著者
坂本 薫 森井 沙衣子 上田 眞理子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.193-199, 2015 (Released:2015-07-06)
参考文献数
34
被引用文献数
3

温水浸漬と低温浸漬が米の吸水率に与える影響について,浸漬水中の固形分を考慮して経時的に検討した。5~50°Cの温度で5~240分間米を浸漬し,米の吸水率を測定したところ,温水浸漬と低温浸漬では,吸水曲線が交差する現象が観察され,平衡状態まで吸水させた場合では,温水浸漬よりも低温浸漬の米の吸水率が高かった。浸漬水中の固形分の量を経時的に測定したところ,40°C,50°Cの温水浸漬では固形分は多く浸漬液中に懸濁していた。そこで固形分を加えた補正吸水率を算出したが,吸水曲線が交差する現象が同様に観察され,平衡状態では温水浸漬よりも低温浸漬の米の吸水率が高かった。
著者
森井 沙衣子 上田 眞理子 坂本 薫
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成26年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.82, 2014 (Released:2014-10-02)

【目的】第1報の結果より,浸漬温度が異なる米の吸水率を検討する際には,流出固形物量を加味した吸水率の検討が必要であると考えられた。そこで浸漬温度の異なる精白米の吸水曲線を明らかにする目的で,浸漬温度を変化させたときの流出固形物量を加味した吸水率を経時的に測定・算出した。 【方法】第1報と同様の試料を用い,浸漬温度は5℃,10℃,20℃,30℃,40℃,50℃とし,それぞれ5,10,20,30,40,50,60,80,120,240分間,各設定温度の水に浸漬させた。浸漬後,小型遠心分離機を用いて3,000rpmで5分間遠心脱水を行い,米と溶出固形物を含む浸漬水をそれぞれ回収し,米の吸水量から単純吸水率を求めた。また浸漬水は定温乾燥機で恒量になるまで乾燥させ,乾燥した溶出固形物重量を吸水率に加味した補正吸水率を算出した。 【結果】単純吸水率を算出した結果,短時間浸漬においては浸漬温度依存的に吸水率が増加する傾向がみられた。しかし,長時間浸漬を行った場合では,低温浸漬は温水浸漬と比較して吸水量が多くなったことから,初速吸水率は温水浸漬米が低温浸漬米の吸水率よりも高値となり,長時間浸漬では,浸漬温度が低いほど米の吸水率が大きくなることが示唆された。しかし,温水浸漬では溶出固形物が浸漬液中に多く溶出されたため,乾燥溶出固形物重量を測定し,吸水率を乗じて補正吸水率を算出し,溶出固形物の影響を考察したが,補正吸水率は単純吸水率と同じ結果が得られた。これらの結果から低温長時間浸漬米は吸水率が高くなることが明らかになった。
著者
森井 沙衣子 坂本 薫 白杉(片岡) 直子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成28年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.139, 2016 (Released:2016-08-28)

【目的】浸漬温度が異なる米の吸水率について検討したところ,温水浸漬と低温浸漬では,吸水曲線が交差する現象が観察され,平衡状態まで吸水させた場合では,温水浸漬よりも低温浸漬の米の吸水率が高くなることをすでに明らかにした。本研究では,さらに品種および搗精度が異なる米の吸水率について,同様に吸水曲線が交差する現象が観察されるかどうかを明らかにすることを目的とし,実験を行った。 【方法】試料米はキヌヒカリ,ササニシキ,ハツシモの3品種とし,玄米および93%または91%搗精米を用いた。浸漬温度は5,20,40℃とし,それぞれ10,20,30,40,50,60,90,120,240,480分間,さらに吸水率が平衡にならなかった場合は平衡になるまで各設定温度の水に浸漬させた。浸漬後,小型遠心分離機を用いて3,000 rpmで5分間遠心脱水を行い,米の吸水量から吸水率を求めた。 【結果】91,93%各搗精米の吸水率は品種に関わらず,浸漬30分までは浸漬温度40℃で最も高値を示したが,60分後には20℃での吸水率が高くなった。さらに浸漬時間を長くすると5℃浸漬米の吸水率も40℃浸漬米よりも高くなったことから品種にかかわらず,5,20℃浸漬と40℃浸漬では,吸水曲線が交差することを観察した。また品種によって吸水率に差は見られるものの,91,93%各搗精米を平衡状態まで吸水させた場合,5℃浸漬米の吸水率が高くなる傾向が見られた。玄米においても短時間の浸漬では40℃浸漬米の吸水率が高値を示したが,長時間浸漬させると,5,20℃各浸漬米の吸水率は40℃浸漬米とほぼ同等の吸水率となるか,もしくは搗精米と同様に吸水曲線の交差が起こることが明らかとなった。
著者
三浦 加代子 坂本 薫 中谷 梢 作田 はるみ 橘 ゆかり 岩城 啓子 升井 洋至 森井 沙衣子 川西 正子 堀内 美和 片平 理子 白杉(片岡) 直子 井奥 加奈 横溝 佐衣子 岸田 恵津
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.44-52, 2020-02-05 (Released:2020-02-14)
参考文献数
21
被引用文献数
1

小学校家庭科での炊飯学習のあり方を検討することを目的に,近畿および関東の公立小学校の家庭科担当教員を対象に,教育現場での炊飯実習の実態を調査した。平成25年に近畿630校,平成26年に関東700校を無作為に抽出し,炊飯実習に関する調査票を郵送した。近畿306校,関東234校より回答が得られた。炊飯実習は約97%が5年生を対象に実施されていた。90%以上が鍋を用い,材質はガラスが85%を占めていた。炊飯実習の米の量,洗米,水加減,浸水時間,加熱の仕方などの指導は教科書の方法に従って行われていた。教員が実習で困っていることは,「火加減の調節の指導」,「焦げること」が多くあげられた。教員は,児童が自分でご飯が炊けた達成感を感じ,ご飯が炊けるまでの変化に興味をもっていたととらえていた。教員は炊飯実習を有意義な実習であると考えていた。「火加減の調節の指導」や「加熱時間の調整の指導」,「焦げることへの対応」は今後の検討課題である。
著者
坂本 薫 森井 沙衣子 井崎 栞奈 小川 麻衣 白杉(片岡) 直子 鈴木 道隆 岸原 士郎
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成27年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.143, 2015 (Released:2015-08-24)

【目的】日本の市販グラニュ糖やザラメ糖のスクロース純度は,99.9%以上と大変高くスクロース結晶とみなすことができるため,製品間で品質に差はないと考えられてきた。しかし,グラニュ糖の融点にはメーカーによって異なるものがあり,融点の異なるグラニュ糖は加熱熔融状況が異なり,示差走査熱量分析(DSC 分析)において異なる波形を示すこと,さらに,スクロース結晶を粉砕することにより,その加熱特性が変化することをすでに明らかにした。焼き菓子の中には,マカロンや焼きメレンゲなど粉砂糖の使用が通常とされるものがある。そこで,グラニュ糖と粉砂糖を使用して焼きメレンゲを調製し,焼き菓子における砂糖の粒度の違いによる影響を検討した。【方法】3社のグラニュ糖(W,X,Z)およびそれぞれを粉砕した粉砂糖(Wp,Xp,Zp)を用いた。砂糖のみについて,焼きメレンゲと同条件で加熱し,色差測定,HPLC分析を行った。また,焼きメレンゲを調製し,外観観察および重量減少率測定,密度測定,色差測定,破断強度測定を行った。【結果】砂糖のみの加熱では,グラニュ糖のほうが色づきやすく,粉砂糖のほうが着色の度合いは小さかった。また,加熱により,W,Xでは顕著に還元糖が生成していた。砂糖のみと焼メレンゲでは,加熱後の色づき方の逆転現象が認められ,粉砂糖メレンゲのほうが色が濃い結果となった。外観では,粉砂糖メレンゲでは表面はなめらかであったが表面が硬い傾向が認められ,表面に亀裂や気泡が見られた。グラニュ糖メレンゲは,色が白くきめが粗かった。本研究により,砂糖の粒度の違いにより,焼き上がりの外観,色調やきめ,テクスチャーが大きく左右されることが明らかとなった。
著者
坂本 薫 森井 沙衣子 井崎 栞奈 小川 麻衣 白杉(片岡) 直子 鈴木 道隆 岸原 士郎
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】日本の市販グラニュ糖やザラメ糖のスクロース純度は,99.9%以上と大変高くスクロース結晶とみなすことができるため,製品間で品質に差はないと考えられてきた。しかし,グラニュ糖の融点にはメーカーによって異なるものがあり,融点の異なるグラニュ糖は加熱熔融状況が異なり,示差走査熱量分析(DSC 分析)において異なる波形を示すこと,さらに,スクロース結晶を粉砕することにより,その加熱特性が変化することをすでに明らかにした。焼き菓子の中には,マカロンや焼きメレンゲなど粉砂糖の使用が通常とされるものがある。そこで,グラニュ糖と粉砂糖を使用して焼きメレンゲを調製し,焼き菓子における砂糖の粒度の違いによる影響を検討した。<br><br>【方法】3社のグラニュ糖(W,X,Z)およびそれぞれを粉砕した粉砂糖(Wp,Xp,Zp)を用いた。砂糖のみについて,焼きメレンゲと同条件で加熱し,色差測定,HPLC分析を行った。また,焼きメレンゲを調製し,外観観察および重量減少率測定,密度測定,色差測定,破断強度測定を行った。<br><br>【結果】砂糖のみの加熱では,グラニュ糖のほうが色づきやすく,粉砂糖のほうが着色の度合いは小さかった。また,加熱により,W,Xでは顕著に還元糖が生成していた。砂糖のみと焼メレンゲでは,加熱後の色づき方の逆転現象が認められ,粉砂糖メレンゲのほうが色が濃い結果となった。外観では,粉砂糖メレンゲでは表面はなめらかであったが表面が硬い傾向が認められ,表面に亀裂や気泡が見られた。グラニュ糖メレンゲは,色が白くきめが粗かった。本研究により,砂糖の粒度の違いにより,焼き上がりの外観,色調やきめ,テクスチャーが大きく左右されることが明らかとなった。
著者
橋本 賢 森井 沙衣子 照井 真紀子 村上 洋子 奥村 万寿美
出版者
名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.93-98, 2006-03-31

食事摂取量調査は,管理栄養士にとって患者の食生活を把握する上で非常に重要な項目である.しかし,分析する者の経験や能力の差により正確な値との間に誤差を生じる.そこで食事摂取量調査の技術向上のために,どのような教育の実施が望ましいかを検討するために,IT (Information Technology) を用いた摂取量解析のプレテストを行った.管理栄養士養成施設の3年生男子10人,女子76人を対象とした.5cm方眼のランチョンマットに配膳された「ごはん,鮭の塩焼き,肉じゃが,ほうれん草の胡麻和え,若布のみそ汁」をデジタルカメラで撮影し,その画像から食材と分量の読み取り分析を実施した.また画像からの食事摂取量の評価で難しかった点(問題点)と技術習得のための改善点を学生に提示させた.その結果,食材の分量を全体的に過少評価し,また総エネルギー量を実際のエネルギーより少なく見積もる方向性が認められた.さらに調味料分量においても同様の結果が認められた.塩分量においては,実際の塩分量と比較して,メニューの目分量,またそれぞれの料理の材料分量を栄養価計算した塩分量と比較して,多く見積もる方向性が認められた.さらに学生が難しかったと申告した項目を分類したところ,難しかった点には,使用食材の分量を把握することが一番多く,次いで調味料の分量を把握すること,食器から重量を推定すること,食材名(分類や部位)を判別するが上位を占めた.一方,問題を改善するための今後の課題としては,スケールを用いた食材量測定が最も多く,次いで1食あたりの食材分量,調味料分量%を把握する,およびレシピであった.撮影画像から食事摂取量調査を行うにあたり,食材料自体の分量の把握と常用量の把握が重要であると考えられた.また,2次元画像から材料の大きさを立体的に把握する技術も必要となることが示唆された.