著者
東 修平 森田 雅文 真野 翔 島田 亮
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.293-297, 2018-11-15 (Released:2018-11-30)
参考文献数
9

今回われわれは,下行大動脈にエントリーを有する慢性B型解離の偽腔の拡大に対して,偽腔から起始する右腎動脈に対してVIABAHNを用いて再建およびリエントリー閉鎖を行ったうえで,TEVARによるエントリー閉鎖を施行した症例を報告する.症例は78歳,男性.発症時期不明のB型解離に対して過去に2回のTEVARによる治療歴がある.外来フォロー中に残存偽腔の拡大傾向を認め,胸部下行大動脈の最大径が58 mmとなったために手術適応となった.大動脈造影CTでは胸部下行大動脈に明らかなエントリーを有し,右腎動脈は偽腔から起始しており,その根部はリエントリーを形成していた.その他の腹部分枝はすべて真腔から起始し,また,術前大動脈造影検査にて,右腎動脈起始部以外に明らかなリエントリーは認めなかった.手術は,VIABAHNを腹部大動脈真腔から偽腔を通過して右腎動脈に留置したうえでTEVARによるエントリー閉鎖を行った.術後経過良好で,脊髄梗塞等の合併症を認めることなく,偽腔は完全に血栓閉鎖され,右腎動脈血流も良好であった.術後10日目に独歩退院となった.術後10カ月目のフォローアップのCTでは血栓化偽腔の縮小傾向を認めた.慢性大動脈解離に対するTEVARにおいては,エントリーおよびリエントリーの位置等によっては,偽腔血流が残存して,期待どおりの大動脈リモデリングが得られない症例が存在する.特に腹部分枝が解離によりパンチアウト状態でリエントリーを形成している症例では,分枝は偽腔起始となり,TEVARによるエントリー閉鎖だけでは不十分となる可能性がある.今回われわれの経験した,偽腔から起始する右腎動脈に対してVIABAHNを用いて再建およびリエントリー閉鎖を行ったうえで,TEVARによるエントリー閉鎖を行う方法は,慢性B型大動脈解離における偽腔拡大に対するTEVARにおいて有用な方法である可能性があり,報告する.
著者
東 修平 森田 雅文 真野 翔 本橋 宜和 吉井 康欣 土田 隆雄
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.52-57, 2020-03-15 (Released:2020-04-03)
参考文献数
6
被引用文献数
1

[目的]Stanford A型急性大動脈解離(AAD(A))において,全弓部人工血管置換術(TAR)の際の左鎖骨下動脈再建(LSCA)については,症例によっては,深い視野での操作になり,剥離や吻合に難渋する症例や左反回神経麻痺や血管損傷を含めた合併症のリスクを伴うことも多い.今回われわれは,AAD(A)に対するTARにOpen Stent法を併施する際に,LSCAを再建せずに,Open Stent Graftのstenting portionにLSCAの入口部に合わせて開窓を作製し,遠位吻合を左総頸動脈(Lt. CCA)とLSCAの間(ZONE 2)に行う当院独自の自作開窓型オープンステント法としてIn Situ Fenestrated Open Stent Technique(FeneOS)を考案し,有用な成績が得られたので報告する.[対象・方法]2008年1月から2019年8月までに当院で施行したAAD(A)に対するTAR 144例(男性64名;女性80名,平均年齢71.9歳±12.3)を対象とし,上記FeneOSを施行した群47例(FeneOS群)と通常の脳血管3分枝の再建を行った97例(non-FeneOS群)の2群に分けて分析した.[結果]早期成績として,手術死亡(FeneOS群/non-FeneOS群=4.3%/5.2%)と有意差は認めず,両群ともに満足のいく結果であった.手術時間,選択的脳灌流時間,人工心肺時間,下半身循環停止時間については,FeneOS群で有意に短かった(p<0.05).FeneOS群全例において,術後遠隔期も含め,LSCAの血流に問題は認めず,術後反回神経麻痺も認めなかった.[結語]FeneOSは,LSCAを剥離して再建する必要がないことから,弓部3分枝再建に要する時間の短縮のみならず,左反回神経麻痺や血管損傷を含めたリスク回避において,AAD(A)におけるTAR時の有用な手術手技として選択肢になり得ると考える.
著者
柿本 祥太郎 森田 雅文
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR ARTIFICIAL ORGANS
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.410-413, 1990
被引用文献数
1

大阪地下鉄リニアモーターカーの試験走行に同乗し、ペースメーカーにおよぼす電磁障害について検討した。リニアモーター周辺では最大6.5ガウスの磁場が発生していたが、ペースメーカー機能には影響をあたえなかった。車両内で最も強い磁場を発生する制御装置周辺では、坐位での胸の高さでは最大14ガウスで影響をあたえなかった。しかし座席の高さでは最大45ガウスの磁場が発生しており最低15ガウスで固定レートへの変化がみられた。この反応はペースメーカーの機種や方向によってさまざまであった。床面の高さでは最大145ガウスの磁場が発生しており全機種で固定レートへの変化がみられた。しかし磁力線の方向によってはまったく変化を示さない機種もあった。制御装置の取り付け方を改良することによって、車両内に漏洩する磁場を10ガウス以下に押さえ、ペースメーカーに及ぼす電磁障害を回避することが可能であった。