著者
柚洞 一央 新名 阿津子 梶原 宏之 目代 邦康
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.13-25, 2014-03-31 (Released:2014-04-23)
参考文献数
24
被引用文献数
2 6

ジオパークは,地形・地質遺産が主となって構成されるが,特に,これまで日本のジオパークでは地質公園的な側面が強く現れていた.Global Geoparks Networkのガイドラインでは,地形・地質のほか,生態系,考古,歴史,文化的価値を持つものの重要性も述べられている.それらは地理学的視点によって関連性を科学的に整理し理解することが重要である.地理学の成果にもとづいて,それぞれのジオパークのストーリー,ナラティブが構築されれば,その地域で発生している問題の解決の糸口を与えることになるだろう.そうすることにより,ジオパークの活動が持続可能な発展を目指すものとなる.
著者
祖田 亮次 柚洞 一央
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.147-157, 2012-09-28 (Released:2012-09-28)
参考文献数
31
被引用文献数
2 4

1990年に建設省が各地方建設局に通達した「多自然型川づくり」の推進は,従来にない環境配慮型の川づくりを目指したものであった.この方針は1997年の改正河川法に取り入れられ,さらに2006年には「多自然川づくり」と改称され,現在にいたっている.この方針のもと,全国各地の河川でさまざまな人工構造物が設置されてきた.本稿では,過去20数年間に行われた環境配慮型河川改修の諸事例を分類・整理することで「多自然(型)川づくり」の実態を把握し,それらが河川関係者の間に大きな混乱をもたらした状況について,その背景を考察する.
著者
柚洞 一央
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.79, no.13, pp.809-832, 2006-11-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
33
被引用文献数
2 1 3

家畜であるミッバチの生態を利用した養蜂業は,植生や気候などの自然環境の変化に大きく左右される産業である.花を求めて全国を移動するという日本の養蜂業の形態は,明治期において確立されたが,戦後の蜜源環:境の劣化に伴い,近年ではその経営形態も大きく変化してきた.本稿は,日本の養蜂業が,今日どのような経営を行っているのか,各種の統計資料と全国131の養蜂業者に対する聞取り調査をもとに,その地域的特色と近年の変化を明らかにし,それらの変化が持っ意味にっいて考察する.今日の養蜂業者は,経営者の高齢化や中部地方以西における著しい蜜源植物の減少に伴って,廃業や移動空間の「狭域化」を余儀なくされている.その一方で,ハチミツ生産のみでなく,ローヤルゼリー生産や,花粉交配用にミツバチを貸し出すポリネーションなどの新しい生産形態を取り入れて,経営の多様化・安定化を模索してきた.こうした点にっいて,養蜂業の持っ特質,つまり「移動性」と「間接性」という観点から,近年の養蜂業の経営動向にっいて考察を行った.その結果,蜜源分布の変化に合わせた移動空間の変更や,ミッバチを媒体とした資源利用の方法という点では,柔軟な対応を行ってきたと評価できる一方,蜜源環境の維持や,業界内部における資源配分という点においては,さまざまな問題を残しているという現状が明らかになった.