著者
西尾 幸一郎 中野 誠也 杉林 一哲 松原 斎樹
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.679-684, 2010-10-15 (Released:2013-06-24)
参考文献数
20

This research aims to estimate the states of sleep / wake time from measurement records of physical activity using an actigraph and to clarify the effect that sleep / wake time has on students living in a dormitory, both with and without roommates. Discoveries made as a result of the study are as follows:1) In subjects with roommates, regression in sleep-onset time and a reduction in night sleeping time were observed (p<0.01,p<0.05).2) In subjects with roommates, daytime sleep increased (p<0.1), while the average amount of activity during the day decreased (p<0.1). Furthermore, several cases were observed in which students with roommates slept approximately 1 hour during classes, something that was not observed among subjects without roommates. It was also confirmed that this had a major influence on attitude in class, etc.
著者
伊坂 善明 宮川 鮎子 飛田 国人 松原 斎樹 宗田 好史
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.41-49, 2013 (Released:2018-03-22)
参考文献数
14

長岡京市の公立学校3校を対象として,普通教室にエアコンが導入された2008年から猛暑の2010年までの3ヵ年にわたってエアコン導入による温熱環境面及び教育面・健康面,環境面での効果について評価した。その結果,空調教室の室温は,3年間通じて夏は30℃以下が望ましく,最も学習に望ましい条件は25〜28℃程度とする文部科学省の「学校環境衛生の基準」の範囲内であったが,エアコンの入っていない教室は,基準を満たしておらず,エアコン無しでは過酷な環境にあったといえる。児童・生徒のエアコン導入の評価は,3年間通じて高い結果であった。一方,教員は3年間通じて教育面の効果が顕著に表れていると評価し,健康面でも一定の効果が出ていると評価された。しかし,28℃での設定温度には問題があることを指摘している。環境面では,エアコン導入が環境教育につながると捉える教員は少ない結果であったが,エアコンの使い方によってエネルギー消費量が異なることなどの具体的な情報を提供していくことで,環境教育を行っていく必要がある。
著者
伊坂 善明 宮川 鮎子 飛田 国人 松原 斎樹 宗田 好史
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.41-49, 2013
参考文献数
14

長岡京市の公立学校3校を対象として,普通教室にエアコンが導入された2008年から猛暑の2010年までの3ヵ年にわたってエアコン導入による温熱環境面及び教育面・健康面,環境面での効果について評価した。その結果,空調教室の室温は,3年間通じて夏は30℃以下が望ましく,最も学習に望ましい条件は25〜28℃程度とする文部科学省の「学校環境衛生の基準」の範囲内であったが,エアコンの入っていない教室は,基準を満たしておらず,エアコン無しでは過酷な環境にあったといえる。児童・生徒のエアコン導入の評価は,3年間通じて高い結果であった。一方,教員は3年間通じて教育面の効果が顕著に表れていると評価し,健康面でも一定の効果が出ていると評価された。しかし,28℃での設定温度には問題があることを指摘している。環境面では,エアコン導入が環境教育につながると捉える教員は少ない結果であったが,エアコンの使い方によってエネルギー消費量が異なることなどの具体的な情報を提供していくことで,環境教育を行っていく必要がある。
著者
藏澄 美仁 堀越 哲美 土川 忠浩 松原 斎樹
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.5-29, 1994-04-01 (Released:2010-10-13)
参考文献数
41
被引用文献数
60

日本人の体表面積の現状を把握するために, 45人の青年の体表面積を実測し比較・検討を行った.実測は, 体表解剖学上の区分に従って区分された区域毎に, 直接非伸縮性の粘着テープを貼付することで行った.その結果, 1) 性別による体表区分面積の間に有意な差が認められた.また, 同様に体型別による体表区分面積の間にも有意な差が確認された.2) 体表面積算出式の根拠となっているDuBoisら, 高比良, 藤本・渡邊らの行った実測値と本実測値との間に有意な差が認められた.3) 身長や体重といった身体諸値の一要因による体表面積の推定値は, 身長と体重の両方を構成要素とする算出値に比べ, 実測値との偏差が大きくなる傾向がある.4) 実測の結果より, 現在の日本人に最も適合性のある体表面積の算出式として, S=100.315W0.383H0.693を提案した.また, 日本人に対してDuBoisの体表面積算出式の定数項を修正した結果, S=72.18W0.425H0.725を提案した.
著者
木原 浩貴 羽原 康成 金 悠希 松原 斎樹
出版者
日本環境学会
雑誌
人間と環境 (ISSN:0286438X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.2-17, 2020-02-10 (Released:2020-08-01)
参考文献数
44
被引用文献数
2

気候変動問題に関する科学的解明が進みその情報が伝わっても,社会変革の重要性の認識は高まらない。この状態は「心理的気候パラドックス」と呼ばれており,これを生み出す心理的障壁に応じて気候コミュニケーションの在り方を再考することが求められている。障壁は国や文化によって異なることから,それぞれの実情を把握することが必要である。本研究では,日本における気候変動問題や対策の捉え方に関するインターネット調査を行い,構造方程式モデリング及び非階層クラスタ分析の結果から,日本の現状を整理した。特に,障壁のひとつとされる認知的不協和に着目して考察を行った。結果,下記の点が明らかとなった。第1に,居住地域や性別に関係なく,多くの人が気候変動対策を「室内の暑さ寒さなどの我慢を伴うもの」と捉えている。第2に,脱炭素社会への態度は倫理観に基づく責任感や,対策の経済への影響の受け止め方に規定される。暮らしの快適さや便利さの向上と脱炭素社会は連想されていない。第3に,障壁のうち「拒否」を抱える群が一定数存在する。この群は30代・男性が有意に多い。第4に,危機感はあるが対策の影響をネガティブに捉える群が最大の割合を占めており,40代が有意に多い。ポジティブに捉える群よりも脱炭素社会の支持度は有意に低く,フレーミングや認知的不協和が心理的気候パラドックスにつながっていることが確認できる。障壁を抱えたまま危機感を高めるコミュニケーションを行っても,脱炭素社会づくりの社会的重要性の認識は高まらず,逆に拒否が強まる可能性もある。心理的気候パラドックスの理論と日本の実情を踏まえて気候コミュニケーションを行う必要があると考えられる。
著者
北村 恵理奈 柴田 祥江 松原 斎樹
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.13-29, 2016-04-01 (Released:2016-04-18)
参考文献数
28
被引用文献数
4

冬期のヒートショックは高齢者に健康被害をもたらす恐れがあるのでその対策は急務である.本研究は居住者視点からヒートショック対策を検討するために,(1)トイレ・脱衣室の温度認知調査,(2)住宅内の温湿度測定,(3)簡易断熱の効果測定を実施した.結果,(1)高齢者の温度認知はあまり正しくなかった.その理由は,高齢者の温熱感覚が低下していることと,滞在時間が短いためと推測される.(2)各住戸の温度の実測値は 17℃以下,高齢者に限ると 10℃以下が多かった.(3)簡易断熱調査では,全住宅でわずかな熱的性能と居住者の熱的快適感の向上をもたらした.居住者に室内温熱環境の改善への意欲を引き出せた事例が観察された.温度計による室温の正しい認知と,簡易な断熱による効果の認知は,居住者視点の有効なヒートショック対策と考えられる.今後は対策実施の有効性,経済的費用など具体的な情報発信が重要である.
著者
西應 浩司 材野 博司 松原 斎樹 藏澄 美仁 森田 孝夫
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.66, no.547, pp.169-176, 2001-09-30 (Released:2017-02-04)
参考文献数
23
被引用文献数
5 5

An experiment was done in one area with grid shaped street pattern and in another area with irregularly twisted street pattern. There were two ways to memorize forms in the experiment: a real walk and CG animation presented walk through a fixed pathway. After learning the course, the subject walked the pathway by themselves. Originally the subjects were 25 males and 15 females. The results were analysed based on gender difference-14 male and 14 female subjects. Analysing errors in the abstract distance and abstract angle errors on the cognitive maps, it was recognized that the drawn street lengths are shorter than the actual distances for both genders. Concerning a real walk through the irregularly twisted street the females' errors in the abstract angles were smaller than the males' errors. However both gender's found the irregularly twisted street more legible than the grid shaped one.
著者
藏澄 美仁 土川 忠浩 近藤 恵美 石井 仁 深川 健太 大和 義昭 飛田 国人 安藤 由佳 松原 斎樹 堀越 哲美
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.115-127, 2012-11
参考文献数
55
被引用文献数
1

本研究の目的は、屋外環境における至適温熱環境の範囲を提案することである。実験は、夏季と冬季の屋外温熱環境における人体の生理的・心理的反応を求める実測を被験者38名を用いておこなった。延べ実測数は906であった。ETFeと人体の生理的・心理的反応との関係を明確にした。得られた知見を以下に示す。暑くもなく寒くもない温熱的に中立な温冷感申告をすると考えられる夏季のETFeは31.6℃、冬季のETFeは36.0℃を得た。季節により温冷感申告の評価に違いが示され、夏季の場合と比較して冬季の場合の方がETFeに対する傾きが大きくなり、暑さに対する反応よりも寒さに対する反応が強くなる傾向を明らかにした。快でもなく不快でもない快適感申告をする寒い側の温冷感申告値は44.7、暑い側の温冷感申告値は55.1を得た。この条件を快適温熱環境範囲としてETFeと温冷感申告値との関係から快適なETFeの範囲を求めると、ETFeが31.6〜38.5℃を得た。
著者
松原 斎樹 下村 孝 藏澄 美仁 合掌 顕
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究課題でいくつかの実験を行った結果,色彩,環境音,植物,視覚刺激としての窓の開閉状況などは,温冷感や寒-暑,涼-暖などの印象評価に影響を及ぼすことが,明らかにされた。色彩の影響に関しては,いずれの実験においても,暖色の呈示により、「暑い」側へ、寒色の呈示により、「寒い」側へ変化するというhue-heat仮説に合致した結果が得られた。特にカーテンを用いた実験では,周囲色彩が与える影響は室温に注目させた特異的尺度である「温冷感」よりも、室内のイメージを評定させた際の「涼暖感」や「寒暑感」等の非特異的な尺度に見られた。環境音として設定した「風鈴の音」は、高温の状態では,より「涼しい」,「快適な」側に感じる効果が見られたが,この効果は,特に色彩の影響が小さい、灰色呈示状態において、顕著である。植物の効果に関しては,マッサンギアナは夏に室内に置きたい植物であり、夏期の室温条件下にある室内に設置することで、グリーンアメニティの効果が期待できるが,ポトスは冬に室内に置きたい植物であり、夏期の室温条件下にある室内に設置しても、グリーンアメニティの効果は期待できない。カーテン・窓の開閉状況の映像の効果に関しては,温度の交互作用は「自然的な-人工的な」においてみられ,カーテンの開閉状況に対する評価は室温により異なると考えられる。以上の知見から,色彩,環境音,植物等を適切に利用することにより,寒暑,涼暖の感覚を変化させることの可能性が確認されたと言える。今後は,エネルギー削減の定量的な効果を明らかにすることが課題と考えられる。
著者
澤島 智明 松原 斎樹 藏澄 美仁 松原 小夜子 荒井 麻里
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.67, no.554, pp.69-76, 2002-04-30 (Released:2017-02-04)
参考文献数
22
被引用文献数
6 3

The indoor thermal environment and the residents' lifestyle in 8 thermally insulated prefabricated houses in the Kansai area were investigated. This report discusses the heating, room temperature, and usage of living space in these houses, comparing it with houses without insulation. The results are summarized as follows : 1) The residents of the prefabricated houses use kotatsus (tables with small heaters to warm the legs under the table and a skirt around the table to hold the heat in) and electric carpets because of the low temperature just above the floor level and additional heating apparatus because of the morning coldness. The room temperatures, however, are higher than in the houses without insulation. 2) In the houses without insulation, lack of heat retention causes the low temperature just above the floor level. In the prefabricated houses, it is caused by insufficient heater capacity and intermittent heating. 3) When the residents want to relax in the living room, they can't choose the seating style except sitting on the floor directly to use kotatsus or electric carpets because of the low temperature.
著者
松原 斎樹 澤島 智明
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.101-107, 2009 (Released:2013-12-18)
参考文献数
6
被引用文献数
1

日本の木造住宅の寿命が短いことはよく知られている。本稿では,住まいの寿命と建物の環境性能との関係について論じる。高断熱高気密住宅は,断熱・気密性能が高いという意味であって,風通しの良くない家ではないが,一般的には誤解も少なくない。本稿では,断熱気密性能の違いと住まい方の関係に関する実態調査結果を紹介する。冬期には,断熱気密性能の向上は生活の質の向上につながっているが,夏期には,必ずしも向上するとはいえない。また,断熱気密性能は住まいの評価基準として重要ではあるが,多くの評価基準の一つに過ぎない。住まいの寿命を長くするためには,断熱気密性能も含めた評価基準の総合的なバランスの良さが重要である。
著者
柴田 祥江 北村 恵理奈 松原 斎樹
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.33-50, 2018-06-01 (Released:2018-08-25)
参考文献数
37

高齢者の住宅内での熱中症対策は喫緊の課題である.本研究は,在宅高齢者の(1)夏期の室内温熱環境実態,(2)熱中症対策意識と行動の調査,(3)体感温度の認知による行動変容の可能性を検討した.(1)74軒の住宅内5箇所の温湿度測定(湿度は居間のみ)の結果,熱中症発生が危惧される環境であった.(2) 熱中症対策意識は,「関心がある」77.3%,「少し関心がある」18.7%で,関心が高い.対策行動実施率は「水分補給」96.0%,「涼しい服装」69.3%,「エアコン使用」42.7%であった.(3)事前の体感温度認知は「昼間の居間」,「夜間の寝室」とも予測値と実測値の相関は低く,あまり正しく把握できていなかった.温湿度測定・確認後の,熱中症対策意識と行動の変化では,予測値と実測値との乖離は小さくなる変化があった.その結果,体感温度を認知(見える化)後は,「エアコン使用」が60.0%と有意に増加し,行動変容が確認された.熱中症対策における「体感温度の認知」の有効性が示唆された.
著者
西應 浩司 松原 斎樹 森田 孝夫 宮岸 幸正 阪田 弘一 藏澄 美仁
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.67, no.554, pp.219-225, 2002-04-30 (Released:2017-02-04)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

This study summarizes the results of a psychological experiment conducted in order to assess continuous recognition of street layout based on the dominant hemisphere of the brain. The experiment was conducted in two areas : one with a grid-shaped street pattern and another with an irregular pattern of winding streets. Subjects were asked to memorize route by studying a computer-animated simulation and walk the route by themselves. Originally the experiment included 18 right-dominant and 21 left-dominant. Analyzing questionnaire and errors in the cognitive maps, the right-dominant used more spatial expression than the left-dominant. However, there was no difference between both types in the number of completion of walking the route and drawing the cognitive maps.
著者
西應 浩司 材野 博司 松原 斎樹
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 46
巻号頁・発行日
pp.126-127, 1999-10-15 (Released:2017-11-08)

An experiment was done in one grid shaped street and one irregularly twisted street. There were two ways to memorize forms in the experiment : a real walk through the pathway or a CG animation presented walk through the same pathway.After memorizing the course, the subject walked the pathway by himself. The subjects were 40(25 males and 15 females). As a result of analyzing the distance and angle errors on thecongnitive maps, it was recognized that the written lengths, concerning both gender, are smaller than the actual distances. Concerning a real walk through the irregularly twisted street, females angle errors which reference line and the line which each corner connected the starting point make were smallest.
著者
松原 斎樹 島田 理良 藏澄 美仁 合掌 顕 飛田 国人
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.76, no.668, pp.877-885, 2011-10-30 (Released:2012-01-25)
参考文献数
40
被引用文献数
3

Several analysis were applied to the experimental data obtained from the different environmental conditions and procedures to investigate the difference between two unspecific scales; the impression of “hot-cold” and “warm-cool”. The main results are as follows; 1) “warm-cool” was different from “hot-cold” in the degree of the influence of temperature and the auditory factor, 2) the possibility was shown that “warm-cool” and “hot-cold” were not on the one-dimensional placement, 3) the difference of the degree of the influence of the auditory factor was conspicuously shown by combining with temperature.
著者
柴田 祥江 飛田 国人 松原 斎樹 藏澄 美仁
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.119-129, 2010 (Released:2010-07-16)
参考文献数
28
被引用文献数
5

近年,高齢者が住宅内で熱中症を発症する事例が報告されている.重症の場合には命にかかわるため,予防策は緊急の課題となっている.本研究は,高齢者の住宅内での熱中症予防を目的として,高齢者を対象に熱中症の認知度と住宅内における暑熱障害の体験,予防策,夏期の住まい方についてアンケート調査を行い,高齢者の意識について分析した.本調査の対象者は生涯学習講座受講生であるが,調査の結果,熱中症の認知度は 89.7%であったが,住宅内で発症することの認知度は 65.7%であった.暑熱障害の体験場所では寝室,居間,台所が多く,女性では 40.0%が台所で経験していた.休養目的の部屋が,高齢者にとっては必ずしも安全で快適な空間とはなっていないこと,また,台所の夏期温熱環境はやや危険な現状であることが分かった.予防策では,「水分補給」は 92.6%,「塩分補給」は 25%が行っていた.予防には,温熱環境の改善とともに,熱中症の認知と正しい予防策の普及が必要である.結果については高齢者の熱中症予防のための基礎資料として有益である.
著者
持田 徹 垣鍔 直 堀越 哲美 桑原 浩平 窪田 英樹 松原 斎樹 くわ原 浩平
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

世界の二大指標であるISO-7730のPMV指標と,ASHRAE(米国暖冷房空調学会)の基準であるSET^*指標の長所・短所を整理した。そして,平均皮膚温およびぬれ面積率と心理量の関係を,熱伝達論および人体の温熱生理特性から検討し,椅座の被験者実験の結果から,新しい温冷感の評価法を提案した(持田・桑原・窪田・長野)。また,屋外における夏服と冬服の着用実験から,著者らが提案した日射の影響を組み込んだSET^*が屋外においても適用可能であることを確認すると共に,屋外熱環境評価のための新しい温熱指標として予想温冷感ETSを開発した。札幌・名古屋での温冷感・快適感申告データから,SET^*の温冷感中立域・快適域を決定した(桑原・堀越・持田)。汗による水分吸収により着衣の電気抵抗が変化すると考え,着衣面の電気抵抗を測定することにより吸汗量を推定する方法を実験により検討した。また同方法を用い,軽装時において,冬期と夏期に40℃に曝露したときの胸部,上腕部,大腿部の局所の放熱過程を測定した結果,皮膚面の受熱量は着衣の表面温度が低下し始めてから,冬期の実測では約10分,夏期の実測では約6分遅れて低下することを確かめた。(垣鍔)。さらに,人体と環境との対流熱交換量を正確に算定するために,椅座・立位時の対流に関与しない面積(非対流伝熱面積)の実測を行った。姿勢による部位別の対流伝熱面積の違いを明確にし,対流伝熱面積を考慮した立位と椅座時の平均皮膚温算出用の重み係数を提案した。全体表面積に比し,対流伝熱面積が小さいほどHardy-DuBoisの平均皮膚温との差が大きいという姿勢に依存する特性を示した(松原)。
著者
北村 恵理奈 柴田 祥江 松原 斎樹
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間-生活環境系シンポジウム報告集
巻号頁・発行日
vol.36, pp.17-20, 2012-11-21

京都市南部の集合住宅4軒を対象に,すだれによる日射遮蔽や簡易内窓による断熱を施し,わずかな費用で省エネ性や快適性を得ることを試みた。施工前後の温湿度測定とエアコンの電力消費量測定,測定終了後にヒアリング調査を実施した。ヒアリング調査では「涼しくなった」という声が聞かれたが,実際に電力消費量が減少した住宅は2軒であり,他2軒は増加していた。電力消費量が減少した住宅ではエアコンの設定温度に変化はないが使用時間は短縮し,エネルギー削減につながった。増加した住宅では,断熱を施したことにより居住者が冷房効率の向上を実感し,エアコン使用時間が増加した。このことより,断熱性能の向上は電力消費量の減少には必ずしもつながらないことが示された。しかし,全住宅が簡易断熱及びすだれ設置による効果を感じていた。