著者
桑原 雅夫 井料 美帆
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.I_493-I_505, 2017 (Released:2017-12-27)
参考文献数
17

本研究は,古の都である平安京について,人々の移動パターンと貴族の動きを定量的に解析し,考察を加えたものである.平安京については,道路ネットワークの構造や道幅など幾何構造に関することは,よく知られているものの,その中で人々がどこに立地し,どのように移動していたのかについては,ほとんど調査分析が行われていない.本研究では,まず平安京やその前の律令時代の文献に基づいて,平安京の土地利用,身分別の住居の分布を推定した.次に,土地利用や住居分布に基づいてOD交通量を推定して交通量配分を行い,平安京街路の交通量について考察を行った.また,特権階級であった少数の貴族については,一般の庶民や役人の動きとは異なることから,別途に藤原実資の小右記に基づいて再現した.
著者
吉井 稔雄 桑原 雅夫
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.653, pp.39-48, 2000-07-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
16
被引用文献数
3 1

本研究は, リアルタイムの交通情報提供が交通状況に与える影響について, 考察を加えるとともに, その評価方法を提案し, 実際の道路ネットワークと交通量を用いた試算を行うものである. 簡単なネットワークを用いた考察を加え, 需要が変動すると, 場合によっては情報の提供が逆効果になるということを確認した. 都市内の道路ネットワークを対象として, 情報提供効果を試算する方法を提案し, 実ネットワークと実交通量を用いた試算を行った. その結果, ODパターンに変化がある場合には情報提供効果が認められるが, 平常時に関しては, 渋滞の立ち上がり時に効果が得られるものの, その他の時間帯については効果がほとんど期待できない等の知見を得た.
著者
越 正毅 赤羽 弘和 桑原 雅夫
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.10, pp.p753-760, 1989-10
被引用文献数
2

東京都心部および東京周辺の行楽地における実地調査により交通渋滞の現状を定量的に把握し、それに基づいて渋滞対策を検討した。その結果、路上駐車の排除、交通信号機の調整、交差点の改良、そして適切な迂回路の設置・誘導などの対策により、現有の道路施設の交通処理能力をフルに活かせば、短期間に渋滞を大幅に緩和、あるいは解消することが十分に可能であることが明らかとなった。
著者
桑原 雅夫 和田 健太郎
出版者
一般財団法人 運輸総合研究所
雑誌
運輸政策研究 (ISSN:13443348)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.042-053, 2013-04-22 (Released:2019-03-29)
参考文献数
13
被引用文献数
1

本研究は,東日本大震災後の緊急支援物資に関する定量的な記録の収集と分析を行ったものである.震災による構造物の損壊状況や津波については詳細な調査が行われている一方で,緊急支援物資の流れに関する定量的な記録は残されていない(あるいは,散在している).本研究では,国および県が取り扱った緊急支援物資を対象として,一次集積所の搬入量・搬出量の傾向比較,主要物資の供給状況,避難者1人当りの供給量の推移を分析する.また,岩手県と宮城県の物資取扱量,一次集積所で必要となった人員などを比較することにより,県における物資供給体制について考察を行う.最後に,今後の緊急支援物資ロジスティクスの構築に向けた課題を示す.
著者
越 正毅 桑原 雅夫 赤羽 弘和
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.458, pp.65-71, 1993-01-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
7
被引用文献数
19 9

1980年代の初頭から, わが国の高速道路のいくつかのトンネルや縦断勾配の変化するサグなどが交通容量上のボトルネックになることが知られてきた. 本稿は, これらの地点において観測された交通現象を報告するとともに, ボトルネックとなる理由と渋滞のメカニズムに関する仮説を述べたものである. これらの地点の容量は, 渋滞が発生する前においても通常の単路容量と比べるとかなり低いが, 一旦渋滞が発生すると一段と容量が低下し, 渋滞長が長くなるに従い, ますます低下してしまう. 本稿では, この現象のメカニズムを追従挙動に基づいて分析し, ドライバーが渋滞列の中を走行する時間と周囲の明るさ等が追従挙動と関連していることを示唆している.
著者
堀口 良太 桑原 雅夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 = Proceedings of JSCE (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.653, pp.29-38, 2000-07-20
参考文献数
2
被引用文献数
1

本研究では, ノンストップ自動料金収受 (ETC) 料金ゲートが従来の一般ゲートとともに設置された際の, 料金所全体での容量に関する理論的解法を提案する. すなわち料金ゲートの構成, 運用形態とともに, 料金所手前の道路形状および渋滞の延伸状況を考慮して, ETCの混入率に応じた料金所の容量を求めるものである. この理論的解法より, 一般ゲートとETC混用ゲートでの運用の場合, 料金所全体の容量改善割合は混用ゲートの数によらずETC混入率にのみ依存すること, また一般ゲートとETC専用ゲートでの運用の場合, 一般ゲートからの渋滞が本線にまで延伸すると, 本線がブロックされることによる見かけの容量低下を評価することができる. 本稿ではさらに, いくつかのケーススタディを通して, ETC整備のあり方について考察を加える.
著者
桑原 雅夫 井料 美帆
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.I_493-I_505, 2017

本研究は,古の都である平安京について,人々の移動パターンと貴族の動きを定量的に解析し,考察を加えたものである.平安京については,道路ネットワークの構造や道幅など幾何構造に関することは,よく知られているものの,その中で人々がどこに立地し,どのように移動していたのかについては,ほとんど調査分析が行われていない.本研究では,まず平安京やその前の律令時代の文献に基づいて,平安京の土地利用,身分別の住居の分布を推定した.次に,土地利用や住居分布に基づいてOD交通量を推定して交通量配分を行い,平安京街路の交通量について考察を行った.また,特権階級であった少数の貴族については,一般の庶民や役人の動きとは異なることから,別途に藤原実資の小右記に基づいて再現した.
著者
田中 伸治 藤原 直生 桑原 雅夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.67_I_617-67_I_624, 2011 (Released:2012-12-28)
参考文献数
10

近年歩行環境への関心の高まりに伴い,歩行者の経路選択モデルや流動シミュレーション等が活発に研究されているが,これらに大きな影響を与える経路選択肢集合を生成する手法は十分に確立していない.本研究では携帯電話端末からのGPSデータを利用して,歩行者の経路選択肢となるリンク集合を推定することを試みた.この手法は,追跡調査やアンケート調査では取得が難しい行動実績データを大量かつ継続的に得られるという利点がある.まず使用するデータの特性を考慮したマップマッチングを行い,それに基づき経路選択に利用されたリンク集合を,経路長と,接続性指標であるインテグレーション値を用いて推定する手法を提案した.その結果,後者を用いることで経路選択リンク集合をより精度よく推定できることが明らかとなった.
著者
川崎 洋輔 原 祐輔 桑原 雅夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.I_949-I_959, 2017 (Released:2017-12-27)
参考文献数
16
被引用文献数
1

本研究では,状態空間モデルによる経路選択を考慮した二次元ネットワークの交通状態推定手法を提案する.交通管制においては,二次元ネットワーク全体の交通状態をモニタリングすることが重要である.二次元ネットワークでは,利用者の経路選択行動により渋滞状況が変化する.そこで,本研究では,経路選択モデルを内包したCTMをベースに,観測密度,観測分岐台数を用いた2種類の状態空間モデルを構築した.モデル検証の結果,観測分岐台数は,モデルの経路選択改善に寄与すること,観測密度で交通状態を更新する方が観測分岐台数を用いるよりも渋滞推定精度がよいことがわかった.
著者
赤羽 弘和 桑原 雅夫 佐藤 拓也
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集
巻号頁・発行日
vol.2000, no.660, pp.79-87, 2000
被引用文献数
6

本研究においては, 休日の都市間高速道路を対象とした利用予約制を適用し, 交通需要の発生を時間的に平準化することにより, 交通渋滞を軽減・解消する可能性を探った. サービスエリアにおけるSP調査に基づき, 予約条件, 利用者属性, およびトリップ属性を説明要因とする予約制選択モデルを構成した. このモデルと実際の交通渋滞の観測データとを組み合わせ, 数値シミュレーションにより予約制の効果を検証した. さらに, 予約動向に基づいて交通需要の発生状況を予測し, それを予約条件の設定や予約の受付・処理に反映させるフィードバックループを構築し, 交通需要の予測誤差が予約制の効果に及ぼす影響を数値シミュレーションにより検証した.
著者
三浦 久 洪 性俊 田中 伸治 桑原 雅夫
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.I_1143-I_1148, 2012
被引用文献数
1

本稿では首都高速道路3号上り線の六本木付近を対象に追突事故直前における交通流特性について分析した結果を報告する.大橋JCT供用前後の日交通量の変化に比べて事故発生率が大きく変化したことは,追突事故が発生しやすい特定の交通流状態が存在し,その状態が減少したことが要因と考えられる.パルスデータを利用して個別車両の速度等を分析した結果,研究対象区間の下流側から上流側への減速波の伝播の有無が大きく影響することが確認され,追突事故リスクの高い交通流状態となる条件を抽出した.また,判別分析を行い,ある交通状況において減速波が上流側に伝播するかを精度高く予測することができた.
著者
佐々木 光明 桑原 雅夫 小野 晋太郎 浦山 利博 松本 学 森 一夫 池内 克史 大口 敬 大石 岳史 尾崎 朋子
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.113-117, 2015-03-01 (Released:2015-03-30)
参考文献数
4

交通事故発生箇所の多くは,道路形状から交差点と単路部に分類される.本研究は,その中でも交差点について着目し,これまで定性的であった交差点の見通しをMMS (Mobile Mapping System) を利用し数値化して定量的に解析する.その解析結果から,見通しが交通事故に影響する要因について考察する.
著者
田中 伸治 白石 智良 小宮 粋史 花房 比佐友 林 誠司 平井 洋 桑原 雅夫
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.259-262, 2012 (Released:2012-04-10)
参考文献数
3
被引用文献数
1

交通シミュレーションを利用してCO2排出量等を推計する際には, 国内外で異なるモデルが使用される可能性が高いため, モデル検証の手続きを国際的に共通化することが重要である.そこで本プロジェクトでは, 交通シミュレーションモデルおよびCO2排出量モデルの検証の枠組みを提案し, 国際ワークショップを通じた合意形成のための議論を行っている.また, この検証に利用可能な実交通データを取得するため現地観測調査を行い, 得られたデータを利用して検証の枠組みの妥当性を確認するための試行検証を実施している.
著者
橘 秀樹 押野 康夫 山本 貢平 桑原 雅夫 上野 佳奈子 坂本 慎一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

平成10年に改正された「騒音に係る環境基準」では、環境騒音の状況に関して従来の点的把握から面的把握に変更され、評価指標としても騒音レベルの中央値(L50)から国際的に広く用いられている等価騒音レベル(LAeq)に変更された.また「環境影響評価法」でも大規模開発の際には環境の変化を正確に把握することが必須となった.このような背景の下に、本研究では、騒音のエネルギー的平均値を意味する等価騒音レベル(LAeq)によって環境騒音の状況を正確に把握あるいは予測し、その結果を客観的な形で表示する手法を確立することを目的として、以下の研究を行った。(1)道路交通騒音の予測・モニタリングに関する検討わが国における統一的な道路交通騒音予測モデルであるASJ RTN-Model 1998の内容をさらに充実するための基礎的研究として、大型車の影響や都市部における垂直方向の騒音分布に関する実測調査や、掘割・半地下道路からの騒音伝搬の計算手法の簡易化、きわめて複雑な特性を有する交差点周辺の騒音予測手法の開発などを行った。また、騒音対策として多用されている遮音壁の挿入損失の数値解析手法の検討や建物群による騒音低減効果などについても、検討を行った。(2)騒音伝搬特性の測定法に関する検討屋外では、騒音の伝搬に対して風などの気象条件による影響が大きく、またそれによって伝搬特性が時間的に変化する問題(時変性)が大きな問題となる。このような環境下において騒音の伝搬特性を精度よく測定する方法について、時間伸張(TSP)信号を用いる手法などについて、理論的・実験的検討を行った。(3)建設工事騒音の予測に関する検討最近では、各種の建設工事に伴って発生される騒音についても、環境アセスメントの対象となってきており、この種の騒音の予測手法を開発する必要がある。そこでそのための基礎的検討として、時間変動特性がきわめて多様である建設工事用機械類を対象とした騒音源データの測定・表示方法、LAeqを基本評価量とする騒音予測計算法の基本スキームについて検討を行った。
著者
大口 敬 桑原 雅夫 鹿田 成則 片倉 正彦 吉井 稔雄 赤羽 弘和
出版者
東京都立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2001

自動車の運転者の認知・挙動には様々な場面が想定されるが,本研究では道路における安全性評価・効率性評価(交通容量)に関連した道路線形・道路構造・周辺車両との関係性における速度感,距離感,および案内標識などの視認性を対象とする.こうした運転特性を分析・検討するために,これまで困難とされてきた室内実験手法による実証データの収集を可能とする室内実験システムを確立すること,その場合の実際の道路交通環境下における挙動との違い,相似関係を明確化し,実験結果の評価方法を確立することを目的としている.また,こうした実験による実証的検討を通して,運転者の認知・判断・挙動の特性を「リスク認知」という観点から整理・統合することを試みる.今年度は,東京都立大学に既設の動景観画像室内実験装置を用いて,交通事故が多発しているカーブ道路区間を対象に,熟練運転者と初心運転者によるカーブ走行特性が異なることを利用して,道路上の運転者からの模擬視界を生成する3次元CGモデルにより,交通安全施設の有無,施設のタイプ(ポストコーン,デリニエータ),設置形態と運用形態(高さ,設置頻度)の異なる条件を設定し,交通安全施設設置効果の実験的検証を行った.また,交差点信号機の下などによく設置される補助標識である名称標識に代えて,記号や色などによる認知しやすい補助標識と案内システムの併用による交差点案内システムの有効性検証の実験も行った.これらの実験を通して,視認開始距離における画像を表示するには,汎用のCG画像では画素の精度により限界があること,速度感の認知にはまだ課題が残されているものの,室内実験システムにより,こうしたドライバの認知挙動実験が一定の範囲で可能であることを明らかにした.