著者
正村 俊之
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.254-272, 2005-09-30
被引用文献数
1

近代社会が成立して以来, 国家間相互依存というかたちで世界的相互依存が発展してきたが, 20世紀後半以降のグローバル化は, 国家間相互依存の深化としては捉えきれない面を含んでいる.現代のグローバル化を特徴づけているのは, (1) 国家を含む多元的な主体のネットワーク的関係, (2) グローバル化とローカル化の同時進展, (3) 機能分化の再編, (4) 情報化への依存である.本稿の目的は, このような特徴をもつグローバル化が社会の編成原理の転換に基づいていることを明らかにすることにある.その転換とは, 一言でいえば, 内部と外部を厳格に分離する「分割原理」から, 内部と外部の相互浸透を許す「入れ子原理」への移行を意味する.入れ子においては, 全体を構成する各要素にとって自己の外部に存在する全体が自己の内部に現れてくる.コンピュータ・ネットワークをインフラ的基盤にした現代社会では, ネットワークの要素そのものがネットワーク的関係をなすようなネットワーク的関係が形成されている.このようなネットワーク的関係がローカルな領域とグローバルな領域の双方において多元的に形成されることによって, 近代国家と機能分化のあり方に変化が生じてきている.
著者
正村 俊之
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.121-136,249, 1989-09-30 (Released:2009-11-11)
参考文献数
17

近年、社会の自己組織化に対する関心がにわかに高まってきた。このような自己組織化に対する関心の高まりは、現代社会そのものがきわめて自己組織的になっていることを背景にしている。本稿のねらいは、現代社会の自己組織性をコミュニケーション論的な視覚から分析することにある。そこでまず、伝統的なコミュニケーション論を批判的に検討し、メッセージの意味構成のあり方に着目したコミュニケーション類型を呈示する。次に、自己組織化には、(1)反省的コミュニケーションによる自己組織化のほかに、(2)原初的コミュニケーションによる自己組織化という別の様式があることを示し、それがどのような特性をもつのかを明らかにする。そして最後に、原初的コミュニケーションが現代社会の自己組織化に果たす役割について述べる。
著者
正村 俊之
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.1-3, 2012-07-14 (Released:2014-03-26)
参考文献数
1
著者
正村 俊之
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.43-47, 2009-07-19 (Released:2013-12-27)
参考文献数
1

社会学的研究には,数理的研究/非数理的研究,理論研究/実証研究/学説研究といったさまざまな種類の研究が含まれている.本稿では,第1に,共時的・静態的な観点および通時的・動態的な観点からそれらの研究の相互関係を説明し,社会学的研究に関する全体的な見取り図を提示する.第2に,その全体的な見取り図のなかに三つの報告(三隅報告,木村報告,渡邊報告)を位置づけて本シンポジウムの意義を探る.
著者
正村 俊之
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
vol.98, pp.9-42, 2016-05-30 (Released:2021-12-29)
参考文献数
29

本稿では、ポスト・パーソンズ時代に活躍したヨーロッパの社会学者のなかでU・ベックとN・ルーマンを取り上げ、「リスク・機能分化・個人化」に関して二人の理論を比較しながら、その理論的意義と残された課題について検討する。個人化に関しては、現代社会において個人が社会的再生産の単位になったとするベックの個人化論と、社会と個人の相互自律性を説くルーマンのシステム論が親和的であるという一般的な解釈を批判的に吟味し、客観的次元における個人化の進行が主観的次元における「アイデンティティの流動化と集合化」をもたらしている可能性を指摘した。次いで、ベックとルーマンのリスク論のなかで明示的に語られてこなかった論点として、リスク管理を中核に据えようとするガバナンス改革が現代社会のなかで進行していることを説明した。最後に、ベックのサブ政治論とルーマンの分化論に言及しながら、現代社会で進行している変化や改革が機能分化の変容を引き起こしていることを示した。

1 0 0 0 OA 特集の趣旨

著者
正村 俊之
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.22, no.10, pp.10_59, 2017-10-01 (Released:2018-02-10)
著者
正村 俊之
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.30, pp.1-20, 2020-01-01 (Released:2020-02-16)
参考文献数
37

情報化が新たな段階を迎えつつある今日,AIやIoTに代表される最新の情報技術が人間の自由の実現に繋がるか否かが問われている.この問題を考察するための予備的作業として,近代的自由の成り立ちについて検討する.最初に,自由論の論点を整理し,自由論の「分析論的モデル」「生命論的モデルⅠ(主客合一論)」「生命論的モデルⅡ(主客分離=結合論)」という三つのモデルを提示する.次に,古代ギリシャから西欧近代に至るまでの過程を辿りながら,近代的自由が「因果的必然性」「国家権力」「市場メカニズム」「近代法」という四つの構造的条件に支えられた「自由の生命論的モデルⅡ」として成立したことを述べる.そして最後に,従来のメディア概念を拡張したうえで,近代的自由を規定する構造的条件とメディアとの関係について言及する.
著者
加藤 眞義 舩橋 晴俊 正村 俊之 田中 重好 山下 祐介 矢澤 修次郎 原口 弥生 中澤 秀雄 奥野 卓司 荻野 昌弘 小松 丈晃 松本 三和夫 内田 龍史 浅川 達人 高木 竜輔 阿部 晃士 髙橋 準 後藤 範章 山本 薫子 大門 信也 平井 太郎 岩井 紀子 金菱 清
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、東日本大震災のもたらす広範かつ複合的な被害の実態を明らかにし、そこからの復興の道筋をさぐるための総合的な社会学的研究をおこなうための、プラットフォームを構築することである。そのために、(1)理論班、(2)避難住民班、(3)復興班、(4)防災班、(5)エネルギー班、(6)データベース班を設け、「震災問題情報連絡会」および年次報告書『災後の社会学』等による情報交換を行った。
著者
正村 俊之
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.460-473, 2013 (Released:2014-12-31)
参考文献数
17
被引用文献数
1

東日本大震災をリスク論の観点から分析するならば, そこには4つのタイプのリスクが存在する. まず, 津波災害に関連する「津波リスク」と原発災害に関連する「原発リスク」があり, この2つのリスクは, さらにそれぞれ災害の発生にかかわる「災前リスク」と被災地の復興にかかわる「災後リスク」に分けられる. 本報告の狙いは, リスク対策と知, リスクと無知の関係を明らかにしながら, これらのリスクの発生に共通する構造を分析することにある. 科学の発展をもたらしたのは, 知の働きによって未知が既知へと転換し, それによって新たな未知が生まれるという「未知の螺旋運動」であったが, 知と無知の間にもそれと類似した「無知の螺旋運動」が起こる. 津波災害と原発災害のいずれにおいても, リスク対策を講ずる過程で新たなリスクが発生するという逆説的な事態が起こっているが, このパラドックスは, 知の働きによって無知が既知へと転換し, それによって新たな無知が生まれるという「無知の螺旋運動」に起因している.
著者
正村 俊之
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.4_36-4_41, 2011-04-01 (Released:2011-08-18)
参考文献数
6