著者
田辺 俊介 松谷 満 阪口 祐介 永吉 希久子 濱田 国佑
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

2017年度は、2009年・2013年に実施した先行調査データの再分析を行うとともに、本研究の目的を果たすために必須となる全国調査を実施した。再分析の成果の一つとして、たとえば社会的問題として取り上げられる「嫌韓」という現象に関する分析結果として、以下のことが明らかとなった。まず2009年から2013年の4年間に韓国への好感度は低下し、韓国人への排外性も強まっていた。また2013年では、嫌韓感情に対する愛国主義の影響力が強まり、対韓国・韓国人への態度はより「ナショナリズム化」しているといえる状態になっていた。対中国・中国人感情の悪化も同様の傾向を示したことから、2010年代からの日本の排外主義の高まりの原因の一つとして、地政学的なコンフリクト(竹島・尖閣問題など)の影響が大きいと考えられるまた2017年度の全国調査については、日本全国の有権者(18歳以上80歳未満)を対象とし、70市区町の選挙人名簿から無作為に抽出した10,500名に調査票を送付した(郵送配布・回収)。また本年度調査では、沖縄と他地域との比較を重視したため、上記の70市区町村の内10市町は沖縄県に割り当て、合計1,500名の沖縄県民に調査票を送付した。その結果、全国調査については3822票(転居先不明の方など調査不能を除いた回収率は44.5%)、沖縄調査については504票(転居先不明の方など調査不能を除いた回収率は34.4%)を回収した。回収表の入力作業と基礎的なクリーニング作業は終了しており、対象者向けの速報版調査報告書を作成し、その内容はインターネットを通じて公開済みである。加えて2013年調査で取得したデータについては、日本最大のデータアーカイブであるSSJDAに寄託し、公開済みである。そのことから、本継続調査に類似した関心を持つ幅広い研究者と共有可能なデータを作成できた、と考えている。
著者
成 元哲 牛島 佳代 松谷 満 阪口 祐介 永幡 幸司 守山 正樹 高木 竜輔 田中 美加
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、原発事故が福島県中通りに居住する親子の生活と健康にどのような影響を与えているのかを明らかにし、必要な支援策を検討することにある。そのために、参与観察、聞き取り調査、調査票調査を通じで、原発事故後、中通り9市町村に暮らす親子は急激な生活変化を経験しており、それに適応できない母親は精神健康の低下を経験しており、それが子どもの問題行動につながっていることを明らかにした。親子への支援策は、経済的負担感と補償をめぐる不公平感を軽減し、放射能への対処をめぐる認識のずれを軽減する。また、保養・避難を選択できる環境にし、福島での子育て不安、健康不安を軽減することが必要である。
著者
松谷 満
出版者
中京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、大都市部で圧倒的な支持を得るようなポピュリズム政治が台頭しているという状況に着目し、河村たかし名古屋市長、橋下徹大阪市長について有権者意識調査からその支持構造を実証的に明らかにした。両者の共通の支持要因は、公務員に対する不信感などであり、社会的属性や価値観は違いも大きいことがわかった。他に、名古屋の住民運動は無党派層が中心とはいえないこと、ポピュリズムの支持には地域要因が影響していることなどが明らかになった。
著者
松谷 満
出版者
桐蔭横浜大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、2007年に東京都で若年層を主対象とする質問紙調査を実施した。このデータを用いて、(1)ライフスタイルなどの主観的諸条件によって若者を類型化し、(2)階層要因を重視する社会学モデルではとらえきれなかった若者の政治的亀裂を明らかにした。具体的には、脱産業化期に顕在化したポピュリズムおよび左派ニューポリティクスの支持基盤が、階層集団よりも文化集団(=ミリュー)によって、よりよく説明しうるという可能性を示すことができた。
著者
牛島 佳代 成 元哲 松谷 満
出版者
公益財団法人 パブリックヘルスリサーチセンター
雑誌
ストレス科学研究 (ISSN:13419986)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.84-92, 2014 (Released:2014-10-31)
参考文献数
23
被引用文献数
1

The 2011 earthquake and tsunami in Japan caused a meltdown at Fukushima nuclear power plant. This paper examines the association between demographics or exposure to potentially upsetting events following Fukushima disaster and psychological and physical well-being of mothers with young children 2 years after the Fukushima nuclear accident. The sample consisted of mothers with preschool children still inhabiting in low level radiation contamination area, 30~90 km distant from the plant. In addition to exposure status, the questionnaire obtained data on radiation anxiety, coping behavior, perceived economic stress and stress moderators. The dependent variables were measured by the K6, SQD (Screening Questionnaire for Disaster Mental Health).Overall, mental health of mothers with young children have been polarized as time passes. The conflict about coping behavior to radiation risk and economic stress increased the vulnerability of mothers to subsequent distress, PTSD, depression. It was confirmed a husband’s childcare participation as a stress moderator. Long-term follow-up study is needed to confirm that the progress of mental health of mothers with young children.
著者
成 元哲 牛島 佳代 松谷 満 阪口 祐介 西崎 伸子 永幡 幸司 三上 直之 守山 正樹 荒川 雅志 石原 明子
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

未曾有の原発災害における人間経験を生活変化と健康影響に焦点を当て長期的に追跡し、実態解明を行うとともに、社会的亀裂を修復するために次の二つの取り組みを行った。第1に、福島県中通り9市町村の2008年度出生児とその母親を対象に、原発事故が与える影響を生活と健康に焦点を当て継続的に記録するための大規模の調査票調査を行った。第2に、上記の福島県内の調査対象者への半構造化面接を行った。これは、当事者の語り部活動を行うための準備作業である。放射能の健康影響についての不安の度合いやリスク対処行動において温度差がある母親が、原発事故後の経験を広く社会と共有できることを目指している。
著者
松谷 満 成 元哲 大瀧 友織
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は、原発事故によって、被災地福島の政治にどのような変化があったのかを明らかにすることである。本研究では、福島市民を対象とする質問紙調査、市会議員などを対象とする聞き取り調査を行った。その結果、福島では他地域と比較して政治不信が高まっていること、政治の側では結果的にさほど大きな変化が生じておらず、世論とのあいだに乖離がみられることが明らかとなった。
著者
松谷 満
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.91-108,203, 2002-05-31 (Released:2016-05-25)

This paper seeks to examine the differences in social attitudes in Japan between religious persons and those who are not religious, as well as the relationship between religiosity and social attitudes of Japanese Christians in order to more comprehensively understand their faith. The analysis presented in this paper was the result of data collected from members of Protestant churches in Japan. Also, to make a comparative analysis, Japan General Social Survey data was used. The following findings were obtained as a result of quantitative analysis of these data.(1) There are differences in social attitudes depending on religious attribution.Regarding euthanasia, religious people are more likely to be opposed than those who are not religious. In terms of political orientation, people whose faith is the family's traditional religion (but who are not themselves religious) are more conservative.(2) The social attitudes of Japanese Christians differ as compared with those of non-Christians Japanese people. The remarkable difference is that Christians are more likely to oppose euthanasia but have a more liberal political orientation. They emphasize life ethics and are more liberal in their political attitudes.(3) Religiosity of Christians has a direct partial effect on social attitudes. "Intrinsic orientation" has a negative effect on euthanasia and capital punishment. Conversely, "extrinsic orientation" has a positive effect on these issues. Political orientation is influenced by the parent's religion. In Japan, Christianity is a minority religion that has heterogeneous value norms compared to Japanese culture. Consequently, Japanese Christians are very different from ordinary people in social attitudes. Moreover, it is suggested that religious factors are important in explaining the differences in Japanese social attitudes. This result suggests areas for future investigation. By taking into account religious factors, a new perspective on social attitude studies may be presented.
著者
田辺 俊介 松谷 満 永吉 希久子 濱田 国佑 丸山 真央 米田 幸弘 斉藤 裕哉 張 潔 五十嵐 彰 伊藤 理史 桑名 祐樹 阪口 祐介
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

近年の日本のナショナリズムの時点間比較として、前回調査の2009年全国調査データと本科研費によって得た2013年全国調査データを用い、2時点間の比較分析を行った。その結果、愛国主義については大きな変化は見られず、純化主義は一定程度強まる傾向が示された。また排外主義は、対中国・対韓国に対するものと他の外国人に対するものの2種類に分けられた上で、対中国・韓国への排外主義については日本型愛国主義の影響力が強まっていた。この点は、尖閣/釣魚諸島沖衝突事件(2010年)や李 明博大統領の竹島/独島上陸(2012年)ような国家レベルの紛争が、人々の抱く排外主義にも影響した結果と考えられる。