著者
松浦 智和
出版者
名寄市立大学
雑誌
紀要 = Bulletin of Nayoro City University (ISSN:18817440)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.87-95, 2017-03

本研究では、高齢精神障碍者の地域生活支援について、その現状や課題を調査すべくソーシャルワーカーへのインタビュー調査を実施したところ、多くのソーシャルワーカーが高齢精神障害者の地域生活支援を実際に経験し、支援に課題を感じていることが明らかとなった。その内容としては、「身体合併症とそれにともなう支援の難しさ」や障害者総合支援法と介護保険法の接続などを中心とした「制度の問題」、「当事者自身のモチベーションや意識の問題」などが確認された。先行研究でも指摘されるように「長期に渡る入院」の影響も含めて「本人の強い地域生活への不安」「表明されない(地域生活支援への)ニーズ」「根強い入院継続希望」が実際に当事者から語られる現状があることは明白であったが、一方で当時者が介護保険制度のサービス利用に拒否的であることが示唆されるなど、高齢精神障害者の地域生活支援における新たな現状や課題が明らかとなった。For this study, an interview survey of social workers was conducted to elucidate the reality and difficulties of community life support for elderly mentally handicapped people. Results showed that many social workers actually experienced community life support for them and felt some difficulties related to the support. The contents include "physical complications and the difficulties in support associated with them," "system problems" mainly related to Services and Supports for Persons with Disabilities Act and Long-Term Care Insurance Act, and "difficulties of motivation or consciousness of the handicapped people themselves." As previous reports have described, it has been readily apparent that a present state prevails in which handicapped people talk about "their intensive anxiety about community life," "their needs (for community life support) life unsaid," and "their deep-rooted hope to be hospitalized," attributable to effects of "their long-term hospitalization." Results of this study shed new light on the state and issues of community life support for elderly handicapped people, including the suggestion that they themselves are unwilling to receive the Nursing Care Insurance services.
著者
松浦 智和
出版者
名寄市立大学
雑誌
名寄市立大学社会福祉学科研究紀要 (ISSN:21869669)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.41-47, 2016-03-31

本稿では、統合失調症患者や高齢精神障害者の地域移行支援について諸家が指摘する論点を整理するとともに、今後の精神保健福祉士養成教育のあり方について著者の私心を述べることを目的とした。「地域移行」という言葉は、ノーマライゼーションに基づく「脱施設化」の政策が推し進められるなかで定着してきたものと推測される。殊に、わが国では、2003年からスタートした「精神障害者退院促進支援事業(モデル事業)」から続く一連の制度・政策の整備のなかで関係者に浸透してきた感がある。患者の地域域移行支援や生活支援システムを検討する過程においては、患者自身の諦め・絶望、家族の受け入れの難しさ、地域社会の偏見・差別、支援者の偏見・差別などの諸問題がある。精神保健福祉士養成を開始したばかりの本学であるが、学生と地域と大学の協働により、名寄市という地域性も加味した上で次代を担う精神保健福祉士のあり様を考えていく必要がある。
著者
松浦 智和
出版者
名寄市立大学保健福祉学部社会福祉学科
雑誌
名寄市立大学保健福祉学部社会福祉学科 (ISSN:21869669)
巻号頁・発行日
no.11, pp.11-16, 2021-03-31

【要約】 育児を行う統合失調症患者について、祖父母の育児への関わりの現状について探索的に 検討した。孫育てを担う祖父母の現況や先行研究を概観したとき、統合失調症患者の妊娠・ 出産の困難は明白で、どれだけ母親にリカバリーや自己実現という視点を加味しても、本 人の疾病管理、祖父母等の家族の負担など、現実に後押しするに足る理論的背景を見出すことは難しい感があった。とはいえ、本研究のインタビュー調査によって祖父母から聞か れた言葉は統合失調症患者ゆえのものもあるが、一般的に、孫育てをする祖父母が遭遇す る困難や喜びと符合する部分も大い減とフォーマル、インフォーマルサポート体制の構築 などを考えることは、統合失調症の有無に関わらず、少子化のわが国にあって、子育て・ 育児の社会化やシームレスな支援の構築という近年の課題を具現化する契機とすべきと思 われた。
著者
松浦 智和
出版者
名寄市立大学
雑誌
地域と住民 : コミュニティケア教育研究センター年報 (ISSN:02884917)
巻号頁・発行日
no.1, pp.69-78, 2017-05

コミュニティ・メンタルヘルスの目的は、精神障害の早期発見と早期対応、精神科医療との連携、入院よ り地域における医療の重視、精神障害の再発予防と再発時の対応、精神障害の予防、精神障害者の生活・職 業・人間関係の調整・支援、地域中心の精神障害者サービスとサービスのシステムの充実、地域住民全体へ の精神保健活動などの多面に渡る活動を、地域を中心に様々な専門職が保健医療福祉の垣根を超えて多職種 で実施していくことにある。本研究では、筆者が北海道北部地域 3 自治体 3 地域で実施した地域住民のメン タルヘルスに関する調査結果もあわせて報告するが、先行研究では、高齢者の抑うつ症状の有症率は、25~ 35%であることが示されているなか、本研究の対象者では、基幹産業を「農業」とする 2 地区では低い傾向に、 「漁業」とする 1 地区では高い傾向であることが示唆された。
著者
松浦 智和
出版者
名寄市立大学保健福祉学部社会福祉学科
雑誌
名寄市立大学社会福祉学科研究紀要 (ISSN:21869669)
巻号頁・発行日
no.10, pp.11-27, 2020-03

【要約】世界的にメンタルヘルスの促進の重要性が議論される時勢であるが、本稿ではわが国のメンタルヘルスの主要課題の1つである自殺とその周辺課題について、先行研究や政府公刊の白書等、意識調査の結果を中心に考察を試みるとともに、自殺対策についての提言を述べた。わが国では1998年に自殺者が急増して以降自殺者が3万人を超える状態が続いた。2010年以降は9年連続の減少となっており、2018年は20,840人で前年に比べ481人(2.3%)減少したものの以前深刻な状況にある。特に、自殺総合対策大綱では、重点施策のひとつとして、「子ども・若者の自殺対策の更なる推進」が掲げられているが、先行研究を概観すれば、若年層は自殺念慮が最も高い世代であり、社会に絶望を感じながら、自己有用感が低いまま、これまでの人生で遭遇したいじめなどのつらい経験を抱えながら、レッテル貼りを警戒して専門職に相談することをあえてせず、家族や友人などの身近な"知った仲"によるサポートでギリギリ暮らしている実情が示唆された。
著者
松浦 智和 Tomokazu MATSUURA
出版者
名寄市立大学
雑誌
紀要 = Bulletin of Nayoro City University = Bulletin of Nayoro City University (ISSN:18817440)
巻号頁・発行日
no.13, pp.73-83, 2019-03-31

本稿の目的と関心は、精神障害者のリカバリーの概念について諸家の知見を整理するとともに、筆者が日頃親交のある当事者やその家族との交流の中から 、リカバリーやあわせて精神障害者の家族支援についていくつかの試論を述べることにある。リカバリーの概念はソーシャルワーク領域も含め精神保健福祉領域では以前から盛んに用いられている。そして、リカバリーを考えるなかでは、家族支援を取り巻く課題にも目を向ける必要がある。リカバリーを促進させるためには、地域精神保健福祉活動のありようも検討していく必要があり、支援や土壌づくりは多くの人々が様々な視点を持って関わることが求められる。その点においては、 社会福祉学科のみならず、栄養学科、看護学科、社会保育学科を擁す大学に課せられる使命は決して小さくはないことを再確認する。
著者
松浦 智和
出版者
名寄市立大学保健福祉学部社会福祉学科
雑誌
名寄市立大学社会福祉学科研究紀要 (ISSN:21869669)
巻号頁・発行日
no.6, pp.81-94, 2017-03-31

本研究では統合失調症患者が子育てや家庭教育を行う上で抱えている課題を明らかにす べく、当事者ならびに支援者(看護師、保健師、ソーシャルワーカー等)へのインタビュー調 査を実施した。子育ての課題について、「 病 気 と 子 育て」のカテゴリーでは、「 通 院 し なが らの子育てに苦労している」「 入 院 へ の 不 安 」「 他 の人がどのようにしているのか知りたい」 などの不安が語られる一方で、「 以 前より体調はよくなった」「 子 ど も が 成 長 したのを見て 自信がついた」などの本人のリカバリーにつながっていると思われる小カテゴリーも抽出 された。また、「 子 育てと他者との関係」では、子どもがいろいろ手伝ってくれる」「 看 護 師 や 保健師、精神保健福祉士が相談に乗ってくれている」などの小カテゴリーを抽出し、 子どもが「支援をする側」になっている現状や、専門職が重要な相談相手である一方で、 地域のなかでは支援者を得られずに子育てを行っていることも示唆された。
著者
松浦 智和
出版者
名寄市立大学保健福祉学部社会福祉学科
雑誌
名寄市立大学社会福祉学科研究紀要 (ISSN:21869669)
巻号頁・発行日
no.11, pp.11-16, 2021-03-31

【要約】 育児を行う統合失調症患者について、祖父母の育児への関わりの現状について探索的に 検討した。孫育てを担う祖父母の現況や先行研究を概観したとき、統合失調症患者の妊娠・ 出産の困難は明白で、どれだけ母親にリカバリーや自己実現という視点を加味しても、本 人の疾病管理、祖父母等の家族の負担など、現実に後押しするに足る理論的背景を見出すことは難しい感があった。とはいえ、本研究のインタビュー調査によって祖父母から聞か れた言葉は統合失調症患者ゆえのものもあるが、一般的に、孫育てをする祖父母が遭遇す る困難や喜びと符合する部分も大い減とフォーマル、インフォーマルサポート体制の構築 などを考えることは、統合失調症の有無に関わらず、少子化のわが国にあって、子育て・ 育児の社会化やシームレスな支援の構築という近年の課題を具現化する契機とすべきと思 われた。
著者
松浦 智和
出版者
名寄市立大学保健福祉学部社会福祉学科
雑誌
名寄市立大学社会福祉学科研究紀要 (ISSN:21869669)
巻号頁・発行日
no.10, pp.11-27, 2020-03-31

【要約】世界的にメンタルヘルスの促進の重要性が議論される時勢であるが、本稿ではわが国のメンタルヘルスの主要課題の1つである自殺とその周辺課題について、先行研究や政府公刊の白書等、意識調査の結果を中心に考察を試みるとともに、自殺対策についての提言を述べた。わが国では1998年に自殺者が急増して以降自殺者が3万人を超える状態が続いた。2010年以降は9年連続の減少となっており、2018年は20,840人で前年に比べ481人(2.3%)減少したものの以前深刻な状況にある。特に、自殺総合対策大綱では、重点施策のひとつとして、「子ども・若者の自殺対策の更なる推進」が掲げられているが、先行研究を概観すれば、若年層は自殺念慮が最も高い世代であり、社会に絶望を感じながら、自己有用感が低いまま、これまでの人生で遭遇したいじめなどのつらい経験を抱えながら、レッテル貼りを警戒して専門職に相談することをあえてせず、家族や友人などの身近な“知った仲”によるサポートでギリギリ暮らしている実情が示唆された。
著者
鎌田 とし子 鎌田 哲宏 大野 剛志 栗田 克実 羽原 美奈子 高波 澄子 信木 晴雄 佐々木 悟 豊島 琴恵 嶋崎 東子 松浦 智和 松岡 昌則 北島 滋 山下 由紀夫 中澤 香織 石川 紀子 菅原 千鶴子
出版者
旭川大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、北海道北部地域にある集落を3か所(北海道中川郡音威子府村、増毛郡増毛町、上川郡東川町)選び、①限界集落、②維持集落、③再生・発展集落とし、3者の比較を行うことで、集落の限界化が進行する社会的要因を探求する実態調査を行った。その結果、人口流出を阻止する要因は5万円程度の雇用機会であり、最低生活を維持できる自給経済と、無償の相互援助関係の存在であった。生産性の高い農地は、借り手と買い手がいるため、農業企業が出現し、周辺地域に雇用市場が発生した。また、子育て支援策と団地造成で人口流入が進むことが明らかになった。