著者
森川 すいめい 上原 里程 奥田 浩二 清水 裕子 中村 好一
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.331-339, 2011 (Released:2014-06-06)
参考文献数
24

目的 本調査は,東京の一地域における路上生活者の精神疾患患者割合に関する日本で初めての実態調査である。主要な目的は,質問票を用いたスクリーニングと精神科医による診断によって,路上生活者の精神疾患有病率を明らかにすることである。方法 調査期間は2008年12月30日から2009年 1 月 4 日とし,調査対象者は同期間に JR 池袋駅半径 1 km 圏内で路上生活の状態にあった者とした。調査区域は,豊島区内の路上生活者数の概ね全数を把握できる地域として選定した。路上生活者の定義は,厚生労働省の実態調査で定められているホームレスの定義と同義とした。調査依頼状を受け取った路上生活者は115人で,協力を得た80人を研究対象とした。面接調査には Mini International Neuropsychiatric Interview(MINI)による質問紙と,別に作成した対象者の生活状況について尋ねる質問紙を用いた。最終的に精神科医が Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fourth Edition, Text Revision(DSM–IV–TR)の診断基準に則って精神疾患の診断をした。結果 平均年齢は50.5(標準偏差[SD];12.3)歳,性別は男75人(93.8%),女 5 人(6.3%)であった。精神疾患ありの診断は50人(62.5%)で,内訳は33人(41.3%)がうつ病,12人(15%)がアルコール依存症,12人(15%)が幻覚や妄想などの精神病性障害であった。MINI の分類にある自殺危険度の割合では,自殺の危険ありが44人(55.7%)で,過去の自殺未遂ありは25人(31.6%)であった。結論 本研究は,わが国のホームレス状態の者の精神疾患有病率を十分代表するとは言えないが,路上生活者に精神疾患を有する者が62.5%存在し,医療的支援が急務の課題であることを明らかにした。
著者
森川 すいめい
出版者
日本作業科学研究会
雑誌
作業科学研究 (ISSN:18824234)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.92-97, 2018-12-25 (Released:2019-05-10)
参考文献数
3

1960 年代,フィンランドの精神医療の中で「Need-Adapted Treatment」といった考え方が生まれた. 精神病院での病状が切迫したような急性期の初回面接時,それまでは,本人抜きで入院や治療方針が決まっていたが,アラネンらはその意思決定の場に本人とその家族を招き対話(ダイアローグ)した. ただこれだけで入院の必要性が4割に減った. この考え方は1981年に国家プロジェクトとなった. その影響を受けるようにして,1984年にオープンダイアローグが誕生した. オープンダイアローグは,フィンランドの西ラップランド地方ケロプダス病院を中心に1980年代から開発と実践が続けられてきた精神医療やケアシステム全体を総称したものである. 「本人のいないところで、本人のことを話さない」「対話主義」「即時支援」「リフレクティング」「病はひととひとの間に起る」「ネットワークミーティング」「Need-Adapted Treatment」「treatment の場面では1対1にならない」「自分を大切にすること」などといった考え方が,クライアントやそのご家族のニーズに徹底して寄り添いダイアローグを続けることによって大切にされていった. この実践が驚くべき成果を上げ国際的に注目されている. 例えば国の調査では治療を受けた人の約8割が就労か就学した(対照群では約3割). オープンダイアローグは,サービス供給システム, 対話実践, 世界観などのいくつかの側面からとらえることができる. この西ラップランドで開発されたオープンダイアローグを日本のそれぞれの現場で実践するにはどうしたらいいのか. 今回はそのヒントに迫るためにダイアローグの場をつくる.
著者
森川 すいめい
出版者
日本作業科学研究会
雑誌
作業科学研究 (ISSN:18824234)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.92-97, 2018

1960 年代,フィンランドの精神医療の中で「Need-Adapted Treatment」といった考え方が生まれた. 精神病院での病状が切迫したような急性期の初回面接時,それまでは,本人抜きで入院や治療方針が決まっていたが,アラネンらはその意思決定の場に本人とその家族を招き対話(ダイアローグ)した. ただこれだけで入院の必要性が4割に減った. この考え方は1981年に国家プロジェクトとなった. その影響を受けるようにして,1984年にオープンダイアローグが誕生した.オープンダイアローグは,フィンランドの西ラップランド地方ケロプダス病院を中心に1980年代から開発と実践が続けられてきた精神医療やケアシステム全体を総称したものである.「本人のいないところで、本人のことを話さない」「対話主義」「即時支援」「リフレクティング」「病はひととひとの間に起る」「ネットワークミーティング」「Need-Adapted Treatment」「treatment の場面では1対1にならない」「自分を大切にすること」などといった考え方が,クライアントやそのご家族のニーズに徹底して寄り添いダイアローグを続けることによって大切にされていった.この実践が驚くべき成果を上げ国際的に注目されている. 例えば国の調査では治療を受けた人の約8割が就労か就学した(対照群では約3割).オープンダイアローグは,サービス供給システム, 対話実践, 世界観などのいくつかの側面からとらえることができる. この西ラップランドで開発されたオープンダイアローグを日本のそれぞれの現場で実践するにはどうしたらいいのか. 今回はそのヒントに迫るためにダイアローグの場をつくる.
著者
森川 すいめい
出版者
青土社
雑誌
ユリイカ (ISSN:13425641)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.56-63, 2013-05