著者
大石 博之 松隈 明彦 相原 安津夫
出版者
九州大学理学部
雑誌
九州大学理学部研究報告 地球惑星科学 (ISSN:09167315)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.p73-84, 1993-12

The Oligocene Yoshinotani Formation of Takeo, Saga Prefecture, Japan, yielded several distinct footprints without any track maker at the end of its trail. The most well-preserved trackway, consisting of eight left footprints and seven right ones, is described in this paper. Each footprint has four'fingers'and a bifurcate'heel'. The right and left footprints are arranged symmetrically. An average stride length, 25.8 cm, is nearly equal to an average track breadth, 24.6 cm. All left footprints are nearly equal in form and size, averaging 6.2 cm long and 3.4 cm wide. All right ones, 5.4 cm in length and 3.7 cm in width, are also identical with each other. This evidence suggests that the trackway was made by a pair of left and right legs of the track maker, which moved both left and right legs simultaneously. These footprints have been compared with the trails of bipedal vertebrates, including birds and turtles, but the manner of occurrence and the morphology of footprints suggest that they are probably undertracks formed by the pushing appendages of a limulid, i.e. the paired sixth cephalothracical appendage with four blades. Although no fossil limulid has been reported from Japan, the trackway of the Yo shinotani Formation, i. e. Kouphichnium sp., suggests that Japanese limulids should go back to the Oligocene age. It is predicted that limulid body fossils will be found from the Yoshinotani Formatiom, which is important in considering the origin of the living Japanese limulid, Tachypleus tridentatus
著者
松隈 明彦 岡本 和夫
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.91-100, 1986
被引用文献数
2

新生代タマキガイ科二枚貝は, 形態学的に近縁各科と明瞭に区別ができ, 化石として多産し, 種ごとの古生物地理学的分布が限られていることから, 軟体動物の種分化の過程を検討するためのよい素材だと考えられている。 日本産新生代タマキガイ科中, これまで未記載であった島根県松江市南家の中新世松江層(川津凝灰岩部層)及び同県出雲市上塩屋町菅沢の中新世布志名層産 Glycymeris (s.s.) の2新種, 埼玉県秩父郡荒川村久那(秩父鉄道浦山口駅北)の中新世平仁田層産 Glycymeris (Tucetilla) の1新種, 並びに沖縄県島尻郡具志頭村, 東風平村及び中頭郡与那城村の鮮新世新里層産 Tucetona の1新亜種を記載した。
著者
松隈 明彦
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.207-221, 1989-12-31
被引用文献数
1

Only two pholadomyid bivalves, i.e., Pholadomya (s.s.) pacifica Dall, 1907 and Pholadomya (Nipponopanacca) sakuraii Habe, 1958, are known from seas around Japan. The third and new species of Pholadomya (Nipponopanacca) is described here from Japan. A single valve from Taiwan of a possible, fourth and new species is described and illustrated, but no formal name is proposed.
著者
奥谷 喬司 松隈 明彦
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.163-"180-3", 1982

昭和56年10∿11月, 伊豆半島南東岸付近からドレッヂによって得られた貝類の中から興味ある21種を選んで報告する。 ヒカリシタダミ Microgaza fulgens : 原記載は五島沖であるが相模湾及びその周辺の50-100m 付近に普通。通常ヤガスリシタダミ M. ziczac と同所的分布をする。 ニヨリエビスガイ Tristichotrochus problematicus : 黒田他 (1971) により相模湾東部海域から報告された種。 キシュウベッコウタマガイ Lamellaria kiiensis : 死殻1こであるが, 本邦既知のベッコウタマガイ類中, 相模湾に分布するのは本種のみの様である。 ヒナノカムリボラ Murexsul cirrosus : 材料中最も多いアッキガイ科の種であるが, 色彩変異に富むばかりでなく, 螺助が殆ど鱗片状とならない標本まである。 クロスヂトクサバイ Phos nigrolineatus : 採集された標本はいずれも未成殻であるが, コトクサバイ P. varicosus に比べ螺塔は高く褐色螺条が極めて明瞭である。コトクサバイも同所的分布をする。 ムギヨフバイ Cyllene pulchella : 熱帯太平洋種で, 従来, 相模湾からは知られていなかった。 ヒダトリヨフバイ Zeuxis subtranslucidus : 波部 (1961) によって Z. hayashii の名で遠州難から記載されたが, インド洋から熱帯西太平洋に広く分布する種であることが明らかとなった。 ナガイモフデガイ Pterygia japonica n. sp. : 吉良 (1959) は本種を喜界島化石から記載された P. elongata にあてていたが, 本材料から発見された1標本と天草牛深から採集された1標本とを研究の結果, 別種と認められ新種として記載した。 コビトオトメ Microvoluta hondana : 横山 (1922) により武蔵野層上部から記載された化石種の現生標本である。所属はもとフデガイ科におかれていたがフデヒタチオビガイ科に移される。 ミウライモガイ Parviconus tuberculosus : 4地点からこの小型イモガイ類が採集され, 下田沖60∿120m 付近には普通であることが判った。 カンダイトカケガイ Epitonium kandai : エドイトカケガイに似るが, 縦肋肩部が僅かに突出し後方に反る点で異なっている。 ウスムラサキクレハガイ Papyriscala tenuilirata : 波部 (1961) が遠州灘からチャイロクレハガイ P. castanea として記載した貝であるが, 相模湾にも分布する。 チヂミナワメグルマ Claraxis aspersus : 小型のクルマガイで, 稀にしか採集されておらず, 本材料中も2個の死殻が発見されたにすぎない。 ミタマキガイ Glycymeris imperialis : 概形ベニグリガイ G. rotunda に似ているが本種とベニグリガイでは水深, 底質, 随伴群集が全く異なる。学名は G. albolineata をあてるべきだという意見もあるが, 後者は点刻が顕著で, 殻皮毛条が密で, 旦つ閉殻筋痕が縞状となる点において本種とは異なる。 ユキゾラホトトギスガイ Amygdalum soyoae : 陸棚帯上部の砂底に棲み, 深海性の近縁種ヌリツヤホトトギスガイ A. watsoni と棲息深度を著るしく異にする。 シロチョウウグイスガイ Pterelectroma zebra : PRASHAD (1932) が tomlini という別種を創設したが, 本採集品中には両型が出現し, 色彩模様のみでは2種に分けることは出来ないことが明らかである。 ワタゾコツキガイ Notomyrtea soyoae : 原記載での分布は九州西方から日本海西部の範囲であったが, 太平洋沿岸は相模湾まで知られる。 ウツギノハナガイ(新称) Wallucina izuensis n. sp. : 本属にはこれまで日本近海からはチヂミウメノハナガイ(ナシノハナガイ) W. lamyi しか知られていなかったが, 本種は前域が比較的長いこと, 殻表には成長輪脈のほか, 微細な放射状彫刻のある点で異なる。 カノコシボリコウホネガイ Meiocardia moltkiana : 熱帯西太平洋に汎く分布する種でフィリピン型を sanguineomaculata として区別されているが, 多くの標本を見るとその区別はむずかしい。 ウズマキゴコロガイ Verticordia deshayesiana : 本種は熱帯西太平洋ばかりでなく, 中央太平洋(ハワイ)にまで分布する。 ダイオウスナメガイ Cetoconcha japonica : 本種の幼若個体と見られるが, 殻は甚だ薄く, 概形も成体と幾分異るので, 別種の可能性もある。
著者
武田 正倫 斉藤 寛 窪寺 恒己 松浦 啓一 町田 昌昭 A.AZIZ W.W.KASTORO M.KASIM Moosa 松隈 明彦
出版者
国立科学博物館
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

平成4年度においては、平成4年11〜12月および平成5年1〜2月にアンボン島において、現地研究者の協力を得て、魚類・棘皮動物、軟体動物、魚類寄生虫、甲殻類の調査を行った。各動物群とも、多数の標本を採集して国立科学博物館へ持ち帰った。平成5年度においてはロンボク島各地を主調査地とし、補助的にスラウェシ島メナドにおいても調査を行った。調査方法は前年度と同様で、磯採集やキューバダイビングによって採集を行った。したがって、調査は主として潮間帯から水深20〜30mに達する珊瑚礁域で行われたが、その他、砂あるいは砂泥地においても各種動物を調査、採集した。魚類はおよそ2000点の標本を得、また、棘皮動物の標本はヒトデとクモヒトデ類を主として千数百点に上るが、すでに同定が行われたアンボン島産のクモヒトデ類は9科25種であった。軟体動物はロンボク島において多板類14種、大型腹足類約170種、二枚貝類約60種が採集された。このうち多板類は12種が日本南西部に分布する種と同種か、極めて近縁な種であり、その中の2種は新種と考えられる。また、頭足類は3科5種に同定された。甲殻類の標本数はおよそ1000点に達するが、造礁サンゴと共生する種の多くは琉球列島にも分布するものである。分類と分布だけでなく、生態に関しても特に興味深いのは、ウミシダ類やナマコ類と共生するカニ類で、数種の新種が確認された。魚類寄生虫に関しては、市場で新鮮な魚類を購入し、鰓や消化管に寄生する単生虫・二生虫・条虫・線虫、鉤頭虫・甲殻類を取出し、圧平標本や液浸標本として固定保存した。多くのものは沖縄と共通すると思われるが、ボラやボウズコンニャクの食道や腸から得た旋尾線虫や二生虫類に新種が発見された。すでに論文として、あるいは口頭で発表したものもあるが、分類学的研究が終了したものから順次国立科学博物館研究報告、動物分類学会誌あるいはそれぞれの動物群を対象とした専門誌に報告する予定である。