著者
一杉 裕志 松岡 聡 米澤 明憲
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.3_225-3_237, 1994-05-16 (Released:2018-11-05)

分散環境で稼働する,リフレクティブな並列オブジェクト指向言語RbClとその実現方法について述べる.RbClの処理系を構成するすべての実行時ルーチンは,言語のユーザが動的に変更・拡張可能である.つまり,並列実行やリフレクションを含むすべての言語機構が,固定された実行時カーネルとしてではなく,ユーザが置き換え可能な形で実現されている.記述言語との言語的共生と,直接実行のリフレクティブタワーという2つの概念によってこのような言語が実現可能になることを示した.
著者
増原 英彦 松岡 聡 渡部 卓雄
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.175-192, 1994-05-16
参考文献数
31
被引用文献数
5

並行オブジェクトの間で共有される計算資源の概念をとり入れた自己反映計算モデルであるHybrid Group Architectureと,その記述言語ABCL/R2を提案した.ABCL/R2では,オブジェクト単位の自己反映計算と,オブジェクトグループ単位での自己反映計算の両方が可能なため,スケジューリングのような,並列・分散システムにおける共有計算資源に関する制御を,本来の計算から隠蔽された形をとりつつ,言語の枠内から柔軟に記述できる.また,自己反映システムの効率的な処理系は,作成が困難とされていたが,部分コンパイル・段階的なメタレベル生成・軽量オブジェクトなどの技法による効率的な処理系の作成方法を示した.実際に共有記憶型並列計算機上に作成したABCL/R2処理系では,自己反映計算を行うことによる速度低下を,行わない場合の10倍以下に抑えられ,非自己反映計算の実行速度は,非自己反映処理系とほぼ同等であるというベンチマーク結果を得た.
著者
西村 豪生 中田 秀基 松岡 聡
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.87, pp.73-78, 2006-07-31
被引用文献数
5

グリッド環境の不均質性を隠蔽するために,分散した資源上に仮想計算機と仮想ネットワークを用いて仮想クラスタを構築する手法が注目されている.仮想クラスタ構築のためには,必要な環境構成を備えた仮想計算機(VM) イメージを実計算資源に配布する必要がある.しかし,一般的にVM イメージのサイズは数100MBytes から数GBytes に及ぶため,その転送時間は無視できない.既存研究ではある程度高速な仮想クラスタ構築システムを提供しているものの,実行環境に制限がある.そこで我々は,ユーザが望む環境を備えたVM イメージを動的に高速に作成する仮想クラスタ構築システムを提案する.本システムでは利用頻度の高いパッケージ構成を含んだキャッシュイメージを自動的に生成する.また,事前に構築時間を見積もってキャッシュを用いることにより,構築に103 秒程度要していた仮想クラスタを,75 秒程度に短縮できることを確認し,高速化への指針を得た.Recently, a virtual cluster constructed by using a virtual machine and a virtual network attracts attention as the technique of hiding heterogeneous of the grid environment. It is necessary to distribute a VM image which has requested environment to the real computing resources for constructing proper virtual cluster. However, the transfer time of the VM image cannot be generally disregarded, since those sizes have several GBytes from 100MBytes. In an existing research, there is a limitation in the execution environment though a comparatively high-speed virtual cluster construction system is advocated. Then, we propose the virtual cluster construction system that makes the environment for which the user hopes at dynamically and high speed. This system automatically generates cache images that contain packages composition frequently used. Moreover, due to estimating the construction time beforehand and using cache, we confirmed the construction time was shortened from about 100 seconds at about 75 seconds, and obtained the indicator to speed-up.
著者
綾塚祐二 暦本純一 松岡 聡
雑誌
情報処理学会研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.62(1996-HI-067), pp.23-30, 1996-07-11

ハードウェア技術の進歩は高機能な計算機を携帯可能にし、ユーザと現実世界の間に常に計算機が介在することが可能になってきている。一方、計算機上の世界ではWolrd Wide Webが普及し、多種多様な情報をユーザが手軽に得ることができる。これらの情報は現実世界のオブジェクトに関するものも多いが、その関連性は現実世界のオブジェクトからは自明ではない。本研究では現実世界のオブジェクトとWWWの世界との連携をとることを目的とするハイパーメディアシステムを提案する。具体的には、携帯型の計算機と、現実世界のオブジェクト群に添付されたIDを用い、現実世界のオブジェクトからWWW上の情報へ繋がるリンクを構築する。
著者
丸山 冬彦 小川 宏高 松岡 聡
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.40, no.10, pp.39-50, 1999-12-15
被引用文献数
1 1

機械語命令列から同じ意味のソースプログラムを復元するデコンパイルという技術は古くから知られており 主に リバースエンジニアリングのための手段の一つとして利用されてきた.実際に Javaとそのバイトコードに関しても いくつかの処理系が提案されているが これまで提供されてきた処理系では Java言語には無いgotoを挿入するなど Java言語の文法を逸脱した結果を出力することがある.また デコンパイルのアルゴリズムがアドホックで 応用の利かないものであるため 我々のOpenJITコンパイラが要求するような 任意のバイトコードから正しいソース構造を復元するでコンパイラフロントエンドとして用いることができない.そこで 我々はJavaバイトコードから適切なJava言語の制御構造を復元するための効果的なアルゴリズムを新しく考案した.アルゴリズムの基本となる考え方は メソッドのコントロールフローグラフに対するドミネータツリーを用いるものである.これはブロック構造が完全な入れ子になる言語の場合 制御構造を表す任意のプログラム片はドミネータツリーにおいて ただ一つのサブツリーをなすという性質に基づいている.この一般性により アルゴリズムはJava以外の言語に適用することも可能である.OpenJITでの予備的な実装による評価では 他のデコンパイラが制御構造の復元に失敗するプログラムであっても 我々のアルゴリズムは適切にそれを復元し かつ 実行速度は同程度であることを示した.The technique called decompilation that reads sequences of machine code and generates the corresponding source program has been known for some time, and utilized primarily for reverse-engineering. For Java and its bytecode, although there have been several proposals of decompilers, most generate outputs that are inappropriately extend the Java language, such as insertion of gotos not present in Java. Moreover, the decompilation algorithms are somewhat ad-hoc and difficult to extend of verify its applicability, which is a hindrance to out OpenJIT compiler which requires a decompiler frontend to recover the correct source structure from arbitrary bytecode. Instead, we have devised a new and effective algorithm for decompilation, with emphasis on properly recovering control structures. The key idea is to base the algorithm around the dominator tree of the control flow graph of a method. This is based on the observation that, for a properly-nested block-structured language, each part of program representing a control structure corresponds to just a single subtree in the dominator tree. As such, the algorithm is general enough to be applied to other languages besides Java. The evaluation of our preliminary implementation in OpenJIT shows that our algorithm properly recovers control structures where other existing decompilers fail, and with relatively equivalent execution speeds.
著者
建部修見 森田 洋平 松岡 聡 関口 智嗣 曽田 哲之
雑誌
情報処理学会研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.77(2001-HPC-087), pp.177-182, 2001-07-25

ペタバイトスケールデータインテンシブコンピューティングのためのGridDatafarmアーキテクチャの設計と実装を行っている.Grid Datafarmは,PCクラスタのローカルディスクを利用した広域データ並列ファイルシステムを提供し,オンラインでペタバイト規模の大容量と,ローカルI/Oバンド幅を利用したスケーラブルなI/Oバンド幅が特徴である.Gfarm並列I/O APIおよびGfarmコマンドにより,単一システムイメージの操作を可能とする.ファイルの複製,ヒストリによる再生成などにより,自動的な耐故障性,負荷分散も目指している.
著者
遠藤 敏夫 額田 彰 松岡 聡
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC) (ISSN:18840930)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.11, pp.1-6, 2010-12-09

Intel プロセッサに加え NVIDIA GPU を備え,2010 年 11 月に稼働開始したヘテロ型スパコンである TSUBAME 2.0 における Linpack ベンチマークの実行について報告する.本システムは 2CPU と 3GPU を備えた計算ノードを約 1400 台持ち,それらはフルバイセクションのファットツリー構造を持つ QDR InfiniBand ネットワークにより接続される.理論演算性能は TSUBAME 1.0 の約 30 倍となる 2.4PFlops であり,それを TSUBAME 1.0 とほぼ同じ規模の電力で実現している.Linpack ベンチマークのコード改良およびチューニングを GPU を用いた大規模システムの特性に合わせ行い,実行速度として 1.192PFlops を実現した.この結果は日本のスパコンとしては初めて PFlops を超えるものであり,Top500 スパコンランキングに 4 位にランクされた.We report Linpack benchmark results on the TSUBAME 2.0 supercomputer, a large scale heterogenous system with Intel processors and NVIDIA GPUs, operation of which has started in November 2010. The main part of this system consists of about 1400 compute nodes, each of which is equipped with two CPUs and three GPUs. The nodes are connected via full bisection fat tree network of QDR InfiniBand. The theoretical peak performance reaches 2.4PFlops, 30 times larger than that of the predesessor TSUBAME 1.0, while its power consumption is similar to TSUBAME 1.0. We conducted improvement and tuning of Linpack benchmark considering characteristics of large scale systems with GPUs, and achieved Linpack performance of 1.192PFlops. This is the first result that exceeds 1PFlops in Japan, and ranked as 4th in the latest Top500 supercomputer ranking.
著者
佐藤 仁 小西 史一 山本 泰智 高木 利久 松岡 聡
雑誌
研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)
巻号頁・発行日
vol.2009-HPC-123, no.6, pp.1-7, 2009-11-23

TSUBAME 上で Hadoop を実行するためのツール 「Tsudoop」 を開発した.Tsudoop は,既存システムの構成や運用方針の変更をすることなく,TSUBAME 上のジョブスケジューラである n1ge や Lustre ファイルシステムなどと協調して動作して Hadoop 実行環境を構築し,ユーザの MapReduce アプリケーションを実行する.予備実験として,このツールを用いて,生物医学系の学術論文を対象にした書籍情報データベースである MEDLINE に対してテキストの全文検索を行うアプリケーションを実行した.その結果,1 ノード (16 コア) での実行と 32 ノード (512 コア) での実行とを比較して 14 倍の性能向上を示し,TSUBAME のような高速な共有ファイルシステムやジョブスケジューラが存在するような計算環境でも,MapReduce アプリケーションの実行が可能なことを確認した.
著者
増原 英彦 松岡 聡 米澤 明憲
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. PRO, [プログラミング]
巻号頁・発行日
vol.95, no.82, pp.65-72, 1995-08-24

並列アプリケーションのための機能拡張や最適化を行う手段として、自己反映計算によるメタレベルプログラミングが有効であることが認められつつあるが、実際のアプリケーションに応用した場合の有効性は、メタアーキテクチャの設計に大きく左右される。現在我々は、並列オブジェクト指向言語ABCL/fのメタアーキテクチャを設計している。特徴は、メタインタプリタ・メタオブジェクトによる拡張、annotationによるメタレベルへの指示、継承によるメタプログラムの再利用などである。本論文では、いくつかの並列プログラムにおける機能拡張の例を挙げ、それらがどのように記述されるかを検討することで、メタアーキテクチャの有効性を確かめる。
著者
小野 功 水口 尚亮 中島 直敏 小野 典彦 中田 秀基 松岡 聡 関口 智嗣 楯 真一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.396-406, 2005-08-15
被引用文献数
3

本論文では,Ono らが提案したNMR 蛋白質立体構造決定のための遺伝アルゴリズム(GA)を,複数のWAN 上のPC クラスタ群から構成されるグリッド上で並列化したシステムを提案し,提案システムの性能評価を行った結果を報告する.提案システムは,マスタ,サブマスタ,ワーカから構成される階層的なマスタ・ワーカ方式を用いて並列化されている.マスタと各PC クラスタ間の通信はセキュアなGridRPC ミドルウェアNinf-G を用いて,また,PC クラスタ内の通信は高速なGridRPCミドルウェアNinf-1 を用いて実現されている.さらに,提案システムでは,Ninf-G によるインターネット上の通信遅延を隠蔽するため,スライド転送手法を導入している.5 サイト/1 196CPU から構成されるグリッドテストベッドで,78 残基からなる蛋白質の立体構造決定問題を用いて,提案システムの性能評価を行った結果,高い並列化効率を示すことが確認された.In this paper, we parallelize the genetic algorithm (GA) for NMR protein three-dimensional structure determination, which has been proposed by Ono et al., on a grid that consists of multiple PC clusters on the WAN and report some results on the performance evaluation of the proposed system. The proposed system is parallelized with the hierarchical master-worker paradigm and consists of a master, submasters and workers. The communication between the master and each PC cluster is realized with Ninf-G, which is a secure GridRPC middleware, and that in each PC cluster is implemented by using Ninf-1, which is a fast GridRPC middleware. In the proposed system, we employ the slide transfer technique in order to hide the latency of communication on the Internet by using Ninf-G. The experimental results on the grid testbed consisting of 5 sites/1,196 CPUs showed that the proposed system effectively utilized computing resources on the grid testbed when it was applied to a problem of determining the three-dimensional structure of a 78-residue protein.
著者
遠藤 敏夫 額田 彰 松岡 聡
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.169-179, 2011-10-05

2010 年 11 月に稼働開始した TSUBAME 2.0 スーパコンピュータは,Intel プロセッサに加え 4,000 以上の NVIDIA GPU を備えるペタスケールのヘテロ型システムである.この TSUBAME 2.0 における Linpack ベンチマークの実行について報告する.本システムは 2CPU と 3GPU を備えた計算ノードを約 1,400 台持ち,それらはフルバイセクションのファットツリー構造を持つ Dual-Rail QDR InfiniBand ネットワークにより接続される.理論演算性能は TSUBAME 1.0 の約 30 倍となる 2.4PFlops であり,それを TSUBAME 1.0 とほぼ同じ規模の電力で実現している.Linpack ベンチマークのコード改良およびチューニングを GPU を用いた大規模システムの特性に合わせて行い,実行速度として 1.192PFlops を実現した.この結果は日本のスパコンとしては初めて PFlops を超えるものであり,Top500 スパコンランキングに 4 位にランクされた.さらに電力性能比は 958MFlops/W であり,Green500 ランキングにおいて the Greenest Production Supercomputer in the World 賞を獲得した.
著者
竹房 あつ子 小川 宏高 松岡 聡 中田 秀基 高木 浩光 佐藤三久 関口 智嗣 長嶋 雲兵
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.1827-1838, 1998-06-15
参考文献数
14

広域ネットワークの整備につれ,高性能広域分散計算を実現する試みが我々のNinfを含めていくつか行われている.しかしこのような広域計算システムの,特にWANにおいて複数のクライアントが複数のサイトに分散している状況下での性能特性に関する議論は十分になされていない.本稿では,Ninfおよび類似のシステムの実現可能性を調査するため,LAN/WAN環境でLinpack/EPベンチマークを実施し,次のような結果を得た.1)十分なバンド幅があれば,Ninfを用いた方がLocal実行するより高速になる.2)既存の高性能計算機は性能や耐久性の点で広域計算システムの運用に十分なプラットフォームである.3)ベクトル並列計算機(Cray J90)では,高性能並列ライブラリが有効利用できる,すなわち既存の高性能ライブラリの再利用性がある.4)計算主体の計算(EP)では現状の広域計算システムで十分に運用できる.5)通信主体の計算(Linpack)では,LAN環境ではサーバの稼働率が性能を支配し,WAN環境では通信性能と設置条件によって性能に与える影響に一定の傾向がある.Rapid increase in speed and availability of network of supercomputers is making high-performance global computing possible,including our Ninf system.However,critical issues regarding system performance characteristics in global computing have been little investigated,especially under multi-client,multi-site WAN settings.In order to investigate the feasibility of Ninf and similar systems,we conducted benchmarks under various LAN and WAN environments,and observed the following results:1)Given sufficient communication bandwidth,Ninf performance quickly overtakes client local performance,2)current supercomputers are sufficient platforms for supporting Ninf and similar systems in terms of performance and OS fault resiliency,3)for a vector-parallel machine (Cray J90),employing optimized dataparallel library is a better choice compared to conventional task-parallel execution employed for non-numerical data servers,4)computationally intensive tasks such as EP can readily be supported under the current Ninf infrastructure,and 5)for communication-intensive applications such as Linpack,server CPU utilization dominates LAN performance,while communication bandwidth dominates WAN performance,and furthermore,aggregate bandwidth could be sustained for multiple clients located at different Internet sites;as a result,distribution of multiple tasks to computing servers on different networks would be essential for achieving higher client-observed performance.
著者
高木 浩光 松岡 聡 中田 秀基 関口 智嗣 佐藤三久 長嶋 雲兵
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.2203-2214, 1999-05-15
参考文献数
23
被引用文献数
1

地球規模の広域分散計算システムを魅力的なものとするためには 不特定の者に対して システムの利用だけでなく応用プログラムの作成をも解放する必要があると考える. その実現のためには 安全性を保証しながら任意のプログラムを実行できる仕組みが必要である. そこで Javaのセキュリテイ機構を活用してこれを実現した 大域的並列計算環境「Ninflet」を提案する. これを用いることで 任意の計算を他人が所有する計算機上でさせることが可能となる. このシステムは 夜間利用されていない計算機を地球の裏側の昼間の地域に貸し出すといった 地球規模の共同利用メタコンピュータシステムを実現するためや また ワークステーションクラスタ上に並列処理環境を構築するためにも利用することのできるものである. 本論文では Ninfletシステムのアーキテクチャを提案するとともに 並列処理環境として利用する場合の予備的な性能評価を行う.To make global-wide distributed computing system attractive, the system should be open to an arbitrary individual not only for its usage but also for construction of wide variety of application programs. For this purpose, the system must supply a secure environment for safely executing arbitrary programs. Our proposed global computing environment "Ninflet" fulfills such a requirement by exploiting the security mechanism of the Java language, allowing computation to occur on machines not owned or administered by the individual invoking the computation. Ninflet realizes a globally-shared metacomputer which would allow "lending" of computing cycles of machines which would be otherwise unused at nights to the other side of the globe, or to simply build a parallel execution environment on a heterogeneous sets of workstation clusters. We present the system architecture of Ninflet and a preliminary performance evaluation when used as a parallel execution environment.
著者
中田 秀基 高木 浩光 松岡 聡 長嶋 雲兵 佐藤 三久 関口 智嗣
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. HPC,[ハイパフォーマンスコンピューティング]
巻号頁・発行日
vol.65, pp.9-14, 1997-03-06
参考文献数
5

ローカルなネットワーク上でのメッセージバッシングライブラリを用いた分散並列計算はすでに広く行なわれている。しかし、ネットワークの高速化によって現実的になりつつある広域ネットワーク上での分散並列計算については、ソフトウェアの枠組が未だ十分に整備されていない。我々は、広域分散並列計算に適した分散計算の枠組として「Ninf」を提案している。Ninfは広域分散環境でのマクロデータフローによる並列実行を支援するシステムで、広域での動的負荷分散とスケジューリングを特徴とする。メッセージパッシングライブラリを用いた手法に比較して(1)広域ネットワークに適した通信パターンを用いる、(2)ユーザにとってプログラミングが容易でかつ再利用性が高い、(3)既存のライブラリの再利用が容易、(4)ネットワーク上の食源の利用が可能、といった特長をもっている。
著者
中田 秀基 高木 浩光 松岡 聡 長嶋 雲兵 佐藤三久 関口 智嗣
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.1818-1826, 1998-06-15
参考文献数
7
被引用文献数
4

ローカルなネットワーク上でのメッセージパッシングライブラリを用いた分散並列計算はすでに広く行われている.しかし,ネットワークの高速化によって現実的になりつつある広域ネットワーク上での分散並列計算については,ソフトウェアの枠組みがいまだ十分に整備されていない,我々は,広域分散並列計算に適した分散計算の枠組みとして「Ninf」を提案している.Ninfは広域分散環境でのマクロデータフローによる並列実行を支援するシステムで,広域での動的負荷分散とスケジューリングを特徴とする.メッセージパッシングライブラリを用いた手法と比較して,(1)広域ネットワークに適した通信パターンを用いる,(2)ユーザにとってプログラミングが容易でかつ再利用性が高い,(3)既存のライブラリの再利用が容易,(4)ネットワーク上の資源の利用が可能,といった特長を持つ.Distributed computing using message passing libraries in a LAN(Local Area Network) environment is already accepted as an effective supercomputing methodology.On the other hand,although distributed computing in WAN(Wide Area Network) environment is becoming practical due to recent development of high-speed network facilities,software framework for supercomputing in WAN is yet to be established.We propose 'Ninf',a distributed computing framework for globally distributed computing environment.Ninf enables parallel computing in WAN based on the macro dataflow model,and facilitates automatic dynamic load distribution and scheduling.Ninf has the following advantages over using existing message passing libraries in WAN supercomputing:(1) communication protocol suited for globally distributed environment,(2) ease of programming (3) reuse of existing libraries,(4) integration with existing data resources on the Internet.
著者
小川 宏高 松岡 聡 佐藤 仁 高野 了成 滝澤 真一朗 谷村 勇輔 三浦 信一 関口 智嗣
雑誌
研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC) (ISSN:21888841)
巻号頁・発行日
vol.2017-HPC-160, no.28, pp.1-7, 2017-07-19

国立研究開発法人産業技術総合研究所 (以降,産総研) では,平成 28 年度二次補正 「人工知能に関するグローバル研究拠点整備事業」 の一環として,平成 29 年度末に,東京大学柏 II キャンパスに,「AI 橋渡しクラウド (AI Bridging Cloud Infrastructure)」 (以降,ABCI という) の導入を計画している.ABCI は,我が国の人工知能技術開発のためのオープンなリーディングインフラストラクチャの実現を目指し,アルゴリズム (Algorithm),ビッグデータ (Big Data),計算能力 (Computing Power) の協調による,高度な人工知能処理を可能にする大規模かつ省電力なクラウド基盤である.本稿では,ABCI のサーバシステムにフォーカスしつつ,ABCI の概要と,システム設計上の論点と我々が採った方策について紹介する.
著者
増原 英彦 松岡 聡 米澤 明憲
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.1290-1298, 1996-07-15

並列自己反映言語システムは 並列アプリケーションの最適化等を簡潔に記述するメタプログラミングの機能を持つ一方 解釈実行に基づくモデルから来る効率上の問題を持つ.本論文では部分計算を用いた並列自己反映言語のコンパイル技法を提案する.この技法では 副作用について拡張された部分計算やプログラム変換を適用することで基本的に解釈実行を除去し 直接実行のみとする.並列計算機上の実験では 並列アプリケーションのメタレベルに記述された最適化が 7?17%のオーバヘッドで実行できるという結果が得られている.