著者
樋口 篤志 近藤 昭彦 杉田 倫明 機志 新吉
出版者
筑波大学
雑誌
筑波大学農林技術センター研究報告 (ISSN:09153926)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.19-32, 1999-03

水田は農業的な側面のみだけではなく、モンスーンアジアを代表する土地被覆という観点から、水文学的・気候気象学的側面でも重要な土地被覆である。また、リモートセンシング技術は非接触で地表面の状態を連続的にモニターできる唯一のツールである。本研究では水田の大気-陸面過程のより深い理解のために、地表面フラックスと分光反射特性の連続的な観測を行った。地表面フラックスはボーエン比熱収支法を用いて算出し、分光反射特性に関しては近赤外波長域まで撮影できるビデオカメラを用いて"面"的な観測を行った。結果は以下に要約される; 1)地表面フラックスは、日変化レベルでは成長期には有効エネルギーの多くを水体の貯熱量変化に使われ、成長後はそのほとんどが顕熱に消費されていた。 2)地表面フラックスの季節変化では、稲キャノビーの成長期に有効エネルギー(Qn=Rn-G:RnとGはそれぞれ正味放射、地中熱流量)中、顕熱(IE)に消費される割合(IE/Qn)に明確な上昇傾向がみられ、"Ageing effect"(植物体の成長期の違いによって気孔コンダクタンスが変化する)に伴う、植物生理学的な要因が影響していると考えられた。 3)分光反射特性の季節変化は、近赤外波長域のそれはアルベドのそれに類似し、赤色域は成長初期に減少、収穫期に増加傾向が認められた。植生指標の季節変化は稲の活性度を比較的反映していた。