著者
松岡 弥玲
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.45-54, 2006-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
36
被引用文献数
5 3

本研究の目的は,(1) 理想-現実自己のズレが年齢と共に減少していく変化と, 自尊感情が生涯にわたって維持される傾向とが関係しているかどうかを検証すること,(2) 理想自己の実現可能性の生涯発達変化を捉えること,(3) ズレを減少させる方略 (肯定的解釈粘り強さ諦めの早さ) の生涯発達変化をズレとの関わりから探索的に検討することである。調査参加者は15歳から86歳までの男女 (865名)。主な結果は以下の通りである。(1) 自尊感情は生涯維持され, ズレは年齢と共に減少していた。そして青年期から老年期までの全ての群でズレと自尊感情との間に有意な負の相関関係がみられ, ズレが減少していく変化と自尊感情の維持とが関連していることが示唆された。(2) 実現可能性は, 45-54歳に減少する傾向がみられた。(3) ズレを減少させる方略は, 高校生から55-64歳までの間, 対照的な方略が交互に用いられ, 男女差が顕著であった。しかし, 65-86歳群になると男女共にズレと方略との関わりが無くなった。これらの結果について, 性差に焦点をあて, ライフイベントや職業生活との関わりから考察がなされた。
著者
松岡 弥玲 岡田 涼 谷 伊織 大西 将史 中島 俊思 辻井 正次
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.179-188, 2011-06-20
被引用文献数
1 1

本研究では,発達臨床場面における介入や支援における養育スタイルの変化を捉えるための尺度を作成し,養育スタイルの発達的変化とADHD傾向との関連について検討した。ペアレント・トレーニングや発達障害児の親支援の経験をもつ複数の臨床心理士と小児科医師によって,養育スタイルを測定する項目が作成された。単一市内の公立保育園,小学校,中学校に通う子どもの保護者に対する全数調査を行い,7,000名以上の保護者からデータを得た。因子分析の結果,「肯定的働きかけ」「相談・つきそい」「叱責」「育てにくさ」「対応の難しさ」の5下位尺度からなる養育スタイル尺度が作成された。ADHD傾向との関連を検討したところ,肯定的働きかけと相談・つきそいは負の関連,叱責,育てにくさ,対応の難しさは正の関連を示した。また,子どもの年齢による養育スタイルの変化を検討したところ,肯定的働きかけ以外は年齢にともなって非線形に減少していく傾向がみられた。本研究で作成された尺度の発達臨床場面における使用について論じた。
著者
松岡 弥玲 加藤 美和 神戸 美香 澤本 陽子 菅野 真智子 詫間 里嘉子 野瀬 早織 森 ゆき絵
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.522-533, 2006-12-30

本研究では,成人期を対象に,複数の他者(子ども,配偶者,両親,友人,職場の人)から望まれている自己(他者視点の理想自己)と現実自己のズレが自尊感情に及ぼす影響について,性,性役割観,世代,就業形態との関連から検討した。調査参加者は就学前もしくは大学生の子どもを持つ成人期(子育て期,巣立ち期)の男女計404名。自尊感情を基準変数,5つの他者視点の理想-現実自己のズレを説明変数とした重回帰分析を行った結果,際立った性差がみられ,全体的に男性は職場のみ,女性は複数の他者(子ども,友人,両親のうち2者)の視点からの理想-現実自己のズレが自尊感情に影響していた。また,性役割観の違いによってどの他者視点から影響を受けるのかが異なり,子育て期の男性では伝統主義の場合は職場が影響していたが,平等主義群では子どもが影響していた。女性においては性役割観の違いが両親と友人の影響の差として現れ,世代差は子どもと職場の影響の違いにみられた。就業形態別では,専業主婦は両親のみが影響していた。以上のことから他者視点の理想-現実自己のズレが自尊感情に及ぼす影響は性,性役割観,世代,就業形態によって異なることが示された。
著者
松岡 弥玲 加藤 美和 神戸 美香 澤本 陽子 菅野 真智子 詫間 里嘉子 野瀬 早織 森 ゆき絵
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.522-533, 2006-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
42

本研究では, 成人期を対象に, 複数の他者 (子ども, 配偶者, 両親, 友人, 職場の人) から望まれている自己 (他者視点の理想自己) と現実自己のズレが自尊感情に及ぼす影響について, 性, 性役割観, 世代, 就業形態との関連から検討した。調査参加者は就学前もしくは大学生の子どもを持つ成人期 (子育て期, 巣立ち期) の男女計404名。自尊感情を基準変数, 5つの他者視点の理想-現実自己のズレを説明変数とした重回帰分析を行った結果, 際立った性差がみられ, 全体的に男性は職場のみ, 女性は複数の他者 (子ども, 友人, 両親のうち2者) の視点からの理想-現実自己のズレが自尊感情に影響していた。また, 性役割観の違いによってどの他者視点から影響を受けるのかが異なり, 子育て期の男性では伝統主義の場合は職場が影響していたが, 平等主義群では子どもが影響していた。女性においては性役割観の違いが両親と友人の影響の差として現れ, 世代差は子どもと職場の影響の違いにみられた。就業形態別では, 専業主婦は両親のみが影響していた。以上のことから他者視点の理想-現実自己のズレが自尊感情に及ぼす影響は性, 性役割観, 世代, 就業形態によって異なることが示された。
著者
中島 俊思 岡田 涼 松岡 弥玲 谷 伊織 大西 将史 辻井 正次
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.264-275, 2012-09-20 (Released:2017-07-28)
被引用文献数
1

本研究では,発達障害児の保護者における養育スタイルの特徴を明らかにすることを目的とし,定型発達児の保護者との比較および子どもの問題行動,保護者の精神的健康との関連について検討した。対象者は発達障害児の保護者139名であり,質問紙調査によって,養育スタイル,子どもの問題行動(SDQ),子どものADHD傾向(ADHD-RS),保護者の抑うつ(BDI-II),睡眠障害(PSQI-J)を測定した。その結果,養育スタイルについては,発達障害児の保護者と定型発達児の保護者とで差がみられ,発達障害児の保護者においては,肯定的関わりや相談・つきそいの得点が低く,叱責,育てにくさ,対応の難しさが高い傾向がみられた。また,子どもの問題行動やADHD傾向が高いほど,肯定的関わりや相談・つきそいが低く,叱責,育てにくさ,対応の難しさが高い傾向がみられた。精神的健康については,肯定的関わりや相談・つきそいは抑うつ,睡眠障害と負の関連を示し,叱責,育てにくさ,対応の難しさは正の関連を示した。以上の結果から,発達障害児の保護者における養育スタイルの特徴が明らかにされた。最後に,養育スタイルに対する発達臨床的な介入の必要性について論じた。
著者
松岡 弥玲
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.45-54, 2006-03

本研究の目的は,(1)理想-現実自己のズレが年齢と共に減少していく変化と,自尊感情が生涯にわたって維持される傾向とが関係しているかどうかを検証すること,(2)理想自己の実現可能性の生涯発達変化を捉えること,(3)ズレを減少させる方略(肯定的解釈,粘り強さ,諦めの早さ)の生涯発達変化をズレとの関わりから探索的に検討することである。調査参加者は15歳から86歳までの男女(865名)。主な結果は以下の通りである。(1)自尊感情は生涯維持され,ズレは年齢と共に減少していた。そして青年期から老年期までの全ての群でズレと自尊感情との間に有意な負の相関関係がみられ,ズレが減少していく変化と自尊感情の維持とが関連していることが示唆された。(2)実現可能性は,45-54歳に減少する傾向がみられた。(3)ズレを減少させる方略は,高校生から55-64歳までの間,対照的な方略が交互に用いられ,男女差が顕著であった。しかし,65-86歳群になると男女共にズレと方略との関わりが無くなった。これらの結果について,性差に焦点をあて,ライフイベントや職業生活との関わりから考察がなされた。
著者
松岡 弥玲
出版者
The Japanese Association of Educational Psychology
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.45-54, 2006
被引用文献数
3

本研究の目的は,(1) 理想-現実自己のズレが年齢と共に減少していく変化と, 自尊感情が生涯にわたって維持される傾向とが関係しているかどうかを検証すること,(2) 理想自己の実現可能性の生涯発達変化を捉えること,(3) ズレを減少させる方略 (肯定的解釈粘り強さ諦めの早さ) の生涯発達変化をズレとの関わりから探索的に検討することである。調査参加者は15歳から86歳までの男女 (865名)。主な結果は以下の通りである。(1) 自尊感情は生涯維持され, ズレは年齢と共に減少していた。そして青年期から老年期までの全ての群でズレと自尊感情との間に有意な負の相関関係がみられ, ズレが減少していく変化と自尊感情の維持とが関連していることが示唆された。(2) 実現可能性は, 45-54歳に減少する傾向がみられた。(3) ズレを減少させる方略は, 高校生から55-64歳までの間, 対照的な方略が交互に用いられ, 男女差が顕著であった。しかし, 65-86歳群になると男女共にズレと方略との関わりが無くなった。これらの結果について, 性差に焦点をあて, ライフイベントや職業生活との関わりから考察がなされた。
著者
中島 俊思 岡田 涼 松岡 弥玲 谷 伊織 大西 将史 辻井 正次
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.264-275, 2012

本研究では,発達障害児の保護者における養育スタイルの特徴を明らかにすることを目的とし,定型発達児の保護者との比較および子どもの問題行動,保護者の精神的健康との関連について検討した。対象者は発達障害児の保護者139名であり,質問紙調査によって,養育スタイル,子どもの問題行動(SDQ),子どものADHD傾向(ADHD-RS),保護者の抑うつ(BDI-II),睡眠障害(PSQI-J)を測定した。その結果,養育スタイルについては,発達障害児の保護者と定型発達児の保護者とで差がみられ,発達障害児の保護者においては,肯定的関わりや相談・つきそいの得点が低く,叱責,育てにくさ,対応の難しさが高い傾向がみられた。また,子どもの問題行動やADHD傾向が高いほど,肯定的関わりや相談・つきそいが低く,叱責,育てにくさ,対応の難しさが高い傾向がみられた。精神的健康については,肯定的関わりや相談・つきそいは抑うつ,睡眠障害と負の関連を示し,叱責,育てにくさ,対応の難しさは正の関連を示した。以上の結果から,発達障害児の保護者における養育スタイルの特徴が明らかにされた。最後に,養育スタイルに対する発達臨床的な介入の必要性について論じた。