著者
阿部 寛史 田淵 諒子 奥田 康仁 松本 晃幸
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.100, no.1, pp.8-14, 2018-02-01 (Released:2018-04-01)
参考文献数
41
被引用文献数
1 1

SSRマーカーを用いて,集団内,地域,全国の空間スケールでショウロ(Rhizopogon roseolus)の遺伝解析を行った。集団内ではショウロのジェネットは小さく(平均0.6 m,≦1.6 m),頻繁な更新があること(1年で95.8%)から有性生殖に依存した繁殖戦略を持つことが示された。また,空間自己相関解析の結果,老熟して融解した子実体から埋土胞子化する近距離(0~4 m) において正の空間遺伝構造が検出された。次に,鳥取県内の7集団の遺伝的特徴を比較したところ,鳥取砂丘の5集団は高い遺伝的多様性を持ち,他の2集団との間に有意な遺伝的分化を示した(例32.2 kmでFST=0.234)。日本国内のサンプルについてSTRUCTURE解析を行ったところ,地理的位置に対応した四つの遺伝的クラスターに分類された。以上から,地域間の遺伝子流動が長期間にわたり制限されたことで,集団間の遺伝的分化が進行していると示唆された。分化した集団に特有の遺伝変異はショウロの育種において有用な遺伝資源となる可能性がある。
著者
米山 彰造 安東 夏都美 東 智則 佐藤 真由美 牛島 秀爾 松本 晃幸
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
pp.jjom.H29-04, (Released:2017-11-18)

本研究は新たな農林水産施策を推進する実用開発事業(課題番号27036C)の一部として実施したものである.また,本研究に貴重な助言,ご指導いただいた奈良県森林技術センター河合昌孝氏と鳥取大学農学部付属菌類きのこ遺伝資源研究センターの中桐昭博士に厚くお礼申し上げます.
著者
小畠 靖 白井 伸生 河合 昌孝 村口 元 坂本 裕一 松本 晃幸
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.13-23, 2021-05-01 (Released:2021-06-16)
参考文献数
34

紫外線照射により胞子落下量が元株(野生型)の1/10,000程度に低下したシイタケ胞子欠損性変異体B682を分離した.SEM観察において変異体ヒダ表面には成熟胞子がほとんど認められず,未熟な球状胞子が観察された.変異体の子実体ヒダ組織をギムザ染色したところ,担子器の多くで8個の核が観察され,減数分裂後の担子器内4娘核の体細胞分裂が推察された.検定集団(98115A population)を用いた遺伝性解析で,本変異形質は一因子性の顕性変異によるものと推察された.次世代シーケンス解析に基づく元株と変異体ゲノムの配列比較により,変異体の推定遺伝子領域にナンセンス変異を生じる一塩基多型(SNP)を見出した.本SNP特異的なPCR増幅の有無は検定集団(32D population)の表現型と完全に一致した.B682はシイタケで初めて確認された顕性の胞子欠損性変異体であり,育種利用を進める上で本SNPはマーカーアシスト選抜を可能にする有効な変異点と考えられる.
著者
松本 晃幸
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

栽培きのこの一種、ウスヒラタケ(Pleurotus pulmonarius)で見出された子実体が発生後、正常に傘と柄の分化を行うことができない(子実体の奇形化)自然突然変異の原因遺伝子を連鎖地図、ゲノム配列情報、発現解析等により探索し、候補を1遺伝子に絞り込んだ。この成果は栽培現場で偶発的に発生する子実体奇形化の説明につながる可能性がある。今後相補あるいは破壊実験などにより検証し、当該遺伝子の変異検出用DNAマーカーを開発する予定である。