著者
松本 純一
出版者
東洋学園大学
雑誌
東洋学園大学紀要 = Bulletin of Toyo Gakuen University (ISSN:09196110)
巻号頁・発行日
no.12, pp.29-38, 2004-03-15

近年日本語の話し言葉でよく聞かれる「~円からお預かりします」という言い回しに関して,その表現の成立と存在意義について,生成文法を始めとする理論言語学及び普遍文法の観点から考察する。結論として,この表現は本来助詞が存在しなくてよい部分に,丁寧さを高めるために日本語におけるデフォールトな後置詞「から」が挿入されたものであるという説明を提案する。この結論を支持する根拠として,現代日本語文法論における構造格と内在格との区別・日本語の後置詞「から」が持つ独自の性質・他言語における格体系・英語におけるデフォールトな前置詞などの言語現象を取り上げる。
著者
奈良 真美 押本 浩一 堀内 克彦 豊田 満夫 片貝 堅志 増田 淳 松本 純一 荒井 泰道
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
雑誌
Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:13489844)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.114-115, 2005-11-25 (Released:2013-11-21)
参考文献数
2
被引用文献数
3

症例は58歳,女性。発熱にて近医受診し,A型インフルエンザと診断。リン酸オセルタミビルを処方され,内服後に腹痛,下痢,血便となり当院受診。緊急大腸内視鏡検査で左側結腸に縦走潰瘍を認め入院。内視鏡所見,病理所見,便培養陰性などから,下痢が誘起となった虚血性腸炎と考えられた。リン酸オセルタミビルが原因の出血例は稀であり,使用頻度の高い薬剤でもあることから注意が必要であると思われた。
著者
荒井 泰道 松本 純一 小田 島博 近藤 忠徳 関口 利和 石田 稔 小林 節雄
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.24, no.9, pp.1439-1445_1, 1982

急性回腸末端炎はYersinia enterocoliticaやアニサキスの感染によって発症することがしられている.しかし多くは原因不明の疾患である.著者らはYersinia enterocoliticaの検出された1例を含めて4例の急性回腸末端炎を経験した.4例とも発熱,右下腹部痛,下痢を主訴として来院した.急性期の内視鏡所見は回腸末端部に不整形の潰瘍やびらんの形成がみられ,1例ではあるがいわゆるcobble stone像を示した.回復期に入ると潰瘍やびらんは消失し,粗大結節状あるいは微細顆粒状の隆起性病変を認めた.生検によって炎症性細胞浸潤とリンパ濾胞の形成がみられたことから,それらはリンパ濾胞の増殖によるものと考えられた.経過とともに隆起性病変も消失することが認められた.急性回腸末端炎の急性期内視鏡所見及び内視鏡的に経過観察を行なった文献はみられていないように思われ意義あるものと考え報告した.
著者
矢作 和也 金子 香里 松本 達彦 増田 淳 橋本 良明 松本 純一 荒井 泰道
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
雑誌
消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:03899403)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.215-217, 1993-12-01 (Released:2015-07-15)
参考文献数
6

症例は50歳女性。下血を主訴に来院し,即日行った大腸内視鏡検査にて,S状結腸深部に白色半透明の膜様の剥離粘膜に被われた血腫がポリープ状に認められた。また,塩酸チクロピジン服用によると思われる出血時間の延長を認めた。4日後,剥離粘膜に被われた血腫の排泄があり,その直後に行った注腸X線検査,内視鏡検査にてS状結腸深部に約10cmにわたる全周性の潰瘍を認めた。成分栄養療法などを行い,約10ヵ月後ほとんど狭窄を残さずに治癒した。大腸の全周性粘膜剥離はまれであり,その原因の1つとして虚血性腸炎があげられているが,本例は発症時に腹痛がなく,また剥離部に隣接した粘膜には炎症所見がみられなかったことなどより,虚血性腸炎の可能性は低い。むしろ,塩酸チクロピジンによる出血傾向との関連の可能性が考えられた。興味ある症例と思われたので,若干の文献的考察を加え報告した。
著者
岡田 純卓 押本 浩一 飯田 智広 片貝 堅志 下田 隆也 増田 淳 松本 純一 荒井 泰道
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
雑誌
Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:13489844)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.60-61, 2004-12-01 (Released:2014-01-28)
参考文献数
4

次亜塩素酸ナトリウム水溶液誤飲による食道炎では,多くの市販品は3%前後と低濃度である為,狭窄を生じることは少ないとされている。今回,高濃度のものによって腐食性食道炎から食道狭窄を生じることを経験したので文献的考察を加えて報告する。
著者
松本 純一 服部 貴行 山下 寛高 濱口 真吾 森本 公平 一ノ瀬 嘉明 田島 信哉 中島 康雄 平 泰彦
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, pp.1159-1162, 2012-11-30 (Released:2013-03-08)
参考文献数
6
被引用文献数
1

脾臓は最も多く損傷を受ける腹腔内臓器である。肝臓と同様に上腹部を占める実質臓器であるが,内部の組織構造が粗であるために,損傷し易い上に,出血しても損傷部周辺の実質による圧迫効果が弱い。現在外傷初期診療において標準的に用いられているCTは,仮性動脈瘤や造影剤の血管外漏出像といった血管損傷の所見をより短時間で,より正確に評価することを可能としている。脾損傷の治療法選択は,循環動態や他の損傷の数と程度などから総合的に判断されるが,CTがもたらす情報は大変重要である。CTで造影剤の血管外漏出や仮性動脈瘤形成といった血管損傷の所見を認めた場合には,被膜断裂がなくても肝臓より積極的に経カテーテル的動脈塞栓術を考慮する必要がある。日本外傷学会臓器損傷分類2008では,血管損傷の有無を評価に含めていないが,中島らは2007年にCT所見に基づく肝,脾臓器損傷分類を提唱している。本分類では,血管損傷の有無を加味しており,治療方針決定に際し有用なgrading systemといえる。
著者
井上 成信 松本 純一 前田 孚憲 光畑 興二 近藤 秀樹 田原 望武
出版者
岡山大学資源生物科学研究所
雑誌
岡山大学資源生物科学研究所報告 (ISSN:0916930X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.119-135, 1996
被引用文献数
1

Orchid fleck virus(OFV) was isolated from Calanthe spp.(Cal. discolor,Cal. Bicolor,Cal. Hizen,Cal. triplicata,Cal longicalcarata,Cal Satusma) showing light-green and/or yellowish fleck mosaic on the leaves, which different from previously known viruses of Calanthe. OFV caused systemic infection in Calanthe, Chenopodium quinoa and Beta vulgasis var. cicla, and local infection in C.amaranticolor, C. murale, Spinacia oleracea, Tetragonia expansa, Nicotiana tabacum, N. clevelandii, N. glutinasa, N. rustica, Vigna unguiculata. C quinoa and T expansa are useful as indecator hosts and as a source of virus for inoculation, diagnosis and purification. Sap from C. quinoa was infective after dilution to 10-3 but not 10-4, after 10 min at 45 but not 50℃, and after 1 hr at 20℃ but not 2 hrs. For sap inoculation, it is best to use the homogenate of OFV-onfected leaves within about 7-8 min after homogenization in summer and within about 15 min in winter. The virus particles were bullet-shape or bacilliform, approximately 45-50×105-125 nm in a negatively stained praparations. In ultrathin sections, the viroplasms were observed in the nuclei, and the virus particles and the chracteristic spokewheel structures were found both in the nuclei and the cytoplasm. Antiserum (precipitin tiner:1/512) against the present virus reacted strongly with the isolates of OFV-Cy-50, similar to that of homologous virus. In agar gel diffusion tests, no spur formation occurred among Cal. 94-16 and OFV-Cy-50. In SDS-polyacrylamide gel electrophoresis, one major band of Mr 55,000, probably viral nucleocapsid-protein, and three minor proteins were detected, similar to those of OFV・So from Cymbidium.1988年以来、山口・宮崎・鹿児島県で発生が認められたエビネ類(エビネ、タカネ、ヒゼン、サツマ、ツルラン、オナガエビネ)の葉に淡緑色~黄色斑紋のモザイク病の病原ウイルスを調べたところ、orchid fleck virusと同定された。本ウイルスは11科46種(54品種)の植物に汁液接種を行ったところ、エビネに感染して原株と同様の病班を生じたほか、C.quinoa,フダンソウに全身感染し、C.murale,ホウレンソウ、ツルナ、ササゲ、タバコ、N.clevelandii,N.glutinosa,N.rusticaの5科12種の植物に局部感染が認められた。本ウイルスの粒子はDN法試料で被膜のない弾丸型であり、またときに短桿菌型も存在したが、その大きさは長さが約105~125nm、幅約45~50nmであった。病葉の粗汁液を用いた希釈限度は10-3~10-4、不活性化温度は45~50℃、保存限度は1~2時間であった。ウイルスの汁液接種には、接種源植物としてC.quinoa またはツルナがよく、病葉磨砕後夏期では7分以内、冬期では15分以内の病汁液を供試すると接種検定によい結果が得られることが認められた。純化ウイルスを家兎に注射して、微滴法で力値512倍の抗血清が得られた。本抗血清はCymbidium から分離されたOFV・Cy-50とよく反応し、寒天ゲル内二重拡散法では Cal.94-16およびOFV・Cy-50の沈降帯が完全に融合した。ウイルスの構造蛋白質の分子量は約55Kであった。病細胞の超薄切片の電顕観察像には、閣内にviroplasmが認められ、その内部や周辺に層状に集塊あるいは散在した粒子が認められた。さらに核内や細胞質内に膜に包まれた車輪状の粒子集塊も見られた。OFVによる本病をエビネ類黄色斑紋モザイク病とした。
著者
一ノ瀬 嘉明 松本 純一 船曵 知弘 松村 洋輔 桑原 秀次 森本 公平 西巻 博 中島 康雄 久志本 成樹 横田 順一朗
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.21-31, 2014-01-20 (Released:2014-01-20)
参考文献数
28

時間を意識した効率的な外傷全身CT評価法として外傷初期診療ガイドライン(JATEC)改訂にて取り入れられた3段階読影について解説する.第1段階では緊急の治療方針決定に重要な影響を与える損傷や病態の検出に焦点を絞った評価法(FACT)により,緊急開頭術を要する頭蓋内血腫,大動脈損傷,広範な肺挫傷,血気胸,心嚢血腫,腹腔内出血,骨盤骨折や後腹膜・傍椎体領域の血腫,上腹部実質臓器や腸間膜損傷の有無を速やかに評価する.引き続き行う第2段階では,FACTで拾い上げていない迅速な処置を要する損傷や活動性出血の検索を行う.第3段階では,患者のバイタルサインが安定した後に細かな異常所見を見落とさないよう詳細な評価を行う.これら3段階の読影により得られた画像情報と共にABCDEFGS(年齢,出血部位や性状,凝固異常,服薬歴や既往歴,経過時間,臓器損傷形態,受傷機転,意識障害の有無,循環動態)を総合的に検討して緊急性を判断し適切な治療に結びつける.
著者
三塩 晋作 廣瀬 徹 中野 純次 松本 純一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.107, no.8, pp.634-639, 1987-08-25 (Released:2008-05-30)
参考文献数
6

A mode of the alkaline and acidic degradation of sodium 6-[D-2-(2-(4-formyl-1-piperazinyl)-5, 8-dihydro-5-oxopyrido [2, 3-d] pyrimidine-6-carboxamido)-p-hydroxyphenylacetamido] penicillanate (1, PL-385) and structures of the degradation products were studied. Treatment of 1 with three equimolar amounts of sodium hydroxide produced a kinetically stable intermediate, (5R)-penicilloic acid (2a), which on kept at 37°C for 65h was converted into a thermodynamically stable product, (5S)-penicilloic acid (2b). Treatment of 1 with an excess of sodium hydroxide gave a deformyl derivative (3) arising from the elimination of formly group via 2. On the acidic treatment of 1, the degradation product, (5R, S)-penilloic acid (4), was yielded.
著者
三塩 晋作 廣瀬 徹 中野 純次 松本 純一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.107, no.8, pp.607-615, 1987-08-25 (Released:2008-05-30)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

A series of N-alkylampicillin (2), N-heteroarylampicillin (5) and N-heteroarylcephalexin (6) were synthesized in order to obtain β-lactam detivatives with a broad and orallypotent antibacterial activity similar to that of the injectable N-acylampicillins. 6-[2-[(Pyrido [2, 3-d] pyrimidin-6-yl) methylamino]-2-phenylacetamido] penicillanic acid derivatives (2) were prepared by the reduction of the Schiff base which was derived from the reaction of pyrido [2, 3-d] pyrimidine-6-carboxaldehyde (1) with ampicillin. 6-N-(4-Pyrimidinyl) ampicillin and -cephalexin derivatives (5 and 6) were obtained by the reaction of 4-chloropyrimidine (4) with ampicillin or cephalexin. Compounds 2, 5 and 6 were tested in vitro antibacterial activity and, however, none of them have a broad and potent activity.
著者
三塩 晋作 廣瀬 徹 中野 純次 松本 純一 南 新作
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.107, no.8, pp.592-606, 1987-08-25 (Released:2008-05-30)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

A series of N-(pyrido [2, 3-d] pyrimidine-6-carbonyl) ampicillin and -amoxicillin derivatives (1-3) were synthesized and tested for antibacterial activity and acute toxicity in mice. 5, 8-Dihydro-2-(1-piperazinyl)-5-oxopyrido [2, 3-d] pyrimidine-6-carboxylic acid (7) was converted to N-acyl- and -alkylpiperazinyl derivatives (8 and 9) by acylation and alkylation, respectively ; a part of 9 was alternatively prepared by the reactions involving the displacement of N-alkylpiperazines with sulfoxide 11 which was derived from ethyl 5, 8-dihydro-2-methylthio-5-oxopyrido [2, 3-d] pyrimidine-6-carboxylate (10). Treatment of 4, 5, 8 and 9 with ethyl chloroformate followed by the reaction with ampicillin and amoxicillin gave the desired N-acylampicillin (2) and -amoxicillins (1 and 3), respectively. Among compounds 1-3, sodium 6-[D-(-)-2-(2-(4-formyl-1-piperazinyl)-5, 8-dihydro-5-oxopyrido [2, 3-d] pyrimidine-6-carboxamido)-p-hydroxyphenylacetamido] penicillanate (3l, PL-385) was found to be the most excellent in antibacterial activity and to be the less potent in acute toxicity in mice. An alternative route for the synthesis of PL-385 was accomplished, consisting of the reaction of an active ester 13 with amoxicillin. Structure-activity relationships of 1-3 were discussed.
著者
久保 和也 松本 純一 村田 健児 大橋 聡子 井澤 克也 山崎 知美 寺部 雄太 大平 吉夫 安藤 弘
出版者
日本下肢救済・足病学会
雑誌
日本下肢救済・足病学会誌 (ISSN:1883857X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.81-84, 2013-06-28 (Released:2013-06-28)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

【目的】糖尿病・末梢動脈疾患患者における足底部創傷部位と足関節背屈可動域との関係を明らかにすることとした.【対象と方法】糖尿病・末梢動脈疾患患者15例27肢(男性18肢,女性9肢,平均年齢69.9±9.4歳)を対象とした.年齢,糖尿病・人工透析の有無,足関節可動域,膝関節可動域,足底部創傷部位,機能的自立度評価表(FIM)移動項目,足関節上腕血圧比,皮膚灌流圧をカルテより後方視的に抽出した.足底部創傷部位は横足根関節より遠位を前足部とし,前足部・後足部に分類した.足関節背屈可動域0°以下を制限あり群とし,なし群との2群間比較を行った.【結果】制限あり群に前足部創傷を有する者が有意に多かった(p<0.01).【結語】前足部に創傷を有する患者の足関節背屈可動域訓練の関連性が示唆され,創傷予防・治療の一貫として足関節背屈可動域拡大は十分な介入効果を認める可能性がある.
著者
松本 純一 岡村 奈央子 大木 理
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.13-15, 1997-02-25

大阪府堺市で採集したスターチスとルドベキアのモザイク症状株からそれぞれ2種類の小球状ウイルスが分離された。宿主範囲と病徴, アブラムシ伝搬, 血清反応などを調査した。径約30nmの2分離株はキュウリなどの病徴, 2本鎖RNAの分析, 血清反応よりキュウリモザイクウイルス(CMV)と同定した。径約27nmの2分離株はChenopodium quinoaなどに全身感染したこと, 感染細胞内でウイルス粒子の集塊と膜状封入体が観察されたこと, 血清反応よりソラマメウイルトウイルス(BBWV)と同定した。なお, これらの分離株はいずれも原寄主にモザイク症状を再現した。スターチスにおけるBBWV, ルドベキアにおけるCMVとBBWVの発生の確認はわが国最初と考えるので, 病名をそれぞれスターチスウイルス病, ルドベキアウイルス病としたい。