(2)上達・達成へのとらわれからアンサンブルへ,(3)参加すること自体の価値を見いだす,という3類型が存在し,それぞれの興味の深まりは(a)活動形態の異なる共同体への移動,(b)活動理念の異なる共同体への移動,(c)目標を焦点化する役割付与,という学習環境との関係性において生起することが明らかになった.
著者
杉山 昂平 執行 治平
出版者
日本マス・コミュニケーション学会
雑誌
マス・コミュニケーション研究 (ISSN:13411306)
巻号頁・発行日
vol.99, pp.97-114, 2021-07-31 (Released:2021-09-11)
参考文献数
41

In media studies, the term, “amateur” has attracted attention as a subject who creates media or as an object created by media. Previous studies on the latter aspect tend to fall into a short-sighted conclusion that “everyone can become an amateur with the advent of new media.” To tackle this problem analytically, we propose a perspective that sees people become amateurs as a result of learning. Based on this perspective, we arrange three research questions to be explored: (1) what is the function of media that enables learners to become amateurs? (2) what kind of amateurs can people become? and (3) what is the scale of people who can become amateurs? Taking up the related research from various disciplines, we insist on exploring these questions considering the relationships between them.
著者
杉山 昂平
出版者
余暇ツーリズム学会
雑誌
余暇ツーリズム学会誌 = Journal of leisure and tourism (ISSN:21886016)
巻号頁・発行日
no.6, pp.73-81, 2019

本研究の目的は、欧米圏のレジャースタディーズにおいてどのような「シリアスレジャー」研究が行われているのかをレビューし、日本におけるシリアスレジャー研究の可能性を探ることである。主要三誌(Leisure Studies、Leisure Sciences、Journal of Leisure Research)に掲載された 70 本の論文をレビューした結果、シリアスレジャーに関して「社会的世界の解明」「制約への対処方略の解明」「ジェンダー化の解明」「マイノリティによる実践の解明」「生活の質に対する効果の解明」「シリアスレジャー的側面の照射」「理論的精緻化」「隣接概念との関連の検討」がなされていることが明らかになった。近年は日本でも「趣味」や「アマチュア」に関する研究が登場しているが、シリアスレジャー研究と知見を共有していくことで、今後、余暇研究がさらなる発展を遂げることが期待される。研究ノート
著者
杉山 昂平 森 玲奈 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
2018

<p>成人による趣味の追求をインフォーマルな学習環境はいかに支えるのだろうか.趣味における興味に着目してきた先行研究に対し,本研究の目的は「興味の深まり」という新たな概念を提案し,「成人の趣味活動において学習環境との関わりによっていかにして興味が深まるのか」を明らかにすることである.趣味活動の事例としてアマチュア・オーケストラを対象とし,オーケストラ団員15名に対して回顧的インタビュー調査を行った.分析の結果,興味の深まりには(1)音楽的な無自覚からの脱出,(2)上達・達成へのとらわれからアンサンブルへ,(3)参加すること自体の価値を見いだす,という3類型が存在し,それぞれの興味の深まりは(a)活動形態の異なる共同体への移動,(b)活動理念の異なる共同体への移動,(c)目標を焦点化する役割付与,という学習環境との関係性において生起することが明らかになった.</p><p></p>
著者
杉山 昂平 森 玲奈 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.381-396, 2020

<p>人々が興味を深めるとき,ゆるやかな社会関係はいかに関与するのだろうか.本研究の目的は,興味追求としての趣味に着目し,強固な実践共同体に対比されるゆるやかな実践ネットワークが,趣味人の興味の深まりにいかに関与するのかを明らかにすることである.事例としてデジタル時代のアマチュア写真を取り上げ,アマチュア写真家14名に対してインタビュー調査を行った.その結果,興味の深まりに関与する実践ネットワークとして「刺激的な隣人」と「不特定の観衆」の存在が明らかになった.「刺激的な隣人」は自立的に興味を追求する多様な趣味人の姿を可視化し,「不特定の観衆」は作品に対してフィードバックを与え,それ自体が深い興味の対象になったり,興味を深めるさらなる行動を促したりする.こうした実践ネットワークはSNS によって形成されることもある一方,展覧会や撮り歩き会のような,趣味の世界における対面的な活動によっても形成されていた.</p>